工務店で問い合わせの件数を集計している会社は多いのですが、その数字が翌月の判断に使われている会社はぐっと減ります。月末に表を作り、前月と比べ、増えた減ったを確認して終わる。この形だと、集計の手間だけが毎月かかります。
数える対象を変えると、この状況は変わります。受付の件数そのものより、そこから現地調査に進んだ割合、見積まで出した割合、そして返信までにかかった時間を並べたほうが、次に何をすべきかがはっきりします。件数が減っていても調査に進む割合が上がっているなら、やるべきは集客ではなく別のことです。
この記事は、リフォームの相談と現地調査の依頼を受け付けている工務店の窓口を想定して、何を数えるのか、どう分けるのか、そして数えた結果をどう使うのかを順に書きます。
件数だけ数えても、次の手が決まらない理由
受付件数は結果の数字です。増えたか減ったかは分かりますが、なぜそうなったのかは分かりません。工務店の相談は季節、天候、地域の再開発、近隣での施工の有無といった外の要因で大きく振れるので、月ごとの増減の大半は自社の努力の外にあります。
打ち手に結び付くのは、件数と件数の間の割合です。問い合わせのうち何割が現地調査に進んだのか。調査した案件のうち何割に見積を出したのか。見積を出したうち何割が受注に至ったのか。この割合が落ちている場所が、手を入れるべき場所です。
たとえば受付件数が横ばいで、調査に進む割合だけが落ちているなら、問題は集客ではなく初回の返信にあります。広告を増やしても、同じところで落ちるだけです。
いま集計を増やさなくてよい場合
数える手間を増やす前に、そのままで足りる場合を確かめてください。
相談の件数が月に数件で、社長が全件を把握しているなら、集計を仕組みにする意味は薄くなります。頭の中にあるものを表にする作業が増えるだけです。この規模で価値があるのは、受注に至らなかった案件の理由を一行残しておくことくらいです。
もう一つは、受注が紹介と既存客でほぼ埋まっている場合です。新規の相談が判断材料として小さいなら、そこを細かく数えても打ち手は出ません。数えるべきは、既存客への接触の頻度のほうになります。
当てはまらない場合、つまり月に十件以上の相談があり、複数の経路から届いていて、複数人で受付を回しているなら、以下の数え方が効きます。
工務店の受付で意味を持つ五つの数
数える対象を増やしすぎると続きません。五つに絞ってください。
受付件数
すべての起点になります。数える単位は案件であって、メールの通数ではありません。同じ相談についてのやり取りが五往復あっても一件です。
ここで気を付けるのは、何を一件と数えるかです。同じ人が二度送ってきたもの、電話のあとにフォームからも送られたもの、家族が別々に問い合わせてきたもの。これらを別件として数えると、後ろの割合がすべて甘くなります。
同じ案件かどうかは、住所か電話番号で見るのが確実です。名字だけで判断すると、同姓の別案件と混ざります。
現地調査に進んだ割合
問い合わせのうち、実際に現地へ行けた案件の割合です。工務店の受付で最も重要な指標がここです。調査に行けなければ見積も出せず、受注もありません。
この割合が低いときの原因は、返信の遅さ、初回の文面に次の動きが書かれていないこと、対応エリア外の相談が多いこと、そして相談の内容が具体的でないこと。どれが効いているかは、次に説明する経路別の分け方で切り分けられます。
見積を出した割合
調査した案件のうち、見積の提出まで至った割合です。ここが落ちる原因は、調査から提出までに時間がかかりすぎていることが多く見られます。工務店では協力業者からの返答待ちが挟まるので、その待ち時間が長い案件ほど途中で消えます。
出せなかった案件については、なぜ出さなかったのかを残してください。相手が離れたのか、こちらが対応できないと判断したのか。この二つは意味がまったく違います。
受注に至った割合
見積を出したうち、契約に至った割合です。この数字は工事の種類によって大きく違うので、全体の平均を見ても判断に使えません。水回りの入れ替えと外壁の塗り替えと間取りの変更では、検討期間も競合の数も違います。種類ごとに分けて初めて意味を持ちます。
一次返信までの時間
受け付けてから最初の返信を出すまでの時間です。測るには、受け付けた時刻と返した時刻の両方が記録に残っている必要があります。メールの受信箱を見れば分かる、という状態だと、集計のたびに一件ずつ開くことになり続きません。
数字としては地味ですが、現地調査に進む割合と結び付きやすい指標です。相談者は複数社に声をかけているので、返信の順番がそのまま検討の順番になりがちです。
平均だけでなく、遅れた案件がどれくらいあったのかを見てください。平均が半日でも、週に二件だけ二日かかっているなら、その二件は失っている可能性が高くなります。
経路で分けると、打ち手が見える
五つの数を、届いた経路で分けます。工務店の場合、経路は次の四つに分かれます。
自社サイトの問い合わせフォーム
会社を見たうえで連絡してきているので、調査に進む割合は高くなりやすい経路です。ここが低いなら、フォームの項目が多すぎるか、返信が遅いかのどちらかを疑ってください。
サイトの訪問数に対する問い合わせの数も一緒に見ておくと、フォームの手前で落ちているのか、フォームの後で落ちているのかが分かります。
比較サイトと紹介サービス
一斉に複数社へ送られる仕組みが多いので、返信の速さがそのまま順位になります。件数は多くても調査に進む割合は低くなりがちで、それ自体は異常ではありません。
見るべきは、支払っている費用に対して受注が何件出ているかです。件数の多さに引きずられると、費用の割に合わない経路を続けてしまいます。
見学会とチラシ
顔を合わせている分、調査に進む割合は高くなります。ただし記入用紙を事務所に積んだまま数日置くと、その優位は消えます。イベントの翌営業日までに入力して連絡する運用にできているかどうかで、数字がはっきり変わります。
紹介と既存客
最も受注に近い経路です。件数は少ないので割合の分母が小さく、数字として不安定になります。ここは割合より、年に何件来ているかという実数で見るほうが実態に合います。
工事が終わった施主から次の相談が来るまでの間隔も、記録があれば見えてきます。水回りの工事の数年後に外壁の相談が来る、といった流れが見えたら、そのタイミングで案内を出す判断ができます。既存客の記録が案件として残っているかどうかが、ここでは効いてきます。
経路を分けて記録するには、受付の時点でどこから来たかが残る形が要ります。届いた相談を経路の別で持てるかどうかは、問い合わせの受付に窓口の流れとして整理されています。手作業で後から分類しようとすると、繁忙期に必ず抜けます。
電話とポータルの件数を同じ場所に集める
経路で分ける話には前提があります。すべての経路の相談が、同じ場所に集まっていることです。ここが崩れていると、割合の計算そのものができません。
工務店の受付でよく起きるのは、フォームからの相談は表計算の台帳に入っていて、電話は事務のノートにあり、比較サイト経由の相談はそのサイトの管理画面にだけ残っている、という三重の状態です。この状態では全体の件数すら正確に出せず、経路ごとの比較は当然できません。
解き方は二つあります。一つは、すべての経路の相談を受付の画面に手で入れてしまう形です。電話を取った人がその場で入れる、比較サイトの通知が来たら事務が入れる、と決めれば運用は回ります。入力の手間は一件あたり一分程度で、そのぶん一覧が一つになる利点のほうが大きくなります。
もう一つは、経路ごとの数字を別々に持ったまま、月に一度だけ合算する形です。手間は少ないのですが、案件ごとの状態を追えないので、割合の分析には向きません。件数の把握だけで十分な段階なら、これでも構いません。
どちらを選ぶかは、追いかけたい深さで決まります。受注までの割合を経路別に見たいなら、一つの場所に集める形しかありません。
一件あたりにかかっている費用を並べる
割合の次に効くのが、費用の側の数字です。工務店の集客には、比較サイトの掲載料と成約時の手数料、チラシの印刷と配布、検索連動の広告、見学会の会場費といった支出があります。
見るのは二つだけで足ります。経路ごとの、問い合わせ一件あたりにかかった費用と、受注一件あたりにかかった費用です。前者が安くても後者が高い経路はよくあります。件数だけ多くて受注に至らない経路が、まさにその形です。
比較サイトは一件あたりの問い合わせが安く見えることがありますが、成約時の手数料が加わると受注一件あたりの負担は変わります。契約の形によって計算に入れるものが違うので、支払っている項目をすべて並べてから計算してください。
見学会は会場費と人件費が先に出るので、一件あたりが高く見えます。ただ、そこから受注に至る割合が高い工務店では、受注一件あたりで見ると割に合っていることがあります。前段の割合とセットで見ないと判断を誤ります。
この計算は月ごとに出す必要はありません。四半期に一度で十分です。工務店の案件は受付から受注まで時間がかかるので、短い期間で切ると数字が跳ねます。
見積の金額と工期も一緒に残す
件数と割合だけを追っていると、見落とすものがあります。一件あたりの工事金額です。
受注の件数が同じでも、平均の金額が下がっていれば、売上は落ちます。逆に件数が減っていても、金額が上がっていれば問題ない場合があります。受注の件数と平均金額は、必ず並べて見てください。
工期も同じです。同じ金額でも、工期が長い工事は職人を長く押さえます。件数を追いかけて短工期の工事ばかり取ると、現場の稼働は上がっても利益が付いてこないことがあります。
受付の記録に、見積の金額と想定の工期を入れる欄を一つずつ足しておくと、この分析ができるようになります。受注しなかった案件の見積金額も残しておくと、どの価格帯で負けているのかが見えます。
工事の種類で分ける
経路と並んで効くのが、工事の種類での分類です。水回り、外壁と屋根、内装、間取りの変更、断熱と耐震、外構。この単位で受注の割合と平均の工事金額を並べると、どこに力を入れるべきかが見えます。
件数が多くても受注の割合が低い種類があるなら、そこは相談の質が合っていないか、他社との競争が激しい領域です。逆に件数は少ないのに受注の割合が高い種類があるなら、そこを増やす手立てを考える価値があります。
工務店の場合、社内の得意不得意もここに現れます。職人の手配が付きやすい工事は段取りが早く、相手を待たせないので受注に至りやすい傾向があります。数字で見ると、感覚で思っていた得意分野と違う結果が出ることがあります。
季節の振れを前提に読む
工務店の相談は、季節でかなり動きます。年度末に向けた時期、大型連休の前後、台風や積雪のあと、年末。前の月と比べる読み方は、この振れに飲まれます。
比べるなら前年の同じ月です。少なくとも一年分の記録がたまるまでは、月ごとの増減に意味を求めないほうが安全です。
天候による突発の相談も分けて記録しておいてください。台風のあとの雨漏りの相談は、通常の集客の成果ではありません。ここを混ぜると、広告の効果を読み違えます。
失注の理由を残す
数字の中でいちばん役に立つのに、いちばん残っていないのがこれです。理由が分からないまま失注が積み上がると、直す場所が分かりません。
受注できた案件の理由も、同じように一行残しておく価値があります。何が決め手になったのかが分かれば、その要素を初回の返信や見積の説明に組み込めます。対応の速さだったのか、提案の内容だったのか、金額だったのか。担当者の見立てで構いません。
理由の分類は五つで足ります。金額が合わなかった、時期が合わなかった、他社に決まった、工事そのものをやめた、連絡が取れなくなった。担当者が案件を閉じるときに一つ選ぶだけの形にしておけば、入力の負担はほとんどありません。
相手に直接聞けないことも多いので、担当者の見立てで構いません。正確さより、傾向が見えることのほうが大事です。三か月分たまれば、どこで負けているかは見えてきます。
「連絡が取れなくなった」が多いなら、追いかけの手順に問題があります。「時期が合わなかった」が多いなら、繁忙期の受け方を見直す価値があります。
数え方を運用に埋め込む
集計の仕組みで失敗する原因はほぼ一つで、月末にまとめて集計しようとすることです。
手で集計しない
案件の一覧が表計算のファイルにあり、月末に関数で集計する形は、最初のうちは回ります。ただ、入力の抜けがあると数字が合わず、合わせる作業に時間を取られます。しかも入力する人が複数いると、書き方がそろいません。
現実的なのは、案件の状態を進めるだけで数字が出る形です。受付、返信済み、調査日決定、調査完了、見積提出、受注、失注。担当者が状態を進めれば、割合は自動的に計算できます。
無料で使えるフォームでも、回答を表に集めるところまでは十分にできます。分かれ目は、そのあとの状態管理をどこでやるかで、その違いはGoogleフォームとの比較にまとまっています。表計算を使い続けるか、受付の画面の中で状態を持つかという選択になります。
状態の数を増やしすぎない
状態を細かく分けたくなりますが、七つ程度に抑えてください。細かいほど入力が面倒になり、更新されなくなります。更新されない状態管理は、集計としては何の役にも立ちません。
誰が更新するかを決める
状態を進めるのが担当者なのか、事務なのかを決めておきます。決めていないと、両方が更新して食い違うか、どちらも更新しないかのどちらかになります。現場に出ている担当者に更新を求めるなら、スマートフォンから数秒で操作できることが前提になります。事務所のパソコンでしか触れない形だと、更新は必ず遅れます。
機能としてどこまでできるのかはできることに並んでいて、実際の画面で一覧と状態がどう見えるのかは動くところを見るで確かめられます。
途中で止まっている案件を数える
割合の話は、終わった案件を対象にします。それとは別に、いま止まっている案件が何件あるのかを見る指標が要ります。
工務店の受付では、案件が静かに止まります。返信を出したまま相手から返事が無いもの、調査の日程を調整中のまま二週間過ぎたもの、見積を出したまま連絡していないもの。どれも失注として閉じられていないので、割合の計算には現れません。
止まっている案件を放置すると、二つの損が出ます。一つは、追いかければ動いたはずの案件を失うこと。もう一つは、分母に残り続けて割合を読みにくくすることです。
対策は単純で、最後にやり取りした日から一定の日数が過ぎた案件を一覧で見られるようにしておくことです。週に一度その一覧を開き、追いかけるか閉じるかを決めます。この作業を十分入れるだけで、取りこぼしは目に見えて減ります。
工務店の場合、相手の検討期間が長い案件は珍しくありません。だから閉じる判断も急がなくてよいのですが、放置と保留は別ものです。保留にするなら、いつ連絡するかを決めて記録に残してください。
数えた結果を何に使うか
数字を出す目的は、翌月の判断を変えることです。工務店の受付で、実際に判断が変わるのは次の三つです。
広告と経路への配分
経路ごとの費用と受注の数が並べば、どこを増やしてどこを減らすかが決まります。比較サイトの費用が受注に見合っていないなら、その分を自社サイトの整備や見学会に回す判断ができます。
ここで必要なのは、経路別の受注件数と、そこにかかった費用の二つだけです。細かい分析は要りません。
人の配置と返信の当番
一次返信までの時間を曜日別に見ると、遅れが特定の曜日に偏っていることが分かる場合があります。現場が集中する日、打ち合わせが多い日。そこに返信の当番を置くだけで、遅れは減ります。
フォームの項目
調査に進まなかった案件の内容を見返すと、聞くべきだった項目と、聞かなくてよかった項目が見えます。エリア外の相談が多いなら地域を先に聞く、工事の内容が不明なものが多いなら選択肢を用意する。フォームの手直しは、集計から直接つながる打ち手です。
項目を足すときは、必ず一つ減らすことを考えてください。入力が長くなるほど、送信の前に離脱する人が増えます。増やした項目が調査に進む割合を押し下げていないか、変更した月の前後で確かめる習慣を付けると、判断が積み上がっていきます。
受け付ける時間帯と定休日の扱い
受付日時の記録がたまると、相談が届く時間帯の偏りが見えます。夜間に集中している、日曜に多い、といった傾向が出た場合、そこに返信の手を用意するかどうかは判断の対象になります。
定休日の翌日に返信が滞る工務店は多く、そこが調査に進む割合を下げていることがあります。休みの日に届いた相談へ、自動の受付連絡だけでも返るようにしておくと、翌営業日までの間が持ちます。
数字を社内でどう共有するか
集計を続けられるかどうかは、出した数字が誰かに読まれるかどうかで決まります。誰も見ない数字を作り続けられる人はいません。
現実的なのは、朝礼か週の初めの短い時間に、三つだけ読み上げる形です。先週の受付件数、調査日が決まった件数、返信が遅れた件数。この三つなら一分で共有できます。
数字を人の評価に使わないことも、続けるうえでは大事です。担当者ごとの受注率を並べて競わせると、入力が歪みます。見込みの薄い案件を早めに失注として閉じる、状態の更新を遅らせる、といった動きが出ると、数字そのものが使えなくなります。
見せる相手によって粒度を変えるのも有効です。職人や協力業者に伝えるべきなのは、来月どれくらいの工事が動きそうかという見通しであって、割合ではありません。受注の見込みが立っている案件の数と規模が分かれば、人の手配ができます。
数えるために受付の手間を増やさない
集計の仕組みを作るとき、いちばん避けたいのは、受付の担当者の作業が増えることです。作業が増えれば、繁忙期に真っ先に省かれます。
工務店の窓口は、電話を受け、現場と連絡を取り、来客に対応しながら受付を回しています。ここに月末の集計作業を足すのは現実的ではありません。案件の状態を進めるという通常の作業だけで数字が出る形にしておく必要があります。
入力の項目も、選ぶだけで済む形にしてください。工事の種類、経路、失注の理由。これらは選択肢から選ぶ形にすれば、入力は数秒で終わります。自由記入にすると表記がそろわず、集計のときに手作業での分類が必要になります。
数字が合わないときは、入力を責める前に、入力しづらい形になっていないかを見てください。項目が多い、どこに入れるか分かりにくい、あとから直せない。この三つのどれかであることがほとんどです。
数字を扱うときに間違えやすい点
集計で判断を誤る原因は、だいたい三つに絞られます。
一つ目は母数の取り違えです。受注の割合を出すとき、分母を受付件数にするのか、見積を出した件数にするのかで、まったく違う数字になります。どちらを見ているのかを毎回そろえてください。
二つ目は期間のずれです。工務店の案件は受付から受注まで数か月かかることがあります。今月の受注は、数か月前の受付から生まれたものです。今月の受付件数と今月の受注件数を並べて割合を出すと、意味のない数字になります。案件ごとに受付日を持ち、その受付日を基準に追いかけてください。
三つ目は二重計上です。同じ相手からの複数の問い合わせ、電話とフォームの重複、家族からの別々の相談。受付の時点で名寄せができていないと、分母が膨らんで割合が下がります。
これに加えて、件数が少ない月の割合を真に受けないことも押さえておいてください。受付が五件の月に受注が一件あれば二割ですが、この二割に意味はありません。工務店の受付規模では、割合を月ごとに読むと振れが大きすぎます。三か月をまとめた数字で見るほうが実態に近くなります。
営業の担当者が持っている案件と、受付に記録されている案件が食い違うこともよくあります。展示場や現場で直接受けた相談が記録に入っていないと、受注だけが記録の外から現れます。受注の数が合わないときは、まずここを疑ってください。
サイト側の数字と受付の数字をつなぐ
問い合わせが減っているとき、原因が受付にあるのかサイトにあるのかを切り分ける必要があります。ここで見るのが、サイトの訪問数と問い合わせ件数の関係です。
訪問数が減っていて問い合わせも減っているなら、原因は集客の側にあります。訪問数は変わらないのに問い合わせだけ減っているなら、フォームの手前か中で落ちています。項目を増やした、フォームの位置を変えた、表示が崩れている。心当たりのある変更を時期と突き合わせてください。
工務店のサイトでは、スマートフォンからの訪問が大半を占めます。パソコンの画面で作ったフォームが、スマートフォンでは入力しづらくなっていることがあります。実際に自分の端末から送信まで試してみるのが、いちばん早い確認方法です。
施工事例のページを見てから問い合わせに至る動きも、工務店では強く働きます。どの事例のページからフォームに来ているかが分かると、増やすべき事例の種類が決まります。ここまで見るには、サイトの計測と受付の記録を突き合わせる必要がありますが、月に一度で十分です。
数字にしたあとの元データをどうするか
集計のために、氏名と住所を含む案件の情報を長く持ち続ける必要はありません。割合の計算に使うのは、受付日、経路、工事の種類、状態、金額といった項目で、個人が特定できる情報は不要です。
個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない。 出典: 個人情報の保護に関する法律 第22条 e-gov.go.jp
集計の記録と、個人が特定できる案件の情報を分けて持てるようにしておくと、期限が来たものから消しやすくなります。どこまでを保存する必要があるかは事業の形によって変わるため、判断が要る場面は所管の窓口や専門家に確かめてください。
何から始めるか
いきなり全部をそろえようとすると続かないので、順番を決めます。
最初の一か月は、受付件数と経路の二つだけを正確に取ってください。この二つが正しく取れていないと、後ろのすべてが狂います。名寄せの基準を決め、電話で受けたものも同じ場所に入れる運用にします。
二か月目に、状態の管理を足します。調査日が決まったかどうか、見積を出したかどうか。この二つが入るだけで、どこで落ちているかが見えるようになります。
三か月目から、失注の理由を残し始めます。ここまで来ると、判断に使える材料がそろいます。前年の同じ月と比べられるようになるのは一年後なので、それまでは月ごとの増減ではなく、割合の推移を見てください。
費用の考え方については料金にまとまっているので、受付の仕組みにかける費用と、経路ごとに払っている費用を並べて見ておくと判断しやすくなります。細かい疑問はよくある質問にも集まっています。
記録を取り始めた最初の数か月は、数字が悪く見えます。これまで把握できていなかった取りこぼしが表に出るからです。調査に進む割合が思ったより低い、返信が遅れている件数が多い。この段階で落ち込む必要はなく、見えていなかったものが見えただけです。むしろ、そこが手を入れられる場所として特定できたということになります。
半年ほど続けると、季節による動きの形が分かってきます。繁忙期の前にどれだけ相談をためておくべきか、職人の手配をいつ始めるべきか。こうした段取りの判断に数字が使えるようになると、集計は月末の作業ではなく、仕事の一部になります。
集計は、増やせば増やすほど良くなるものではありません。工務店の受付で判断を変えられる数字は、実のところ多くありません。五つの数と、経路と工事の種類という二つの分け方。ここまでで、翌月に何をするかは決まります。それ以上を求める前に、決めた数字が毎月そろっているかどうかを先に確かめてください。数字がそろわない原因は、たいてい入力の運用にあります。項目を増やす前に、いま決めている項目が全件で埋まっているかどうかを確かめてください。埋まっていない項目を増やしても、判断の材料は増えません。
Q1. 問い合わせの件数以外に、まず何を数えればよいですか?
問い合わせのうち現地調査まで進んだ割合です。工務店の受付では、調査に行けなければ見積も受注もありません。この割合が落ちていれば、集客ではなく初回の返信に原因があります。あわせて受付から一次返信までの時間を残しておくと、調査に進まない理由の切り分けが早くなります。この二つだけでも、翌月の打ち手はかなり絞れます。
Q2. 同じ人からの複数の問い合わせは、どう数えればよいですか?
住所か電話番号で名寄せして一件にまとめてください。名字だけで判断すると同姓の別案件と混ざります。電話のあとにフォームからも届く、家族が別々に送ってくる、といった重複は日常的に起きます。名寄せをしないと分母が膨らみ、調査に進む割合も受注の割合もすべて低く出てしまい、どこを直せばよいのかの判断ができなくなります。
Q3. 前の月と比べるのでは駄目なのですか?
工務店の相談は季節で大きく振れるため、前の月との比較はほとんど意味を持ちません。年度末に向けた時期や台風のあとは、集客の成果とは無関係に増えます。比べるなら前年の同じ月です。一年分の記録がたまるまでは、月ごとの増減ではなく割合の推移を見てください。件数の少ない月の割合を真に受けず、三か月をまとめた数字で読むことも大切です。
Q4. 失注の理由はどう残せばよいですか?
分類を五つに絞ってください。金額、時期、他社に決定、工事の中止、連絡が取れなくなった。担当者が案件を閉じるときに一つ選ぶ形にすれば入力の負担はほとんどありません。相手に直接聞けない場合は担当者の見立てで構いません。三か月分たまれば、どこで負けているかの傾向が見えます。受注できた案件の決め手も同じ形で残しておくと、返信や見積の説明に活かせます。
Q5. 集計のために案件の情報はいつまで持つ必要がありますか?
割合の計算に使うのは受付日、経路、工事の種類、状態、金額といった項目で、氏名や住所は不要です。集計用の記録と個人が特定できる情報を分けて持てるようにしておくと、期限の来たものから消しやすくなります。保存が必要な期間は事業の形によって変わるため、所管の窓口や専門家に確かめたうえで、社内の基準として決めておいてください。
