経費精算の承認フローを見直したいと思うきっかけは、たいてい月末に来ます。申請がまとまって届き、領収書が足りないものを差し戻し、承認者を追いかけて、支払に間に合わせる。この繰り返しを止めたいのに、どこから手を付ければよいのかが見えない状態です。詰まりの所在は、フローを3つの区間に分けて所要日数を別々に数えると、ほぼ一度で特定できます。この記事では、区間の分け方、詰まりが起きる5か所、承認経路の型、領収書の集め方、国税庁が定める保存の要件、道具を選ぶときの軸と費用の目安を順に整理します。
経費精算の承認フローは3つの区間に分けて見る
経費精算を「遅い」とひとまとめに語ると、打つ手が決まりません。中身は性質の違う3つの区間が連なっていて、遅れの原因も区間ごとに違うからです。
1つ目は、申請が出るまでの区間です。立て替えた人が領収書を手元に持ち、金額と目的を入力して提出するまでがここに入ります。2つ目は、承認が動く区間です。一次承認、二次承認、経理の確認が順に進みます。3つ目は、精算の区間です。支払の実行、会計処理、書類の保存までが含まれます。
この3区間のうち、いちばん長いのは多くの場合1つ目です。承認が遅いと言われている窓口を実際に測ると、承認そのものは2営業日で終わっていて、申請が出るまでに3週間かかっていた、という形になります。手を打つ順番を間違えると、承認の段数を減らしたのに何も変わらない、という結果になります。
測り方は簡単です。直近1か月の申請について、領収書の日付、申請日、最終承認日、支払日の4つを並べます。この4つがあれば、区間ごとの日数が引き算で出ます。表計算ソフトに4列足すだけなので、月末の作業の合間でも作れます。
支払までの全体の長さも、ここで把握しておきます。月末締めで翌月15日払いという規程なら、月初に立て替えた人は最長で45日間立て替えたままになります。この長さ自体が不満の原因になるので、締めの回数を増やすかどうかも検討の対象に入ります。区間の日数と全体の長さを分けて見るのが、最初の一歩です。
詰まりが起きる場所は5か所に決まっている
区間の日数を出したら、次は具体的な詰まりの場所を特定します。経費精算で遅れが生まれる場所は、規模や業種が違ってもほぼ同じ5か所に集まります。
1か所目は、領収書が出てこないところです。立て替えた人が領収書を財布や鞄に入れたまま忘れる、宛名や但し書きが足りずに再発行を頼むことになる、といった事情で止まります。2か所目は、申請の入力が足りずに差し戻すところです。目的、相手先、参加者、勘定科目のどれかが空欄で戻ると、往復に数日かかります。3か所目は、承認者が不在のところです。出張や休暇で1人止まると、その先の全員が待ちます。4か所目は、経理の突合です。申請と領収書、カードの明細、勘定科目の妥当性を1件ずつ確かめる作業で、件数に比例して伸びます。5か所目は、支払日が月に1回しかないところです。1日遅れると、次の支払は1か月後になります。
この5か所のうち、自分の窓口でどこがいちばん大きいかは、差し戻しの件数を数えれば見当が付きます。差し戻した件数と、その理由を1か月分だけ書き留めます。理由の内訳を見て、上位2つに絞って手を打つのが効率的です。全部を同時に直そうとすると、規程の改定から始めることになり、着手が半年先に延びます。
順番の考え方も決まっています。差し戻しが多いなら、入力項目の作り直しが先です。承認者の不在が多いなら、代理の決め方が先です。経理の突合が長いなら、申請時に集める情報を増やすほうが結局は速くなります。詰まりの場所によって打つ手が入れ替わるので、測らずに道具を探し始めるのは遠回りです。
承認の経路は4つの型の組み合わせで書ける
承認フローの図は、複雑に見えても4つの型の組み合わせで書けます。型の名前を知っておくと、社内の議論が短く済みます。
1つ目は直列です。申請者から上長、部門長、経理へと順に流れる形で、いちばん分かりやすい代わりに、1人止まると全部止まります。2つ目は条件分岐です。金額や科目によって通る経路が変わる形で、少額の申請を速く通したいときに使います。3つ目は並列です。上長と経理に同時に回して、両方の承認がそろったら次に進めます。順番に意味がない確認を重ねているなら、並列に変えるだけで日数が縮みます。4つ目は代理です。承認者が不在のときに別の人が代わって押せる形で、直列の弱点を補うために必ず必要になります。
経費精算の承認ワークフロー機能について、道具の側でどんな機能がそろえられているのかを整理した説明があります。
経費精算システムの「承認ワークフロー機能」には、企業ごとの承認ルールや業務フローに対応できるよう、さまざまな機能が備わっています。 ここでは、実際によく使われる代表的な機能と、その役割をわかりやすくご紹介します。 「自社に必要な機能はどれか」を考える際の参考としてご活用ください。(システムによっては搭載していない機能もあります。) 出典: mimosa.gr.jp
図を書くときは、まず紙で直列の経路を1本書き、そこに分岐と並列を足していきます。最初から条件分岐を何本も作ると、運用が始まってから「この申請はどの経路か」を人が判断することになり、判断のたびに止まります。経路の数は、担当者が暗記できる範囲に収めるのが現実的です。目安として、経路が5本を超えたら、金額の区切りか科目の区切りのどちらかを整理し直したほうがよいという見方があります。
代理の決め方は、図を書いたあとに必ず詰めます。不在の定義、代理を立てる期間、代理が押せる金額の上限の3つを決めておけば、承認者が休んでも止まりません。この3つを決めずに「不在のときは誰かが代わる」と書いた規程は、運用で必ず止まります。
金額で経路を分けるときの決め方
金額で経路を分けるのは効果の大きい打ち手ですが、境目の金額を勘で決めると失敗します。境目が低すぎると少額の申請まで役員まで回り、高すぎると承認の意味が薄れます。
決め方は、過去3か月分の申請を金額順に並べることです。件数の分布を見ると、たいてい少額に大きく偏っています。交通費と少額の消耗品が件数の大半を占め、金額の合計は一部の大きな申請が押し上げている形です。この偏りを見てから、件数の8割が収まる金額を1つ目の境目にします。ここを上長1人の承認で通す経路にすれば、承認の待ち時間の大部分が消えます。
2つ目の境目は、社内規程で決裁権限が変わる金額に合わせます。規程がすでにあるなら、そこに書かれた金額を経費精算にもそのまま使います。規程と経費精算で別の金額を使うと、どちらが正しいのかを毎回確かめることになります。規程が無い場合は、部門長の決裁と役員の決裁を分ける金額を1つだけ決めて、あとから見直す前提で運用を始めます。最初から精密に決める必要はありません。
段数を増やしても精度は上がらないという点も押さえておきます。承認者が3人並んでいると、2人目と3人目は「1人目が見ているだろう」と考えて通します。責任が分散して、かえって確認が甘くなります。金額の大きい申請については、段数を増やすのではなく、添付する資料を増やすほうが確かめられます。見積書、相見積もり、稟議の番号といった資料を必須にするだけで、承認する側の判断材料がそろいます。
自動承認を入れるかどうかも、ここで決めます。定期券代や通勤手当のように金額が毎月同じものは、上限を決めて自動で通す扱いにできます。件数の多いものを自動化すると効果が出やすく、監査の観点でも、上限と対象科目を明記しておけば説明が付きます。
領収書の集め方が承認の速さを決める
差し戻しの原因でいちばん多いのは領収書です。ここを直すと、承認の段数を変えなくても全体が速くなります。
集め方の設計は3点で決まります。1点目は、いつ出すかです。使ったその日か翌営業日に写真を撮って出す形にすると、財布に溜まりません。月末にまとめて出す形にしている限り、月末の集中は消えません。2点目は、どこに出すかです。窓口を1つに決めます。上長にメールで送る人、経理に直接渡す人、表計算ソフトに書く人が混在していると、抜けたかどうかを誰も分かりません。3点目は、何が写っていれば受け付けるかです。日付、金額、相手先の名称、但し書き、そして必要な場合は登録番号が読める状態を条件にします。この条件を先に周知しておけば、撮り直しの往復が減ります。
宛名と但し書きの扱いも、受け付ける側で基準を決めます。宛名が空欄のもの、但し書きが「品代」のものを受け付けるかどうかを決めておかないと、担当者ごとに判断が変わります。判断が変わると、通った人と通らなかった人の間で不満が生まれます。基準は厳しくても緩くてもよいので、書いて共有することが要点です。
原本の扱いも先に決めます。電子データで保存する場合と、紙の原本も残す場合で、立て替えた人に頼む作業が変わります。両方を残す運用にすると作業が二重になるため、どちらかに寄せるのが普通です。ただし保存の方法には法令上の要件があるので、寄せる先を決める前に要件を確かめる順番になります。要件の中身は次の節にまとめます。
締め切りの置き方にも工夫の余地があります。月末を締めにすると、月末の3日間に件数が集中します。締めを月に2回にするか、提出の締め切りを月末の3営業日前に置くと、経理側の山が平らになります。支払日を動かせないなら、提出の締め切りだけを前に出すのが現実的な調整です。
国税庁が定めるスキャナ保存の要件を先に読む
紙で受け取った領収書や請求書を画像で保存して原本を捨てる場合、満たすべき要件が法令で決まっています。道具を選ぶ前にここを読むと、選択肢が絞れます。
国税庁が公開している資料では、書類が重要書類と一般書類に分けられています。契約書、納品書、請求書、領収書などが重要書類、見積書、注文書、検収書などが一般書類です。重要書類の入力期間については、2つの方法が定められています。
次のどちらかの入力期間内に入力すること ① 書類を作成または受領してから、速やか(おおむね7営業日以内)にスキャナ保存する(早期入力方式) ② それぞれの企業において採用している業務処理サイクルの期間(最長2か月以内)を経過した後、速やか(おおむね7営業日以内)にスキャナ保存する(業務処理サイクル方式) 出典: 国税庁
②を採る場合は、作成または受領からスキャナ保存までの各事務の処理規程を定めていることが条件になると同じ資料に書かれています。つまり、月に1回の締めで回す運用を続けたいなら、処理規程を書く作業が先に来ます。
読み取りの要件も数字で決まっています。解像度は200dpi相当以上、色は赤色と緑色と青色の階調がそれぞれ256階調以上、いわゆる24ビットカラーです。一般書類については白黒階調で読み取ることもできると記載されています。出力の側では、14インチ以上のカラーディスプレイとカラープリンタ、操作説明書を備え付けることが求められ、4ポイントの大きさの文字を認識できる状態で出力できることも条件に入っています。
検索の要件は3つです。取引年月日その他の日付と取引金額と取引先で検索できること、日付または金額について範囲を指定して検索できること、2以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できることです。ただし、税務職員の求めに応じてデータをダウンロードできるようにしている場合は、後ろの2つの要件は不要とされています。このため、申請の表に日付と金額と取引先の3列を必ず持たせておくことが、道具を替えても変わらない下地になります。制度の解釈で迷う点は、所轄の税務署や税理士に確かめてから運用を固めてください。
差し戻しを減らす申請項目の作り方
申請の入力欄をどう作るかで、差し戻しの件数は大きく変わります。自由記述を並べた様式は、書く側も確かめる側も時間がかかります。
まず、入力欄を4つの性質に分けます。1つ目は誰が見ても同じ答えになるもので、日付、金額、支払先がここに入ります。2つ目は選択肢から選べるもので、科目の大分類、部門、プロジェクト、用途がここです。3つ目は説明が必要なもので、目的、参加者、相手先の所属が入ります。4つ目は添付です。この4つを混ぜずに並べると、書く順番が自然になります。
選べるものは必ず選択式にします。勘定科目を自由記述にすると、同じ内容が別の言葉で入って集計できなくなります。ただし、細かい科目まで申請者に選ばせるのは逆効果です。申請者には「交際費か、旅費交通費か、消耗品費か」程度の大分類を選ばせて、細かい仕分けは経理側で確定させます。申請者に会計の知識を要求すると、差し戻しが増えます。
説明が必要な欄は、何を書けばよいかを欄の中に例で示します。「目的」だけの欄には一言しか書かれませんが、「誰と、何のために会ったか(例:取引先の担当者2名と、来期の発注条件の打ち合わせ)」と書いてあれば、必要な情報が入ります。確かめる側が後から聞き直す手間が消えるので、欄の説明文を書く時間は確実に回収できます。
条件によって必要な欄が変わる場合は、条件に応じて出す形にします。交際費のときだけ参加者の欄を出す、宿泊費のときだけ宿泊地と泊数の欄を出す、という形です。全部の欄を常に見せると、関係のない欄を埋めようとして混乱します。入力欄の数は、1件を出すのにかかる時間に直接効きます。1件3分で出せる様式にできれば、提出が後回しにされにくくなります。
フリーランスや一人法人の場合は確定申告の元帳とつなげる
経費精算の承認フローは、人を雇っていない事業でも考える価値があります。承認者が自分しかいない場合でも、記録の残し方は変わるからです。
フリーランスや一人法人では、経費精算の表がそのまま確定申告の元になります。日付、金額、支払先、科目、目的の5列を月ごとに埋めていれば、申告の時期にまとめて思い出す作業が消えます。逆に、領収書の束だけを残して表を作っていないと、申告の直前に1年分を並べ直すことになります。税務の判断で迷うものには印を付けて、確かめてから科目を決める列を作っておくと、あとで見返せます。
外部の業務委託の相手に立て替えてもらった費用をどう受けるかも、先に決めておく事項です。報酬に含めて請求してもらう形と、実費として別に請求してもらう形があります。別に請求してもらう場合は、領収書の原本を誰が持つかを決めます。相手も自分の確定申告で経費として計上する可能性があるため、同じ領収書を両方が経費にしないように、どちら側の費用として扱うかを契約書か発注書に書いておきます。源泉徴収や消費税の扱いは相手の状況で変わるので、税理士に確かめてから様式を決めてください。
保険料の扱いも混ぜないように分けます。事業で払う損害保険料や賠償責任保険料は経費精算の対象になりますが、生命保険料や国民健康保険料、国民年金の保険料は事業の経費ではなく所得控除の側で扱います。経費精算の表に両方を入れてしまうと、申告の時期に仕分け直すことになります。表を作る時点で、経費精算の表と控除の資料を別のファイルに分けておけば、この混ざり方は起きません。
出張が絡む場合は、出張中の事故や治療に備える保険の費用を誰が負担するかも決めておきます。会社が負担するなら経費精算の科目に入れ、本人が負担するなら対象外にします。決めていないと、出張から戻ってきた人が申請してよいかを毎回聞くことになります。
表計算ソフトとメールで回している場合の限界
表計算ソフトとメールの組み合わせは、件数が少ないうちは十分に機能します。無理に替える必要はありません。替えるかどうかの判断は、次の4つのうちいくつが起きているかで決まります。
1つ目は、版が分かれることです。ファイルを添付してやり取りすると、同じ申請の別の版が複数の受信箱に散ります。どれが最新かを確かめるところから作業が始まるようになったら、限界の入口です。2つ目は、誰が承認したのかが残らないことです。メールの本文で「承認します」と返す形は、探せば残っていますが、一覧では見えません。監査や税務調査で承認の記録を求められたときに、受信箱をさかのぼることになります。
3つ目は、督促が手作業になることです。出ていない人を探すために、名簿と申請の表を見比べる作業が毎月発生します。件数が100件を超えたあたりから、この照合だけで半日が消えると言われています。4つ目は、締め日に集中することです。同じ表を複数人が同時に開くと、上書きの事故が起きます。
4つのうち2つ以上が起きているなら、道具を替える検討に入る時期です。ただし、替える先を決める前に、いま使っている表の列と承認の経路を紙に書き出しておきます。書き出さずに道具を選ぶと、いまの運用と合わない形に引きずられます。フォームで受け付けている場合の違いはGoogleフォームとの比較に、社内のアカウントで運用している場合の違いはMicrosoft Formsとの比較に整理しています。
道具の選び方と費用の目安
道具を比べるときは、機能の一覧表を横に並べる前に、自分の窓口に効く軸を先に決めます。軸を決めずに一覧表を見ると、使わない機能の有無で判断が揺れます。
軸は5つで足ります。1つ目は承認経路の作り方です。金額や科目での分岐を画面から自分で作れるか、設定を依頼する形かで、運用の自由度が変わります。2つ目は領収書の受け取り方です。写真を送れるか、電子の請求書をそのまま受け取れるかを確かめます。3つ目は保存の要件への対応です。前の節に挙げた入力期間と検索の要件を満たせるかを、公開されている資料で確かめます。4つ目は会計ソフトとのつなぎ方です。仕訳の書き出しができるか、手で入れ直すことになるかで、月末の工数が変わります。5つ目は課金の形です。使う人数で決まるのか、申請の件数で決まるのかを見ます。
費用の目安も、公開されている金額で押さえられます。経費精算に特化した楽楽精算は、公式ページに初期費用100,000円(税抜)、月額費用30,000円から(税抜)と記載され、月額は利用従業員数とオプションの内容で変動すると書かれています。業務の形に合わせて自分で組む方向であれば、kintoneはライトコースが1ユーザーあたり月額1,000円、スタンダードコースが1,800円、ワイドコースが3,000円(いずれも税抜、ライトとスタンダードは最低10ユーザーから)で、初期費用は無料と公式ページに記載されています。既存の環境に承認の仕組みだけを足す方向なら、Power Automate Premium が1ユーザーあたり月額2,248円(消費税は含まない、年払い)と記載されています。いずれも2026年9月26日時点の公開情報で、料金は改定されます。
おすすめの見方は、人数と件数のどちらで費用が伸びるかを自分の伸び方と合わせることです。窓口の担当者が増えないのに申請の件数が増えていく事業では、件数で課金される形は読みにくくなります。逆に、使う人が急に増える予定があるなら、人数課金の上限を先に確かめます。判断の材料を集めるときは、機能の一覧ではなく金額の伸び方の図を作るほうが、社内の説明が早く終わります。費用の考え方は料金で確かめられ、細かい条件はよくある質問に並べてあります。
入れて得られるメリットと、測る数字
承認フローを作り直したときのメリットは、感覚ではなく数字で出せます。出せるようにしておくと、次の改善の判断が速くなります。
測る数字は4つです。1つ目は差し戻し率で、申請の総数に対して差し戻した件数の割合です。入力項目を直した効果はここに出ます。2つ目は区間ごとの滞留日数で、申請までの日数、承認の日数、精算までの日数を分けて見ます。3つ目は立て替えから支払までの日数で、これは立て替えた人の不満に直結します。4つ目は月末の工数で、経理の担当者が締めの3日間に使った時間です。
4つを導入前に1か月分だけ測っておくのが要点です。測らずに替えると、良くなったかどうかが分からないままになり、次に何を直すかも決まりません。測る作業は、申請の表に日付の列を足すだけで済みます。
メリットの中身も、数字で言い換えると社内で通りやすくなります。「楽になる」ではなく「差し戻しが月30件から10件に減る」「支払までの日数が45日間から20日間になる」と書けば、判断する側が比べられます。あわせて、増える作業も正直に書きます。写真を撮って出す作業は立て替えた人に増えますし、規程を書く作業は事務局に増えます。増える側を隠して進めると、運用が始まってから反発が出ます。
デメリットの見積もりも入れておきます。移行の時期は、旧い経路と新しい経路が並走するため、いったん作業が増えます。並走の期間を1か月と決めて、その期間の担当を先に決めておけば、混乱は短く収まります。
受け付ける入口から承認まで同じ画面で回す
経費精算の道具を入れても負担が減らない窓口には、共通点があります。受け付けるところと、状況を管理するところ、返すところが別の道具に分かれていることです。フォームで受けて、状況は表計算ソフトに手で書き、差し戻しはメールで返す。この形だと、1件を処理するために3か所を開くことになり、書き写す作業が残ります。
入口から返信までを1か所で持てると、送信されたあとの道具がそろっている状態になり、探す時間と書き写す時間が消えます。判断の材料になるのは、1件ごとに担当と状況を持たせられるか、絞り込んで一覧に出せるか、定型の文面で差し戻せるかの3点です。この3つの操作はできることにまとめてあり、手を動かして確かめたい場合は動くところを見るから実際の画面を触れます。
受け付けるものによって、必要な機能の重みも変わります。金額や条件で扱いを分けて期限内に返す窓口は問い合わせの受付、添付を確認して手配まで進める窓口は修理・サポートの受付の流れが近くなります。自分の窓口がどちらに近いかを決めてから機能を見ると、比べる項目が半分に減ります。
最後に順番をもう一度整理します。区間ごとの日数を測り、差し戻しの理由を数え、承認経路を紙に書き、入力項目を作り直し、保存の要件を確かめる。ここまでを終えてから道具を見ると、選ぶ作業は1日で終わります。逆にすると、機能の比較表を何枚作っても決まりません。測ることから始めるのが、いちばん短い道です。
Q1. 承認の段数は何段まで減らしてよいですか?
金額で分けるのが基本です。過去3か月の申請を金額順に並べ、件数の8割が収まる金額までは上長1人の承認で通す形にすると、待ち時間の大部分が消えます。それを超える金額は社内規程の決裁権限に合わせます。段数を増やしても確認の精度は上がらず、責任が分散して甘くなるため、金額の大きい申請は段数ではなく添付資料を増やして確かめます。
Q2. 紙の領収書を捨てるには何を満たす必要がありますか?
国税庁の資料では、重要書類のスキャナ保存について、受領から速やか(おおむね7営業日以内)に入力する方式と、業務処理サイクル(最長2か月以内)を経過した後に速やかに入力する方式の2つが定められています。後者は各事務の処理規程を定めている場合に採れます。読み取りは解像度200dpi相当以上、赤緑青それぞれ256階調以上が要件です。適用の判断は所轄の税務署や税理士に確かめてください。
Q3. 道具を入れる費用はどのくらい見ておけばよいですか?
公開されている金額では幅があります。経費精算に特化した楽楽精算は初期費用100,000円(税抜)と月額30,000円から(税抜)、自分で業務に合わせて組む形のkintoneはライトコース1ユーザーあたり月額1,000円、スタンダードコース1,800円(いずれも税抜、最低10ユーザー)と記載されています。いずれも2026年9月26日時点の公開情報です。人数で伸びるか件数で伸びるかを、自分の事業の伸び方と合わせて選びます。
Q4. 差し戻しを減らすには、まず何を直せばよいですか?
1か月分の差し戻しの理由を数えて、上位2つに絞ります。多いのは領収書の不備と入力欄の空欄です。領収書は、受け付ける条件(日付、金額、相手先、但し書きが読めること)を先に周知します。入力欄は、選べるものを選択式に変え、説明が必要な欄には記入例を欄の中に置きます。勘定科目の細かい仕分けは申請者に選ばせず、経理側で確定させます。
