inquiry

クレーム対応の手順|一次受けから報告までを決めておく

2026年10月1日 ・ Halict編集部

クレーム対応の手順を調べるきっかけは、たいてい具体的な一件です。窓口で強い口調の電話を受けて頭が真っ白になった、問い合わせフォームに長い苦情が届いて誰が返すか決まらないまま3日が過ぎた、同じ苦情が別の担当に二重で届いて別々の回答を出してしまった。手順を検索している時点で、困っているのは言葉の選び方だけではありません。

この記事では、一次受けで何を決めておくか、基本の4ステップをどうなぞるか、マニュアルに落とすときの書き方、避けたいNG行動、二次対応と報告のステップ、そして同じクレームを減らす方法を順に整理します。先に結論を書くと、手順が崩れる原因は担当者の技量ではなく、受けた一件が誰の手元にあり、どこまで進んだかが残っていないことです。話し方の型をいくら覚えても、記録と引き継ぎが決まっていなければ同じ事故が起きます。

クレーム対応の手順が必要になる理由は、件数ではなく段取りにある

クレームの絶対数が多い窓口だけが困っているわけではありません。月に数件しか来ない窓口ほど、手順が決まっていないことによる被害が大きくなります。慣れていないので一件に長時間かかり、対応した記録も残らず、次に似た苦情が来たときにまた一から考えることになります。

窓口の担当者からしばしば出るのは、「対応そのものは終わったのに、社内でどう扱えばよいのか分からなかった」という話です。謝るところまでは誰でも辿り着きますが、そのあとに来る工程が決まっていません。誰に報告するのか、記録はどこに残すのか、再発防止の判断は誰がするのか。この工程が空白だと、対応した人の記憶の中だけで案件が終わり、組織としては何も学習しません。

もう1つの理由は、受け口が増えたことです。以前は電話と店頭だけだった苦情の入口に、いまは問い合わせフォーム、共有メールアドレス、SNSのダイレクトメッセージ、口コミサイトへの投稿が加わりました。入口が4つあると、同じ人からの同じ苦情が2つの入口に届くことが普通に起きます。片方に若手が短い返信を出し、もう片方に責任者が丁寧な回答を出すと、受け取った側には「言うことが違う」と映ります。手順の目的は、この食い違いを出さないことでもあります。

そして手順には、担当者を守る役割があります。どこまで自分の判断で答えてよいのか、どの条件を超えたら上位者に渡してよいのかが決まっていれば、その場で背負い込まずに済みます。目安として、金銭の返還、契約の解除、公表を伴う謝罪の3つは一次受けの判断範囲から外し、必ず上位者に渡す線を引いておくと運用しやすくなります。線が無い窓口では、担当者が無理に約束をして、あとで取り消す二次被害が起きます。

クレーム対応の4つの基本手順をなぞる

型として広く紹介されているのは、心情の理解、事実の確認、解決策の提示、締めくくりという4つの流れです。順番に意味があり、飛ばすと戻れなくなります。

クレーム応対には4つの基本手順が存在します。 クレームには、お客さまの期待を下回って起こる「日常的なクレーム」、「悪意のあるクレーム」、常識を欠いた「お門違いなクレーム」の3種類がありますが、どのようなクレームでも、この手順にあてはめていけば、ほとんどの場合、上手に対応できます。 出典: insource.co.jp

1つ目は心情の理解です。ここでの謝罪は、非を認める謝罪ではなく、不便をかけた状態への謝罪です。「ご不便をおかけして申し訳ございません」は、まだ原因が分からない段階でも言えます。逆に「こちらの手違いでした」は、確認が済むまで言ってはいけません。原因が相手側にあった場合、取り消しが極めて難しくなります。

2つ目は事実の確認です。いつ、どこで、何が、どのように起きたのか。ここで聞き取るべき項目は事前に決めておきます。日時、対象の商品や手続きの名前、注文番号や受付番号、相手の連絡先、相手が望んでいる結果。最後の項目を聞き忘れると、こちらが用意した解決策と相手の期待がずれます。返金を望んでいるのか、交換を望んでいるのか、謝罪と改善だけを望んでいるのかは、聞かなければ分かりません。

3つ目は解決策の提示です。その場で決められることと、持ち帰ることを分けます。持ち帰る場合は、いつまでに誰が折り返すかを言い切ります。「確認して連絡します」だけで切ると、待つ側は何日でも待てません。目安として、初回の折り返しは1営業日以内に一度入れ、解決に時間がかかるなら中間報告を挟む形にしておくと、督促の電話が減ります。

4つ目は締めくくりです。対応した内容を要約して相手に確認し、最後にもう一度謝意を伝えます。ここで多いのは、要約を省いて終える例です。要約しないと、相手の理解とこちらの記録がずれたまま案件が閉じ、数週間後に「言っていたことと違う」という連絡が来ます。

順番を飛ばすと起きること

心情の理解を飛ばして解決策から入る失敗は、経験の有無に関係なく起きます。強い口調に接すると、早く終わらせたくなって結論を急ぐためです。

特に、お客さまの「怒り」に触れた時、大抵の人は「怖さ」を感じ、萎縮して何も言わないか、早く逃れようと「解決策」を早めに提示してしまいがちです。しかし、心情理解のステップを抜かすと、お客さんの「気持ち」が収まらず、クレームが大きくなってしまう恐れがあります。クレーム応対をする際には手順を守る必要があります。 出典: insource.co.jp

事実の確認を飛ばすと、解決策の前提が崩れます。よくあるのは、まだ確認していない事実を相手の話のまま受け入れて補償を約束し、社内で調べたら記録が違っていたという展開です。この場合、約束を取り消す連絡が二度目のクレームになります。事実が固まるまでは、補償の可否そのものを口にしないことが安全です。

一次受けで決めておく3つのこと

手順書を作る前に、この3つを決めておくと現場が回り始めます。

1つ目は、誰が出るかです。電話なら最初に取った人が一次受けを担い、フォームやメールなら担当を割り当てる人をあらかじめ決めます。ここが決まっていない窓口では、共有の受信箱に苦情が入ったまま誰も手を付けない時間が生まれます。共有メールを複数人で見ている形は、全員が見えているのに誰の仕事でもない状態を作りやすいという性質があります。

2つ目は、どこまで答えるかです。一次受けの権限を、事実の確認と謝意の伝達までに限り、補償の判断は上位者に渡す。この線引きを紙に書いておきます。線が明文化されていれば、担当者は「その判断は責任者に確認して折り返します」と言えます。これは逃げではなく、正しい手順です。

3つ目は、いつ折り返すかです。営業時間内に受けたものは当日、時間外に受けたものは翌営業日の午前中まで、というように時刻で決めます。返信の期限を「なるべく早く」にしておくと、忙しい日から順に遅れます。期限を時刻で書いてある窓口だけが、遅れを検知できます。

この3つを決めたら、受付の記録に列として持たせます。受けた日時、受けた人、いま担当している人、状況、次に何をするか、期限。この6列が空欄でなければ、対応の遅れは机の上ではなく画面の上で見つかります。返信したかどうかが表に残らないと、二重返信と返し忘れは必ず起きます。苦情の対応でこの2つが起きると、最初の苦情より大きな問題になります。

受付番号を最初に振ると、手順が勝手に揃う

小さな工夫ですが、効きが早いのは受付番号です。電話でもフォームでも、受けた時点で番号を振り、相手に伝えます。番号があると、二度目の連絡で経緯を探す時間が消え、社内の会話も「あの苦情」ではなく番号で進みます。番号で呼べる案件は、担当が替わっても同じものとして扱えます。

番号は連番で足りますが、受け口が分かる接頭辞を付けておくと集計が楽になります。電話は別の記号、フォームは別の記号にしておけば、月末に入口ごとの件数を数えるだけで、どの入口が詰まっているかが見えます。フォームからの受付なら番号の発行と自動返信をまとめて機械に任せられるので、手で振る必要があるのは電話と店頭だけです。相手に番号を伝えておけば、督促の連絡が来たときも最初から同じ案件として話が進みます。

クレーム対応マニュアルに落とすときの書き方

マニュアルを作ろうとして止まるのは、網羅しようとするからです。あらゆる苦情の型を想定して分岐を書こうとすると完成しません。現場で使われるマニュアルは、分岐が少なく、探す時間が短いものです。

含めるべき要素は5つに絞れます。第1に、受付時に聞き取る項目の一覧。第2に、使ってよい言い回しと使ってはいけない言い回しの対比。第3に、権限の線引き(どこから上に渡すか)。第4に、記録の残し方と残す場所。第5に、報告の相手と締め切りです。この5つが1枚に収まっていれば、新しく窓口に入った人でも初日から同じ手順で動けます。

言い回しの部分は、良い例と悪い例を並べる形が実用的です。「ご不便をおかけして申し訳ございません」は使える、「そのような話は聞いたことがありません」は使わない、「規則ですので」は使わない、「私では分かりません」は「確認のうえ折り返します」に言い換える。抽象的な心構えを並べるより、置き換え表のほうが現場で開かれます。

避けたいのは、マニュアルに理想の対応時間や理想の話し方を書き込んで、実際の運用と乖離させることです。書いてあることが守れない状態が続くと、マニュアル全体が読まれなくなります。守れる水準で書き、守れているかを月に一度だけ数える。この運用のほうが長持ちします。

もう1つのコツは、更新の担当と頻度を最初のページに書いておくことです。誰も更新しないマニュアルは、半年で現実と合わなくなります。四半期に一度、直近に起きた苦情を3件だけ読み返して、置き換え表に1行足すか消すかを決める。この程度の頻度でも、内容の鮮度は保てます。文面のひな形を道具側に保存できるなら、マニュアルの文面とひな形を同じ言葉にそろえておくと、書き写す手間と写し間違いが消えます。

クレーム対応のコツ5選

型をなぞるだけでは足りない部分を、5つに分けて置きます。

第1のコツは、聞き取りながら要約を挟むことです。「つまり、届いた商品の箱が破れていて、中身の確認ができていないという状況ですね」と返すと、相手は自分の話が届いたと分かります。要約は共感の技術ではなく、事実確認の技術です。ここで食い違いが見つかれば、解決策を作る前に直せます。

第2のコツは、相手の言葉を言い換えないことです。相手が「壊れていた」と言っているものを、記録に「不具合の申し出」と書き換えると、後で読んだ人が別の意味に取ります。記録には相手の表現をそのまま残し、こちらの判断は別の行に書きます。この分離ができている記録は、上位者への報告でも社外への回答でもそのまま使えます。

第3のコツは、対応の途中で担当を替えないことです。替えるなら、引き継ぎの内容を相手に伝えてから替えます。何も言わずに担当が変わり、新しい担当が経緯を知らないまま電話に出ると、相手は同じ話を二度させられます。この時点で苦情の中身は、最初の商品の問題から、組織の対応の問題に移ります。

第4のコツは、時間を決めて区切ることです。一次受けの通話は、聞き取りが終わったら折り返しに切り替える。目安として、最初の通話で20分を超えたら、事実確認のために一度切る判断を入れます。長く聞き続けることが誠意とは限りません。長時間の通話は担当者を消耗させ、次の一件の質を落とします。

第5のコツは、終わったあとに一行だけ残すことです。「この苦情はなぜ起きたか」を一行で書く。原因が案内文の分かりにくさなら、案内文を直す仕事に変わります。この一行が無いと、苦情は対応の記録としてだけ残り、改善の材料になりません。

クレーム対応で避けたいNG行動と注意点

やってはいけないことは、やるべきことより覚えやすく、効果も早く出ます。

最も避けたいのは、事実が固まる前に非を認めるか、逆に相手の話を否定することです。どちらも取り消せません。確認が済んでいない段階で言えるのは、状態への謝意と、確認して折り返す約束の2つだけです。

次に避けたいのは、社内の事情を説明することです。「担当が休んでおりまして」「システムの入れ替えの時期で」は、相手にとって解決と関係がありません。事情の説明は言い訳として受け取られ、対応の遅れを正当化しているように聞こえます。伝えるべきは、いつまでに何をするかです。

三つ目は、記録を残さずに口頭だけで終えることです。電話で解決した案件も、受付番号を付けて記録に残します。残っていない案件は、同じ相手から二度目の連絡が来たときに、経緯を知らない状態で応対することになります。

四つ目は、過剰な要求への線引きを担当者個人に任せることです。同じ内容の連絡が何度も続く、要求の水準が契約の範囲を大きく超える、担当者個人への攻撃が含まれる。こうした場合は、対応の窓口を個人から組織に切り替え、記録を残しながら回答の内容を統一します。判断の基準と、誰が切り替えを決めるかを事前に決めておいてください。個人情報の取り扱いや法的な線引きに関わる判断は、所管の窓口や専門家に確かめてください。

五つ目は、謝罪の文面を毎回一から書くことです。書くたびに表現が変わると、同じ組織から違う水準の回答が出ます。ひな形を1つ持ち、事実の部分だけを差し替える形にしておくと、品質が揃い、書く時間も短くなります。ひな形は謝罪文、事実確認の依頼、解決策の提示、締めくくりの4種類あれば足ります。

二次対応と報告のステップを決めておく

一次受けで終わらない案件を、どう上に渡すかを決めます。ここが決まっていない組織では、担当者が抱えたまま時間だけが過ぎます。

渡す条件は先に書いた3つ(金銭の返還、契約の解除、公表を伴う謝罪)に加えて、相手が上位者との対話を求めた場合、同じ案件で3回以上やりとりが続いた場合を入れておくと、抱え込みを検知できます。渡すときに添える情報は、受付日時、相手の連絡先、経緯の時系列、相手が望んでいる結果、これまでに伝えた内容、まだ伝えていない社内の事実。この6項目がそろっていれば、上位者は読むだけで判断できます。

報告のステップは、対応中の報告と、完了後の報告に分けます。対応中の報告は、期限を過ぎそうなときに出すもので、短くてかまいません。完了後の報告は、原因と再発防止の案までを含めます。完了報告の宛先を最初に決めておかないと、報告は書かれずに終わります。

記録の置き場所は1か所に決めます。電話の記録が紙のノート、フォームからの苦情が表計算、メールでのやりとりが各自の受信箱に散っている状態では、同じ相手の案件をつなげられません。苦情の対応は、同じ人から複数の入口で届くことを前提にした設計が必要です。窓口の受け方ごとの整理は問い合わせの受付に場面別でまとめてあり、修理や不具合の申し出をどう受けるかは修理・サポートの受付のほうが近い形になります。

社内の共有についても決めておきます。全件を全員に流すと読まれなくなり、重要な案件だけを選ぶと選ぶ手間が残ります。実務的には、週に一度、件数と種類の内訳だけを共有し、上位者に渡した案件だけを個別に共有する形が続きます。

クレームを減らす方法は、対応の外側にある

手順を整えると対応の質は上がりますが、件数は減りません。件数を減らす作業は、苦情が来る前の場所にあります。

第1に、案内文の書き換えです。同じ質問が苦情として届くなら、それは案内が足りていない場所です。よく届く苦情を上位5件だけ数えて、その5件に対応する説明をページや申込画面に足す。この作業は、対応時間を直接削ります。

第2に、受付の段階で情報を取り切ることです。苦情の連絡を受けたあと、事実確認のために追加で問い合わせる往復が発生するなら、最初の受付で聞く項目が足りていません。受付の入力欄に、日時、対象、番号、望む結果を入れておけば、一往復が消えます。フォームの設問を足すか減らすかは、この往復が起きているかどうかで決めます。

第3に、期待値を先に伝えることです。回答までの目安日数を受付の完了画面と自動返信に書いておくと、督促の連絡が減ります。書いていない窓口では、相手は自分の感覚で待ち、その感覚を超えた時点で二度目の連絡をします。自動返信に「受け付けました」とだけ書いてあるのと、「3営業日以内に担当者から連絡します」と書いてあるのでは、督促の量が変わります。

第4に、担当者の交代に耐える記録を残すことです。人が替わっても同じ回答が出る状態を作れば、対応の当たり外れによる苦情が減ります。過去に同じ内容で回答した案件を検索できるようにしておくと、新しい担当者は前例をなぞるだけで済みます。回答の水準がばらつく原因は、担当者の能力差よりも、参照できる前例が手元に無いことにあります。

第5に、繁忙期の受付量を見込んでおくことです。同じ窓口でも、月末や年度替わり、商品の入れ替えの直後には苦情が集まります。件数が集まる時期をあらかじめ知っていれば、その週だけ担当を2人に増やす判断ができます。時期が読めない窓口では、遅れが出てから人を足すことになり、遅れた分の督促がさらに窓口を詰まらせます。受付の記録に日付が残っていれば、去年の同じ時期を見るだけでこの見込みは立ちます。

基本の流れを押さえたうえで、個別の事情に合わせて調整していく考え方は、公開されている解説とも一致します。

クレーム対応の基本的な手順を紹介します。実際には臨機応変に対応する必要があるケースが多いものの、まずは基本の流れを押さえておくことが大切です。 出典: ricoh.co.jp

苦情の種類を3つに分けると、手順の当て方が決まる

同じ手順を使うにしても、目の前の一件がどの種類かを見分けておくと、力の入れどころが変わります。分け方は3つで足ります。

1つ目は、期待を下回ったことによる苦情です。届いた商品に傷があった、案内された日時に担当が来なかった、手続きの完了通知が来なかった。原因が自社側にあることが多く、事実の確認が済めば解決策も決まります。この種類は、手順どおりになぞれば収まります。件数としては最も多く、記録を残しておけば改善の材料にもなります。

2つ目は、行き違いによる苦情です。説明した内容と相手の理解が違っていた、規約に書いてあるが読まれていなかった、以前の担当が別の案内をしていた。この種類で重要なのは、どちらが正しいかを争わないことです。争うと、事実の話が態度の話にすり替わります。実務的には、相手が何をどう理解したのかを先に聞き取り、こちらの説明のどこが分かりにくかったかを特定する順番で進めます。案内文の直しにそのままつながるので、記録の価値がいちばん高い種類です。

3つ目は、要求の水準が契約や常識の範囲を超えている苦情です。担当者個人への攻撃、同じ内容の連絡が繰り返される、応じられない補償を条件に交渉が続く。この種類は手順の対象外に置き、対応の窓口を個人から組織に切り替えます。回答は一本化し、やりとりの記録を時刻まで残します。担当者を一人で対応させないことが、いちばん大事な決めごとです。

見分け方は最初の聞き取りの中で済みます。事実がはっきりしていて、相手の望む結果が具体的なら1つ目。事実の認識がこちらと違っているなら2つ目。望む結果が示されないまま感情の表明が続くなら3つ目を疑います。この見分けを担当者が自分で下せるように、判断の例をマニュアルに3件だけ載せておくと、初対応でも迷いが減ります。件数の内訳を月に一度数えておくと、どの種類が増えているかが見え、直す場所も変わります。2つ目が増えているなら案内文、1つ目が増えているなら業務そのもの、3つ目が増えているなら受付の設計を見直す順番になります。

受付の道具側から見ると、手順はどこで崩れるか

受付の道具を比べている人の相談を並べると、手順が崩れる箇所はほぼ同じ場所に集まります。どれも話し方の問題ではありません。

最も多いのは、届いた一件に担当と状況が付かないことです。苦情がメールで共有の受信箱に入ると、既読になっているかどうかしか分かりません。既読は「誰かが見た」ことしか示さず、「誰が持っている」ことは示しません。ここを直すには、受付の一覧に担当者の列と状況の列を持たせるしかありません。フォームを作る道具を選ぶときに、送信後の一覧に担当と状況を持てるかどうかで分かれます。無料で使える定番との違いは入口ではなく送信後の扱いにあり、その差はGoogleフォームとの比較に整理されています。既存サイトにプラグインで入口を置いている場合の違いはContact Form 7との比較、社内の既存環境をそのまま使っている場合はMicrosoft Formsとの比較が近い比較になります。

次に多いのは、やりとりの履歴が道具の外にあることです。受付の記録は表計算、返信はメールソフト、上位者への報告はチャット。この3つに分かれていると、経緯を追うのに3か所を開くことになり、引き継ぎのときに必ず抜けが出ます。ステージの変更、担当の割り当て、メモ、送ったメールが同じ画面に時系列で並ぶ形なら、引き継ぎは画面を見せるだけで済みます。送信されたあとの道具がそろっていることの実務的な意味は、この一点に集約されます。並んでいる機能の一覧はできることにあり、実際の画面の動きは動くところを見るで確かめられます。

三つ目は、同じ人からの複数の連絡が別件として並ぶことです。メールアドレスをキーに同じ人を1人として束ねられないと、二重返信の元になります。苦情の対応では、これが最も避けたい事故です。

四つ目は、道具の費用が件数で増える設計になっていることです。苦情の件数は月によって大きく動きます。件数で課金される形だと、いちばん忙しい月にいちばん高い請求が来て、記録を残すことをためらう動機が生まれます。使う人数だけで決まる形なら、件数が増えても請求は動きません。人数で決まる料金の例としては、ひとりで使う範囲なら0円、3人までで月額2,980円(税抜)という段階の付け方があります(2026年9月時点の公開されている料金ページの記載)。課金の単位は各社で違うので、料金のように公開されているページで、何で増えるのかを確かめてください。

最後に、手順を紙で配るだけでは定着しないという点です。聞き取り項目は入力欄に、期限は状況の列に、言い回しのひな形はメールのひな形に置く。手順を道具の形に置き換えたときだけ、書いたとおりに運用されます。導入前に出やすい疑問はよくある質問にまとめてあるので、判断の前に一度目を通しておくと、選び直しの手間を減らせます。

Q1. クレーム対応の手順は、電話とフォームで分けるべきですか?

聞き取る項目と権限の線引きは同じにし、記録の入り口だけをそろえてください。電話は担当者が入力し、フォームは自動で入ります。入口が違っても同じ一覧に並ぶ形にしておけば、同じ相手から両方に連絡が来たときに二重返信を避けられます。分けるべきなのは返信の速さの目安だけです。

Q2. 事実確認に時間がかかるとき、最初の返信では何を伝えればよいですか?

状態への謝意と、いつまでに誰が折り返すかの2つだけを伝えます。原因や責任の所在は、確認が済むまで書きません。折り返しの期限は「なるべく早く」ではなく日付で示し、その期限までに解決しない場合も中間報告を入れてください。督促の連絡は、期限が書かれていないときに増えます。

Q3. 一次受けの担当者が判断してよい範囲は、どこまでが目安ですか?

事実の確認と謝意の伝達までを担当者の範囲とし、金銭の返還、契約の解除、公表を伴う謝罪の3つは上位者に渡す形が扱いやすいです。加えて、相手が上位者との対話を求めた場合と、同じ案件で3回以上やりとりが続いた場合も渡す条件に入れておくと、抱え込みを早く見つけられます。

Q4. クレーム対応マニュアルは、どのくらいの分量で作ればよいですか?

聞き取り項目、言い回しの置き換え表、権限の線引き、記録の残し方、報告の相手と締め切りの5つが1枚に収まる分量で足ります。分岐を増やすほど読まれなくなります。四半期に一度、直近の苦情を3件読み返して置き換え表を1行足すか消すかを決める運用にすると、内容が現実とずれません。

ガイド一覧へ

クレーム対応の手順|一次受けから報告までを決めておく|Halict