NPOの問い合わせのスマホ対応と言うとき、多くの場合は画面が小さくても入力できるか、という話に限られます。しかし実際の窓口では、受ける側もスマホを見ています。活動の現場にいて事務所の机に戻れない時間帯に、届いた申し込みをどう捌くかが決まっていないと、返信は夜まで止まります。この記事では、送る側の入力体験と、受ける側が現場から返す環境の両方を整理します。
NPOの受付は二つの方向でスマホに触れている
スマホ対応を一方向の話だと考えると、対策が半分で終わります。実際には、送る側と受ける側の両方がスマホの上にいます。
送る側の典型は、通勤の電車の中、昼休みの数分、寝る前の布団の中です。団体のサイトを見て、活動に共感して、その勢いで申し込もうとします。この状態で入力が重いと、送信の前に画面を閉じます。閉じた人は、後で改めて送り直すことはほとんどありません。
受ける側の典型は、活動の現場です。屋外の作業、子どもの居場所、配食の準備、相談の対応。事務局の担当が現場に入っている時間帯は、机の前にいません。手元にあるのはスマホだけです。ここで一覧を開けなければ、その時間帯に届いたものは全部、夜まで待つことになります。
この二つは別の問題ですが、対策の方向は同じです。どちらも「小さい画面でどこまで済ませられるか」を決めることに帰着します。
現場を離れられない時間帯が長い団体ほど効く
団体の活動形態によって、この問題の重さは変わります。事務所に常駐して電話を受ける形の団体なら、机の前にいる時間が長いので、受ける側のスマホ対応の優先度は下がります。
一方、活動の大半が屋外や訪問先で行われる団体では、事務所にいる時間のほうが短くなります。この場合、返信できる時間帯は朝と夕方に限られ、その二つの時間帯に一日分が集中します。集中した分を捌ききれないと、翌日に持ち越されます。
持ち越しが常態化すると、返信までの日数が構造的に伸びます。担当が怠けているわけでも、件数が多すぎるわけでもなく、単に返せる時間帯が足りていない状態です。ここを埋めるには、返せる時間帯を増やすしかありません。
送る側のスマホ体験を整える
まず送る側です。ここを整えないと、そもそも届く数が減ります。
打つ回数を減らす
スマホでの入力で最も負担が大きいのは、文字を打つ動作です。選択肢で答えられるものを選択肢にするだけで、入力の時間は目に見えて短くなります。
都道府県、参加の希望日、寄付の区分、返信の希望手段、用件の種別。これらは全部、選ばせる形にできます。自由記述で受けていると、書く側は表記を迷い、受ける側は表記のゆれを揃える作業を負います。
自由記述として残すのは、補足の一欄だけで足ります。それ以外を選択肢に落とすと、入力にかかる時間は数分から一分未満まで縮みます。
入力欄の型を画面に合わせる
スマホでは、入力欄の種類によって出てくるキーボードが変わります。メールアドレスの欄なら英字のキーボード、電話番号の欄なら数字のキーボードが出るのが正しい状態です。ここが合っていないと、送る側は毎回キーボードを切り替えることになります。
郵便番号を入れたら住所が自動で入る形になっているかも確かめます。寄付の受領証の送付先を書いてもらう場面では、この一つの機能があるかどうかで入力の負担がまったく違います。
日付の欄も同様です。日付を選ぶ画面が出るのと、自由記述で書かせるのとでは、書かれる形式のばらつきが変わります。ばらつきは受ける側の作業になって返ってきます。
一画面に詰め込まない
パソコンの画面で作ったフォームをそのまま出すと、スマホでは縦に長く伸びます。上から下までスクロールしながら入力していると、いま何問目なのか分からなくなり、途中で離脱します。
対処は、区切りを入れることです。用件の選択と連絡先までを一つ目のまとまりにして、用件別の詳しい設問を次のまとまりに回します。最初のまとまりが短ければ、入力を始めるまでの心理的な負担が下がります。入力を始めた人は、途中でやめにくくなります。
進み具合が見える表示があると、さらに離脱が減ります。あと少しで終わると分かれば、最後まで進みます。
アカウント登録を求めない
回答者にアカウント登録を求めると、そこで申し込みをやめる人が出ます。特に参加と寄付は、思い立った瞬間に送られるものなので、登録の画面を挟むと熱が冷めます。
登録が必要な仕組みを使っている団体では、この点が実際の申し込み数に効いている可能性があります。組織で使っている道具の中にフォームが含まれている場合、外部の人が答えるときにログインが要るかどうかは設定によって変わります。すでにその環境を使っているなら乗り換える理由がない場合もあるという前提を含めて、Microsoft Formsとの比較に整理があります。外部の回答者をどう扱うかという観点で読むと、判断の材料になります。
写真とファイルを受け取る
活動によっては、写真やファイルを受け取る場面があります。物品の寄付で現物の写真を送ってもらう、企業からの提案で資料を添えてもらう、応募で書類を送ってもらう。
スマホからの添付は、その場で撮った写真をそのまま送る形が最も多くなります。ファイルの大きさの上限が小さいと、撮ったままの写真が弾かれます。弾かれたとき、送る側は縮小の方法を調べることはせず、諦めます。
上限をどこに置くか、複数枚を送れるか、どの形式を受け付けるかは、道具によって差があります。受け取れる範囲を先に確かめて、フォームの近くに書いておくと、送る側が迷いません。
受け取ったファイルをどこに置くかも決めておきます。通知メールの添付として個人の受信箱にしか残らない形だと、その人が休んだ日には誰も開けません。送信された内容と一緒に保管されて、担当が替わっても取り出せる形が望ましくなります。
写真を必須にするかどうかは慎重に決めます。必須にすると、その場で撮れない人が送信できません。物品の寄付のように写真がないと判断できない場合でも、まず申し込みを受けて、返信の中で写真を送ってもらう形にすれば、入口で取りこぼしません。
途中で中断しても消えない
スマホでの入力は、頻繁に中断されます。電話が入る、駅に着く、子どもに呼ばれる。中断して戻ったときに入力が消えていると、もう一度書き直す人はほとんどいません。
入力の途中で保存される仕組みがあるかは、確かめておく価値があります。無い場合は、そもそも入力が短ければ中断される確率も下がるので、設問を減らすことが対策になります。
送信後の画面と自動返信もスマホで読まれる
送信したあとの画面と自動返信も、スマホで読まれます。ここで長い文章を出すと、読まれずに閉じられます。
送信後の画面に書くのは三つです。受け付けたこと、いつごろ返事が来るか、届かないときの連絡先。これだけで、数日後の再送は目に見えて減ります。再送されると受ける側の手間が倍になるので、この三行は効きます。
自動返信も同じです。長い前置きと定型の挨拶を並べると、本題まで読まれません。受付日時、送信内容の控え、返信の目安、連絡先。この順で短く並べます。
参加の申し込みなら、持ち物と集合場所も自動返信に入れます。個別の返信を待たずに準備を始められるので、返信が多少遅れても不安になりにくくなります。ただし定員のある回では、受け付けたことと参加が確定したことは別なので、確定と読める文言は避けます。定員のある受付の回し方は、イベントの申し込みに整理があります。定員の管理と、締め切り後に届いたものへの返し方まで扱われています。
自動返信の文面がスマホで読めるかは、実際に自分の端末で受け取って確かめます。パソコンで作った文面が、スマホでは横に切れていたり、リンクが押しにくかったりすることは普通に起きます。
スマホから届いたものは中身の質が変わる
入力の環境が変われば、届く内容も変わります。この変化を前提にしておかないと、受ける側が余計な手間を負います。
まず、本文が短くなります。パソコンから送られる問い合わせが数百字あるのに対し、スマホからは一行か二行で終わることが珍しくありません。「参加したいです」「寄付について教えてください」だけの本文が届きます。
この短さは、送る側が不親切なのではなく、片手で打つ環境がそうさせています。だから、本文の長さで熱意を測らないことが大事です。一行で送ってきた人が、実際にはいちばん熱心に参加してくれることは普通にあります。
短い本文に対処するには、本文以外の欄で必要な情報を取ります。用件の種別、希望日、区分、連絡手段。これらが選択肢で取れていれば、本文が一行でも折り返せます。本文だけで受けていると、短い問い合わせのたびに聞き返しが発生します。
次に、誤字と変換ミスが増えます。予測変換が働くので、意図しない語が混ざります。名前の漢字が違う、団体名が誤変換されている、といったことも起きます。名前は返信の宛名に使うので、明らかな誤変換に気づいたら、返信の中でさりげなく確認します。
そして、添付が付いていないことが増えます。資料を添えてくださいと書いてあっても、その場で用意できないため、本文だけ送られます。添付が必須の受付では、後から追加で送れる経路を用意しておくと、申し込み自体を取りこぼしません。
送信の時間帯が偏る
スマホからの送信は、時間帯が偏ります。通勤の時間帯、昼の休憩、夜の遅い時間に集まります。事務所の営業時間内に届くとは限りません。
この偏りは、返信の設計に効きます。夜に届いたものに夜のうちに返すと、送る側は返信も夜に来るものと期待するようになります。期待に応え続けられないなら、最初から返さないほうが健全です。
代わりに、自動返信で時間帯の話を吸収します。受け付けた時刻と、返信は営業時間内に行うことを一行書いておけば、夜に送った人も待てます。この一行があるかないかで、翌朝の催促の数が変わります。
受け手が使う端末を決めつけない
送る側がスマホだからといって、受ける側もスマホに寄せきるのは誤りです。実際には、団体の中でも人によって使う端末が違います。
事務所の常勤はパソコン、現場のスタッフはスマホ、理事は自宅のパソコンかタブレット。この混在が普通の状態です。どれか一つに最適化すると、他の人が使えなくなります。
必要なのは、同じ情報がどの端末からでも同じように見えることです。パソコンで割り当てた担当が、スマホの一覧にも反映されている。スマホで付けた状態が、パソコンの画面でも同じに見える。この一致がないと、端末ごとに別の管理が生まれます。
送ってくる側の端末も、実は一様ではありません。参加を申し込む学生や現役世代はスマホが中心ですが、寄付や遺贈の相談は、パソコンから時間をかけて書かれることが多くなります。前者に合わせて設問を極限まで削ると、後者の人が伝えたいことを書く場所がなくなります。
だから、削るのは必須の欄で、自由記述の欄は残します。短く送りたい人は選択肢だけで送れて、詳しく書きたい人は自由記述に書ける。この両立ができていれば、端末の違いは問題になりません。
現場で通知をどう受けるか
現場から返せる形を作っても、届いたことに気づかなければ意味がありません。通知の設計が要ります。
全部の通知を全員に飛ばすと、現場の作業中に鳴り続け、やがて全員が通知を切ります。切られた通知は無いのと同じです。飛ばす対象は、自分に割り当てられたものだけに絞ります。
通知を切っている人がいることも前提にします。通知に頼らず、決まった時間に一覧を開く習慣を作るほうが確実です。現場の休憩の時間に一度開く、と決めておけば、通知の有無に関わらず気づけます。
急ぐものだけ別の経路で伝える方法もあります。当日の参加の取り消しや、現場に向かっている人からの連絡は、フォームではなく電話で来ることが多く、そちらは元から別経路です。フォームの通知は急がないものとして扱い、決まった時間に確認する。この切り分けができていると、現場の集中が途切れません。
受ける側がスマホで返すときに要るもの
ここからが、多くの団体で手つかずになっている側です。現場から返すために何が要るかを整理します。
一覧が縦に読めるか
パソコン向けの表をそのまま小さい画面で出すと、横にスクロールしないと中身が読めません。指で横にずらしながら一件ずつ確かめる作業は、現場では続きません。
必要なのは、一件が縦に積まれた形で読めることです。名前、用件、届いた日時、担当、状態。この五つが縦に並んでいれば、一覧をなぞるだけで状況が分かります。
さらに、絞り込みが指でできることも要ります。未返信だけ、自分の担当だけ、期限を過ぎたものだけ。この三つの切り替えが数回のタップでできれば、現場の空き時間に確認できます。
一覧の並び順も効きます。新しいものが上に積み上がる並びだと、古い未返信は下に沈んで見えなくなります。現場では下までスクロールしないので、沈んだものはそのまま忘れられます。古いものや期限を過ぎたものが上に来る並びを選べるかどうかを確かめておきます。
担当を変える操作が指でできるか
現場から全部を返すのは無理でも、振り分けだけならできます。届いたものを見て、これは会計、これは代表、これは自分、と割り当てるだけなら、数十秒で終わります。
振り分けだけでも現場からやっておくと、事務所にいる人がその後を進められます。全部を持ち帰る形に比べて、返信までの時間が半日から一日縮みます。
この操作が小さい画面でできるかどうかは、実際に触って確かめます。画面の作りによっては、割り当ての操作が細かい選択に依存していて、指では押しにくいことがあります。動きを事前に見ておきたいときは、動くところを見るから触れます。担当を割り当てる操作と、状態が変わる様子を通しで見られるので、現場から使えるかどうかを判断できます。
ひな型が手元から呼び出せるか
現場から返す場合、長い文章は書けません。ひな型を呼び出して、日付と名前だけ差し込んで送る形になります。
ひな型が個人のパソコンの中にあると、現場からは使えません。全員が同じ場所から取り出せる状態にしておく必要があります。参加の受付、日程候補の提示、当日案内、寄付の受付、振込先の案内。この五つが手元から呼べれば、現場からでも大半が返せます。
ひな型は完成品にせず、差し込む箇所を明示した形にします。急いでいるときほど、差し込み忘れたまま送る事故が起きるので、差し込む場所が目立つ書き方にしておきます。
ひな型の数は絞ります。二十も三十もあると、小さい画面から探す時間のほうが長くなり、結局その場で書いたほうが早くなります。現場から使うものは五つまでにして、それ以外は事務所で使う分として分けておくと、選ぶ時間がかかりません。
見せてよい範囲を絞れるか
現場にいる人全員に、寄付の名義や金額まで見せる必要はありません。参加者の連絡先や相談の内容も、必要な人だけが見られる状態が望ましいものです。
役割ごとに見える範囲を分けられるかどうかは、現場から使えるかどうかを実際に左右します。分けられなければ、見せてよい人にしか端末を渡せず、結局その人が現場にいる時間帯しか処理できません。
役割と権限の分け方については、よくある質問に関連する説明があります。人数や役割ごとに何ができるかが整理されているので、体制を決めるときに参照できます。
現場から返してよいものと、机に持ち帰るもの
現場から全部を返そうとすると、質が落ちます。何を現場で返し、何を持ち帰るかを先に決めます。
現場から返してよいのは、答えが決まっているものです。活動日、集合場所、持ち物、駐車場の有無、見学の可否、振込先。ひな型があれば数十秒で返せます。これらを現場で片付けるだけで、事務所に戻ったときの残りが半分近くになります。
現場から返してよいもう一つは、一次返信です。中身に答えられなくても、受け取ったことと、いつまでに回答するかは返せます。「確認して二営業日以内にご連絡します」の一通が出ていれば、送った側は放置されていないと分かります。返信の速さは、答えが出るまでの時間ではなく、最初の反応までの時間で評価されます。
持ち帰るのは、判断が要るものと、書き方に気を遣うものです。断りの返信、苦情への返信、企業からの提案への回答、条件を提示する返信。これらを片手で急いで書くと、後で読み返して困る文面になります。
持ち帰ると決めたものには、その場で印を付けます。印を付けておけば、事務所に戻ったときに探さずに済みます。印を付けないと、戻ったときに一覧を最初から読み直すことになります。
現場で書いた文面の質を落とさない工夫
急いで片手で書いた文面は、後から読むと素っ気なく見えることがあります。宛名が抜けている、結びがない、要件だけが並んでいる。本人は普通に書いたつもりでも、受け取った側には冷たく映ります。
これを防ぐには、ひな型の側に礼儀の部分を全部入れておきます。宛名の差し込み、冒頭の一文、結びの一文、署名。書く人が触るのは真ん中の内容だけ、という形にすれば、急いでいても文面の質は落ちません。
もう一つは、送信の前に一度読み返す習慣です。現場では省かれがちですが、返信の本文が三行なら読み返しは数秒で済みます。読み返す時間も取れないほど急いでいるなら、それは持ち帰る対象です。
音声で入力する方法もあります。歩きながら本文を吹き込んで、送信の前に整える。誤変換は必ず出るので、そのまま送らずに一度目で確認することが前提になります。
個人のスマホを使うときの取り決め
NPOの現場では、団体が支給した端末ではなく、個人のスマホを使うことがほとんどです。ここには取り決めが要ります。
決めるのは四つです。画面の鍵をかけること、共有の場所以外に内容を保存しないこと、退任や退職のときに接続を切ること、端末を失くしたときにすぐ連絡すること。この四つを書面にして、窓口を担当する人に渡します。
内容を端末に保存しないという点は、実務上いちばん破られやすい部分です。参加者の名簿を写真に撮る、連絡先を端末の電話帳に入れる、資料をダウンロードして残す。どれも便利なので、意識していないと起きます。必要な情報は毎回共有の場所から見る形にしておけば、保存する動機が減ります。
この点については、法律上の考え方も示されています。
個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
具体的にどこまでの措置が必要かは、団体の規模と扱う情報の種類によって変わります。個人の端末を業務に使う場合の取り扱いについては、所管の窓口や専門家に確かめてください。少なくとも、誰がどの端末からどの情報にたどり着けるかを把握できていない状態は避けます。
退任や交代のときの手順も、あらかじめ決めておきます。辞める人が自分で接続を切ることを期待すると、まず実行されません。事務局側で接続を切れる形にしておき、交代の手続きの中に組み込みます。
実際に自分たちで送って確かめる
スマホ対応ができているかどうかは、仕様を眺めても分かりません。自分たちの端末で、実際に送ってみるのが唯一の確かめ方です。
確かめる手順は決まっています。まず、団体のサイトのトップからフォームまでたどり着けるかを見ます。入口が階層の奥にあると、そこで離脱します。次に、実際に最後まで入力して送信します。このとき、時間を計ります。三分を超えるなら設問が多すぎます。
送信したら、送信後の画面に何が出るかを見ます。何も出ずに元のページに戻る作りだと、送った側は届いたか分かりません。続いて、自動返信が届くかを見ます。届くまでの時間と、スマホで読んだときの見え方を確かめます。
そのうえで、受ける側の画面をスマホで開きます。いま送った一件が一覧に出ているか、担当を割り当てられるか、返信を書いて送れるか。ここまでを通しで試して初めて、現場から使えるかどうかが分かります。
確かめる人は、フォームを作った人以外にします。作った人は操作を知っているので、詰まる場所に気づけません。現場のスタッフやボランティアに一度触ってもらうと、想定していなかった詰まりが見つかります。
この確認は、年に一度は繰り返します。端末の更新や設定の変更で、動きが変わることがあるためです。特に、通知が届くかどうかは静かに壊れるので、定期的に確かめる価値があります。
返せる時間帯をどう増やすか
ここまでの整理を踏まえて、時間帯の設計をします。返信までの日数は、返せる時間帯の合計で決まります。
一日の中で、返せる時間帯を書き出します。朝の事務所、現場の移動中、昼の休憩、現場の合間、夕方の事務所、夜。このうち、机の前にいるのはいくつでしょうか。多くの団体では、朝と夕方の二つだけです。
移動中と合間と昼休みをスマホで使えるようにすると、返せる時間帯が二つから五つに増えます。増えた三つで処理するのは、答えが決まっているものと一次返信だけです。それでも、届く量の半分以上はここで捌けます。
残りを朝と夕方に回せば、机の前での作業は判断が要るものだけになります。難しいものだけをまとめて処理するほうが、集中が切れず、質も上がります。
夜の時間帯をどう扱うかは、団体として決めます。夜に返せるようにすると、担当の負担が際限なく伸びます。夜は見ない、と決めるほうが長続きします。決めた時間帯だけで回るように、他の時間帯の効率を上げるのが順序です。
週末に活動が集中する団体では、平日と週末で別の設計が要ります。週末に届いたものを月曜に一気に処理する形だと、月曜が破綻します。週末のうちに振り分けだけでもしておけば、月曜の負担が分散します。
繁忙期には、この設計を一時的に変えます。イベントの募集期間、年度末に寄付が集中する時期、報道で取り上げられた直後。届く量が数倍になる時期は、現場から返す割合を上げるか、一次返信を全部定型に切り替えるかのどちらかで対応します。どちらを選ぶかは事前に決めておきます。当日になってから決めると、決める時間そのものが失われます。
時間帯の設計は、担当の負担を守るためのものでもあります。返せる時間帯を増やすことと、いつでも返せるようにすることは違います。増やすのは、決めた時間帯の中で処理できる量を増やすことであって、担当が常に画面を見ている状態を作ることではありません。ここを混同すると、仕組みを入れたことで担当が疲弊します。
スマホ対応を整えたあとに残ること
送る側の入力を軽くして、受ける側が現場から扱える形にすると、返信までの日数は確実に縮みます。そのうえで残るのは、これを何の上で回すかという問題です。
受信箱をスマホで見ている団体は多く、それで一次返信までは返せます。ただし、受信箱の中では担当と状態が持てません。誰が引き受けたのか、返したのかどうかが、現場からは分かりません。分からないと、二人が同じものに返信する事故が起きます。
表計算をスマホで開く形は、実際にはあまり機能しません。小さい画面で表を横に動かしながら列を編集する作業は、現場では成立しないためです。転記する運用にしている団体では、転記が事務所でしかできないので、現場からの処理が結局できません。
送信された内容そのものに担当と状態が付いていて、それを小さい画面で縦に読める形になっていれば、現場からでも振り分けと一次返信が回ります。送信されたあとの道具がそろっている状態であれば、机の前にいる時間の長さが返信の速さを決める、という構造から抜けられます。何がどこまでできるかは、できることで確かめられます。
費用の見通しも、体制を決める段階で立てておきます。現場のスタッフやボランティアを含めて何人がその画面を見るのかで、金額が変わる場合があるためです。人数と件数でどう変わるかは、料金で確かめられます。会費と寄付で運営している団体にとって、月々の固定費の意味は営利企業とは違うので、人数が増えたときにどう伸びるかまで見ておくと後から慌てずに済みます。
スマホ対応は、画面が小さくても崩れないかという見た目の話に見えて、実際には返信できる時間帯を何時間確保できるかという話です。現場を離れられない時間が長い団体ほど、ここを埋めた効果が大きく出ます。届いた申し出に早く応じられる状態を作ることは、団体が受け取れる関わりの量を直接増やします。
Q1. NPOの問い合わせフォームでスマホ対応というとき、何を確かめればよいですか?
送る側と受ける側の両方を確かめます。送る側は、選択肢で答えられるものが選択肢になっているか、電話番号の欄で数字のキーボードが出るか、郵便番号から住所が入るか、途中で中断しても入力が消えないか。受ける側は、一覧が縦に読めるか、未返信や自分の担当で絞り込めるか、担当の割り当てが指の操作でできるかです。片方だけでは効果が半分になります。
Q2. 現場にいる時間が長く、返信が朝と夕方に集中してしまいます。どうすればよいですか?
現場から返してよいものと、机に持ち帰るものを先に分けます。活動日や持ち物や振込先のように答えが決まっているものと、受け取ったことといつ回答するかを伝える一次返信は、現場からひな型で返せます。判断が要るものや断りの返信は持ち帰ります。移動中と合間で処理できる分が増えるだけで、机の前での作業は難しいものだけに絞れます。
Q3. 申し込みの途中で離脱されているようです。何を減らせばよいですか?
文字を打たせる欄です。都道府県、希望日、寄付の区分、返信の希望手段は選択肢にできます。自由記述は補足の一欄だけ残せば足ります。あわせて、用件の選択と連絡先までを最初のまとまりにして、詳しい設問を次に回します。最初のまとまりが短ければ入力を始めやすく、始めた人は途中でやめにくくなります。アカウント登録を求めるのも離脱の原因になります。
Q4. 個人のスマホで問い合わせを見てもらうとき、何を決めておくべきですか?
画面に鍵をかけること、共有の場所以外に内容を保存しないこと、退任や交代のときに接続を切ること、端末を失くしたらすぐ連絡することの四つを書面で渡します。特に保存しないという点は破られやすいので、必要な情報は毎回共有の場所から見る形にしておきます。接続を切る作業は本人任せにせず、事務局側でできる形にして交代の手続きに組み込みます。
Q5. 写真を送ってもらうと弾かれることがあります。どうすればよいですか?
スマホで撮ったままの写真は大きいため、上限が小さいと弾かれます。弾かれた送信者は縮小の方法を調べずに諦めるので、そのまま離脱につながります。受け取れる大きさと枚数と形式を先に確かめ、フォームの近くに書いておきます。上限を上げられない場合は、写真は返信のやり取りの中で送ってもらう形に切り替えるほうが、申し込み自体は取りこぼしません。
