デザイン事務所の問い合わせフォームの項目をどう決めるかは、フォームを作る側の話ではなく、届いたものを読んで見積もりを書く側の話です。設問が足りなければ「詳しくお聞かせください」から始まる返信を書くことになり、多すぎれば送信される前に閉じられます。この記事では、デザイン事務所に実際に届く相談を種類ごとに分けたうえで、見積もりを一往復で出すために必要な設問と、その並べ方を整理します。読み終えたときに、いま置いているフォームのどの項目を削り、どの項目を足すかが決められる状態を目指します。
デザイン事務所に届く問い合わせは「作りたいもの」が決まっていない
デザイン事務所の窓口が受けているのは、制作の相談と見積もりの依頼です。この二つは別のものに見えて、実際には同じ一通の中に混ざって届きます。「名刺とパンフレットをお願いしたいのですが、いくらぐらいになりますか」という一文に、作りたいものの申告と金額の質問が同時に入っている、という形です。
ここで受ける側が困るのは、金額を出すために要る情報がほとんど書かれていないことです。名刺なら片面か両面か、色は何色か、部数はいくつか、ロゴのデータはあるのか、印刷まで手配するのか入稿データを渡すだけなのかで、出す数字が変わります。パンフレットならページ数と判型と部数、写真を撮るのか支給されるのか、原稿は誰が書くのかで、工数が数倍変わります。
つまりデザイン事務所の問い合わせフォームは、相談の入り口であると同時に、見積もりの前提を確定させる書類でもあります。設問の役目は、返信を書く人が「そのまま金額を出せるか、聞き返してから出すか」を判断し、聞き返すとしたら何を聞けばよいかを確定させることに尽きます。返信を書く人の手が最初に止まるのは、金額を書こうとした瞬間に前提が足りないと気づいたときです。
届くものは四つに分かれる
窓口に集まるものを並べていくと、内容は概ね四つに整理できます。
一つ目は、作りたいものが決まっている依頼です。「ロゴを新しくしたい」「展示会用のパネルを作りたい」のように、媒体と用途がはっきりしています。この型は、仕様さえそろえば見積もりを出せます。フォームの設問が効くのはここです。
二つ目は、作りたいものが決まっていない相談です。「認知度を上げたいので何をすればよいか相談したい」という形で届きます。この型は金額を出す段階にないので、フォームで仕様を聞いても空欄が並ぶだけです。相談の場を設けるところまでが返信の役目になります。
三つ目は、既存のデータを直す依頼です。「前に作ってもらったチラシの日付だけ変えたい」「他社で作った資料の体裁を整えてほしい」という内容で、金額は小さいが件数は多い、という特徴があります。この型は、元データの形式と支給の可否が分かれば即答できます。
四つ目は、制作の依頼ではないものです。デザイン系の求人への応募、素材やロゴの二次利用の許諾を求めるもの、印刷会社や素材サイトからの売り込み、取材や登壇の依頼などです。この型は、仕分けさえできれば処理の負担は小さくなります。
一枚のフォームでこの四つを受けることになります。分けて置くと、送る側がどれを選べばよいか分からず、結局いちばん目立つものに全部が集まります。分けるのではなく、一枚の中で最初に用件の種類を選ばせるのが現実的です。
見積もりを出せない問い合わせが最も多い
窓口の担当者からよく聞くのは、届いたもののうち、そのまま金額を出せるものが少ないという話です。「ホームページを作りたい」とだけ書かれていれば、ページ数も、原稿の有無も、撮影の要否も、更新の仕組みの要不要も分かりません。金額の幅は十倍以上に開きます。
このとき返信で「詳しく教えてください」と書くと、返ってくるまでに数日空きます。空いた数日のあいだに、送った側は他の事務所からの返信を読んでいます。返信の速さが検討の順番を決める場面では、聞き返しの一往復がそのまま機会の損失になります。
だからフォームの設問は、聞き返しの回数を減らすためにあります。判断の基準は項目の数ではなく、その項目が無いときに聞き返しが発生するかどうかです。発生する項目は残し、発生しない項目は削ります。この基準で既存のフォームを見直すと、たいてい住所や会社概要のような使わない項目が削れて、代わりに部数や納期のような効く項目が足りていないことが分かります。
最初の設問は「作りたいもの」にする
フォームの一番上に置くべきは、氏名でも会社名でもなく、作りたいものの種類です。選択式で、五つから七つの選択肢を並べます。
デザイン事務所の場合、この選択肢は事務所の受注範囲そのものになります。ロゴやマークの制作、名刺や封筒などの事務用品、チラシやパンフレットなどの印刷物、パッケージやラベル、看板や展示什器、ウェブサイトやバナー、動画やスライド、といった並びです。受けていないものを選択肢に入れると、断る返信を書く仕事が増えます。逆に、受けているのに選択肢が無いものは「その他」に流れ、仕分けの手がかりを失います。
この設問を先頭に置く理由は二つあります。一つは、送る側に「ここは何を書く場所か」を先に示せること。もう一つは、この選択によって以降の設問を出し分けられることです。条件分岐に対応したフォームなら設定できますし、対応していなくても、設問文に「印刷物をお選びの方のみ」と補足を書くだけでかなり効きます。
受ける側にとっての効果はさらに大きくなります。作りたいものが最初に決まっていれば、開いた時点で仕分けが終わっています。仕様を追加で聞くものと、そのまま金額を出せるもの、そもそも制作の依頼ではないものが、読み始める前に分かれます。
「まだ決まっていない」を必ず入れる
選択肢の最後には「まだ決まっていない」または「相談したい」を必ず置きます。これを置かないと、決まっていない人が近そうな選択肢を適当に選び、その後の仕様の設問に嘘の数字が入ります。嘘の数字が入った見積もりは、あとで大幅に修正することになり、送った側の信用を落とします。
「まだ決まっていない」が選ばれたときは、仕様の設問を全部飛ばして、困っていることと使える予算の幅だけを聞きます。この型に対して仕様を細かく聞くのは、答えられない質問を並べることと同じです。
見積もりを一往復で出すために要る項目
作りたいものが決まったら、次は仕様です。ここが設問設計のいちばん難しいところで、媒体によって聞くことが変わります。共通の設問だけで組もうとすると、どの媒体にも当てはまらない粗い項目が並びます。
媒体ごとに聞き分ける
印刷物なら、判型、ページ数、部数、色数、紙の指定の有無、印刷までの手配を含むかどうかです。部数は100部と10,000部で印刷費の桁が変わるので、自由入力ではなく幅の選択式にすると答えやすくなります。
ロゴなら、使う場面の広さです。名刺と看板だけに使うのか、車両や制服や商品パッケージまで展開するのか、商標の登録を予定しているのかで、作る形式と検討の深さが変わります。
ウェブサイトなら、ページ数、原稿と写真の支給の有無、更新を自分たちで行うか、ドメインとサーバーの用意があるか、現在のサイトの有無です。既存サイトがある場合はURLを一行もらうだけで、規模と作りが把握できます。
パッケージなら、商品の形状と入る情報量、表示が法令で決まっている項目があるか、印刷の版下を製造側に渡すのかどうかです。ここは製造側の指定に従う部分が多く、事務所の側で決められないため、支給される仕様書の有無を聞くのが実務的です。
すべての媒体で共通して要るのは、用途と、既にあるものの有無の二つです。何のために使うのかが書かれていれば、仕様の一部は推測で埋められます。
支給素材の有無を先に聞く
見積もりの金額を左右する要素として、支給素材の有無は部数と同じくらい大きく効きます。ロゴの元データがあるかないか、写真を撮る必要があるかないか、原稿の文章を誰が書くかで、工数が変わります。
設問としては、「ご用意いただけるもの」を複数選択にするのが分かりやすい形です。ロゴのデータ、写真、原稿の文章、既存の印刷物やPDF、といった選択肢を並べ、当てはまるものにすべて印を付けてもらいます。選択されなかったものは、こちらで用意する前提で見積もりを組めます。
このとき、ロゴのデータについては形式まで聞いておくと確実です。拡大しても劣化しない形式で持っているのか、画像として保存されたものしかないのかで、作業が変わります。ただし形式の名称は送る側に伝わらないことが多いので、「ロゴの元データ(拡大しても粗くならないもの)」のように、意味で書きます。
納期と予算をどう聞くか
この二つは、聞き方を間違えると送信率が落ち、聞かないと見積もりが出せない項目です。
予算は幅の選択式にする
予算欄を自由入力の必須にすると、送信をやめる人が出ます。金額の相場が分からない状態で数字を書くことに抵抗があるからです。かといって聞かないと、事務所側が想定している価格帯と大きくずれた相談に時間を使うことになります。
現実的なのは、幅の選択式にして、任意にしておく形です。選択肢は事務所の受注実績に合わせて三つか四つに区切り、最後に「相談したい」を置きます。区切りの数字は、その事務所で実際によく出している金額の帯に合わせます。
任意にしても、書く人は書きます。書かない人は、そもそも金額の見当が付いていない人なので、返信で相場の幅を先に示したほうが話が早く進みます。
納期は「決まっていない」を選べるようにする
納期は日付の入力欄にしがちですが、デザイン事務所の受付では、決まっている人と決まっていない人が半々です。展示会や新店舗の開店のように動かせない日がある依頼と、時期の目安しかない依頼が混ざります。
だから納期は、日付の入力欄と、「未定」「できるだけ早く」「時期の相談から」といった選択肢を併置します。動かせない日がある場合だけ、その理由も一行書いてもらうと、逆算の精度が上がります。
なお「できるだけ早く」は、受ける側から見ると情報量がありません。これが選ばれたときは、返信で「いつまでに必要か」を必ず聞き返す前提で運用します。設問側でこれ以上詰めようとすると、選択肢が増えて読まれなくなります。
聞かなくてよい項目
削る判断のほうが難しいので、よく置かれていて実際には使われていない項目を挙げます。
住所は、問い合わせの段階では使いません。請求書を出す段になってから聞けば足ります。必須にすると、様子見の相談が減ります。
部署名と役職も、初回では使いません。誰が決裁するかは重要な情報ですが、フォームで聞いても正確な答えは返ってきません。打ち合わせの中で分かります。
事業内容の詳しい説明も、初回では要りません。会社名かサイトのURLを一行もらえば、こちらで見ます。長い自由記述を求めると、書くのが面倒になって送信が止まります。
希望するデザインの方向性も、初回では聞きません。言葉で書ける人は少なく、書かれた言葉と実際の好みが一致しないことも多いためです。参考にしている事例のURLを任意で受けるほうが、はるかに情報量があります。
相見積もりかどうかは聞き方を変える
他社にも声を掛けているかどうかは、受ける側が知りたい情報の筆頭です。ただし直接聞くと、送る側は答えにくさを感じます。
実務的なのは、「検討の状況」として選択肢で聞く形です。「まだ情報を集めている段階」「複数社に相談している」「依頼先はほぼ決めている」といった並びにすると、角が立たずに同じ情報が取れます。答えたくない人のために「回答しない」も置きます。
この情報が取れていると、返信の書き方を変えられます。比較の段階なら金額の幅と考え方を丁寧に書き、ほぼ決まっているなら次の打ち合わせの日程調整に進めます。
ファイルの受け取りをどう設計するか
デザイン事務所の受付は、他の業種に比べてファイルが届く割合が高い窓口です。既存のロゴ、現行のパンフレットのPDF、参考にしたい画像、製造側からの仕様書などが添付されます。
フォームでファイルを受け取れるかどうかは、往復の回数に直結します。受け取れないと、「メールで送ってください」という返信を書き、相手のメールを待ち、届いたメールと元の問い合わせを手で結び付ける作業が発生します。この結び付けは、件数が増えると必ず取り違えが起きます。
受け取る場合は、設問文で何を送ってほしいかを指定します。「現在お使いのロゴのデータ」「作り直したい印刷物の実物を撮影したもの」のように具体的に書かないと、関係のない画像が大量に届きます。枚数の上限を3点程度と書いておくのも有効です。
受け取ったファイルがどこに残るか
もう一つ決めておくのが、受け取ったファイルの置き場所です。メールの添付として受け取ると、やり取りの履歴の中に埋もれ、制作に入る段階で探し直すことになります。問い合わせの記録とファイルが同じ場所にまとまっているかどうかは、道具を選ぶときの分かれ目になります。この点はできることの一覧で、受け取ったファイルが回答と一緒に残るかどうかを確かめられます。
営業メールを設問で仕分ける
デザイン事務所の窓口には、印刷会社、素材サイト、人材紹介、システム開発の売り込みが継続して届きます。件数が多いと、本来の相談がその中に紛れます。
完全には防げませんが、設問の作り方で減らせます。用件の種類の選択肢に「営業・提案のご連絡」を明示的に置くと、律儀な送り手はそれを選びます。選ばれたものは、受け取りの記録だけ残して返信を出さない、という運用にできます。
もう一つは、作りたいものの選択を必須にすることです。営業目的の一括送信は、選択式の設問を正しく埋められないことが多く、そこで弾かれます。ただし、この効果は自動送信への対策としては限定的です。ある程度は届くものとして、仕分けの手数を減らす方向で設計します。
既存データの修正依頼は別の設問で受ける
デザイン事務所の受付でもう一つ量が多いのが、既に世に出ているものを直したい、という依頼です。チラシの日付だけ差し替えたい、パンフレットの担当者名を変えたい、他社が作った資料の体裁を整えたい、といった内容です。
この型は、新規の制作とは必要な情報がまったく違います。判型や部数を聞いても意味がなく、代わりに要るのは、元データが手元にあるかどうか、どの形式で持っているか、直したい箇所がどこか、いつまでに必要か、の四点です。元データが無い場合は作り直しになるため、金額の桁が変わります。ここを最初に切り分けないと、安く済むと思っていた相手と、作り直しの見積もりを出したこちらとの間で認識がずれます。
設問としては、作りたいものの選択肢に「既にあるものを修正したい」を一つ置き、それが選ばれたときだけ、元データの有無と現物の添付を求める形にします。現物は写真でも構いません。実物を撮った画像が一枚あるだけで、直せるかどうかの見当が付きます。
修正の範囲と回数を設問で示しておく
修正の依頼で揉めやすいのは、どこまでが一回の作業かという線引きです。文字を一箇所直すのと、写真を入れ替えて全体の配置を組み直すのとでは、作業量が違います。
フォームの側でできるのは、直したい箇所の数を選択式で受けておくことです。「文字の差し替えのみ」「写真や図の入れ替えを含む」「構成から見直したい」の三択にすると、返信を書く前に規模が分かります。あわせて、見積もりに含まれる修正の回数を自動返信か固定ページに書いておくと、後から出てくる認識のずれをかなり減らせます。
なお、他社が作ったものを直す依頼では、元のデータを使ってよいかという確認が要ることがあります。制作物の権利がどこにあるかは契約によって変わるため、断定はせず、依頼元に確かめてもらう前提で受けます。
電話や紹介で来た相談も同じ場所に集める
デザイン事務所の相談は、フォームだけから来るわけではありません。紹介、電話、名刺交換の場、既存の取引先からの追加依頼と、入り口がいくつもあります。
このとき、フォームから来たものだけが記録に残り、それ以外は担当者の頭とメモ帳に残る、という状態になりがちです。こうなると、いま何件の相談を抱えているのか、どれに返していないのかが、誰にも分からなくなります。
現実的な対処は、フォームを外向けの窓口としてだけでなく、内部の記録の入り口としても使うことです。電話で受けた相談を、受けた人が同じフォームに代理で入力します。入力の手間は2分ほどで、そのぶん記録が一箇所にそろいます。入力欄に「受付の経路」という設問を一つ足し、フォーム、電話、紹介、対面、といった選択肢を置いておくと、あとから経路ごとの件数も数えられます。
設問の並び順と画面の作り方
項目が決まったら、並び順を決めます。原則は、答えやすいものから答えにくいものへ、選択式から自由記述へ、です。
先頭に用件の種類と作りたいものを置き、次に仕様、その次に納期と予算、そのあとに支給素材とファイル、最後に連絡先と自由記述という順が、送る側の負担が最も軽くなります。連絡先を最初に置くフォームをよく見ますが、これは「まだ名乗る段階ではない」と感じさせる並びです。
自由記述は最後に一つだけ置きます。「その他ご要望やご事情があればお書きください」という一文で十分です。ここに長い文章を書く人は本気度が高いので、返信の優先度を上げる手がかりにもなります。
必須の印をどこまで付けるか
必須にしてよいのは、それが無いと返信そのものが書けない項目だけです。具体的には、名前、連絡先、用件の種類、作りたいものの四つです。
仕様や予算を必須にすると、決まっていない人が送信できなくなります。決まっていない人こそ、事務所の側で整理してあげる価値がある相談です。任意にして、空欄のまま届いたら返信で聞く、という運用にします。
判断に迷う項目は、いったん任意にして3か月置き、実際に書かれたかどうかで決めます。書かれない項目は削り、聞き返しが続く項目は必須に上げます。
送信されたあとに何を返すか
設問の設計と同じ重さで決めておくのが、送信された直後に自動で返る文面です。
書くことは三つあります。受け付けたこと、いつまでに返信するか、その間に相手がすべきことがあるか、です。「2営業日以内にご返信します」と書いてあるだけで、催促の連絡は減ります。土日を挟む場合の数え方も決めて書きます。
送信された内容を全文載せておくと、相手が自分で誤りに気づいて訂正してきます。送信前の確認画面を省いても事故が起きにくくなるので、入力の手数を減らす効果もあります。
なお、個人情報の扱いについては、フォームの近くに利用目的を書いておく必要があります。所管の考え方は公開されています。
個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的をできる限り特定しなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
具体的にどこまで書けばよいかは事務所の状況で変わるので、所管の窓口や専門家に確かめてください。よく聞かれる内容を固定ページにまとめておくと、返信で毎回説明する手間が減ります。よくある質問のように、質問文をそのまま見出しにして、答えを二文か三文で書く形が読みやすくなります。
自動返信に見積もりの前提を一行入れる
自動返信でもう一つ効くのが、見積もりを出すための前提を先に示しておくことです。「お見積もりは、部数と納期と支給素材が決まった時点でお出しします」と一行あるだけで、送った側は自分の書いた内容に何が足りないかを自分で気づきます。気づいた人は追加の情報を送ってくるので、聞き返しの一往復が省けます。
同じ考え方で、概算の幅を先に固定ページに置いておく事務所もあります。金額を公開することへの抵抗はありますが、公開しないままだと、価格帯の合わない相談に返信を書く時間が積み上がります。全部を出す必要はなく、最も件数の多い一つか二つの媒体だけでも効果があります。
設問を変えたあとに見ること
設問を変えたら、効果を確かめます。見るのは三つです。
一つ目は、送信された件数です。項目を増やしたときに件数が落ちていないかを見ます。落ちていれば、増やした項目のどれかが重すぎます。
二つ目は、聞き返しの回数です。返信の一往復目に「確認させてください」が入っている割合を数えます。この割合が下がっていれば、設問の設計は効いています。
三つ目は、見積もりを出すまでの日数です。問い合わせが届いてから金額を出すまでの実日数を数えます。聞き返しが一往復減れば、ここが縮みます。
数え方は手作業で構いません。30件ほど数えれば傾向は見えます。件数が増えて手作業で追えなくなったら、そこが道具を見直す時期です。
あわせて、送信されずに閉じられた割合も見ておきたいところですが、これはフォームの側に計測の仕組みがないと分かりません。仕組みが無い場合は、設問を増やした前後で送信件数を比べる、という粗い見方で代用します。季節の影響を受けるので、前年の同じ時期と比べるほうが正確です。
三か月ためてから直す
設問を変えた直後に評価すると、たまたま届いた相談の内容に振り回されます。デザイン事務所の受付は、年度末や展示会の時期に相談が集中するなど、季節によって中身が変わります。
見返すときは、返信文をそのまま読み返すのが早道です。同じ文言を何度も書いていたら、それは設問で先に聞けたはずのことか、固定ページに書けるはずのことです。三回以上書いた文言は、どちらかに移します。
設問設計のあとに残る仕事
設問を整えると、聞き返しの回数は減ります。ただし、それで解決するのは工程のうちの一部です。
デザイン事務所の受付で残る仕事は三つあります。相談の内容から工数を見積もること、制作の担当を決めること、そして返したかどうかを記録することです。前の二つは設問設計では解決しません。三つ目だけが、道具の選び方で解決します。
問い合わせの受付の場面で共通して起きているのは、集めるところまでは無料の道具で足りているのに、集めたあとを表計算ソフトと受信箱と付箋で継ぎ足していることです。継ぎ足した部分は担当者の記憶に依存し、その人が現場に出た日に止まります。
道具を替える判断が要るのは、件数が増えて、誰が返したかが分からなくなったときです。回答が表に貯まる形の道具は、集める部分は問題なく動きます。表の行が増えて、返信済みかどうかを手で色分けする作業が始まったら、そこが替えどきです。それぞれの道具で何がどこまでできるかは、Googleフォームとの比較で、集めたあとの扱いを軸に整理されています。自社サイトに埋め込んで使いたいのか、外部のページで受けてよいのかによっても選択肢は変わります。埋め込みを続けたい場合は、Contact Form 7との比較で、送信後の記録がどこに残るかを確かめておくと判断しやすくなります。
窓口の側では、届いたものを一覧で見られる状態にします。受信箱に流し込むだけだと、他のメールに紛れます。受け付けた内容と、担当者と、いまの状態が同じ画面にそろっているかどうかで、確認にかかる時間が変わります。送信されたあとの道具がそろっているかどうかは、実際の動きを動くところを見るで確かめられます。
同じ受付の構造は、他の業種でも繰り返し現れます。応募者の書類と希望条件を集めたあと、誰が面接の日程を返すのかで同じ詰まり方をする採用の応募受付がその例です。デザイン事務所の見積もりが仕様を確定しないと出せないのと同じで、集めた情報だけでは返信が完結しない型です。この型を持つ受付は、設問の設計と、返信の担当を決める仕組みを両方そろえないと速くなりません。
最後に、設問設計で判断が要る場面を並べておきます。用件の種類を先頭に置くか、作りたいものを選択式にするか、媒体ごとに仕様の設問を出し分けるか、部数を幅で受けるか、支給素材を複数選択で聞くか、予算を任意の選択式にするか、納期に未定の選択肢を置くか、ファイルの添付を受けるか、検討の状況を聞くか、必須の印をどこまで付けるか。この十個を決めれば、デザイン事務所の問い合わせフォームは一往復で見積もりを出せる形になります。決め切れない項目は任意にして三か月置き、実際に書かれたかどうかで判断すれば済みます。設問の設計は一度で正解にたどり着くものではなく、届いたものを見ながら少しずつ形を整えていく作業です。
Q1. デザイン事務所の問い合わせフォームで、一番上に置くべき項目は何ですか?
氏名や会社名ではなく、作りたいものの種類です。ロゴ、事務用品、印刷物、パッケージ、看板、ウェブサイトのように、その事務所が実際に受けている範囲で五つから七つの選択肢を並べ、最後に「まだ決まっていない」を必ず置きます。これを先頭に置くと、届いた時点で仕分けが終わり、そのまま金額を出せるものと、仕様を聞き返すものが読み始める前に分かれます。
Q2. 予算欄は必須にしたほうがよいですか?
必須にしないでください。相場が分からない状態で数字を書くことに抵抗があるため、自由入力の必須にすると送信をやめる人が出ます。実務的なのは、その事務所でよく出している金額の帯に合わせて三つか四つの幅に区切った選択式にし、最後に「相談したい」を置いて任意にする形です。書かない人は金額の見当が付いていない人なので、返信で相場の幅を先に示すほうが話が早く進みます。
Q3. 見積もりを一往復で出すために、最低限どの項目が要りますか?
作りたいものの種類に加えて、その媒体の仕様と、支給素材の有無と、納期です。印刷物なら判型とページ数と部数と色数、ウェブサイトならページ数と原稿や写真の支給の有無、ロゴなら使う場面の広さを聞きます。部数は100部と10,000部で印刷費の桁が変わるため、自由入力ではなく幅の選択式にすると答えやすくなります。用途を一行書いてもらうと、足りない仕様は推測で補えます。
Q4. 逆に、聞かなくてよい項目はどれですか?
住所、部署名と役職、事業内容の詳しい説明、希望するデザインの方向性です。住所は請求書を出す段で足り、役職はフォームで聞いても正確な答えが返りません。事業内容は会社名かサイトのURLを一行もらえば済みます。デザインの方向性は言葉にできる人が少ないので、参考にしている事例のURLを任意で受けるほうが情報量があります。必須にしてよいのは、名前と連絡先と用件の種類と作りたいものの四つです。
Q5. ファイルの添付はフォームで受け取ったほうがよいですか?
既存のロゴや現行の印刷物が届く窓口なので、受け取れるほうが往復は減ります。受け取れないと、メールで送るよう依頼して待ち、届いたメールと元の問い合わせを手で結び付ける作業が発生し、件数が増えると取り違えが起きます。受け取る場合は「現在お使いのロゴのデータ」のように何を送ってほしいかを設問文で指定し、点数の上限も書いてください。指定しないと関係のない画像が大量に届きます。
