工務店の問い合わせに返す文面をひな形にしておきたい、という相談はよく出ます。毎回ゼロから書いていると時間がかかり、書く人によって中身がばらつき、忙しい週には返信そのものが遅れるからです。
ただ、ひな形を作るだけでは受注は変わりません。効くのは、初回の返信で相手の次の動きが決まるかどうかです。読んだ相手が「では何をすればいいのか」で迷わない文面になっていれば、日程は決まり、写真は届き、話は前に進みます。逆に丁寧なだけの文面は、読まれて終わります。
この記事は、リフォームの相談と現地調査の依頼を受け付けている工務店の窓口を想定して、場面ごとの文面と、その文面が何を狙っているのかを書きます。そのまま使える形で並べますが、大事なのは文言よりも、どこに何を置くかという組み立てのほうです。
初回の返信で決まってしまうこと
リフォームの相談をする人は、たいてい同時に複数の会社へ声をかけています。二社から三社が一般的で、比較サイト経由ならもっと多いこともあります。その中で、返信が早く、次に何をすればよいかが分かる会社が残ります。
相談者の側から見ると、初回の返信で判断しているのは三つです。話が通じているか、この先どう進むのか、そして急かされないか。この三つに答えていれば、文面の丁寧さや長さは大きな差になりません。
逆に、よくある失敗も三つに絞られます。一つは、届いたことの通知だけで終わる文面。二つ目は、こちらの都合で日程を一つだけ提示して相手に合わせさせる文面。三つ目は、いきなり来店を求める文面です。どれも相手の次の動きを止めます。
いまのやり方でそのまま足りる場合
先に、ひな形を作らなくてよい場合を書いておきます。相談の大半が既存客からの電話で、担当者が一人で完結しているなら、文面を型にする意味は薄くなります。電話で決めてしまうほうが早く、ひな形は使われないまま古くなります。
紹介が中心の工務店も同じです。紹介で来る相談は、最初から信用の前提が違うので、定型の文面はかえって距離を感じさせます。
ひな形が効くのは、返信を複数人で分担している場合、月に十件以上の相談が届く場合、そして繁忙期に返信が遅れがちな場合です。当てはまるなら、以下の型は時間の節約より品質の下支えとして働きます。
ひな形を作る前に決める三つのこと
文面を書き始める前に、運用の側を決めておかないと、ひな形は使われません。決めるのは三つです。
誰が返すのか
案件に担当が付いていない状態が続くと、返信の重複と抜けが同時に起きます。工務店では、営業が返すのか、現場監督が直接返すのか、事務が一次返信だけ出して後で担当を割り振るのか、会社によって形が違います。どれでも構いませんが、決まっていないのがいちばん悪い形です。
一次返信は事務が全件出し、内容の返答は担当が出す、という二段構えは小さな会社でも回りやすい形です。一次返信の時点で「担当から改めてご連絡します」と書いておけば、間が空いても相手は待てます。
いつまでに返すのか
目標を決めておかないと、忙しい日ほど後回しになります。営業日であれば当日中、休みの日に届いたものは翌営業日の午前中、といった基準を作り、届いた時刻と返した時刻が記録として残る形にしておいてください。
工務店の場合、現場に出ている時間帯が長いので、事務所に戻ってからでは遅くなります。スマートフォンから一次返信だけでも出せる形になっているかどうかが、実際の速さを決めます。
その返信で何を決めて終えるか
これがいちばん大事です。返信ごとに、終わったときに決まっているべきことを一つだけ決めておきます。初回なら現地調査の日、あるいは追加でもらう写真。日程調整の返信なら確定した日時。見積を送る返信なら次に話す日。決めるものが一つもない返信は、送っても状況が変わりません。
件名と差出人の名前で、開かれるかどうかが決まる
本文を練る前に、届いた通知が開かれるかどうかを考えておく必要があります。相談者は複数社に問い合わせているので、受信箱には似たようなメールが並びます。
件名には、会社名と相談の内容を入れてください。「お問い合わせありがとうございます」だけの件名は、どの会社からのものか分からず、他社の自動返信に埋もれます。「浴室の入れ替えのご相談について(株式会社△△)」のように、相手が自分の相談だと分かる語を入れると開かれます。
差出人の名前も同じで、担当者の個人名だけだと誰か分かりません。会社名と担当者名を並べてください。フリーメールのアドレスから返している場合は、迷惑メールの箱に入る割合が上がるので、自社のドメインのアドレスから出す形に変えておくのが確実です。
もう一つ、返信が届かない事故は一定の割合で起きます。相手のアドレスの入力間違い、迷惑メールへの振り分け、携帯のキャリアメールの受信設定。返信を出したのに反応が無い相手には、二日ほど待ってから電話をかける手順を決めておくと、取りこぼしが減ります。相手が電話番号を書いていない場合に備えて、フォームの必須項目をどう置くかも見直しどころです。
自動返信をどこまで使うか
送信直後に自動で返る文面は、置いておく価値があります。相談者は「送れたかどうか」を気にしていて、何も返らないと不安になり、別の会社へ行きます。
ただ、自動返信で終わらせてはいけません。自動の一通で書けるのは、受け付けたことと、いつまでに人が返すかの二点だけです。ここに「二営業日以内にご連絡します」と書いたなら、その約束は守る必要があります。守れない基準を書くくらいなら、書かないほうが安全です。
自動返信に会社の案内を長々と載せる例を見かけますが、この段階の相談者は読みません。短くして、人からの返信で中身を伝えるほうが効きます。
土日や夜間に届いた相談への対応も、ここで決めておきます。工務店は土日に現場や打ち合わせが入ることが多く、事務所に人がいない時間帯があります。自動返信の中で「土日にいただいたご相談は月曜日にご連絡します」と書いておけば、待たせても不信にはなりません。
初回の返信のひな形
相談内容がある程度具体的に書かれている場合の型です。相手が入力した内容をそのまま繰り返すのではなく、こちらが理解した内容として言い直すのが要点になります。言い直しがあると、相手は「読まれている」と分かります。
〇〇様
このたびは、浴室の入れ替えについてご相談をいただきありがとうございます。株式会社△△の□□と申します。
いただいた内容を、ユニットバスへの入れ替えをご検討中で、築二十年ほどの戸建て、来春までには終えたいというご希望として受け取りました。ご認識と違っていましたらお知らせください。
金額の目安をお出しするには、現地を拝見するのが確実です。調査には一時間から一時間半ほどいただきます。次の三つの中で、ご都合のよいものはありますでしょうか。
・平日の午前 ・平日の夕方 ・土曜日の午前
この中に合うものが無ければ、ご都合のよい曜日と時間帯をお知らせください。あわせて日程を調整いたします。
なお、調査の前に浴室の様子が分かる写真を三枚ほどいただけますと、当日の確認が早く済みます。入口から浴室全体が入る一枚、浴槽と洗い場の境目、窓のサッシの三枚で十分です。難しい場合は当日確認いたしますので、ご無理はなさらないでください。
型の要点は四つです。理解した内容の言い直し。所要時間の明示。選択肢を三つ出して選ばせる形。そして、写真をお願いしつつ「無くても進める」と書いておくこと。四つ目があるかどうかで、返信率がはっきり変わります。写真の準備を負担に感じて止まる人を取りこぼさないための一文です。
情報が足りないときの返信のひな形
「リフォームを考えています」だけの相談も届きます。ここで長い質問票を送りつけると止まります。聞くのは二つまでにしてください。
〇〇様
ご相談をいただきありがとうございます。株式会社△△の□□と申します。
ご検討の内容をうかがったうえで、進め方をご案内できればと思います。差し支えなければ、次の二点だけ教えていただけますか。
・気になっている場所(水回り、外壁、間取りなど、おおまかで結構です) ・お住まいの地域(市区町村まで)
いただいた内容によっては、その場でおおよその進め方をご案内できます。文章にしづらい場合は、お電話でもうかがいます。日中にご都合のよい時間帯を教えていただければ、こちらからおかけします。
聞く項目を二つに絞り、電話という逃げ道を用意しています。文章で説明するのが苦手な相談者は一定数いて、その人たちは質問が多いほど脱落します。
このとき、築年数や構造、予算の希望まで一度に聞きたくなりますが、我慢してください。二点に答えが返ってきた時点で、次の一往復で聞けます。順番に聞いていくほうが、結果として集まる情報は多くなります。
なお、地域を聞いているのは対応エリアの判断のためです。エリア外だと分かった時点で早めに伝えたほうが、相手にとっても親切になります。市区町村まで分かれば判断できるので、番地まで聞く必要はこの段階ではありません。
現地調査の日程を決めるひな形
日程は往復が増えやすい場面です。減らす方法は決まっていて、こちらから候補を三つ出し、駐車と立ち会いの条件を同時に聞くことです。
〇〇様
ご返信ありがとうございます。現地の調査につきまして、次の日程で伺えます。
・〇月〇日(火)10時から ・〇月〇日(木)16時から ・〇月〇日(土)10時から
あわせて、二点だけ確認させてください。
・当日ご一緒いただける方はどなたになりますか ・車を停められる場所はございますか(近隣の駐車場を利用する場合はこちらで手配します)
集合住宅にお住まいの場合は、来客用の駐車場の予約が必要なことがありますので、その旨も教えていただけると助かります。
日時と条件を一通で片付けるのが目的です。ここを分けて聞くと、確定までに三往復します。
現地調査の前日と当日のひな形
前日の連絡は、行き違いを防ぐ効果があります。短くて構いません。
〇〇様
明日〇月〇日10時にお伺いいたします。担当は□□が参ります。一時間から一時間半ほどお時間をいただきます。
床下や天井裏の点検口を拝見することがありますので、その周辺だけ物を避けておいていただけると助かります。それ以外のお片付けは不要です。
当日連絡がつく番号として、担当の携帯番号を記載しておきます。
「片付けは不要」と書いておくのは、相談者の負担を下げるために効きます。家の中を見られることへの抵抗は、想像より大きいものです。調査の直前に日程を延ばしたいと言われる案件の中には、片付けが間に合わなかったという理由が混じっています。
担当者の名前を前日に伝えておくのも、防犯上の意味があります。当日に知らない人が訪ねてくる状況を作らないためです。名刺の写真を添えている工務店もあります。
見積を送るときのひな形
見積を送って終わり、という返信は多く見かけます。ここで次の一手を書いておかないと、そのまま止まります。
〇〇様
先日はお時間をいただきありがとうございました。お見積りをお送りいたします。
ご要望を三つの案に分けています。それぞれ、何を優先したものかを一行ずつ添えました。中身についてご不明な点があると思いますので、来週のどこかで十五分ほどお電話でご説明できればと考えています。〇日か〇日の夕方はいかがでしょうか。
なお、今回の内容ですと工事は〇日ほどかかります。ご希望の時期に間に合わせる場合、〇月中旬までにご判断いただけると確実です。
金額の話だけでなく、判断の期限を示しているのが要点です。工務店の仕事は職人と資材の押さえがあるので、時期の話は自然に伝えられます。急かすのではなく、段取りの事実として書いてください。
検討が止まっている相手への追いかけ
見積を出したあと、返事が来ないまま数週間が過ぎる案件は必ず出ます。ここで送る文面は、催促にすると逆効果になります。
〇〇様
先日お送りしたお見積りについて、その後いかがでしょうか。
ご検討には時間がかかるものと思いますので、お急ぎでなければご返信は不要です。一点だけお伝えしておきたいのが、〇月以降は職人の予定が混み合うため、着工の時期が後ろにずれる見込みという点です。時期のご希望がございましたら、その点だけ早めにお知らせいただけますと調整いたします。
他社様とご比較中の場合も、内容について分かりにくい点があればご説明いたしますので、遠慮なくお知らせください。
「返信は不要」と書くことで、相手の心理的な負担を外しています。そのうえで、返事をする理由になる事実を一つだけ置いています。
断りを伝える返信
対応できない相談も届きます。エリア外、規模が合わない、内容が専門外。ここを放置すると評判に響くので、短くても返してください。
〇〇様
ご相談をいただきありがとうございます。恐れ入りますが、今回のご依頼につきましては、弊社の対応エリアから外れており、お引き受けが難しい状況です。
ご希望に沿えず申し訳ございません。同様の工事を扱う事業者をお探しの際は、お住まいの自治体の相談窓口や、地域の建築関係の団体にお問い合わせいただく方法もございます。
代わりの当てを一つ示すだけで、印象は変わります。特定の会社を名指しする必要はありません。
相見積もりだと分かっているときの書き方
比較されていることを前提にすると、書き方は変わります。他社を下げる書き方は避けてください。相談者は他社にも同じ相談をしていて、そこでも同じ話を聞いています。
有効なのは、判断の材料を渡すことです。見積の内訳で見るべき箇所、追加費用が出やすい工程、工期が延びる典型的な原因。こうした情報は、どの会社に頼むとしても役に立ちます。渡した側は信用されます。
書きすぎて長くなると読まれないので、三つまでに絞ってください。
経路によって文面を変える
同じ「問い合わせ」でも、どこから来たかによって相手の温度が違います。文面を一種類で回すと、どこかで噛み合わなくなります。
自社サイトのリフォーム相談のページから来た相談は、会社を見たうえで連絡してきています。施工の事例を見ている可能性が高いので、初回の返信で会社の説明を長く書く必要はありません。次の動きの提案に紙面を使ってください。
比較サイトや紹介サービス経由の相談は、複数社に一斉に送られている前提で考えます。相手はまだどの会社かを意識していないので、初回に会社の特徴を一行だけ入れる価値があります。長い自己紹介ではなく、扱っている工事の範囲と対応エリアを短く書く程度で十分です。返信の速さがそのまま順位になる経路でもあります。
見学会やチラシからの電話や記入用紙の場合、相手は顔を知っています。定型の文面をそのまま送ると距離が出るので、当日話した内容に触れる一行を足してください。
交流サイトのメッセージから来た相談は、文章が短く、断片的なことが多くなります。ここでいきなり長い返信を送ると読まれません。二往復でメールか電話に移す前提で、短く返すのが向いています。
経路ごとに何件届いていて、そのうちどれが現地調査まで進んでいるのかを見ておくと、どの文面に手を入れるべきかが分かります。届いた相談を経路の別で残しておく仕組みがあれば、この判断は数分で済みます。
電話で受けた相談にも同じ型を使う
工務店の受付は電話の比率が高く、そこで話した内容は文面として残りません。話が進んだあとで「言った言わない」になりやすいのはこの部分です。
電話を切ったあとに、話した内容を短くまとめて送る運用にすると、この問題はかなり減ります。長く書く必要はなく、決まったことだけを並べれば十分です。訪問の日時、当日ご一緒いただく方、こちらから持っていくもの、次に連絡する日。四項目で足ります。
この一通は、相手にとっても備忘になります。家族に相談する材料としても使われるので、金額の話が出ているなら、その場の口頭の数字ではなく「現地を見たうえで正式にお出しします」と書いておくのが安全です。口頭の概算がひとり歩きすると、後の見積の説明が難しくなります。
電話の内容を残す作業は面倒に見えますが、ひな形があれば一分で終わります。案件の記録として同じ場所に残れば、担当が休んだ日でも他の人が状況を答えられます。
集めた情報の使いみちを一行添える
返信の文面には、集めた情報を何に使うのかを添えておくと、後の説明が楽になります。写真は現地調査の準備に使うこと、住所は日程の調整と見積の作成に使うこと、協力業者に共有する場合があること。この三つを一行ずつ書いておくだけで十分です。
個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。 出典: 個人情報の保護に関する法律 第21条第1項 e-gov.go.jp
どこまでを通知や公表として扱えるかは事業の形によって変わるため、判断が要る場面は所管の窓口や専門家に確かめてください。受付の運用として決められるのは、案内をフォームの近くに置くのか、初回の返信に入れるのか、その両方にするのかという配置の問題です。
文体と長さの目安
工務店の返信は、堅すぎても軽すぎても浮きます。目安として、初回の返信は画面をスクロールせずに読める長さ、おおよそ四百字から六百字に収まる程度が扱いやすい範囲です。それ以上になると、次にしてほしい動きが埋もれます。
敬語は過剰にしないほうが読みやすくなります。二重敬語や、へりくだりすぎる表現は、かえって読みにくさを生みます。相手は工事の相談をしたいのであって、丁寧さを測っているわけではありません。
専門用語も抑えてください。ユニットバス、サッシ、点検口といった程度なら通じますが、下地、胴縁、ラス網といった語は伝わりません。使う必要があるときは、かっこ書きで一言添えるだけで読みやすさが変わります。
強調の記号を多用しないことも押さえておきたい点です。感嘆符や色付きの文字が並ぶ文面は、広告のように見えて信用を下げます。事実を短く並べるほうが、工務店の文面としては合います。
返信の抜けと重複を止める
ひな形の話とは別に、返信そのものの管理が要ります。文面が整っていても、返し忘れと二重返信が起きていれば台無しです。
返信したかどうかが表に残らないと、この二つは必ず起きます。とくに複数人で受付を回している場合、担当が決まる前の数時間に重複が集中します。誰かが返したことが他の人に見えるかどうかが分かれ目です。
工務店で起きやすいのは、現場に出ている担当者が移動中にスマートフォンから返し、事務所の担当者がそれを知らずにもう一通出す、という形です。防ぐには、返信の記録が案件の中に残る場所を一つに決めるしかありません。
もう一つは、担当者が「あとで丁寧に返そう」と思って寝かせた案件です。この寝かせは高い確率でそのまま忘れられます。一次返信だけ先に出しておく運用にしておけば、少なくとも相手を待たせません。
ひな形を運用に乗せる
文面を作っても、使われなければ意味がありません。使われる状態にするには三つの条件があります。
差し込む項目を最小にする
ひな形の中に埋める箇所が多いと、書く人はゼロから書くのと変わらない負担を感じます。相手の名前、工事の内容、日程の候補。この三つ程度に抑えて、それ以外は固定文にしてください。
返信の画面から呼び出せるか
ひな形が別の文書に保存されていて、毎回そこからコピーしてくる形だと、忙しい日には使われません。返信を書く画面から選べる状態になっているかどうかが、実際の使用率を決めます。届いた相談に対して誰が担当か、返したかどうかを同じ画面で持てるかどうかは、問い合わせの受付に窓口の流れとして整理されています。
無料で使えるフォームの多くは、集めるところまでは十分に働きます。分かれ目は、集めたあとに返信や状態の管理をどこでやるかで、その比較はGoogleフォームとの比較にまとまっています。表計算に落として管理を続けるか、受付の画面の中で完結させるかという選択の話になります。
使われないひな形は直す
作った文面のうち、実際に使われるのは半分程度に落ち着くのがふつうです。使われていないものは、場面に合っていないか、書き換えの手間が大きすぎるかのどちらかです。三か月に一度、送信済みの返信を見返して、ひな形からどれだけ書き換えられているかを見てください。毎回同じ箇所を書き換えているなら、そこを固定文にできます。
機能の側で何ができるのかはできることに並んでおり、返信の履歴や担当の割り当てが実際にどう見えるのかは動くところを見るで確かめられます。細かい疑問はよくある質問にも集まっています。
現地調査のあと、見積が出るまでの間をつなぐ
工務店の受付で相手が離れやすいのは、現地調査から見積提出までの数日から二週間です。この間に連絡が途切れると、相手は「忘れられているのでは」と思います。
つなぎの一通を型にしておいてください。調査の翌日に、拝見した内容の要点と、見積を出せる日を伝えるだけの短い文面です。日付を先に約束しておけば、相手はその日まで待てます。約束した日に間に合わないと分かった時点で、遅れることだけを先に伝える一通も用意しておくと、印象の落ち方が違います。
見積の作成に協力業者からの返答を待つ場面もあります。相手にとっては見えない事情なので、「設備の見積を取り寄せており、〇日にはお出しできます」と一行書いておくと、待っている理由が伝わります。
この期間の連絡は、内容よりも回数が効きます。長い文面を一度送るより、短い連絡を二回入れるほうが離脱は減ります。
断りを受けたあとにどう残すか
失注の連絡が来たときにも、返す一通があります。ここでの目的は取り返すことではなく、次につなぐことです。
他社に決めた理由を丁寧に問い詰めると、相手は答えづらくなります。書くとすれば、選択肢を一つだけ添える程度です。「今回はご縁がありませんでしたが、工事のあとで気になる点が出た際にはご相談ください」といった形にとどめます。
同時に、社内には理由を残してください。金額なのか、時期なのか、対応の速さなのか。理由が分からないまま失注が積み上がると、どこを直せばよいのか分からなくなります。相手に聞けない場合でも、担当者の見立てを一行残しておけば、後から傾向が読めます。
工務店の相談は、数年後にもう一度動くことがあります。断られた案件も情報として残しておく価値があり、そのために案件を消さずに状態だけ変えられる形にしておくと扱いやすくなります。
速さと中身、どちらが効くのか
返信のひな形を整えるとき、速さを取るか中身を取るかで迷う場面があります。工務店の受付に限れば、順番ははっきりしています。
先に効くのは速さです。相談者は複数社に声をかけていて、最初に返ってきた会社と話を進める傾向があります。中身が多少そっけなくても、当日中に返ってくることのほうが強く働きます。
ただし、速いだけの返信では次に進みません。速く返したうえで、その一通の中に「次に何をするか」が書いてあるかどうかで、現地調査に至る割合が変わります。だから型が要ります。速く出すために型を使い、型の中に次の動きを埋め込んでおく。この組み合わせが現実的な答えです。
効果を確かめるなら、見るのは三つです。受付から一次返信までの時間、初回の返信に対する返信率、そして現地調査まで進んだ割合。どれも受付の記録から数えられます。文面を変えた月と変える前の月を、前年の同じ月と並べて比べてください。工務店の相談は季節で振れるので、直前の月と比べても中身は読めません。
型を整える作業は地味ですが、返信を書く時間そのものが減り、書く人による差も減ります。忙しい週に品質が落ちない状態を作ることが、ひな形の本当の目的です。
手を付ける順番としては、初回の返信、日程調整、見積送付の三つから始めてください。この三つで、相談から受注までのやり取りの大半を覆えます。追いかけと断りの文面は、その後で足せば十分です。最初から十種類を用意しようとすると、作る途中で止まります。
作った文面は、社内の誰か一人に読んでもらってください。書いた本人には、専門用語の使いすぎや、次の動きが書かれていない箇所が見えなくなります。現場の職人に読んでもらうと、施主がどこで分からなくなるかを指摘してくれることがあります。受付の文面は、事務所の中だけで完成させないほうが良いものになります。
Q1. 初回の返信で、いちばん外してはいけない要素は何ですか?
次に何をすればよいのかが書いてあることです。届いたことの通知だけで終わる返信は、丁寧でも相手の動きを止めます。現地調査の候補日を三つ出す、追加でほしい写真を三枚だけ挙げる、といった具体的な次の一手を必ず入れてください。あわせて、相手が入力した内容をこちらの言葉で言い直すと、読まれていることが伝わり、認識の食い違いも早い段階で防げます。
Q2. 日程調整の往復を減らすにはどうすればよいですか?
こちらから候補を三つ出し、同じ一通で立ち会いの方と駐車の条件まで聞いてしまうことです。日時だけ先に決めて条件を後から聞くと、確定までに三往復します。集合住宅の場合は来客用駐車場の予約が要ることがあるので、その確認も同じ一通に入れてください。調査にかかる時間を先に伝えておくことも、相手が予定を組みやすくなります。
Q3. 見積を送ったあと返事が来ない相手には、どう連絡すればよいですか?
催促の形にしないことです。返信は不要と先に書いたうえで、返事をする理由になる事実を一つだけ添えてください。職人の予定が混み合う時期があること、着工の時期が後ろにずれる見込みであること。急かすのではなく段取りの事実として伝えると、時期の希望がある人だけが返してきます。他社と比較中の場合の断りやすさも残しておきます。
Q4. 対応できない相談にも返信すべきですか?
返してください。エリア外や専門外であっても、無返信は評判に響きます。三行で構いません。引き受けられない旨と、探し方の当てを一つ添える形で十分です。自治体の相談窓口や地域の建築関係の団体に問い合わせる方法がある、といった一般的な案内で足ります。特定の会社を名指しする必要はなく、断る理由を細かく説明する必要もありません。
Q5. ひな形を作っても使われないのですが、どうすればよいですか?
原因は二つに絞られます。差し込む箇所が多くて書き換えの手間が大きいか、返信を書く画面から呼び出せない場所に保存されているかです。埋める箇所は名前と工事内容と日程の三つ程度に抑え、返信を書くその場から選べる状態にしてください。三か月に一度、送信済みの返信で実際にどこを書き換えているかを見て、固定文に寄せると精度が上がります。
