問い合わせの分析に手を付けようとすると、最初につまずくのは「何を数えればよいのか」です。件数は数えている。前の月より増えたか減ったかも分かる。それでも、次に何を変えればよいのかが出てきません。
原因は、数え方が足りないからではなく、数える目的が決まっていないことにあります。問い合わせを減らしたいのか、返す速さを上げたいのか、商品や手続きの欠陥を見つけたいのか。目的が違えば、集める項目も分類の軸も変わります。この記事では、目的の決め方から記録の集め方、分類の軸、見る指標、手順までを順番に並べます。窓口をひとりで回している場合にどこまでやれば足りるのかも扱います。
問い合わせ分析とは何をすることか
言葉の中身を先にそろえておきます。
問い合わせ分析とは、顧客から寄せられた問い合わせの内容を収集・分類し、傾向やパターンを把握する取り組みです。問い合わせの種類、頻度、対応時間などのデータを分析することで、顧客ニーズの把握や対応品質の改善、業務効率化につながる施策を導き出せます。 出典: mediaseries.medialink-ml.co.jp
ここで大事なのは、分析は3つの作業に分かれているという点です。集める、分類する、数える。この3つのうち、いちばん手がかかるのは集めることで、いちばん効き目が出るのは分類です。多くの現場では、集めるところで力尽きて、分類まで届いていません。
分析の対象になるのは、届いた内容そのものだけではありません。誰から、どの経路で、いつ届いたか。どれくらいで返せたか。一度で済んだか、往復したか。これらはすべて、届いた文面とは別の情報です。文面だけを読んで傾向をつかもうとすると、印象の話になります。印象は、いちばん強く記憶に残った1件に引っ張られます。
もう1つ、分析の成果は「気づき」ではなく「変える場所」です。傾向が分かった、で終わると、翌月も同じ問い合わせが届きます。分析の出口は、案内文を直す、フォームの項目を足す、手続きを簡単にする、FAQを書く、のいずれかになります。出口を先に想定しておくと、集める項目が絞れます。
件数だけを数えても減らない理由
問い合わせの件数は、いちばん取りやすい数字です。だから最初にこれを見ます。ただし、件数単独では判断を誤ります。
理由は3つあります。1つ目は、分母が動くことです。利用者が増えれば問い合わせも増えます。件数が前の月より20%増えていても、利用者が3割増えていれば、1人あたりでは減っています。逆に件数が横ばいでも、利用者が減っていれば悪化しています。
2つ目は、性質の違うものが混ざることです。「申込書はどこに出しますか」という手順の質問と、「請求の金額が違います」という不具合の申告は、同じ1件として数えられます。前者はFAQで消えますが、後者は仕組みを直さないと消えません。混ぜて数えた合計が動いても、どちらが動いたのか分かりません。
3つ目は、減ったことが良いとは限らないことです。問い合わせのしにくい窓口にすれば件数は減ります。ただし、そのぶん黙って離れた人が増えます。件数の減少は、改善の結果でもあり、諦めの結果でもあります。どちらかを見分けるには、件数以外の数字が必要になります。
だから、件数は「割合」と「時間」と一緒に見ます。全体のうち手順の質問が占める割合、1件に答えるまでの時間、一度で終わった割合。この3つを添えると、件数の動きが何を意味するかが読めるようになります。
何のために数えるのかを先に決める
目的を1つに絞ると、あとの作業が軽くなります。よくある目的は4つです。
1つ目は、問い合わせの総量を減らすこと。このときは、内容で分類して件数の多い順に並べるだけで足ります。上位の数種類を案内文やFAQで消すのが最短の道です。
2つ目は、返すまでの時間を短くすること。このときは、内容ではなく手間で分類します。誰が答えても同じものと、判断が必要なものに分けて、前者を先に短くします。
3つ目は、商品や手続きの欠陥を見つけること。このときは、件数の多さより、深刻さと再発の有無を見ます。1件しか来ていない申告でも、同じ原因が続いているなら優先度は高くなります。
4つ目は、人の配置を決めること。曜日と時間帯ごとの件数を数えて、山の位置を出します。この目的では、内容の分類はほとんど要りません。
4つを同時にやろうとすると、分類の軸が増えて記録が続かなくなります。最初の3カ月は1つに絞るのが現実的です。目的が決まると、集める項目も自動的に決まります。総量を減らすなら内容と件数、時間を短くするなら受付の時刻と返信の時刻、欠陥を見つけるなら内容と経緯の記録です。
記録をどこから集めるか
集める段階の難しさは、経路ごとに記録の残り方が違うことにあります。経路の特徴を押さえておくと、どこを先に整えるべきかが決まります。
メールは、文面がそのまま残るので、内容の分析には向いています。一方、いつ返したかは記録として取りにくく、対応時間を測るには送信済みの履歴と突き合わせる作業が要ります。担当が複数いる場合、誰が返したのかも追いにくくなります。
電話は、記録がもっとも残りません。メモを取らなければ、届いたこと自体が消えます。件数だけでも数えると決めて、通話のあとに1行書く運用にするのが現実的です。内容を詳しく残すのは負荷が高いので、分類の記号だけを付ける形にします。
フォームは、記録の面ではもっとも扱いやすい経路です。項目が決まっているので、集計に耐える形で最初から残ります。ただし、選択肢の作り方で分析の質が決まります。「その他」に半分が入るような選択肢だと、分類の役に立ちません。
チャットは、やり取りが残る一方、1件の区切りが曖昧になります。どこからどこまでを1件と数えるかを先に決めておかないと、件数がぶれます。
集め方として現実的なのは、全経路を一度に整えようとせず、いちばん件数の多い経路だけを先に整える形です。そこで分類の軸が固まってから、他の経路に広げます。
届いた声の種類を見分ける
問い合わせとして届くものは、性質がはっきり違う4種類に分かれます。混ぜて数えると、どれも中途半端な打ち手になります。
1つ目は、質問です。手順、仕様、期限、料金。答えがすでにこちら側にあり、伝え方だけが問題になっているもの。件数の上位を占めるのはたいていここで、案内文とFAQで確実に減ります。分析の初回は、ここを取り出すだけで成果が出ます。
2つ目は、不具合の申告です。動かない、金額が違う、届いていない。こちら側に直す対象があり、伝え方では減りません。件数が少なくても、放置すると同じ申告が続くので、件数の順位とは別に扱います。同じ原因の申告が2件以上あれば、それは偶然ではありません。
3つ目は、要望です。この機能が欲しい、この手続きを簡単にしてほしい。すぐ手を打てるものは少ないですが、記録しておく価値がもっとも高い種類です。要望は件数で優先度を決めず、同じことを別の言い方で言っている人が何人いるかで見ます。言い方が違うだけの要望は、集計では別物として散らばります。
4つ目は、苦情です。対応が遅い、言われた内容が違う。ここには、こちら側の手順の問題が直接映っています。感情の強さに引っ張られやすい種類ですが、書かれている事実の部分だけを取り出すと、直す場所がはっきりします。
この4種類は、それぞれ出口が違います。質問は伝え方、不具合は仕組み、要望は計画、苦情は手順です。分類の1つ目の軸をこの4種類にしておくと、集計したあとの行き先が自動的に決まります。細かい分類は、この4種類の中で足していきます。
分類の軸は3つで足りる
分類は細かくするほど良いと思われがちですが、逆です。細かい分類は記録が続かず、集計しても件数が散って傾向が出ません。軸は3つに絞ります。
1つ目の軸は、内容です。手順を聞いているのか、仕様を聞いているのか、不具合を申告しているのか、要望を言っているのか。分け方は事業によって変わりますが、7つを超えないところで止めます。7つを超えると、記録する人が毎回迷い、迷った分は「その他」に入ります。
2つ目の軸は、原因の置き場所です。案内が足りなかったのか、画面が分かりにくかったのか、手続きそのものが複雑なのか、こちら側の間違いなのか。この軸は、直す場所を決めるために使います。内容の軸だけでは、同じ「手順の質問」が案内の不足なのか手続きの複雑さなのか判別できません。
3つ目の軸は、手間です。1往復で終わったか、何度も往復したか、社内の確認が要ったか。この軸は、時間を短くする目的に直接つながります。件数が少なくても手間の大きいものが、担当の時間をいちばん食っています。
記録のしかたは、記号1文字ずつで足ります。内容はA、原因は2、手間は大、のように書いておけば、あとで並べ替えられます。文章で書き残すのは、あとから読み返す価値のあるものだけに絞ります。全件に文章を書く運用は、忙しい週に止まります。
見るべき指標
指標は、多く並べても見なくなります。目的に合わせて3つから5つに絞ります。
1件あたりの対応時間は、担当の負荷をもっとも素直に表します。受け付けてから返し終えるまでの時間ではなく、実際に手を動かした時間で測ります。前者は待ち時間を含むので、負荷の指標にはなりません。
初回の応答までの時間は、相手の体感を決めます。解決までの時間が長くても、最初の返事が早ければ不満は出にくくなります。逆に、最初の反応が遅いと、催促の問い合わせが追加で発生します。催促は、こちらが作った問い合わせです。
一度で終わった割合は、回答の質を表します。往復が増えるのは、最初の回答が足りていないか、聞き返す必要のある情報が最初に集まっていないかのどちらかです。後者なら、受付の項目を足すだけで改善します。
同じ人から同じ内容が繰り返される割合は、回答が理解されているかを表します。ここが高い場合、書いた文章が長すぎるか、専門の言葉が多すぎます。
自分で答えを見つけた人の割合は、直接は測れません。代わりに、FAQの閲覧数と、検索されたのに該当が出なかった語を見ます。後者は、次に書くべき内容をそのまま示します。
指標は、絶対値より変化の向きで見ます。他社の数字と比べても、事業の性質が違えば意味がありません。自分の前の月と比べるのが唯一の使える比較です。
曜日と時間帯で見ると分かること
内容の分析とは別に、届いた時刻を並べるだけで分かることがあります。集計の手間がもっとも小さく、効き目がすぐ出る部分です。
まず、曜日の山です。多くの窓口では月曜と、締切の前日に集中します。山の位置が分かれば、その日に別の作業を入れないという判断ができます。配置を変える余地が無い一人の窓口でも、山の日に返信の下書きをまとめて処理する形にすると、体感がかなり変わります。
次に、時間帯です。営業時間の終わり際に届いた問い合わせは、翌日まで返せません。この時間帯に届く件数が多い場合、受付の画面に返信の目安を書いておくだけで催促が減ります。催促は、こちらの遅れが作った問い合わせです。
3つ目に、締切との距離です。申し込みや応募の受付では、締切の直前に問い合わせが集中します。この期間に届く内容は、たいてい種類が限られています。締切前に集まる質問の上位5件を案内文に先に書いておくと、当日の対応時間がまとまって空きます。
4つ目に、公開や告知との関係です。案内を出した直後に問い合わせが増えるのは自然ですが、特定の案内のあとだけ極端に増える場合、その案内の書き方に原因があります。案内を出した日付を記録に残しておくと、この対応が取れます。
時刻の分析は、内容の分類を待たずに始められます。記録として残っているのは受け付けた時刻だけで足りるので、いまある記録からすぐ出せます。
分析の進め方:4つのステップ
手順に落とすと、次の4つになります。期間は最初の1周が1カ月を目安にします。
ステップ1:期間を決めて全件を並べる
対象の期間を決めて、届いた問い合わせを1件1行で並べます。抜けがあると割合が崩れるので、期間は短くても構いませんが、その期間の全件を入れます。繁忙期と閑散期では内容の構成が変わるため、両方を見るまでは結論を出しません。
ステップ2:3つの軸で記号を付ける
内容、原因、手間の3軸で記号を付けます。迷ったものは保留の記号にして、あとでまとめて見ます。保留が全体の2割を超えたら、軸の切り方が事業に合っていません。切り直します。
ステップ3:件数と時間を集計する
内容ごとの件数、原因ごとの件数、手間ごとの合計時間を出します。ここで初めて、どこに手を打つべきかが見えます。件数の多い内容と、時間を食っている手間は、たいてい一致しません。両方を並べて、どちらから手を付けるかを決めます。
ステップ4:1つだけ変えて、次の期間と比べる
見つかった場所のうち、1つだけを変えます。同時に複数変えると、効いたものが分かりません。案内文を直したのか、受付の項目を足したのか、FAQを書いたのかを記録して、次の期間の数字と比べます。
この4ステップを回すたびに、分類の軸が事業に合ってきます。1周目の軸は、たいてい合いません。
分析の結果から何を変えるか
分析の出口は、ほぼ4通りです。
案内文を直す。これがいちばん安く、効き目も早く出ます。手順の質問が上位にあるとき、案内のどこにも書いていないか、書いてあるが見つからない位置にあります。書いてあるかどうかではなく、相手が使う言葉で書いてあるかを見ます。
受付の項目を足す。往復が多いとき、聞き返している内容が決まっているはずです。それを最初に聞く項目にすれば、往復は1回減ります。ただし、項目を増やすと回答者の手間が増え、途中でやめる人が出ます。増やすのは、実際に毎回聞き返している項目だけに絞ります。
FAQを書く。件数の多い内容を、そのままの言葉で書きます。届いた質問の文言を写して見出しにするのが要点です。答える側の言葉で見出しを書くと、検索で見つかりません。
手続きそのものを簡単にする。原因の軸で「手続きが複雑」に多く集まった場合、案内やFAQでは減りません。段階を減らす、承認を1つにする、書類を1枚にする。ここに手が入ると、問い合わせは大きく減ります。
問い合わせ分析を効率化させるなら、問い合わせ管理システムを導入するのもおすすめです。 出典: maildealer.jp
道具を入れる判断は、この4つを試したあとで構いません。記録の取り方が決まっていない状態で道具を入れると、集まるのは分類されていない文面の山になります。
ひとりで回しているときの現実的な範囲
窓口を一人で担っている場合、上の手順を全部やる時間は取れません。削る場所を先に決めておきます。
残すのは2つです。届いた問い合わせを1行で残すこと、内容の軸だけで記号を付けること。この2つだけでも、上位の数種類は見えます。上位が見えれば、案内文とFAQで手を打てます。
削ってよいのは、時間の測定と、原因の軸です。対応時間を正確に測る作業は負荷が高く、しかも一人で回している間は配置を変える余地がありません。原因の軸は、内容の上位が固まってから足します。
記録のタイミングは、返信を書いた直後に固定します。あとでまとめて入力する形は、忙しい週に飛びます。返信の文章を書いたついでに記号1つを付けるだけなら、1件10秒で終わります。
集計は月に一度で足ります。週ごとに見ると、件数が少なすぎて偶然の揺れに振り回されます。送信されたあとの道具がそろっている受付なら、記号を付ける作業自体が受付の画面の中で済みます。
記録を止めないための形
分析が続かない最大の理由は、記録が止まることです。止まらない形には共通点があります。
1つ目は、記録する場所が1か所であることです。メールの受信箱とチャットと電話メモに分かれていると、集計のたびに集める作業が発生します。この集める作業が、月に一度の集計を飛ばす理由になります。届いた経路が違っても、記録は同じ場所に寄せます。
2つ目は、記録する項目が少ないことです。1件につき、分類の記号と日付だけで足ります。担当や状況は、受付の仕組みの側に残っていれば、あとから突き合わせられます。手で書く項目を増やすと、忙しい週から先に飛びます。
3つ目は、書くタイミングが作業の流れの中にあることです。返信を書いた直後に記号を付ける形にすると、別の作業として時間を取らずに済みます。逆に、週末にまとめて入力する形は、2週目か3週目で止まります。
4つ目は、集計が自動で出ることです。毎回手で数える形だと、数える作業が面倒になって間隔が開きます。表計算ソフトでも、分類の記号ごとに件数を出す式を先に入れておけば、記号を足すだけで数字が更新されます。
5つ目は、見る人が決まっていることです。集計を誰も見ないと、記録する意味が薄れます。一人で回している場合でも、月の初めに前月の数字を見る時間を15分だけ固定しておくと、記録が習慣として残ります。
つまずきやすいところ
分析が途中で止まる理由には、はっきりした型があります。
最初の型は、分類を細かくしすぎたものです。30種類の分類を作ると、記録する人が毎回迷い、集計しても各分類が数件ずつになって傾向が出ません。
次の型は、記録と集計を別の人がやっているものです。集計する人が分類の意味を知らないと、記号の付け方のばらつきに気づけません。一人で回している場合は起きませんが、担当が増えたときに出ます。
3つ目の型は、結論を先に持っているものです。「たぶん料金の質問が多い」と思って始めると、料金に関する記録だけが丁寧になります。分類は、集める前に決めておいて、集めている間は変えません。
4つ目の型は、印象の強い1件で全体を判断するものです。厳しい指摘が入った1件は記憶に残りますが、件数としては1件です。1件の指摘に対応することは正しくても、それを全体の傾向として扱うと、優先順位が崩れます。
5つ目の型は、変えたことを記録していないものです。案内文をいつ直したかが残っていないと、数字が動いた理由が分かりません。変えた日付と内容を、数字と同じ場所に書いておきます。
表計算ソフトで組むときの列の決め方
専用の道具を入れる前に、表計算ソフトで1周してみるのが確実な進め方です。列の決め方には、後から困らない形があります。
必要な列は7つです。受け付けた日時、経路、相手を見分ける記号、内容の分類、原因の分類、手間の分類、返し終えた日時。これだけで、件数と割合と時間のすべてが出せます。
相手を見分ける記号は、氏名やメールアドレスをそのまま置かない形にします。同じ人から繰り返し届いているかを数えるために必要な情報ですが、集計の表に個人の情報を広げると、共有の範囲を管理する手間が増えます。受付の側にある番号を写すだけで足ります。
日時は、日付と時刻を分けずに1列に入れます。分けると、曜日と時間帯を出すときに式が増えます。表計算ソフトの側で曜日を取り出せるので、入力は1列で構いません。
分類の列は、記号を直接打たず、選ぶ形にします。打ち込みにすると、表記のゆれで別の分類として集計されます。「手順」と「手順質問」が別の行に並ぶと、件数が分かれて上位が見えなくなります。
避けたほうがよい列は2つあります。1つは、自由に書く備考の列です。書き始めると1件に数分かかり、記録が止まります。詳しい経緯は、元のメールやフォームの回答の側に残っているので、集計の表に写す必要はありません。もう1つは、対応の内容を書く列です。ここも元の返信に残っています。
集計は、別のシートに分類ごとの件数を出す式を先に入れておきます。記録を足すだけで数字が更新される形にしておけば、月の初めに見る作業が数分で済みます。 集計の間隔は月に一度で足りますが、記録を見る目的は2つに分けておきます。1つは、上位の内容が前の月から入れ替わったかどうか。入れ替わっていれば、前の月に打った手が効いた合図です。もう1つは、保留の記号が増えていないかどうか。保留が増えているときは、事業の側で新しい種類の問い合わせが立ち上がっています。新しい種類は、最初は件数が少ないので上位には出ません。保留の中身を月に一度読むことで、上位に上がる前に手が打てます。この2つを見る習慣だけで、分析は施策につながる形になります。
受付の記録そのものを整える
分析の手間の大半は、集める段階にあります。逆に言えば、受け付けた時点で分類に耐える形で残っていれば、分析はほとんど集計だけになります。ここは道具の設計の話です。
無料で使えるフォームは、集めるところまでは十分に強く、届いたあとに担当と状況を持たせる部分は手元の表で補う形になります。この線引きを整理したGoogleフォームとの比較は、いまの手作業のどこが詰まっているかを見分ける材料になります。社内の仕組みでそろえたい場合はMicrosoft Formsとの比較のほうが近い話です。
受付の性質によって、記録として残すべき項目は変わります。随時届く問い合わせは、返信したかどうかと担当が誰かが残ることが先です。問い合わせの受付には、窓口を1つにまとめるときの考え方がまとまっています。修理や保守のように経緯を追う必要があるものは、修理・サポートの受付のほうが近い形になります。
届いたあとに何ができると集計が楽になるかは、できることに一覧があります。返信の記録と状況が同じ画面に残る形なら、対応時間と往復の回数を別に測る作業が不要になります。画面の動きを先に見たい場合は動くところを見るが早く、費用の考え方を確かめるなら料金を見てから決める順番になります。運用の細かい疑問はよくある質問に集めてあります。
問い合わせの記録には、氏名や連絡先のような個人の情報が必ず含まれます。保管の期間と削除の決め方は、分析を始める前に整えておきます。考え方の出発点としては個人情報保護委員会の公開資料が参照先になります。法律の解釈が絡む判断は、所管の窓口や専門家に確かめてください。
問い合わせの分析を1行にすると、目的を1つに決め、全件を1行で残し、3つの軸で記号を付け、集計して1つだけ変える、になります。数える項目を増やすより、この1周を止めずに回すほうが結果が出ます。
Q1. 問い合わせの分析は何件くらいから意味がありますか?
月に数十件あれば傾向は出ます。件数が少ないうちは、割合より内容そのものを読んだほうが早く手が打てます。月に10件を切る規模なら、集計せずに全件を読み、繰り返し聞かれている内容だけを案内文に足す形で足ります。分類の記号を付け始めるのは、全件を読み切れなくなってからで構いません。
Q2. 分類の項目はいくつ作ればよいですか?
内容の軸で7つまでに抑えます。それ以上に増やすと記録する人が毎回迷い、迷った分が「その他」に入って傾向が出なくなります。足りないと感じたときは、項目を増やすのではなく、原因の軸と手間の軸を別に足します。軸を分けたほうが、直す場所が決まりやすくなります。
Q3. 電話の問い合わせはどう記録すればよいですか?
通話のあとに1行だけ残す運用にします。内容を詳しく書くのは負荷が高いので、分類の記号と、相手の言葉を短く1つだけ写します。全件を詳しく残そうとすると忙しい週に止まるため、件数と分類だけは必ず残すと決めておくほうが続きます。
Q4. 分析用のツールは最初から必要ですか?
必要ありません。記録の取り方と分類の軸が決まっていない状態で道具を入れると、分類されていない文面が溜まるだけになります。表計算ソフトで1カ月ぶんを並べ、4つのステップを1周してから、続けるのが重い部分だけを道具に任せる順番が確実です。
