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学習塾の問い合わせを数える|問い合わせの中身を分けて数える

2026年9月8日 ・ Halict編集部

先月の問い合わせは何件でしたか、と聞かれて即答できる教室は多くありません。受信箱を数えれば出てきそうに見えて、実際にやると手が止まります。営業のメールが混ざっている、同じ家庭から三回届いている、電話で受けた分は入っていない、講師の応募も同じ窓口に落ちている。数えたところで、その数字から何を判断すればよいのかも分かりません。学習塾の問い合わせ集計で必要なのは、総数を正確に出すことではなく、中身を分けて数えることです。この記事では、体験授業と入塾の受付に絞って、何で分けるのか、どの段で数えるのか、数えられる形にするには入口をどう直すのかを順に書きます。

総数を数えても、次の手が決まらない

「先月は42件」という数字だけを見て、決められることはほとんどありません。増えたのか減ったのかは分かっても、何をすればよいかにつながらないためです。

同じ42件でも、中身が違えば打ち手が変わります。体験の申し込みが35件で資料請求が7件の月と、資料請求が30件で体験の申し込みが5件の月では、次にやることがまったく違います。前者なら講師のシフトを増やす話になり、後者なら申し込みまでの導線を見る話になります。

学年で見ても同じです。中学三年生からの問い合わせが集中している月と、小学四年生が多い月では、必要な講師も、用意すべき時間帯も変わります。教室が複数あるなら、どの校舎に来ているのかで広告の出し方が変わります。

つまり、集計の目的は数を知ることではなく、次に手を入れる場所を決めることです。分け方は、その判断に必要な軸だけを持てば足ります。軸を増やしすぎると入力が増え、入力が増えると入力されなくなります。

学習塾の問い合わせを、何で分けて数えるか

実際に判断に使える軸は、次の五つに絞られます。

用件で分ける

いちばん効く軸です。学習塾の窓口には、性質の違うものが同じ入口から入ってきます。

体験授業の申し込み、資料の請求、料金の質問、時間割と空き枠の確認、転塾の相談、講師アルバイトの応募、教材会社や広告代理店の営業、在籍生の保護者からの連絡。この八つに分けるだけで、受付の実態が見えます。

多くの教室では、体験の申し込みと時間割の確認で件数の大半を占めます。一方で、担当者の時間を食っているのは料金の質問や転塾の相談だったりします。件数の多い塊と、時間を食っている塊は一致しません。両方を分けて数えることで、どちらに手を入れるかを決められます。

経路で分ける

どこから来たのかを数えます。自社サイトのフォーム、電話、チラシに付いた申込ハガキやQRコード、塾の比較ポータル、看板や口コミ、在籍生の紹介。

この軸が効くのは、費用のかかっている経路とかかっていない経路を比べられるためです。ポータルへの掲載料やチラシの出稿費に対して、何件の問い合わせが来て、そのうち何件が入塾に至ったか。ここを数えていないと、来年も同じ配分で出稿することになります。

経路を取るときの注意は、保護者の記憶に頼らないことです。フォームに「どこで知りましたか」という欄を置くと、答えは曖昧になります。チラシごとにQRコードの行き先を変える、ポータルからの流入は別のフォームで受けるといった形で、経路を機械的に分けるほうが正確です。

学年で分ける

学習塾に固有の軸です。学年ごとに、必要な講師も、開講している時間帯も、単価も違います。中学三年生からの問い合わせが増えているのに、その学年の枠が埋まっているなら、受けられずに断っている件数が積み上がっているはずです。

学年は、入塾の可能性とも関係します。新しい学年に上がる直前の時期は、実際に動く家庭が多い。同じ件数でも、時期と学年の組み合わせで意味が変わります。

教室で分ける

校舎が複数あるなら必須の軸です。ただし、教室ごとに件数を並べるだけでは判断できません。教室の規模も、周辺の人口も、開講している学年も違うためです。比べるなら、件数そのものではなく、体験の実施率や入塾率といった割合で見ます。

時期で分ける

学習塾の問い合わせは、年間で大きく波打ちます。新学期前、夏期講習の募集期、冬期講習と受験直前期。前の月と比べても意味がないため、前の年の同じ時期と比べます。ここを月次の増減だけで見ていると、季節の変動を施策の効果と読み違えます。

時期の軸は、月より細かく見たほうが役に立つ場面もあります。問い合わせは曜日と時間帯にも偏ります。学習塾の場合、平日の夜と週末の午前に集中する傾向があり、この時間帯に受付が動いていないと返信が翌日にずれます。曜日と時間帯の分布が分かれば、誰がいつ受付を見るかを決められます。

もう一つ、募集期の何日目に来ているかも見る価値があります。チラシを配った直後の数日に集中するのか、二週間かけて分散するのか。分布が分かれば、次の出稿でいつから受付体制を厚くすればよいかが決まります。

数える単位を決める

軸より先に決めておくべきなのが、何を一件と数えるかです。ここが揃っていないと、誰が数えても違う数字が出ます。

学習塾の場合、候補は三つあります。問い合わせの通数、家庭の数、生徒の数。

同じ保護者が、フォームから申し込んだ後に電話で日程を確認してきた場合、問い合わせの通数では二件、家庭では一件です。兄弟姉妹の二人ぶんを一通で相談してきた場合、家庭では一件、生徒では二件になります。

判断に使うなら、生徒単位で数えるのが実態に近くなります。入塾するのは生徒であり、枠を使うのも生徒だからです。ただし、生徒単位で数えるには、受付の記録が生徒ごとに分かれている必要があります。分かれていない教室では、まず家庭単位で数え始めて構いません。大切なのは、どの単位で数えているかを決めて、途中で変えないことです。

どの段で数えるかを決める

件数を一つだけ見ても、どこで落ちているのかは分かりません。学習塾の受付は、問い合わせから入塾までに複数の段があります。

数えるもの 落ちる主な理由
問い合わせが届いた 受け付けた件数 経路そのものが少ない
返信した 返信できた件数 返し忘れ、担当が決まらない
日程が確定した 体験の予約が入った件数 候補日が合わない、返信が来ない
体験を実施した 実際に来た件数 当日の欠席、前日の連絡なし
入塾した 手続きが完了した件数 料金、他塾との比較、枠の都合

この五段を数えると、手を入れる場所がはっきりします。問い合わせは来ているのに日程確定が少ないなら、返信の速さと候補日の出し方の問題です。体験を実施しているのに入塾が少ないなら、体験後の提案か、料金の説明の問題です。総数だけを追っていると、この違いが見えません。

段ごとの数字は、受付の記録に状態が付いていれば自動で出ます。付いていなければ、一件ずつ開いて読むことになります。集計が続かない教室の大半は、ここで止まっています。

電話とその場の来訪をどう数えるか

学習塾の問い合わせは、いまでも電話の比重が高い業種です。フォームだけを数えていると、実態の半分も見えません。

電話を数えるには、受けたときに記録を作る手順が要ります。通話の後にメモを残す形だと、忙しい時間帯に必ず抜けます。抜けた分は、そもそも数えられません。

現実的なのは、電話用の入力項目を極端に絞ることです。日時、用件の種別、学年、生徒名、折り返しの連絡先。この五つだけなら通話中に入れられます。詳細は折り返しのときに足せばよく、まず一件として記録が立つことが大切です。

電話で受けた件を後から集計に載せるかどうかで、経路別の数字はまったく変わります。電話を数えていない教室では、フォームの割合が実態より高く出て、チラシや看板の効果が過小に評価されます。チラシを見た人の多くは、まず電話をかけます。

教室に直接来た保護者も同じです。見学に来てその場で申し込んだ場合、フォームを通っていないため記録が残りません。受付の記録に手で追加する運用を決めておかないと、いちばん確度の高い問い合わせが集計から漏れます。

断った件数を数える

集計から抜け落ちやすいのが、受けられなかった問い合わせです。学年の枠が埋まっている、その科目を開講していない、希望の曜日に講師がいない。こうした理由で断った件は、入塾に至らなかった件としてまとめられるか、そもそも記録に残りません。

ここを分けて数えると、教室の意思決定が変わります。中学三年生の数学で、枠がないという理由で断った件が月に何件あるか。この数字が出ていれば、講師をもう一人採るかどうかを感覚ではなく件数で判断できます。逆に、断りが年に数件しかないなら、採用を急ぐ理由はありません。

断りの理由は、選択式にしておきます。枠が埋まっている、対象学年ではない、開講していない科目、通学の距離、家庭側の都合。五つ程度に分けておけば、後から傾向が読めます。理由を自由記入にすると、集計できない文章が並びます。

もう一つ、断ったあとに待機の連絡を希望した家庭を記録しておくと、枠が空いたときに声をかけられます。この記録がない教室では、枠が空いた瞬間に新しい広告を出すことになり、すでに関心を持っていた家庭を取りこぼします。

在籍生からの連絡を分けて数える

学習塾の窓口には、新規の問い合わせだけでなく、在籍している家庭からの連絡も届きます。欠席の連絡、振替の相談、コース変更の希望、月謝に関する質問、退塾の申し出。

これらを新規の問い合わせと同じ数字に混ぜると、件数が実態より多く見えます。受付の負担としては確かに存在するため、消すのではなく分けて数えるのが正しい扱いです。

分けて数えると、別の判断材料が出てきます。欠席と振替の連絡が特定の曜日に集中しているなら、時間割の設定に無理があるかもしれません。退塾の申し出が特定の学年に偏っているなら、その学年のコース設計を見る理由になります。新規の集客とは別の、在籍を保つ側の数字です。

在籍生の連絡は、経路も新規と違います。多くは電話か、担当講師への直接の連絡です。窓口を通らない連絡が多いほど、教室として把握できる件数は減ります。全部を窓口に集める必要はありませんが、退塾に関わる連絡だけは記録に残す形を決めておくと、後から傾向が追えます。

集計が狂う四つの原因

数え始めると、必ず数字が合わなくなります。原因はだいたい次の四つです。

第一に、重複です。同じ家庭から、フォームと電話の両方で来ている。フォームを二回送信している。送信ボタンを押したかどうか不安になって、もう一度送る保護者は珍しくありません。重複を潰すには、連絡先か生徒名で突き合わせる作業が要ります。二重送信そのものを減らすなら、送信後に受け付けた旨をはっきり表示し、自動返信をすぐ届ける形にするのが効きます。届いたか分からない状態が、もう一度送る動機になっています。

第二に、混入です。講師アルバイトの応募、教材や広告の営業、卒業生からの連絡、在籍生の保護者からの欠席連絡。同じ窓口に落ちていると、体験の申し込みと同じ数え方をしてしまいます。用件で分けていない集計は、ここでほぼ確実に狂います。

第三に、後から状態が変わることです。先月に問い合わせが来て、今月に入塾した家庭は、どちらの月の入塾として数えるのか。問い合わせの月で数えるか、入塾の月で数えるかで、割合の意味が変わります。歩留まりを見るなら、問い合わせの月に紐づけて追うほうが実態に合います。

第四に、期間の切り方です。月末に来た問い合わせは、返信も体験も翌月になります。月単位で入塾率を出すと、月末に来た分だけ不利に見えます。期間で切るなら、問い合わせの日を基準に、一定の日数が経ったものだけを対象にする形にします。

数えられる形にするには、入口を直す

集計が続かない教室に共通するのは、数える作業が手作業になっていることです。手作業の集計は、忙しい月に必ず飛びます。飛んだ月があると、前の年との比較もできなくなります。

自動で出せるようにするには、入口の側を直します。

第一に、用件を選ぶ欄を置きます。自由記入欄だけで受けていると、後から人が読んで分類することになります。体験の申し込み、資料の請求、料金の質問、その他。四つ程度の選択肢を置くだけで、用件別の集計が自動になります。

第二に、学年を選ぶ欄を必須にします。自由記入だと「中3」「中学3年」「中学三年生」が混ざり、集計できません。選択式にすれば表記が揃います。

第三に、生徒名と保護者名を別の欄にします。一つの欄に入っていると、生徒単位で数えられません。

第四に、受付の記録に状態を持たせます。問い合わせ、返信済み、日程確定、体験実施、入塾、不成約。この状態が付いていれば、段ごとの数字が自動で出ます。

第五に、経路を機械的に分けます。チラシごとにQRコードの行き先を変える、ポータルからの流入は別の受け口にする。保護者に思い出してもらう方式より確実です。

回答を集めるところまでで終わる道具と、届いたあとの状態を持たせる道具では、この設計の自由度が変わります。表に貯めてから人が分類する方式との違いはGoogleフォームとの比較で整理されており、自分の教室がどちらの回し方をしているかを確かめる材料になります。

表計算ファイルで集計するときの限界

多くの教室が、問い合わせの一覧を表計算ファイルで持っています。件数が少ないうちは、これで十分に集計できます。

つまずくのは三点です。

第一に、状態の更新が手作業になります。体験を実施したかどうか、入塾したかどうかを、担当者が後から表に戻って書き込む必要があります。この作業は、忙しい時期に必ず抜けます。抜けた行は、集計上「体験を実施していない」ことになります。

第二に、表記が揃いません。学年、経路、用件が自由入力だと、同じ意味の言葉が何種類も並びます。集計関数は表記の違いを吸収してくれません。

第三に、集計する人に依存します。関数を組んだ人が異動すると、誰も直せなくなります。列を一つ足しただけで集計が壊れることもあります。

表計算をやめる必要はありません。件数が月に数十件までで、担当が一人なら、集計の手間も知れています。判断が必要になるのは、校舎が増えたときと、担当が二人以上になったときです。同じ表を複数人が同時に開く状態になると、上書きの取り合いが起き、状態の更新が消えます。消えた更新は集計にそのまま響きます。

広告の効果を切り分ける

経路別に数えたくなる最大の理由が、広告の効果を知りたいという動機です。学習塾は、チラシ、ポータルへの掲載、看板、地域の情報誌、紹介と、複数の経路に費用をかけています。

切り分けが難しいのは、保護者が複数の経路に触れているためです。チラシを見て教室名を覚え、後日ポータルで比較し、最後は検索して自社サイトのフォームから申し込む。この家庭は、フォームの経路欄では「サイトを見て」と答えます。チラシの効果はゼロと記録されます。

完全に切り分けることはできません。現実的なのは、機械的に分けられる部分だけを正確にすることです。チラシごとにQRコードの行き先を変えれば、そのチラシを見て直接動いた人数は正確に出ます。ポータルからの流入を別の受け口で受ければ、その数も出ます。残りは「その他」としてまとめ、無理に振り分けません。

出稿の判断では、問い合わせの件数ではなく入塾の人数まで追います。件数が多い経路が、入塾に至る割合まで高いとは限りません。比較ポータル経由は問い合わせが多い一方で、複数の教室に同時に問い合わせている家庭が多く、日程確定までの落ち幅が大きくなる傾向があります。紹介や口コミは件数が少ない代わりに、入塾まで進む割合が高くなります。件数だけで配分を決めると、この差を見落とします。

配分を変えるのは、年に一度で十分です。学習塾の募集は年間の周期が決まっているため、途中で変えても比較の基準がぶれます。前の年の同じ時期と比べられる形を保つほうが、判断の材料としては役に立ちます。

誰が数えるかを決める

集計が続かない教室では、担当が決まっていないことがほとんどです。教室長が気が向いたときに数える、本部から求められたときだけ出す。この形だと、比較できる連続した数字が残りません。

決めるのは、誰が、いつ、どこを見て、どこに書くかの四つです。週に一度、対応中の件数を教室長が確認する。月の初めに、前の月の数字を事務スタッフが記録に残す。この程度の粒度で構いません。

大切なのは、数える作業そのものを軽くしておくことです。画面を見れば出る状態なら数分で終わりますが、受信箱を数え直す作業なら一時間かかります。一時間かかる作業は、忙しい月に必ず飛びます。飛んだ月があると、前の年との比較ができなくなり、集計を続ける意味そのものが薄れます。

もう一つ、数字の置き場を決めます。教室ごとにばらばらの表に書いていると、本部が集めるときに形式を揃える作業が発生します。書く場所と項目を最初に決めておけば、集める作業がなくなります。

数字を外に出すときの注意

集計した数字を、広告やサイトに載せる場面が出てきます。合格実績、体験の申込数、在籍生の数。ここは扱いが変わります。

消費者庁は、商品や役務の取引に関する表示について、実際のものより著しく優良であると示す表示を禁じています。

事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認される表示をしてはならない。 出典: 消費者庁

学習塾の場合、合格実績の数え方が問題になりやすい部分です。何をもって在籍生とするか、講習だけを受けた生徒を含めるか、複数の合格を一人で重複して数えるか。数え方の定義を先に決めて、その定義を表示と一緒に示せる形にしておくのが安全です。どこまでの表示が問題になるかは事案によって判断が分かれるため、外に出す数字については所管の窓口や専門家に確かめてください。

内部の判断に使う集計と、外に出す数字は、目的が違います。内部の集計は多少粗くても方向が分かれば足りますが、外に出す数字は定義が説明できなければなりません。同じ表から両方を出そうとすると、どちらかが歪みます。

どの頻度で見るか

集計は、頻度を決めないと続きません。学習塾の場合、三つの周期で見るのが実務に合います。

週に一度は、対応中の件数だけを見ます。返信していない件が何件あるか、日程が確定していない件が何件あるか。これは集計というより、取りこぼしの確認です。数字が二桁になっていたら、その週のうちに片付けます。

月に一度は、用件別と経路別の件数、それに段ごとの歩留まりを見ます。前の月との比較ではなく、前の年の同じ月と比べます。

年に一度は、経路ごとの費用と入塾数を突き合わせます。ポータルへの掲載料、チラシの出稿費、看板。かけた費用に対して何人が入塾したかを出し、翌年の配分を決めます。ここまで来ると、集計が広告の判断に直結します。

数え始めた直後に起きること

集計を始めると、最初の一、二か月は数字が悪化したように見えます。これは実態が悪くなったのではなく、見えていなかったものが見えるようになっただけです。

典型的なのが、返信できていない件数です。数え始めると、対応中のまま止まっている案件が二十件近く出てくることがあります。以前から同じ数だけ止まっていたのに、誰も数えていなかったので存在しませんでした。ここで慌てて「悪くなった」と判断せず、まずは止まっている件を片付けます。

もう一つが、入塾率の低さです。段ごとに数えると、問い合わせから入塾までの割合が想像より低く出ます。これも実態です。以前は入塾した数だけを見ていたため、母数が見えていませんでした。低いと感じたら、どの段で落ちているかを見ます。落ちている段が特定できれば、打つ手はかなり具体的になります。

三つ目に、用件別に分けた瞬間、体験の申し込みが思ったより少ないことに気づきます。問い合わせ全体の中に、営業や講師応募や在籍生の連絡が相当数含まれているためです。ここで分母が正しくなると、その後の判断が変わります。

数字が下がって見える期間を乗り越えるには、最初に「これは見えるようになっただけ」と共有しておくことです。教室長や本部が数字だけを見て評価する形にすると、現場が数えたがらなくなります。数えることが評価ではなく改善のための道具だという位置づけを、始める時点で決めておきます。

数えた結果を、何に使うか

数字を出すこと自体が目的になると、集計は続きません。使い道を先に決めておきます。

講師のシフトに使えます。学年別の問い合わせが分かれば、どの学年の枠を増やすべきかが決まります。枠が埋まっていて断っている件数が見えていれば、講師の採用を先に動かせます。講師の応募も同じ入口に来る教室では、応募の受付を別に立てておくと集計も採用の管理も楽になります。応募の受け方の整理は採用の応募受付にまとまっています。

広告の配分に使えます。経路別の入塾数が分かれば、来年の出稿先を変えられます。件数だけで判断すると、問い合わせは多いが入塾に至らない経路に予算を積むことになります。

受付そのものの改善にも使えます。段ごとの歩留まりで、返信から日程確定の落ち幅が大きいなら、返信の速さか候補日の出し方に原因があります。数字がなければ、この判断は勘になります。

時間割と枠の設計にも使えます。希望の曜日と時間帯を集計すると、実際に求められている枠と、開講している枠のずれが見えます。人気のない時間帯に講師を置き続け、埋まっている時間帯で断っているという状態は、数えるまで気づきません。

来年の計画にも使えます。前の年の同じ時期の件数が分かっていれば、講師の採用をいつ始めるか、チラシをいつ配るかを逆算できます。募集期に入ってから採用を始めると、体験の枠が組めずに問い合わせを断ることになります。数えることの効果は、その月の判断より、来年の段取りに出ます。

教室のスタッフに数字を見せるかどうか

集計した数字を、教室長だけが持っている状態と、事務スタッフや講師まで見えている状態では、現場の動きが変わります。

見せて効くのは、対応中の件数です。返信していない件が何件あるか、日程が確定していない件が何件あるかは、その日に動く人が見るべき数字です。ここが見えていれば、手が空いた人が拾えます。教室長だけが把握していると、指示が出るまで誰も動きません。

一方で、入塾率や経路別の費用対効果は、現場が見ても打ち手につながりません。数字を全部公開すれば良いというものではなく、その人が動ける数字だけを見せるのが実用的です。

見せる範囲を分けるには、受付の記録の側で権限を分けられる必要があります。相談内容や連絡先まで全員に見せずに、件数と状態だけを共有する形にできるかどうかは道具によって差があります。必要な粒度に届くかどうかは、できることで先に確かめておくと、運用で無理をせずに済みます。

数え始める順番

最初から五つの軸を全部そろえる必要はありません。順番があります。

第一に、用件で分けます。フォームに選択肢を四つ置くだけで、翌月から自動で出ます。

第二に、状態を持たせます。返信済み、日程確定、体験実施、入塾、不成約。これで段ごとの歩留まりが出ます。

第三に、学年を選択式にします。表記が揃い、学年別の集計が使えるようになります。

第四に、経路を機械的に分けます。チラシのQRコードとポータルの受け口を分けるところから始めます。

第五に、電話と来訪を記録に載せます。入力項目を五つに絞れば、通話中に入れられます。

それぞれの間隔は、一か月ずつ空けて構いません。同時に全部を変えると、入力する側が覚えきれず、結局どれも埋まらない状態になります。一つ足して、翌月にその数字が実際に使えるかを確かめ、使えたら次を足す。この進め方なら、途中で止まっても数えられる軸が残ります。

始める前に、いまの数字を一度だけ手作業で出しておくと、後の比較の基準になります。直近の一か月ぶんの問い合わせを開き、用件で仕分けて数える。正確でなくて構いません。この一回があると、入口を直した後に何が変わったのかを確かめられます。基準がないまま改善を始めると、良くなったかどうかを判断できません。

この五つが揃うと、集計は作業ではなく画面を見るだけになります。実際にどう見えるかは動くところを見るで確かめられ、判断の前に出る疑問はよくある質問にまとまっています。

数えることの本当の効果は、数字が出ることではありません。数えられる形に入口を直す過程で、返し忘れと重複と混入が減ることです。集計のために状態を持たせた結果、対応漏れが一覧で分かるようになる。学習塾の受付では、この副次的な効果のほうが先に効きます。

Q1. 学習塾の問い合わせは、何を一件として数えればよいですか?

判断に使うなら生徒単位が実態に近くなります。入塾するのも枠を使うのも生徒だからです。兄弟姉妹の二人ぶんを一通で相談してきた場合、家庭では一件でも生徒では二件になります。ただし生徒単位で数えるには受付の記録が生徒ごとに分かれている必要があるため、分かれていない教室はまず家庭単位で始め、途中で単位を変えないことを優先してください。

Q2. 前の月と比べて件数が減っていたら、問題があると考えるべきですか?

学習塾の問い合わせは年間で大きく波打つため、前の月との比較はほとんど意味を持ちません。新学期前、夏期講習の募集期、冬期講習と受験直前期に山が来ます。比べるなら前の年の同じ月です。月次の増減だけを見ていると、季節による自然な変動を施策の効果や失敗として読み違えます。前の年の数字が残っていない場合は、まず今年の数字を月ごとに記録して、来年の比較の基準を作るところから始めます。

Q3. 電話で受けた問い合わせは、どうやって数えればよいですか?

通話中に記録を作れる形にするのが唯一の方法です。通話後にメモを残す運用は忙しい時間帯に必ず抜け、抜けた分はそもそも数えられません。日時、用件の種別、学年、生徒名、折り返しの連絡先の五つに絞れば通話中に入力できます。詳細は折り返しのときに足せばよく、まず一件として記録が立つことが大切です。電話を数えていないと、チラシや看板の効果が実態より低く見えます。

Q4. 集計のために、フォームの項目をどこまで増やすべきですか?

増やすほど途中でやめる保護者が出るため、判断に使う軸だけに絞ります。効果が大きいのは、用件の選択肢を四つ程度置くことと、学年を選択式にすることの二つです。経路は保護者の記憶に頼る欄を作るより、チラシごとにQRコードの行き先を変えるなど機械的に分けるほうが正確で、入力項目も増えません。項目を増やすかどうかは、その軸で何を判断するのかが言えるかで決めてください。

Q5. 集計した合格実績を、広告やサイトに載せてもよいですか?

数え方の定義を先に決め、その定義を表示と一緒に示せる形にしておくのが安全です。何をもって在籍生とするか、講習だけを受けた生徒を含めるか、一人の複数合格を重複して数えるかで数字は大きく変わります。実際より著しく優良と受け取られる表示は問題になります。判断が分かれる部分は所管の窓口や専門家に確かめてください。

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