migration

整体院のエクセル管理から移る|過去の記録を持っていくときの決めごと

2026年9月13日 ・ Halict編集部

整体院の受付で、問い合わせの記録を表計算で管理している院は多くあります。列を足し、色を塗り、関数を入れて、その院に合った形に育ってきた表です。それが回らなくなってきたので別の仕組みに移りたい、しかし過去の記録をどうするかで手が止まっている。この記事は、その場面のための手順書です。

移る作業でつまずくのは、道具の使い方ではありません。過去の記録をどこまで持っていくか、いつ切り替えるか、旧ファイルをどうするか。この三つの決めごとが先に固まっていれば、作業そのものは半日で終わります。

表計算で回してきた整体院の実情

なぜ表計算で足りていたのか

表計算は、少人数の受付にとってよくできた道具です。列を自由に増やせて、その場で並べ替えができ、印刷もできる。特別な費用もかかりません。問い合わせが一日に数件で、受付がひとりなら、これで十分に回ります。

うまくいっている院の表を見ると、たいてい似た形をしています。日付、名前、連絡先、症状、来られる時間、対応の状況、備考。ここに、返信済みを示す色分けと、来院済みを示す印が加わります。この形で何年も回してきた院は珍しくありません。

足りなくなる合図

回らなくなるときには、いくつか共通の合図が出ます。

・二人が同時に開けず、「いま閉じて」というやり取りが日常になっている ・行が数千に達して、開くのに時間がかかる ・スマホから開いても、列が多くて実質的に読めない ・誰が返信したのかが色分けでしか分からず、色の意味を覚えている人が限られる ・返信の履歴が表に残らず、実際のやり取りはメールや通話アプリの側にある ・同じ人の記録が複数行に散らばっていて、最新がどれか分からない

このうち二つ以上が当てはまるなら、表の設計を直すより、移ることを考えたほうが早い段階に来ています。列を足して解決する範囲を超えているためです。

移る目的をひとつに絞る

移ると決めたら、目的をひとつに絞ってください。同時に開けるようにしたいのか、返信の履歴を同じ場所に残したいのか、スマホから見たいのか、誰が担当かを持たせたいのか。

全部を一度に解決しようとすると、選ぶ段階で決まらなくなります。いちばん困っていることをひとつ選び、それが解決するかどうかで判断してください。他のことは、移ったあとに順に足せます。

移らずに済む場合を先に確かめる

表の設計を直すだけで解決すること

移ると決める前に、いまの表を直すだけで済まないかを確かめてください。移る作業には手間がかかるので、直せる範囲なら直すほうが早いことがあります。

直せる範囲の代表は次の三つです。ひとつめは、列が多すぎて読みにくい場合。使っていない列を消し、順番を入れ替えるだけで、かなり読みやすくなります。ふたつめは、シートが分かれすぎている場合。年ごとに分けているものを一枚にまとめれば、探すのが楽になります。みっつめは、色分けの意味が共有されていない場合。凡例を一行足せば済みます。

これらは費用がかからず、その日のうちにできます。移ることを考える前に、一度手を入れてみてください。それで一か月困らなければ、移る必要はまだありません。

表計算のままで足りる院の条件

次の条件がすべて当てはまるなら、表計算のままで足ります。受付が実質ひとりで、同時に開く場面が無いこと。問い合わせが一日に数件で、行が数百に収まっていること。返信の履歴を残す必要が無く、届いたことと来院したことだけ分かれば足りること。外出先から見る場面が無いこと。

整体院にはこの条件に当てはまる院が実際にあります。無理に移る理由はありません。移るのは、条件が崩れてからで間に合います。崩れる前に移っても、使わない機能に費用を払うだけになります。

崩れる順番

条件が崩れるときには順番があります。まず、受付が二人になって同時に開けなくなります。次に、スマホから見たい場面が出てきます。その次に、返信の履歴を追う必要が出てきます。最後に、行数が増えて重くなります。

自分の院がいまどの段階にいるかを見れば、移る時期の見当が付きます。最初の段階に来ているなら、移る準備を始めてよい頃合いです。

移る前に、いまの表を棚卸しする

列を一覧にする

最初にやるのは、いまの表の列をすべて書き出すことです。書き出すと、思っていたより列が多いことに気づきます。使っていた列、いつのまにか使わなくなった列、誰かが一時的に足したまま残っている列が混ざっています。

書き出した列に、次の三つのどれかの印を付けてください。

意味 移すときの扱い
使う いまも毎回入力していて、必要 移す先に同じ項目を作る
使わない 半年以上入力されていない 移さない
迷う たまに使う、過去のものだけ入っている 保留にして、最後に判断する

「迷う」が多く出ますが、迷ったものは移さない側に倒して構いません。あとから必要になれば足せます。移すときにいちばん時間を食うのは、要らない項目を運ぶ作業です。

数式と色分けに埋まっているルール

表計算で長く回してきた院には、数式と色分けに院のルールが埋まっています。例えば、返信から三日経つと色が変わる、来院済みの行を自動で下に送る、といった仕掛けです。

これらは表の中にしか存在しないので、移すときに落ちます。落とさないためには、仕掛けを言葉にして書き出してください。「返信から三日経ったら目立たせる」「来院済みは通常の一覧から外す」というように、やりたいことを日本語で書きます。書いておけば、移る先で同じことができるかを確かめられます。

行数と容量を確かめる

棚卸しのついでに、いまの表が何行あるかを数えてください。数えると、思っていたより多いことがほとんどです。何年も足してきた表は、数千行になっていることがあります。

行数が分かると、移す作業にかかる時間の見当が付きます。あわせて、そのうち何行が「これから使う」ものかも数えてください。多くの院では、数千行のうち実際に使うのは数百行です。この比率が分かると、全部持っていく必要がないことが実感できます。

実際の運用と表の中身のずれ

棚卸しでもうひとつ確かめたいのが、表に書いてあることと、実際の運用がずれていないかです。備考欄に本来は別の列に入るべき内容が書かれていたり、対応状況の列が更新されないまま放置されていたり。

ずれたまま移すと、移る先でも同じずれが再現されます。移る作業は、ずれを直す数少ない機会です。ここで直しておけば、新しい形はきれいな状態から始まります。

過去の記録をどこまで持っていくか

全部持っていく必要はない

いちばん手が止まるのがここです。何年分もある記録を、全部移すべきなのか。結論から言えば、全部持っていく必要はありません。

判断の基準は、その記録をこれから使うかどうかです。整体院の問い合わせの記録で、これから使うのは次の二種類だけです。ひとつは、対応が終わっていないもの。もうひとつは、いまも来院している人に関するものです。それ以外の、何年も前に一度だけ問い合わせて来院しなかった記録は、移す先で開かれることがありません。

期間で切るか、状態で切るか

切り方は二通りあります。期間で切る方法は「直近1年分だけを移す」というやり方で、判断が簡単です。状態で切る方法は「対応中のものと、来院履歴のある人だけを移す」というやり方で、件数が減ります。

整体院の場合、状態で切るほうが実態に合います。一年前の問い合わせでも、来院が続いている人の記録は要ります。逆に、三か月前でも来院しなかった人の記録は使いません。表に来院の有無が記録されていれば、この切り方ができます。記録されていない場合は、期間で切るほうが確実です。

持っていかないものをどうするか

移さないと決めた記録を、そのまま古いファイルに残しておく院がありますが、これは扱いが宙に浮きます。制度の側では、必要がなくなったデータについて次のように定められています。

個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない。 出典: www.ppc.go.jp

どの記録がこれに当たるのか、いつまで持つべきかの判断は、院の業態や記録の中身によって変わります。この記事で断定はできません。移る作業のついでに整理するのは合理的ですが、消す範囲と時期を決める前に、所管の窓口や専門家に確かめてください。

受付として決めておけるのは、移さない記録の置き場所と、いつ処分するかの日付です。この二つが決まっていないと、旧ファイルが誰かのパソコンに残り続けます。

データを整える作業

表記のゆれを直す

移す前に必ず出てくるのが、表記のゆれです。整体院の受付表でよく見るのは次の四つです。

・電話番号。ハイフンあり、ハイフンなし、先頭の0が消えている ・日付。年月日で書いたもの、スラッシュ区切り、和暦、日付として認識されていない文字列 ・氏名。姓と名の間が全角空白、半角空白、空白なしの三通り ・時間。十時、10時、10:00、朝一番

移す先の項目に合わせて、どれかにそろえます。そろえる作業は表計算の置換で片付きます。ここを飛ばして移すと、移った先で並べ替えや検索が効かなくなります。

特に注意したいのが電話番号です。先頭の0が消えている状態のまま移すと、連絡が取れません。移す前に、列の書式を文字列にして、0が残っているかを確かめてください。

1つのセルに複数の情報が入っている

備考欄によくある状態です。「腰痛。前回は3月に来院。娘さんも通院希望」のように、複数の情報がひとつのセルに書かれています。

これは無理に分解しなくて構いません。分解しようとすると作業が膨らみ、途中で挫折します。備考は備考としてそのまま移し、これから記録するものだけを項目に分けて入れる形にしてください。過去の記録は読めれば足ります。

結合セル、空行、複数のシート

見た目を整えるために結合したセルや、区切りのために入れた空行は、書き出すときに崩れます。移す前に結合を解除して、空行を削ってください。

シートが月ごとや年ごとに分かれている場合は、ひとつにまとめる必要があります。まとめるときに列の並びが違っていることがあるので、そろえてから結合してください。この作業がいちばん時間を食います。半日を見ておいてください。

同じ人が複数行にいる

長く運用した表では、同じ人が何度も問い合わせていて、行が分かれています。移す先で一人にまとめたいところですが、同姓同名や、電話番号が変わっている場合があり、機械的にまとめると事故になります。

無理にまとめず、行はそのまま移すのが安全です。移ったあとで、実際に来院している人だけを目視で確かめてまとめれば足ります。件数は思ったより少ないはずです。

移す手順

手順1 凍結する日を決める

作業の前に、旧い表への入力をやめる日を決めます。決めずに始めると、移している最中に新しい行が増えて、どこまで移したか分からなくなります。

凍結日は、休診日の前日か、問い合わせの少ない曜日に置いてください。凍結日を決めたら、受付に関わる全員に伝えます。伝わっていないと、誰かが旧い表に入力し続けます。

手順2 書き出す

凍結したら、表をそのまま書き出します。書き出す前に、必ず元のファイルを別名で複製して保管してください。作業中に壊れることがあります。複製は作業が完全に終わるまで消さないでください。

書き出したものを開いて、文字化けがないか、日付が崩れていないか、電話番号の0が残っているかを確かめます。この三点は、書き出しで壊れやすい代表です。

手順3 少量で試す

いきなり全件を移さないでください。まず10件だけ移して、移る先でどう見えるかを確かめます。項目のずれ、文字の欠け、日付の並びを確認します。

ここで問題が見つかれば、直してからやり直せます。全件を移してから問題に気づくと、消してやり直すことになり、その作業自体が事故のもとになります。

手順4 二重運用の期間を決める

移したあと、しばらくは旧い表も見られる状態にしておきます。ただし、入力するのは新しい側だけです。両方に入力する期間を作ると、必ず片方が抜けて、どちらが正しいか分からなくなります。

見るだけの期間は1か月を目安にしてください。一か月あれば、月次の作業が一巡します。一巡して困らなければ、旧い表を見る必要はなくなります。

手順5 旧ファイルの扱いを決める

一か月たったら、旧ファイルの扱いを決めます。決めずに放置すると、誰かのパソコンのデスクトップに残り続けます。残った古い表を見て、古い連絡先に連絡してしまうという事故も起きます。

保管するなら、保管する場所と期間を決めて、その日が来たら処分する。処分の判断に迷うところは、所管の窓口や専門家に確かめてください。

移る先の項目を設計する

項目は少なく始める

移る先に項目を作るとき、いまの表の列をそのまま全部作りたくなります。しかし、棚卸しで「使わない」と印を付けた列は作らないでください。作ると、入力欄として表示され、埋めるかどうかを毎回考えることになります。

始めるときの項目は、次の八つで足ります。届いた日時、名前、連絡先、入り口、種類、担当、状態、備考。この八つで一か月回して、足りないと感じたものだけを足してください。多くの院は、足さずに済みます。

選択式にできるものは選択式にする

表計算では、種類も状態も手で打っていたはずです。移る先では選択式にできます。選択式にすると、表記のゆれが起きなくなり、絞り込みと集計ができるようになります。

整体院の場合、選択式にしたいのは、入り口、種類、状態、担当の四つです。入り口はフォーム、電話、地図サービス、通話アプリ、紙。種類は初回予約、料金、症状、変更、場所、法人、営業。状態は未対応、対応中、完了、来院済み。担当はスタッフの名前。この四つを選択式にすると、月末の集計が一気に楽になります。

備考欄は残す

選択式を増やす一方で、備考の自由記入欄は必ず残してください。整体院の受付には、分類に収まらない事情がよく来ます。付き添いが必要、駐車場に大きい車で来る、前回の担当を指名したい。こうした内容を書く場所が無いと、記録が別の場所に逃げます。

備考欄があると、そこに何でも書かれるようになりますが、それでよいのです。書く場所が無くて記録されないより、ひとところに書かれているほうが探せます。

電話と紙の記録をどう扱うか

電話の記録も同じ場所に入れる

移る作業のついでにやっておきたいのが、電話で受けた問い合わせを同じ場所に入れる運用への切り替えです。表計算の時代は、電話の分だけ別の紙に書いていた院が多いはずです。移る先では、受けたその場で一件として入力できます。

入力の手間を減らすには、電話で聞くことを決めておくことです。名前、連絡先、症状の出はじめた時期、来られる時間帯、他の医療機関にかかっているかどうか。この五つを聞く順に並べておけば、通話しながら埋められます。

紙の申込書をどこまで移すか

来院時に書いてもらう紙の申込書は、無理に移す必要はありません。当日の運用として紙が回っているなら、そのままで構いません。決めておきたいのは、紙にしかない情報を作らないことです。

紙にしかない情報があると、探すときも消すときも紙に引きずられます。紙は当日の控えと位置づけて、元の記録は電子の側に置く。この向きにしておけば、紙は決めた期間で処分するだけで済みます。

移行でよくある失敗

失敗1 全件を一度に移す

いちばん多い失敗です。確認せずに全件を移して、あとから項目のずれや文字の欠けに気づきます。消してやり直すことになり、その作業自体が事故のもとになります。必ず十件で試してください。

失敗2 両方に入力する期間を作る

安全のつもりで、しばらく両方に入力する運用にする院があります。これは必ず片方が抜けます。抜けたことに気づくのは、抜けた記録が必要になったときです。入力するのは新しい側だけ、旧い側は見るだけ。この線を引いてください。

失敗3 複製を取らずに作業する

書き出しや整形の作業中に、元の表を壊すことがあります。並べ替えを一列だけかけてしまって、行の対応が崩れるという事故が代表です。作業前に別名で複製を取り、作業が完全に終わるまで消さないでください。

失敗4 凍結日を伝えない

凍結日を決めても、伝わっていなければ意味がありません。受付に関わる全員に伝え、旧い表の見えるところに書いてください。伝えていないと、移したあとに旧い表へ入力され続け、その分が消えます。

失敗5 完璧な設計を目指す

移る前にすべての項目を決めきろうとすると、設計だけで数か月が過ぎます。その間、いまの困りごとは続いたままです。八つの項目で始めて、使いながら足す。この順番のほうが、結果として早く使える形になります。

移ったあとの一か月でやること

一週目にやること

移った直後の一週間は、新しい側だけに入力できているかを確かめる週です。旧い表に入力している人がいないか、入力の抜けが出ていないかを見ます。抜けが出るのは、たいてい電話で受けた分です。

あわせて、よく使う絞り込みを三つ作ってください。未対応だけ、今週届いた分だけ、自分の担当だけ。この三つがあれば日々の作業は賄えます。

二週目から三週目にやること

慣れてきたら、返信のひな形を移す先に置いてください。表計算の時代は、返信の文面が別の場所にありました。移った先で返信まで出せるなら、ひな形も同じ場所に置いたほうが手数が減ります。

この時期に、色分けと数式に埋まっていたルールを再現できているかも確かめます。棚卸しで書き出した「やりたいこと」の一覧を見ながら、ひとつずつ確かめてください。再現できないものがあれば、別のやり方で同じ目的を果たせないかを考えます。

一か月目にやること

一か月たったら、月次の集計をやってみます。届いた件数、返した件数、返すまでの時間、来院に進んだ件数、入り口ごとの内訳。表計算の時代には手で数えていたものが、絞り込みで出せるようになっているはずです。

ここまで確かめて困らなければ、旧い表を見る必要はなくなります。旧ファイルの扱いを決めて、移行は完了です。

移したあとに起きること

探し方が変わる

表計算では、目で追うか、並べ替えるかで探していました。移ると、絞り込みで探す形になります。この違いに慣れるまで、しばらく戸惑います。

慣れるための近道は、よく使う絞り込みを最初に作ってしまうことです。未対応だけ、今週届いた分だけ、自分の担当だけ。この三つがあれば、日々の作業はほとんど賄えます。すべてを一覧で見る癖から離れると、動きが軽くなります。

スタッフが旧い表に戻ろうとする

移った直後は、慣れた表に戻りたくなります。特に、急いでいるときに戻ります。戻る人が出るのは仕組みの問題ではなく、新しい側で同じことができると分かっていないことが原因であることがほとんどです。

移る前に、旧い表で毎日やっていた操作を三つ書き出して、新しい側で同じことをやってみせてください。三つできることが分かれば、戻る人はほとんどいなくなります。

印刷の習慣

整体院では、その日の予約や問い合わせを印刷して受付に置いている院があります。移ったあと、この印刷ができるかどうかで受付の抵抗が変わります。

印刷が必要なら、移る前に確かめてください。画面で見る運用に切り替えるなら、受付に置く端末を先に用意してください。習慣を変える話なので、道具だけ替えても回りません。

受付以外の人への影響も見ておく

院長が見る画面

表計算の時代は、院長が見たいときに受付のパソコンを開いていた院が多いはずです。移ると、それぞれの端末から見られるようになります。ここで決めておきたいのは、院長が何を見たいかです。

多くの場合、院長が見たいのは一件ごとの中身ではなく、未対応が何件あるか、今月何件届いたかといった全体の数です。この数が最初の画面に出ていれば、受付に聞く回数が減ります。逆に、細かい一覧しか出ない形だと、結局受付に聞くことになります。

交代したときの引き継ぎ

表計算をひとりで抱えている院では、その人が辞めるときにファイルごと引き継ぐことになります。ファイルの場所、色分けの意味、関数の仕掛け、入力の癖。すべてを口頭で伝えることになり、抜けます。

移った先では、項目と状態が画面に出ているので、引き継ぐのは運用の決めごとだけになります。誰が担当するか、いつ返すか、どこまで受け入れるか。これらは紙一枚に書けます。引き継ぎの重さは、移ることで確実に軽くなります。

見る人を分けられるか

少人数の院でも、見る人を分けられる形になっているかは確かめておいてください。整体院の記録には体の状態が書かれます。予約の調整だけをする人と、施術に入る人で、見る範囲を変えられるほうが説明が楽になります。

分ける必要があるかどうかの判断は、院の業態や記録の中身によって変わります。判断が必要な場面では、所管の窓口や専門家に確かめてください。少なくとも、分けられる形になっているかどうかは、選ぶ段階で見ておいて損はありません。

移る先を選ぶときに見るところ

表計算でできていたことの扱い

選ぶときに見るのは、機能の数ではありません。いま表計算でできていることが、移った先でもできるかどうかです。次の項目を、実際の画面で確かめてください。

・複数人が同時に見て、同時に入力できるか ・スマホから読めるか。列が多くても崩れないか ・自由に項目を足せるか。足した項目で絞り込めるか ・誰が担当かを一件ごとに持たせられるか ・返信したかどうかが一覧で分かるか ・期間で絞って件数を数えられるか ・書き出して外に持ち出せるか

最後の項目は見落とされがちですが、大切です。移ったあとに別の形へ移りたくなったとき、持ち出せなければ手詰まりになります。

送信されたあとを回せるか

表計算から移る動機の多くは、届いたあとの回し方にあります。届く場所と、返す場所と、記録する場所が別々になっているから、表計算に転記する作業が生まれています。ここを一本にできれば、転記そのものが要らなくなります。

だから選ぶときは、フォームが作れるかどうかではなく、送信されたあとの道具がそろっているかどうかを見てください。回答が表に落ちたあとをどう追うかという観点での違いはGoogleフォームとの比較にまとめてあります。自前のサイトに問い合わせフォームを置いて運用している場合はContact Form 7との比較のほうが状況が近くなります。表計算の入力を配布物で置き換えてきた場合はMicrosoft Formsとの比較も参考になります。

受け取ったあとに何ができるかの一覧はできることにあります。実際の画面の動きは動くところを見るから確かめられます。問い合わせを受けて返すまでの流れそのものは問い合わせの受付に整理があります。

費用と時間の見積もり

費用は、月々の金額だけで比べても判断できません。比べるべきなのは、いま転記と探し物にかかっている時間です。一日15分を転記に使っているなら、月に五時間ほどになります。その時間が浮くかどうかで判断してください。金額の考え方は料金に整理があります。

移す作業そのものにかかる時間は、棚卸しに一時間、データを整えるのに半日、試しの移行と確認に一時間、全件の移行に一時間ほどです。二日に分けて進めれば無理がありません。仕様は変わるので、確かめるときはその時点の公式の資料を見てください。移る前によく出る疑問はよくある質問にまとめてあります。

移る作業を止めないためのひとこと

移る作業で手が止まるのは、たいてい過去の記録の扱いを決めきれないときです。全部持っていくか、捨てるかの二択で考えると決まりません。使うものだけを持っていき、残りは置き場所と処分の日付を決める。この三段階に分ければ、どの記録も宙に浮かずに片が付きます。

もうひとつ、完璧に整えてから移そうとしないでください。表記のゆれを一件ずつ直していると、いつまでも移れません。電話番号と日付の二つだけを直して、残りは移ったあとに気づいたときに直す。これで実務は回ります。過去の記録は、これから使う分だけ整っていれば足ります。

移ったあとに残る、いちばん大きな変化

表計算から移った院で、いちばん大きく変わるのは探す時間です。名前を打ち込めば一件が出てくる状態と、行を目で追う状態では、一件あたりにかかる時間がまるで違います。一日に何度も探すのですから、この差が積み上がります。

次に変わるのが、返し忘れです。状態が持てるようになると、未対応が何件あるかがその場で分かります。返信したかどうかが表に残らないと、二重返信と返し忘れは必ず起きます。ここが解決するだけでも、移る価値はあります。

Q1. 整体院の問い合わせ管理を表計算から移すとき、過去の記録は全部移すべきですか?

全部移す必要はありません。これから使うのは、対応が終わっていないものと、いまも来院している人に関するものの二種類だけです。何年も前に一度だけ問い合わせて来院しなかった記録は、移した先で開かれることがありません。来院の有無が表に記録されているなら状態で切り、記録されていないなら直近1年分などの期間で切ってください。

Q2. 移す作業には、どれくらい時間がかかりますか?

棚卸しに一時間、データを整えるのに半日、試しの移行と確認に一時間、全件の移行に一時間ほどが目安です。二日に分けると無理がありません。いちばん時間を食うのは、月ごとや年ごとに分かれたシートをひとつにまとめる作業と、電話番号や日付の表記のゆれを直す作業です。ここを飛ばして移すと、移った先で検索と並べ替えが効かなくなります。

Q3. 移している最中に、新しい問い合わせが届いたらどうしますか?

作業を始める前に、旧い表への入力をやめる日を決めてください。凍結日を決めずに始めると、移している最中に行が増えて、どこまで移したか分からなくなります。凍結日は休診日の前日か、問い合わせの少ない曜日に置き、受付に関わる全員に伝えます。凍結後に届いたものは、新しい側にだけ入力してください。

Q4. 移したあと、旧いファイルはどうすればよいですか?

一か月ほどは見るだけの状態で残し、入力は新しい側だけにしてください。両方に入力すると、必ず片方が抜けます。一か月たって困らなければ、保管する場所と処分する日を決めます。放置すると誰かのパソコンに残り続け、古い連絡先に連絡してしまう事故につながります。消す範囲と時期の判断は、所管の窓口や専門家に確かめてください。

Q5. スタッフが慣れた表に戻ってしまいそうで心配です。

戻る原因は、新しい側で同じことができると分かっていないことがほとんどです。移る前に、いまの表で毎日やっている操作を三つ書き出して、新しい側で同じことをやってみせてください。あわせて、未対応だけ、今週届いた分だけ、自分の担当だけ、の三つの絞り込みを最初に作っておくと、日々の作業はそれで賄えます。印刷の習慣がある院は、印刷できるかも先に確かめてください。

ガイド一覧へ

整体院のエクセル管理から移る|過去の記録を持っていくときの決めごと|Halict