「フォーム スパム 対策」で調べている人の多くは、フォームが壊れて困っているわけではありません。フォームはきちんと動いていて、送信もちゃんと届いている。困っているのは、届いたものの中に本物と機械が送ったものが混ざっていて、受信箱を開くたびに仕分けから始めなければならないことのほうです。そして対策を強くすればするほど、今度は本物の応募者や問い合わせ主が入力の途中で引っかかって、送れなくなります。この記事では、代表的な5種類の対策について、どこまで止まるのかと、答える側と送る側にどんな負担が乗るのかを並べて整理します。決めたいのは「一番強い対策はどれか」ではなく、「自分の窓口で許される負担はどこまでか」です。
フォームへのいたずら送信は、フォームの不具合ではない
フォームを公開してしばらくすると、意味の通らない日本語に短縮URLだけが付いた送信や、英語の宣伝文、名前欄に文字化けした記号が入った送信が届くようになります。これは設定を間違えたから起きているのではありません。公開されたページにあるフォームは、機械が自動でめぐって送信を試みる対象になります。設置直後は静かで、数か月してから急に増えるという話をよく聞きますが、これはフォームのURLが機械に見つかるまでに時間がかかるためで、こちらの設定が途中で変わったわけではありません。
送りつけの目的も1種類ではありません。多いのは、リンクを踏ませることを狙って本文にURLを並べてくるもの、フォームの自動返信を踏み台にして第三者へメールを送らせようとするもの、そしてメールアドレスや電話番号が有効かどうかを確かめるためだけに送ってくるものです。どれも「読ませて反応させたい」という意図では動いておらず、送信ボタンが押せる限り機械的に繰り返されます。だから、丁寧に断りの返信を書いても止まりません。
送られてくるものは大きく3種類に分かれる
受ける側から見ると、対処の仕方が変わるので、届いたものを3つに分けて考えると整理が早くなります。
1つ目は、機械が完全に自動で送っているものです。入力欄の名前を機械が読み取って、それらしい値を詰めて送ってきます。文章として成立していないことが多く、URLが2本も3本も並びます。この種類は、後で説明する見えない罠と送信の間隔でかなりの割合が落ちます。
2つ目は、人が手で送っている営業や勧誘です。「貴社のサイトを拝見しました」で始まり、本文としては成立しています。機械向けの対策では止まりません。止めるなら内容の判定か、フォームの前に「営業のご連絡はお受けしていません」と明記して、受け取ったあとの仕分けで処理する形になります。
3つ目は、いたずら目的の連続送信です。同じ内容が短い間に何十件も届きます。件数が多いので目立ちますが、送信の間隔の制限が効きやすい種類でもあります。1つ目と3つ目は仕組みで減らせて、2つ目は仕組みでは減らしにくい。この区別を先にしておかないと、効かない対策を強くして本物の送信者だけを苦しめることになります。
受付をひとりで回している窓口ほど、件数以上に痛む
実害は件数そのものよりも、その先の作業に出ます。1日に届く通知が20件で、そのうち本物が2件だとしたら、残りの18件を開いて中身を確かめる時間が毎日発生します。1件あたり20秒で済んだとしても、1日6分、1か月で3時間近くが仕分けに消えます。
もっと厄介なのは、慣れによる取りこぼしです。毎日18件のいたずら送信を流し読みしていると、判断が雑になります。件名だけを見て消す運用に切り替わったところに、素っ気ない件名の本物が混ざって消える。これが起きても、送った側から「返信が来ないのですが」と催促されるまで気づけません。現場では、消す作業そのものよりこの取りこぼしが怖くて手作業をやめられない、という悩みのほうが根深いと言われています。
そして受付をひとりで回している窓口では、もう1つの負担が乗ります。「これは本物かもしれない」と迷った送信の判断を、相談する相手がいないことです。誰かに聞ける体制であれば5秒で終わる判断に、ひとりだと数分かかる。対策を選ぶときは、止まる件数だけでなく、この「迷う件数がどれだけ減るか」も一緒に見てください。
対策を選ぶ前に決めておく2つのこと
対策の種類を比べる前に、決めておくと選択が一気に楽になることが2つあります。ここを飛ばして手段から入ると、強い対策を積み上げた結果、本物の応募が減っていたことに数か月気づけない、という状態になりがちです。
止めたいのはどれか、通したいのは誰か
まず、いま届いているものを1週間だけ数えてください。総件数、そのうち本物の件数、そして本物の中で最も入力に時間がかかっていそうな人がどういう人かを書き出します。この3つが分かると、どこまでの負担なら乗せてよいかが決まります。
たとえば、届く50件のうち本物が45件で、いたずらが5件しかないなら、強い認証を入れる意味はほとんどありません。5件を手で消すほうが、45人に余計な操作をさせるより安く済みます。逆に、届く50件のうち本物が2件なら、多少の負担を乗せてでも仕組みで落とす価値があります。
通したい人が誰かも重要です。採用の応募をスマートフォンから送る人、高齢の利用者が施設の利用を申請する場面、視覚に障害のある人が問い合わせをする場面では、画像を読ませる認証は大きな壁になります。「うちの読者はITに慣れているから大丈夫」という感覚で決めず、実際に届いた本物の送信を見て、どんな環境から来ているかを確認してください。
弾いた送信を確認できる場所を先に作る
見落とされがちですが、これが一番大事です。スパム対策はすべて「送信を止める仕組み」です。止めた送信の中身は、保存する仕組みが無ければどこにも残りません。誤って本物を止めてしまっても、何を止めたのかを後から確認する手立てが無い状態になります。
対策を入れる前に、次の3つを用意しておいてください。1つ目は、弾いた送信を一覧で見られる場所です。少なくとも1週間分は残るようにします。2つ目は、そこを見る担当と頻度です。週に1回でも構いませんが、「誰もいつ見るか決めていない」状態だけは避けます。3つ目は、誤って弾いていたことが分かったときに、その人へ連絡する手順です。
送信されたあとの道具がそろっている状態かどうかで、この準備の重さが変わります。フォームの送信内容がメールでしか残らない作りだと、弾いた分は通知メールすら飛ばないので、確認のしようがありません。届いた内容が一覧として残り、状態を「対応済み」「保留」などで管理でき、担当を割り当てられる作りであれば、弾いた分を別のフォルダに入れておくだけで確認できます。
なお、届いた内容を保存する側に回ると、扱う情報の性質が変わります。氏名や連絡先を含むデータをどこに、どれだけの期間、誰が見られる形で置くのかを先に決めてください。個人情報の保護に関する法律は、事業者に安全管理のための措置を求めています。
個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。 出典: www.ppc.go.jp
保存期間や削除の方針、閲覧できる人の範囲は、対策を入れるのと同じタイミングで決めておくのが安全です。具体的にどこまでが必要かの判断は、所管の窓口や専門家に確かめてください。
対策1 見えない罠を仕掛ける
人には見えず、機械にだけ見える入力欄をフォームに置いておき、そこに何か入力された送信を弾く方法です。ハニーポットと呼ばれます。表示を消した入力欄を1つ足して、そこが空でなければ送信を無効にする、という単純な仕組みで動きます。
止まる度合いは、機械が自動で送ってくる種類に対しては高いほうです。入力欄の名前を読み取って手当たり次第に値を詰めるタイプの機械は、見えない欄にも素直に入力します。一方で、そのフォームを狙って作られた送信や、人が手で送ってくる営業には効きません。
答える側の負担は、5種類の中で最も軽い部類です。設定したあとは何も操作が増えません。送る側の負担はゼロで、入力する人はこの仕組みが動いていることに気づきません。ここが最大の利点です。応募者に余計な操作をさせずに、自動送信のかなりの割合を落とせます。
注意点が2つあります。1つは、入力欄を消すやり方です。画面から消すつもりで、読み上げソフトからは読める状態のまま残っていると、視覚に障害のある人が誤ってその欄に入力してしまい、送信が弾かれます。入力欄には「入力しないでください」という説明を持たせたうえで、支援技術からも読み飛ばされる指定を入れておく必要があります。もう1つは、ブラウザの自動入力です。氏名やメールアドレスを自動で埋める機能が、見えない欄にも値を入れてしまうことがあります。欄の名前を氏名やメールを連想させないものにして、自動入力の対象から外す指定を添えます。
この2つを外すと、「本物の応募者だけが弾かれる罠」になります。導入したあとは、弾いた送信の一覧を最初の1週間だけでも見て、明らかに本物と分かるものが混ざっていないか確認してください。
対策2 画像認証やチェックボックス型の認証を入れる
歪んだ文字を読ませたり、「ロボットではありません」というチェックを押させたり、写真の中から特定の対象を選ばせたりする方式です。近年は、利用者に操作をさせず、ブラウザの挙動から人かどうかを判断する方式も広く使われています。
止まる度合いは高いほうです。自動送信に対しては最も強く効きます。ただし「完全に止まる」とは言えません。認証を突破する仕組みは以前から存在し、狙われた場合はすり抜けます。強い代わりに絶対ではない、という位置づけで考えてください。
問題は送る側の負担です。文字を読ませる方式は、読み取れずに何度もやり直す人が出ます。写真を選ばせる方式は、判定に時間がかかるうえ、通信が遅い環境では画像が表示されるまで待たされます。応募や申し込みの最後の一歩でこれが出ると、そこでやめる人が確実に出ます。とくに、スマートフォンから片手で入力している応募者、通信環境が不安定な場所から送っている人、支援技術を使っている人には大きな壁になります。
答える側の負担は、日々の運用としては軽いほうです。設定してしまえば毎日の操作は増えません。ただし、外部のサービスに依存するため、そのサービス側の障害でフォームが送れなくなることがあります。「送信できないのですが」という連絡が来たとき、原因が認証の側にあることを疑える体制が要ります。
もう1つ、外部の認証サービスを使うと、送信者の環境の情報がその事業者に渡ります。誰の情報がどこへ渡るのかを、フォームの案内やプライバシーポリシーに書いておくのが無難です。
比較的負担が軽いのは、操作を求めずに背後で判定する方式です。利用者から見ると何も増えないため、文字を読ませる方式と比べて途中でやめる人がぐっと減ります。まず試すなら、この操作を求めない方式から検討してください。文字や画像を読ませる方式は、それでも止まらなかったときの最後の手段に置くのが、答える人にも送る人にも優しい順番です。
対策3 送信の間隔と時間で見る
同じ送信元から短い間に何度も送られてきたときに受け付けない、あるいは、フォームが表示されてから送信までの秒数が短すぎる送信を弾く方法です。前者は連続送信の制限、後者は入力時間による判定です。
入力時間による判定は、考え方がとても単純です。人がフォームを開いて、氏名とメールと本文を入力して送信するまでには、どんなに速くても10秒はかかります。項目が多いフォームなら1分以上が普通です。2秒で送信されたものは、人が入力したとは考えにくい。この差だけで、自動送信の一部が落ちます。
止まる度合いは中くらいです。真面目に時間を置いてくる機械には効きません。ただし、答える側にも送る側にも負担がほぼ乗らないのが利点です。閾値さえ間違えなければ、利用者は仕組みの存在に気づきません。
閾値の決め方には注意が要ります。しきい値を長く取りすぎると、あらかじめ文面を用意しておいて貼り付ける人が弾かれます。応募書類の志望動機を別のところで書いてから貼り付ける応募者は珍しくありません。3秒程度を下限にしておけば、貼り付ける人を巻き込まずに、明らかに機械的な送信だけを落とせます。
連続送信の制限のほうは、閾値を厳しくしすぎると本物を巻き込みます。同じ会社の複数の社員が、同じ回線から順に申し込む場面を考えてください。会社や学校、自治体の建物からの送信は、外から見ると同じ送信元に見えることがあります。イベントの申し込みや講座の受講申し込みで、1つの組織からまとめて申し込みが来る運用があるなら、この制限は緩めに設定するか、使わないほうが安全です。
制限に引っかかった人には、何が起きたのかが分かる表示を出してください。「送信できませんでした」だけだと、その人はフォームが壊れていると判断して、電話をかけてくるか、あきらめます。「短い時間に複数回送信されたため受け付けられませんでした。数分おいてからお試しください」と書いてあれば、その人は自分で解決できます。答える人の手間を増やさないというのは、こういう細かいところの積み重ねです。
対策4 内容で判定する
送信された本文や氏名、メールアドレスの中身を見て、条件に合うものを弾く方法です。特定の語を含むものを弾く禁止リスト、本文中のURLの本数で判定するもの、日本語の窓口なのに本文が全部英字であるものを弾くもの、そして外部の判定サービスに内容を渡して評価してもらうものがあります。
止まる度合いは、条件の作り方によって大きく変わります。うまく作れば高く、雑に作ると本物を巻き込みます。他の4種類と違って、答える側の負担が継続的に発生するのが最大の特徴です。禁止する語のリストは、放っておけば必ず古くなります。送りつけの文面は変わるので、月に一度でも見直す担当を決めないと、入れた当初だけ効いて、半年後には素通りするようになります。
もう1つ、内容による判定には固有の危うさがあります。禁止語に一般的な単語を入れてしまうと、本物が弾かれます。たとえば「無料」「相談」「投資」「副業」といった語は、いたずら送信にも本物の問い合わせにも出てきます。修理やサポートの受付で「保証」を弾いてしまえば、本当に困っている利用者の連絡が消えます。禁止語は、単語ではなく組み合わせや、明らかに日本語の窓口にそぐわない文字種で判定するほうが、巻き込みが少なくて済みます。
URLの本数で判定するのは、比較的巻き込みが少ない条件です。問い合わせや応募の本文にURLが3本以上並ぶことは、通常の運用ではほとんどありません。ただし、実績を紹介するためにURLを複数貼る応募者はいるので、弾かずに「要確認」の印を付けるだけにしておく、という中間の運用も考えられます。
外部の判定サービスに任せる方式は、リストの手入れが要らない代わりに、送信内容がその事業者へ渡ります。どこまでのデータが渡るのかを確かめたうえで、判定の結果を確認できる場所を必ず用意してください。判定の理由が分からないまま送信が止まる状態は、答える人にとって一番つらい形です。
内容による判定は、弾くのではなく「印を付ける」使い方が相性の良い対策です。条件に合ったものを別の場所に振り分けて、あとでまとめて確認する。この形なら、条件を間違えても取りこぼしになりません。
対策5 送信元を制限する
送信元のIPアドレスや国、参照元のページ、あるいはメールアドレスのドメインで、受け付ける範囲を絞る方法です。フォーム自体をログインしている人だけに見せる方式も、広い意味ではここに入ります。
止まる度合いは、絞り方によっては最も高くなります。国内向けの窓口で海外からの送信をまとめて弾けば、届く件数が一気に落ちることがあります。社内向けの申請フォームを組織のアカウントを持つ人だけに限定すれば、外部からの送信はゼロになります。
その代わり、巻き込みの危険も最も大きい対策です。国で絞ると、海外に住んでいる日本人からの応募や、出張中の担当者からの問い合わせが届かなくなります。しかもこの取りこぼしは、送った側から連絡が来ない限り気づけません。使い捨てのメールアドレスのドメインを弾く運用も、リストが古いと本物のアドレスを巻き込みます。
ログインを求める方式は、止まる度合いという意味では最強ですが、応募を受け付ける場面では使わないほうが賢明です。回答者にアカウント登録を求めると、そこで応募をやめる人が出ます。とくに、その組織のアカウントを持たない外部の人が送る窓口では、登録の手間がそのまま応募数の減少になります。社内の申請や、既に会員である人からの手続きなど、送る人が確実にアカウントを持っている場面に限って使うのが妥当です。
参照元のページで絞る方式、つまり自分のサイトのフォームページから送信されたものだけを受け付ける方式は、比較的負担が軽く効きます。フォームのURLを直接叩いて送信してくる機械を落とせます。ただし、プライバシー保護の設定によっては参照元が送られてこないブラウザもあるため、これだけを条件にすると本物を弾きます。他の対策と組み合わせて、判断材料の1つとして使ってください。
5種類を1つの表で並べる
ここまでの5種類を、止まる度合い、送る人の負担、答える人の負担で並べます。数字はあくまで相対的な目安で、窓口の性質によって順位は入れ替わります。
| 対策 | 止まる度合い | 送る人の負担 | 答える人の負担 | 巻き込みの危険 |
|---|---|---|---|---|
| 見えない罠 | 中〜高 | ほぼゼロ | 初回設定のみ | 低(実装を誤ると高) |
| 画像認証・チェック型 | 高 | 中〜大 | 初回設定+障害時の対応 | 中 |
| 送信の間隔・時間 | 中 | ほぼゼロ | 閾値の調整 | 低〜中 |
| 内容の判定 | 条件次第 | ゼロ | 継続的な手入れ | 中〜高 |
| 送信元の制限 | 高 | 状況により大 | 初回設定+例外対応 | 高 |
この表から読み取ってほしいのは、止まる度合いが高いものほど巻き込みの危険も高い、という関係です。5つの中で、止まる度合いのわりに負担が軽いのは見えない罠と送信の間隔です。この2つは、送る人が仕組みの存在に気づかないまま効きます。だから、最初に入れるべきはこの2つです。
逆に、画像認証と送信元の制限は「効くけれど代償がある」対策です。効かせたい理由がはっきりしていて、代償を払う覚悟があるときに入れます。「念のため」で入れると、失うもののほうが大きくなります。
内容の判定は、この表の中で唯一、答える人の負担が継続的に発生する対策です。入れるなら、リストを見直す担当と頻度をセットで決めてください。決めずに入れたリストは、必ず放置されます。
組み合わせる順番と、増やしすぎないための線引き
対策は組み合わせるのが基本ですが、順番があります。負担の軽いものから入れて、それで足りるかを確かめる。足りなければ次を足す。この順番を守るだけで、余計な負担を乗せずに済みます。
まず、見えない罠と送信の間隔による判定を入れます。この2つは送る人に何の操作も求めないので、副作用を心配せずに導入できます。導入したら、2週間ほど届く件数の推移を見ます。これだけで自動送信の大半が落ちる窓口は少なくありません。
次に、それでも残っている送信の中身を見ます。人が手で送っている営業が中心なら、認証を足しても止まりません。内容による印付けと、フォームの案内文で「営業のご連絡はお受けしていません」と明示する対応に切り替えます。機械的な送信が残っているなら、操作を求めない方式の認証を1段足します。
最後まで残るのが、狙って送られてくる送信です。ここまで来て初めて、画像や文字を読ませる認証や、送信元の制限を検討します。この段階では、本物の送信者に負担がかかることを受け入れる判断になるので、誰が判断するのかを決めてから進めてください。
増やしすぎないための線引きも用意しておきます。目安は2つです。1つは、フォームを開いてから送信を終えるまでに増える操作が2つを超えないこと。もう1つは、弾いた中に本物が混ざっていた件数が、1か月に1件でも出たら、その対策を緩める方向に見直すことです。取りこぼしは、いたずら送信の何倍もの損失になります。
止めきれなかった分は、受付の側でさばく
どれだけ対策を積んでも、届くものをゼロにはできません。だから、止めきれなかった分を答える人が楽にさばける形にしておくことが、対策と同じくらい効きます。
最初に効くのが、届いた内容を一覧で見られるようにすることです。通知メールだけで運用していると、仕分けは受信箱の中で行うことになります。受信箱は他のメールも流れてくる場所なので、フォームからの送信だけを見比べることができません。届いた内容が1つの表として残っていれば、明らかな送りつけをまとめて選んで、一度に処理できます。
次に効くのが、状態の管理です。「未対応」「対応中」「対応済み」「対象外」のような状態を1件ずつに持たせて、いたずら送信は「対象外」に落とす。この形にすると、消さずに済みます。消さないので、後から「あれは本物だったかもしれない」と思ったときに戻れます。返信したかどうかが表に残らないと、二重返信と返し忘れは必ず起きます。
担当の割り当ても同じ理由で効きます。ひとりで回している窓口でも、「自分が見た」という印が残るだけで、同じ送信を二度開かずに済みます。複数人で受けているなら、誰が見る分なのかが決まっていないと、全員が全件を開くことになります。いたずら送信の確認コストが人数分だけ増える形です。
あわせて、フォームの手前で減らせるものもあります。問い合わせの内容を選択式にして、よくある用件を先に選ばせる。回答が要らない用件については、フォームの前によくある質問を置いて自己解決できるようにする。この2つで、そもそも届く件数が減ります。減った分だけ、いたずら送信の仕分けにかけられる時間の余裕が生まれます。
用途によって、許される負担の重さが違う
同じ「フォームのスパム対策」でも、何を受け付けているかで、送る人に乗せてよい負担の重さが変わります。ここを一律に決めると、どこかの窓口で必ず無理が出ます。
応募を受け付ける窓口では、負担を乗せる余地が最も小さくなります。応募者は他の会社にも応募していて、入力が面倒なフォームは後回しにされます。募集の告知から履歴書の受け取り、選考の状況の管理までを1つの画面で回す形については、応募者に余計な登録をさせない設計の考え方を採用の応募受付にまとめています。ここでは、見えない罠と送信の間隔までにとどめ、認証は操作を求めない方式に限るのが妥当です。
締切のある公募や助成金の受付も同様です。締切の直前に送信が集中するため、連続送信の制限を厳しくすると、正当な申請者がまとめて弾かれます。受付期間と締切、必要書類の受け取りを一続きで扱う場面の整理は助成金・公募の受付を参照してください。
問い合わせの窓口は、逆に負担を乗せやすい場所です。営業の送りつけが最も集中するのがここで、しかも本物の問い合わせ主は「どうしても連絡したい」動機を持っています。用件の選択式や、内容による印付けを積極的に使えます。届いた問い合わせを担当ごとに割り振って、返信の状態まで追う運用は問い合わせの受付で扱っています。
イベントや講座の申し込みでは、同じ組織からまとまって申し込みが来ることを前提に設計します。定員の管理やキャンセル待ちを含めた受付の考え方はイベントの申し込みと講座の受講申し込みにあります。この2つでは、送信元による制限を強くすると団体申し込みを弾くので、使わないほうが安全です。
施設の利用申請や、会員の入会申し込み、修理やサポートの受付は、送る人の層が広いのが特徴です。高齢の利用者や、ITに不慣れな人が送ることを前提にすると、文字を読ませる認証は避けたほうがよい判断になります。それぞれの受付で必要になる項目や、受け付けたあとの処理については施設利用の申請、会員の入会申し込み、修理・サポートの受付で整理しています。
対策の効き目を、答える人の時間で測る
最後に、対策を入れたあとの評価の仕方を整理します。多くの窓口が「届く件数が減ったかどうか」だけで評価していますが、それだけでは足りません。見るべき指標は3つあります。
1つ目は、仕分けにかかっている時間です。届く件数が半分になっても、1件あたりの判断に迷う時間が増えていたら、答える人は楽になっていません。1週間に何分を仕分けに使っているかを、対策の前と後で測ってください。
2つ目は、弾いた中に本物が混ざっていた件数です。これがゼロでなければ、対策が強すぎます。前述のとおり、弾いた分を確認できる場所を先に作っておかないと、この指標はそもそも測れません。
3つ目は、フォームを開いた人のうち、送信まで到達した人の割合です。認証を足した前後でこの割合が下がっていたら、その認証は本物の送信者を落としています。落ちた分は、いたずら送信を減らした効果と相殺して考えます。
この3つを追うには、届いた内容が一覧で残っていて、状態を管理できて、いつ誰が処理したかが分かることが前提になります。フォームの作りによっては、ここが弱い場合があります。回答を表計算ソフトに集めて追う形での限界や、担当の割り当てと返信の状態管理をどう補うかについてはGoogleフォームとの比較で整理しています。WordPressのプラグインでフォームを作っている場合に、送信内容の保存や対応履歴をどう扱うかはContact Form 7との比較、組織のアカウントを持たない外部の人からの受付をどう成立させるかはMicrosoft Formsとの比較にまとめました。いずれも、いま使っているものを続ける判断ができる場合を先に書いています。
対策を選ぶ作業は、突き詰めると送信されたあとの道具がそろっているかどうかに帰着します。弾いた分を確認でき、届いた分の状態を追え、誰が対応したかが残る。この3つが揃っていれば、対策を少し緩めに設定しても取りこぼしが致命傷になりません。逆に、この3つが無いまま強い対策だけを積むと、何を失っているのかが分からないまま運用が続きます。受付の側にどんな機能が要るのかはできることに一覧があり、実際の画面の動きは動くところを見るで確認できます。費用の考え方は料金に、導入前によく出る疑問はよくある質問にまとめてあります。
いたずら送信を止めることは目的ではありません。目的は、本物の応募者や問い合わせ主に、遅れずに正しく返すことです。その視点で見れば、答える人を困らせない対策を、送る人も困らせない順番で積むというのが、5種類を比べたあとに残る唯一の結論になります。
Q1. フォームのスパム対策は、まずどれから入れればよいですか?
見えない入力欄による判定と、送信までの時間による判定の2つからです。この2つは送る人に操作を求めないため、応募や問い合わせを途中でやめる人を増やさずに、機械が自動で送ってくる分のかなりの割合を落とせます。導入して2週間ほど件数の推移を見て、それでも残る送信の性質を確かめてから次の手段を足してください。
Q2. 画像認証を入れると、応募が減ることはありますか?
文字や写真を読ませる方式は、入力の最後で読み取れずにやり直す人が出るため、送信をあきらめる人が出ます。とくにスマートフォンからの応募や、通信が不安定な環境、支援技術を使っている人には大きな壁になります。認証を使うなら、利用者に操作を求めず背後で判定する方式から検討し、読ませる方式は最後の手段に置いてください。
Q3. 禁止する語のリストで弾く方法は効きますか?
条件の作り方次第です。「無料」「相談」「保証」のような一般的な単語を入れると、本物の問い合わせを巻き込みます。効かせるなら、単語そのものより、本文中のURLが3本以上ある、日本語の窓口なのに本文が全部英字である、といった条件のほうが安全です。弾くのではなく「要確認」の印を付けるだけにしておくと、取りこぼしを防げます。
Q4. 対策を入れたあと、何を見て効果を判断すればよいですか?
届く件数だけで判断しないでください。仕分けにかかっている時間、弾いた中に本物が混ざっていた件数、フォームを開いた人のうち送信まで到達した割合の3つを、対策の前後で比べます。とくに2つ目は、弾いた送信を後から確認できる場所を先に用意しておかないと測れないので、対策より先に準備してください。
