フォームの分岐と条件で迷うとき、多くの場合は「どう作るか」で詰まっているのではなく、「どこで分けるか」が決まっていない状態です。分岐の機能そのものは、いまどのフォーム作成ツールにもだいたい備わっています。詰まるのは、質問Aで「はい」を選んだ人に何を見せるか、という判断のほうです。
分岐の目的は1つに絞れます。聞かなくてよい人に聞かないことです。全員に全部を聞くフォームは、答える側には自分に関係のない質問を読ませ、受ける側には空欄だらけの列を残します。分岐は入力を短くする機能ではなく、届いたものを最初から仕分けておくための機能だと考えると、条件の決め方がはっきりします。
この記事では、分岐の条件を決める手順、条件の書き方でつまずきやすい箇所、分岐を増やしすぎたときに起きる保守の重さ、そして分岐した結果を集計するときに必ず出てくる列の問題までを扱います。分岐を入れると回答率が何パーセント上がる、といった効果の数字は書きません。根拠のない数字で分岐を増やすと、あとで戻せなくなるからです。
分岐が必要になるのは、1枚のフォームに複数の相手を通しているとき
分岐を検討している時点で、そのフォームには性質の違う相手が複数種類届いています。ここを言葉にしておかないと、条件の設計が場当たりになります。
全員に全部を聞くフォームで起きていること
質問が並んだフォームを、性質の違う相手が通ると、3つの現象が同時に起きます。
1つ目は、答える側が自分に関係のない質問を読む時間です。法人からの問い合わせと個人からの問い合わせを同じフォームで受けていると、個人の人が「法人番号」「部署名」「決裁の予定時期」を読み飛ばすことになります。読み飛ばせる人ばかりではありません。必須マークが付いていないかを確認し、空欄で進んでよいのか迷い、迷った末に離脱する人が出ます。フォームを離れた人は、受ける側の画面には何も残しません。届かなかった問い合わせは、届かなかったこと自体が見えないので、対策も打たれません。
2つ目は、受ける側の一覧表に空欄の列が並ぶことです。18個の質問を全員に聞くフォームで、法人向けの6項目が個人の回答では常に空欄になると、一覧表の3分の1は空白で埋まります。どの列が「聞いていないから空欄」で、どの列が「聞いたが答えられなかったから空欄」なのかは、表を見ただけでは区別できません。この区別がつかないと、あとで聞き直すべき相手を絞れなくなります。
3つ目は、必須設定が崩れることです。片方の相手にとっては必須、もう片方にとっては不要という項目は、全員向けのフォームでは必須にできません。必須にすると関係のない人が進めなくなるからです。結果として全部を任意にすることになり、本当に必要な情報が欠けたまま送信されます。欠けた分は受付のあとに個別に聞くことになり、1件ごとにやりとりが1往復増えます。
分岐は入力の短縮ではなく、受付の仕分け
分岐を「答える人の入力を短くする機能」だと捉えると、条件が細かくなりすぎます。実際には、分岐は受け取る側が最初に行う仕分けの作業を、回答者自身にやってもらう仕組みです。
届いた問い合わせを見て、担当者が「これは法人からだから営業に回す」「これは既存の利用者だからサポートに回す」と振り分けているなら、その振り分けの判断こそが分岐の条件です。人が手で仕分けているものを、フォームの側に持ち上げる。この視点で見ると、分岐の条件は業務の中にすでに存在していることが分かります。新しく考えるのではなく、いまやっている仕分けを言語化するのが正しい入口です。
窓口の担当者からしばしば出るのは、「振り分けの基準を聞かれても、経験でやっているので説明できない」という話です。その場合は、直近に届いた回答を30件ほど並べて、それぞれをどう処理したかを書き出します。処理の種類は、多くの窓口で3つから5つに収まります。この処理の種類が、そのまま分岐先の数になります。
受付フォームで分岐が求められるようになった背景
分岐の需要が増えているのは、フォームの用途が「連絡先を集める入口」から「手続きそのものの受付」に移ってきたためです。連絡先を集めるだけなら質問は少なく、分ける必要もありません。手続きを受け付けるとなると、相手の種類ごとに必要な情報が変わります。
行政の手続きがオンライン化され、企業の採用がWeb応募中心になり、講座や助成金の公募がフォームで受け付けられるようになったことで、1つのフォームが扱う情報の量と種類が増えました。紙の申請書では、種類ごとに別の様式が用意されていました。用紙が分かれていれば、記入する人は自分に関係のある用紙だけを手に取ります。これをWebに移すとき、様式ごとにURLを分けるか、1つのフォームの中で分岐させるかの選択が発生します。分岐の設計とは、紙の時代に様式を分けていた判断を、画面の中でやり直す作業だと言えます。
もう1つの背景は、個人情報の扱いに対する見方が厳しくなったことです。関係のない人からまで情報を集めると、保管と削除の対象がその分だけ増えます。法律は、集めた情報の使い道をはっきりさせることを求めています。
個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用目的をできる限り特定しなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
利用目的をはっきりさせるということは、その目的に要らない情報は集めない、という運用に結びつきます。法人向けの質問を個人にも見せて、答えられる人だけが答えている状態は、目的の外の情報が混ざる原因になります。分岐で見せる相手を絞ることは、集める範囲を絞ることでもあります。なお、自分の受付でどこまで集めてよいかの判断は、扱う情報の中身によって変わります。迷う場合は所管の窓口や専門家に確かめてください。
分岐の条件を決める5つの手順
条件の設計は、フォームの編集画面を開く前に紙の上で終わらせます。画面を触りながら考えると、機能でできることに引きずられて、必要のない分岐まで作り込むことになります。
手順1 いま届いている回答を、処理のしかたで分ける
最初にやるのは、質問を並べることではなく、届いたものを分類することです。直近の回答を並べ、それぞれについて「受け取ったあと、誰が何をしたか」を書き出します。返信のテンプレートが違うもの、担当が違うもの、次に踏む手順が違うものは別のグループです。
このとき、内容の似ている・似ていないでは分けません。処理が同じなら同じグループにします。「料金の質問」と「見積もりの依頼」は内容は近いですが、前者は定型の返信で終わり、後者は営業担当に渡すなら、別のグループです。逆に「導入の相談」と「デモの希望」は言葉が違っても、どちらも同じ担当が同じ流れで対応しているなら1つのグループです。
分けた結果、グループが7つを超えるようなら、分け方が細かすぎます。処理の細かい違いは、受け取ったあとで担当者が判断すれば足ります。フォームの分岐で表現するのは、判断の分かれ目が大きいところだけです。
手順2 グループを決める質問を1つだけ選ぶ
グループが決まったら、そのグループを判別できる質問を1つ選びます。ここで重要なのは、1つに絞ることです。2つの質問の組み合わせでグループを決めようとすると、条件式が急に複雑になり、あとから読めなくなります。
判別の質問は、多くの場合「お問い合わせの種類」「ご応募の区分」「ご利用の形態」といった選択式になります。選択肢は、手順1で作ったグループと1対1で対応させます。グループが5つなら選択肢も5つです。ここで選択肢を増やしたり減らしたりすると、対応がずれて、あとで必ず破綻します。
選択肢の文言は、答える側の言葉で書きます。社内の呼び方をそのまま出すと、答える側は自分がどれに当てはまるか分かりません。「一次窓口」「二次対応」のような内部の区分ではなく、「はじめてのお問い合わせ」「すでにご利用中の方」のように、答える側が自分の状況を照らして選べる言葉にします。
手順3 分岐先ごとに、本当に必要な項目だけを残す
分岐先が決まったら、それぞれの経路に置く質問を決めます。ここでの基準は「その経路の処理を進めるのに、欠けていると困るか」です。あれば便利、というものは置きません。あとで個別に聞けるからです。
法人からの問い合わせなら、会社名と担当者名と連絡先で処理が進みます。個人からの問い合わせなら、氏名と連絡先で進みます。既存の利用者からの不具合の報告なら、契約の識別子といつ起きたかが要ります。この程度に絞ると、1つの経路の質問は3個から6個に収まります。
項目の選び方そのものに迷う場合は、分岐の設計より先に、項目の判断基準を固めたほうが早く進みます。何を聞き、何をあとに回すかの線引きが決まっていないと、分岐先ごとに同じ迷いを繰り返すことになるからです。
手順4 分岐しない項目を先に固定する
分岐の設計で最も見落とされるのが、この手順です。すべての経路に共通して必要な項目を、分岐より前に配置して固定します。
共通項目は、氏名、連絡先のメールアドレス、そして手順2で選んだ判別の質問です。この3つは経路によらず必ず取ります。共通項目を分岐の後ろに置いたり、経路ごとに別々の項目として作ったりすると、あとで集計するときに同じ意味の情報が別の列に散ります。この問題は後段で詳しく扱いますが、防ぐ手立ては設計の段階にしかありません。
配置の順番は、共通項目のうち軽いもの、判別の質問、分岐後の項目、共通項目のうち重いもの、という並びが扱いやすくなります。氏名と連絡先を先に取っておくと、途中で離脱した人にも連絡が取れる可能性が残ります。同意のチェックや自由記述の相談内容といった重い項目は最後に置きます。
手順5 分岐の結果を1つの表で見られる形にする
設計の最後に確かめるのは、分岐した結果がどう見えるかです。経路ごとに別々の表になってしまうと、受ける側は毎朝いくつもの画面を開くことになります。分岐しても届いたものは1つの表に集まることを、道具を選ぶ段階で確認しておきます。
確認するのは3点です。経路の違う回答が同じ一覧に並ぶか。共通項目が同じ列に入るか。経路の種類で絞り込めるか。この3つが満たされていれば、分岐は運用に耐えます。満たされていないと、分岐を作った分だけ受ける側の手間が増えるという、目的と逆の結果になります。
分岐条件の書き方でつまずきやすい4か所
設計が正しくても、条件の書き方で崩れることがあります。よく起きるのは次の4つです。
条件が重なり、どちらにも当てはまる回答者が出る
複数の質問を条件に使うと、両方に当てはまる回答者が現れます。「業種が製造業なら経路A」「従業員数が100人以上なら経路B」という2つの条件を並べると、従業員数300人の製造業はAとBの両方に該当します。多くのツールでは先に書かれた条件が優先されますが、その優先順位は画面上では見えません。条件を書いた本人以外には、なぜその人が経路Aに行ったのかが分かりません。
重なりを防ぐ確実な方法は、手順2で書いたとおり、判別に使う質問を1つに絞ることです。1つの選択式の質問で分けるなら、選択肢は排他になるので重なりようがありません。どうしても2つの軸で分けたいなら、選択肢の側を掛け合わせて1つの質問にまとめます。「製造業(100人未満)」「製造業(100人以上)」という選択肢にすれば、条件は1つのままです。
条件から漏れ、どこにも進めない回答者が出る
条件を書き足していくと、どの条件にも当てはまらない回答が生まれます。選択肢を追加したときに、その選択肢に対応する条件を書き忘れるのが典型です。漏れた回答者は、次の質問が表示されないまま送信ボタンに到達するか、画面が止まって進めなくなります。
この事故は、フォームを作った本人には見つかりません。作った人は正しい経路をたどるからです。防ぐには、選択肢の数と条件の数が一致しているかを、公開前に必ず数えます。選択肢が6個あるなら条件も6本、という単純な確認です。そして、すべての選択肢を1回ずつ選んで通す確認をします。この作業は、選択肢の数だけ繰り返すことになります。
その他を自由記述にしたときの後始末
「その他」の選択肢に自由記述を添えるのは自然な設計ですが、その他を選んだ人の経路をどうするかは、たいてい決まっていません。その他を選んだ人には、どの分岐先の質問も当てはまらないので、共通項目だけで送信されます。受ける側は、自由記述を読んでから手で仕分けることになります。
その他が全体の数パーセントであれば手作業で足りますが、割合が上がってきたら選択肢の設計が実態に合っていない合図です。その他の記述を定期的に読み、同じ内容が繰り返し出てくるなら選択肢に昇格させます。逆に、選択肢を増やしすぎて「その他」が空になったら、選択肢が細かすぎるので統合します。その他の割合は、選択肢の設計が正しいかを測る指標として使えます。
選択肢を後から足したとき、条件が古いまま残る
運用を始めてから選択肢を足すのは普通のことです。問題は、選択肢を足したときに条件の側を直し忘れることです。フォームの編集画面では、選択肢のリストと条件の設定が別の場所にあるため、片方だけ直しても警告が出ないツールがあります。
対策は2つです。1つは、選択肢を足す作業と条件を足す作業を必ずセットで行い、片方だけで終わらせないと決めることです。もう1つは、変更したあとに全経路を通す確認を必ず行うことです。この確認の手間が、次の章で扱う保守の重さの正体になります。
分岐を増やしすぎたときの保守の重さ
分岐は作るのは簡単で、維持するのが重い機能です。増やす前に、増えた分がどこに跳ね返るかを知っておく必要があります。
経路の数は掛け算で増える
分岐を1段だけ使うなら、経路の数は選択肢の数と同じです。ところが分岐の先でさらに分岐させると、経路の数は掛け算になります。2択の分岐を3段重ねると経路は8通り、5段重ねると32通りです。3択が2つと2択が3つ混ざれば、72通りになります。
経路の数がそのまま確認の回数になります。フォームを1文字直すたびに72通りを通し直すことは現実的ではないので、実際には「今回変えたところだけ」を確認して公開することになります。そして、変えていないつもりの経路が壊れます。分岐が3段を超えたあたりから、この状態に入ります。
段数を抑える方法は、分岐の先で分岐させるのではなく、分岐の条件を1段に統合することです。「法人か個人か」を聞いてから「新規か既存か」を聞くのではなく、「法人(新規)」「法人(既存)」「個人(新規)」「個人(既存)」の4択にします。選択肢は増えますが、経路の数は同じで、条件は1本のままです。読む人にとっても、どの経路がどこに繋がるかが一目で分かります。
作った人以外に直せないフォームになる
分岐が複雑になると、そのフォームを直せる人が1人に固定されます。条件の意図が画面に書かれていないためです。「なぜこの条件が先に書かれているのか」「なぜこの選択肢だけ経路が違うのか」は、作った人の頭の中にしかありません。
担当が変わったとき、後任は既存の条件を触るのを避けます。触ると何が壊れるか分からないからです。結果として、新しい要件が出るたびに条件が末尾に追加され、古い条件は消されずに残ります。使われていない条件が積み重なったフォームは、読む時間だけがかかって、変更のたびに事故の確率が上がります。
これを避けるには、条件の設計を1枚の表として外に書き出しておきます。書く内容は、判別の質問、選択肢、その選択肢を選んだ人に表示する項目、その経路の担当、この4列です。フォームの中にはこの表を書く場所がないので、別のファイルとして持ちます。この表があると、後任は条件そのものを読まずに構造を理解できます。
変更のたびに全経路を通す必要が出る
分岐のあるフォームを直したあとの確認は、目視では終わりません。表示のされ方だけでなく、送信後に届く通知メールの宛先、自動返信の文面、保存先の列がすべて経路ごとに変わるからです。1つの経路を通すのに、送信して、通知メールを確認して、一覧に正しく入っているかを見る、という3ステップが要ります。経路が10通りあれば30回の確認です。
現実的な折り合いは、確認を2段階に分けることです。表示の分岐だけを全経路で確認し、通知と保存の確認は経路をグループにまとめて代表の1本ずつ行います。そのうえで、公開後の最初の数日は、届いた回答が正しい列に入っているかを毎日見ます。分岐の事故は、実際の回答が届いて初めて見つかることが多いためです。
分岐を減らす3つの方法
保守が重くなってきたら、分岐を減らします。減らし方は3つです。
1つ目は、入口ごとにフォームを分けることです。法人向けと個人向けで、案内するURLを分けられるなら、1枚のフォームに分岐を入れる必要はありません。採用ページからの応募と、取引先からの問い合わせが同じフォームに入っているなら、これは分けたほうが確実です。ただし、フォームを分けると届いたものも分かれるので、受ける側が両方を1つの画面で見られるかを先に確かめます。
2つ目は、受付のあとに聞くことです。分岐の先で聞いている項目のうち、受付の処理をその場で進めるのに不要なものは、受け付けたあとに個別に聞けます。選考を通過した人にだけ聞く、参加が確定した人にだけ聞く、という形にすれば、フォーム側の分岐は消えます。
3つ目は、任意項目にして分岐をやめることです。関係のない人には空欄で通してもらう形です。この方法は質問の数が減らないので万能ではありませんが、経路が1本になるぶん、確認の手間は劇的に軽くなります。質問が2個か3個ぶん増えるだけなら、分岐を作るより安く済みます。
分岐すると集計が分かれる問題
分岐の設計で最後に効いてくるのが、集めたあとのデータの形です。ここを設計に含めていないと、フォームは正しく動いているのに集計だけができない、という状態になります。
列が増えて表が横に伸びる
多くのフォーム作成ツールは、質問1つにつき1列を作ります。分岐で表示を切り替えても、列そのものは全経路ぶん作られます。経路Aの質問が6個、経路Bの質問が5個、経路Cの質問が7個なら、共通項目と合わせて列は21列を超えます。1件の回答は、そのうち自分の経路の列だけが埋まり、残りは空欄です。
この表を横に見ていくと、どの列が自分に関係あるのかが分かりません。日々の受付では経路ごとに絞り込んで見ることになりますが、絞り込みができないツールだと、毎回横スクロールで探す作業が発生します。経路の種類で一覧を絞り込めるかどうかは、分岐を入れる前に確かめておく点です。
同じ意味の項目が別の列に散る
もっと厄介なのは、同じ意味の情報が経路ごとに別の列に入ることです。経路Aで「ご担当者名」、経路Bで「お名前」、経路Cで「申請者氏名」という別々の質問を作ると、氏名の情報が3つの列に分かれます。表計算で名寄せしようとすると、3列を1列にまとめる作業が毎回必要になります。
これを防ぐのが、手順4で書いた「分岐しない項目を先に固定する」です。氏名、メールアドレス、電話番号のような共通項目は、経路の外に1つだけ置きます。文言が経路によって変わるほうが親切に見えても、列が分かれる損失のほうが大きくなります。どうしても文言を変えたいなら、質問文の側ではなく、案内文で補います。
すでに列が散った状態になっているフォームを直すときは、新しい共通項目を1つ作り、以後の回答はそちらに入るようにします。過去の回答は表計算の側でまとめます。フォームの列を統合する機能は多くのツールにないため、切り替えの日付を決めて、それ以前と以後を分けて扱うのが現実的です。
集計の分母が経路ごとに変わる
分岐のあるフォームで割合を出すときは、分母に注意します。「参加形式でオンラインを選んだ人の割合」を出したいとき、その質問が経路Aにしかないなら、分母は全回答ではなく経路Aの回答数です。全回答を分母にすると、経路Bと経路Cの人が全員「オンラインではない」と数えられて、実態より低い数字が出ます。
この間違いは、表計算で列の空欄を0として扱ったときに起きます。空欄には「聞いていない」と「聞いたが答えなかった」の2種類があり、前者は分母から外し、後者は分母に入れます。区別するには、経路の種類を記録した列が要ります。判別の質問を共通項目として必ず残しておくのは、集計のためでもあります。
集計を壊さない項目の分け方
集計を前提にすると、項目は3層に分かれます。全経路に共通で必ず取る層、経路の種類を記録する層、経路ごとに取る層です。この3層を意識して設計すると、あとの集計が破綻しません。
共通層には、氏名、連絡先、受付日時のような、どの経路でも同じ意味を持つものだけを置きます。種類の層は、判別の質問1つです。経路ごとの層には、その経路でしか使わない項目を置き、他の経路の項目と名前が重ならないようにします。名前が重なると、表計算で列を扱うときに参照を間違えます。
さらに、経路ごとの層の中で「どの経路でも似た意味を持つが、聞き方が違う」項目があるなら、選択肢を揃えておきます。希望日を経路Aでは日付、経路Bでは「午前・午後」で聞いていると、まとめて集計できません。粒度を揃えられないなら、集計は経路ごとに分けて出すと最初から決めます。
分岐だけでは解決しない、届いたあとの作業
分岐は、届く前を整える機能です。受付の負担のうち、届いたあとに発生する分は、分岐では1件も減りません。ここを分けて考えないと、分岐を作り込んだのに楽にならなかった、という結果になります。
届いたあとに発生するのは、誰が対応するかを決めること、いまどの状態かを記録すること、返信したかどうかを残すこと、この3つです。分岐で経路を分けても、経路Aに届いたものを誰が見るのか、見たあとどうなったのかは、フォームの外で管理されています。多くの現場では、通知メールの受信箱と表計算の色分けでこれをやっています。返信したかどうかが表に残らないと、二重返信と返し忘れは必ず起きます。
分岐と受付後の管理は、道具の中で繋がっていると手間が減ります。経路の種類がそのまま担当の振り分けに使えて、届いた時点で担当が決まり、対応の状態が同じ画面に残る形です。分岐の条件がそのまま担当の割り振りに使えると、仕分けの作業が二度手間になりません。分岐を設計する段階で、その条件を受付後の振り分けにも使うつもりで作っておくと、あとで作り直さずに済みます。
使っている道具ごとに、分岐の扱いは変わる
分岐の機能はツールによって作りが違います。乗り換える必要があるかどうかは、いま何に困っているかで決まります。まずは、いまの道具で足りる場合を先に確かめます。
分岐が1段で、経路が3つか4つ、届いた回答を1人で見ていて、返信が定型で終わるなら、既存のフォームで足ります。この条件に当てはまるなら、道具を変える理由はありません。困りごとが出るのは、経路が増えて確認が回らなくなったとき、複数人で対応するようになって誰が返したか分からなくなったとき、経路ごとに集計を出す必要が生まれたときです。
Googleフォームは分岐の設定を持っており、選択式の回答に応じてセクションを移動させる形で経路を分けられます。回答はスプレッドシートに集まるため、集計の自由度は高い一方で、対応の状態や担当を残す場所は自分で作ることになります。この違いを整理したものがGoogleフォームとの比較にあります。分岐そのものではなく、分岐したあとをどう回すかで比べたい場合の参考になります。
WordPressで運用しているなら、Contact Form 7がよく使われています。プラグインを組み合わせることで表示の切り替えを実現する形が一般的で、条件の書き方はフォームのコードに近い形になります。設定の自由度は高いものの、変更のたびに表示の確認が要る点は同じです。届いた内容の保存や管理をどう補うかはContact Form 7との比較にまとめてあります。
Microsoft Formsも分岐の設定を備えており、社内のアカウント基盤と繋がっている点が特徴です。組織の中で完結する受付なら扱いやすい一方、社外の人に答えてもらう場面では、アクセスの設定を確認しておく必要があります。回答者にアカウント登録を求めると、そこで応募をやめる人が出ます。この観点の整理はMicrosoft Formsとの比較にあります。なお、各ツールの上限値や設定できる範囲は変わることがあるため、実際の値は公式のドキュメントで確かめてください。
受付の場面ごとに、分岐の切り方は変わる
分岐の条件は、受付の性質によって定石が決まっています。自分の場面に近いものから当てはめると早く進みます。
採用の応募では、職種と雇用形態が最初の分岐になります。正社員とアルバイトでは聞くべきことも選考の流れも違うため、ここで分けると受付後の処理がそのまま分かれます。職務経歴書の添付を求めるかどうかも、この分岐に紐づきます。応募の受付で何が要るかは採用の応募受付に整理してあります。
助成金や公募の受付では、申請の区分が分岐になります。区分ごとに提出書類が違うため、区分を選んだ時点で必要な添付が変わる形が自然です。区分の数だけ経路が増えるので、経路を1段に保つ設計が特に効いてきます。公募の受付の流れは助成金・公募の受付にあります。
問い合わせの受付では、問い合わせの種類が分岐になります。種類ごとに担当が違うことが多いため、分岐の条件がそのまま振り分けの条件になります。詳しくは問い合わせの受付を参照してください。イベントや講座では、参加形式や受講するコースが分岐になります。オンラインと会場では聞く項目が変わり、コースによって日程の選択肢が変わります。それぞれイベントの申し込みと講座の受講申し込みに流れがまとまっています。
施設の利用申請では、利用の目的と利用者の区分が分岐になります。区分によって料金や必要な書類が変わるためです。詳しくは施設利用の申請にあります。会員の入会では、個人会員と法人会員で聞く内容が大きく変わるため、ここが最初の分岐になります。会員の入会申し込みに必要な項目の考え方が整理されています。修理やサポートの受付では、保証の対象かどうかと、症状の種類が分岐になります。修理・サポートの受付に、受け付けたあとの流れまで含めて書かれています。
分岐の設計を、受付全体の中で確かめる
分岐は、受付という仕事の一部でしかありません。設計が正しいかどうかは、分岐の画面だけを見ていても判断できません。届いたものがどう並び、誰が対応し、どこまで進んだかが分かる状態になって初めて、その分岐が役に立ったと言えます。
機能の一覧から確かめること
分岐を検討するとき、確かめるべき機能は5つです。1つは、選択に応じて表示を切り替えられるか。2つ目は、経路が違っても回答が1つの一覧に集まるか。3つ目は、経路の種類で一覧を絞り込めるか。4つ目は、経路ごとに通知の宛先を変えられるか。5つ目は、届いたあとに担当と状態を記録できるか。この5つはできることに整理されています。
最初の1つだけを見て道具を選ぶと、あとの4つで詰まります。分岐の機能そのものは多くのツールが備えているため、差が出るのは2つ目以降です。特に5つ目は、分岐とは別の機能に見えるため見落とされますが、分岐で仕分けた結果を活かせるかどうかはここで決まります。
動く画面で確かめること
条件の設計は、実際の画面で選択肢を選んでみないと、正しいかどうかが分かりません。設計の紙の上では通っていた経路が、画面では表示されないことがあります。動くところを見るでは、選択に応じて質問が切り替わる動きと、送信されたものが一覧に並ぶところまでを続けて確かめられます。
確かめるときは、正しい経路だけでなく、選択肢を選び直した場合も試します。一度選んで次に進み、戻って別の選択肢に変えたとき、前の経路で入力した内容がどう扱われるかは、ツールによって違います。入力が残ったまま送信されると、その人の回答に、選ばなかった経路の値が混ざります。
件数が増えたときの条件を確かめること
分岐を作り込むと、質問の数も保存される項目の数も増えます。受け付けられる件数、保管できる添付ファイルの量、結果を見られる人数といった条件は、運用の形を左右します。この条件は料金に整理してあります。分岐を設計する段階で、経路ごとの想定件数を足し合わせて、条件に収まるかを見ておくと、あとで作り直さずに済みます。
運用を始める前に出てくる細かい疑問はよくある質問にまとめてあります。公開したあとに分岐を変えたら過去の回答はどうなるか、選択肢を減らしたら以前の回答はどう表示されるか、といった実務の疑問はここで確かめられます。分岐は一度作って終わりではなく、選択肢の見直しとともに変わり続けるものなので、変更したときの挙動を先に知っておくと判断が早くなります。
設計を1枚に書き出して残す
最後にやることは、決めた分岐を1枚に書き出すことです。書く内容は4列です。判別の質問と選択肢。その選択肢を選んだ人に表示する項目。その経路の担当。その経路で送る通知の宛先と文面の種類。
この1枚があると、選択肢を足したいという依頼が来たときに、足すことで何が増えるかをその場で示せます。経路が1本増えれば、表示の項目が増え、担当を決める必要があり、通知の設定が要り、確認の手間が3ステップ増えます。この見積もりが出せると、本当に必要な分岐だけを残す判断ができます。分岐を増やす一方の流れを止めるのは、道具の機能ではなく、この1枚です。
Q1. フォームの分岐は何段まで作ってよいですか?
1段に収めるのが安全です。分岐の先でさらに分岐させると経路が掛け算で増え、2択を5段重ねただけで32通りになります。確認の回数がそのまま経路の数になるため、変更のたびに全部を通せなくなります。2つの軸で分けたいときは、選択肢を掛け合わせて1つの質問にまとめると、経路の数は同じまま条件を1本に保てます。
Q2. 分岐を作ると、集計はどう変わりますか?
経路ごとに表示される質問が違うため、一覧表には空欄の列が並びます。割合を出すときは、その質問がどの経路にあるかを確認し、分母をその経路の回答数に限る必要があります。全回答を分母にすると、聞いていない人まで「答えなかった人」として数えられ、実態より低い数字になります。判別の質問を共通項目として必ず残しておくと、この区別ができます。
Q3. 分岐の条件はどうやって決めればよいですか?
新しく考えるのではなく、いま手で仕分けている基準を書き出します。直近の回答を並べて、それぞれをどう処理したかを書くと、処理の種類は多くの窓口で3つから5つに収まります。この処理の種類が分岐先になり、それを判別できる質問を1つだけ選べば条件は決まります。判別の質問を2つ以上にすると、両方に当てはまる回答者が出て条件が壊れます。
Q4. 分岐が増えすぎたときは、どう減らせばよいですか?
減らし方は3つあります。入口のURLを分けられるならフォームごと分ける。受付の処理にその場で必要のない項目は、受け付けたあとに個別に聞く。関係のない人には空欄で通してもらう任意項目にする。質問が2個か3個増えるだけで済むなら、分岐を作って確認の手間を増やすより、任意項目にしたほうが運用は軽くなります。
