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不動産会社で問い合わせの担当を決める|早い者勝ちをやめて手が空いた人に回す

2026年9月5日 ・ Halict編集部

不動産会社の問い合わせを誰が返すか。この振り分けを明文化していない会社は多く、たいていは「気づいた人が返す」という早い者勝ちで回っています。件数が少ないうちは問題ありません。ところが繁忙期に入ると、同じ問い合わせに2人が返信し、別の問い合わせは全員が見送って誰も返さない、という状態が同時に起きます。この記事では、内見と空室の問い合わせを受ける会社で、担当の振り分けをどう決めればよいのか、早い者勝ちをやめて手が空いた人に回す形にするために何が必要なのかを順番に整理します。

早い者勝ちが成り立たなくなる理由

まず、いまの方式のどこが限界なのかをはっきりさせておきます。早い者勝ちは、うまくいっているように見えて、実は3つの前提に支えられています。その前提が崩れると一気に破綻します。

全員に届くと、誰も自分ごとにしない

物件情報サイトからの反響を全員のメールアドレスに転送している会社は多くあります。見落としを防ぐつもりの運用ですが、受け取る側は「誰かが対応しているだろう」と考えます。全員が同じことを考えると、その1件は誰にも触られないまま夕方を迎えます。しかも、放置されていたことに気づくのは、たいてい相手から催促が来たときです。

心理の問題ではなく、構造の問題です。5人に同時に届く通知は、1人あたりの責任を5分の1にします。人数が増えるほど、誰も動かなくなる確率は上がります。全員に届けることと、誰かが必ず対応することは、まったく別の話です。

二重返信が起きる

放置と逆の現象も同時に起きます。2人が同じ問い合わせに気づいて、別々に返信する。返した内容が食い違えば、案内できる日時が2通り伝わることになります。受け取った側からは、社内で情報が共有されていないことがそのまま見えます。物件情報サイト経由の問い合わせは複数社に送られていることが多く、その比較の中で信頼を落とすのは避けたいところです。

早い者勝ちの方式には、返したことを他の人に知らせる手段が組み込まれていません。返信を出した本人が全員に「返しました」と連絡するしかなく、忙しい日にはそれが省かれます。省かれた瞬間に二重返信が起きます。

案内に出ている人の手元では、通知が届いても動けない

不動産会社の営業は、日中の多くの時間を外で過ごします。内見の案内、物件の調査、契約の立ち会い。そのあいだにも問い合わせは届きますが、運転中や案内中に返信を書くことはできません。通知は全員に届いているのに、実際に返せる状態にある人は1人か2人しかいない、という時間帯が毎日あります。

早い者勝ちは、この状況を前提にしていません。「気づいた人が返す」は、全員が机にいることを暗黙の前提にした方式です。現場を離れられない時間帯があるなら、その時間帯に誰が受けるのかを別に決めておく必要があります。

不動産会社でよく使われている振り分けの型

振り分けの決め方には、いくつかの型があります。どれが正しいということはなく、会社の体制と物件の持ち方によって向き不向きが変わります。まず4つの型を押さえてください。

物件で決める

管理物件や専任で預かっている物件に担当者が付いている場合、その物件への問い合わせはその担当者が受ける、という決め方です。物件の状況を知っている人が返すので、確認の往復が減ります。空室かどうか、鍵がどこにあるか、いつなら内見できるかを、その場で答えられることが多くなります。

弱点は、担当者が休みや外出のときに完全に止まることです。物件担当が案内に出ていれば、その物件への問い合わせは夕方まで動きません。物件で決める型を採るなら、担当者が不在のときに誰が代わりに受けるかを必ずセットで決めてください。決めていないと、いちばん反響の多い人気物件がいちばん止まる、という逆転が起きます。

当番制で決める

日ごと、あるいは午前と午後の時間帯ごとに、受付の当番を決める方式です。当番の人はその時間帯は外に出ず、届いた問い合わせの一次返信を出すことに専念します。誰が受けるかで迷う時間がゼロになるのが最大の利点で、一次返信の速さは4つの型の中でいちばん安定します。

弱点は、当番の人が物件の詳細を知らない場合があることです。ただし、一次返信は受け取った旨と確認中である旨を伝えるだけで成立するので、詳細を知らなくても出せます。当番は一次返信までを担い、確認と案内は物件を知っている人へ渡す。この分担にすると、当番制の弱点はほとんど消えます。

手が空いた人に回す

抱えている件数が少ない人へ順に割り当てる方式です。負荷が平準化されるので、特定の1人に集中しません。件数が多い会社ほど効果が出ます。ただし、この方式には前提があります。誰が何件抱えているのかが、その場で分かる必要があるということです。ここが見えていない状態でこの方式を採ろうとすると、結局は上長の勘で割り振ることになり、勘が外れたときに文句が出ます。

種類で決める

賃貸の内見、売買の見学、貸したい売りたいの相談、入居中の設備の不具合。この種類で受ける人を分ける方式です。返す内容がそれぞれ違うため、専門性がある会社ではこの型が最も自然に回ります。特に入居中の設備の不具合は、営業ではなく管理の担当が受けるべき連絡なので、種類での分岐は最初に入れておく価値があります。

この型の前提は、受け口で種類が分かることです。自由記述の本文を読んで判断していると、判断する人が渋滞の原因になります。問い合わせを受ける段階で種類を選ばせておけば、届いた一覧を見た瞬間に振り分けが終わります。フォームを作り直せない反響についても、どのサイトから来たかで大まかに分けておくだけで、判断の手間は減ります。

弱点は、種類が偏ったときに担当も偏ることです。繁忙期は賃貸の内見が全体の大半を占めるので、賃貸の担当だけが忙しくなります。種類で決める型を使うなら、繁忙期には賃貸の担当を増やす、といった調整をあらかじめ決めておいてください。

型を混ぜるときの決め方

実際には、1つの型だけで運用している会社はほとんどありません。混ぜるときは、順番を決めることが重要です。

一次受けと本担当を分ける

もっとも扱いやすいのが、一次受けは当番制、本担当は物件別、という組み合わせです。届いたものはまず当番が拾って一次返信を出し、種類と物件を見て本担当に渡す。当番は外に出ないので一次返信は速く、本担当は物件を知っているので確認が速い。それぞれの型の強いところだけを使えます。

このとき、渡した記録が残ることが条件になります。口頭で「これお願いします」と言って渡すと、受けた側が忘れます。渡した時点で担当者の欄が書き換わり、受けた側にも分かる形になっていれば、渡し漏れは起きません。

例外の扱いを先に決める

どの型を採っても、当てはまらない問い合わせが必ず来ます。物件が特定できていない、種類がどれにも当たらない、複数の物件にまたがっている。こうしたものは、迷っているあいだに時間が過ぎます。「判断が付かないものは当番が持つ」と決めておいてください。迷ったときの行き先が1つ決まっていれば、宙に浮く件はなくなります。

例外として扱われた件は、記録に残しておくと後で役に立ちます。同じ種類の例外が繰り返し出るなら、それは例外ではなく、型に組み込むべき分類です。1か月に5件も同じ形の例外が出るなら、選択肢を1つ足したほうが早く済みます。例外の記録は、受け口の項目を見直すときの材料にもなります。

一度に1つの型しか適用されない状態にする

混ぜるときに崩れやすいのは、複数の型が同時に適用されてしまう場合です。物件別では田中さんの担当、種類別では佐藤さんの担当、という状態になると、どちらも「相手が持っているだろう」と考えます。型を混ぜるときは、必ず優先順位を決めてください。種類で決めるものを先に振り分け、残ったものを物件別に回す、という順番を明文化しておけば、二重の担当は生まれません。

振り分けの単位は、問い合わせ1件にする

意外と見落とされるのが、何を1件と数えるかです。同じ人から3日連続で問い合わせが届いたとき、それは3件なのか1件なのか。ここが決まっていないと、担当も対応状況もばらつきます。

原則は、問い合わせ1件を単位にすることです。同じ人からの続きの連絡は、元の1件にひもづけて記録します。そうしないと、一覧の上で同じ人が3行に分かれ、それぞれ別の担当が付いて、別々の内容を返すことになります。物件が違えば別件として扱ってよいのですが、同じ物件についての続きの連絡は、必ず元の件に集めてください。

反響の場合、同じ人が同じ物件について複数のサイトから問い合わせてくることもあります。この重複に気づけるかどうかは、連絡先で検索できるかどうかにかかっています。電話番号かメールアドレスで過去の問い合わせを引ける状態にしておくと、重複した対応を避けられます。受け口の道具を選ぶときは、この検索ができるかどうかも見ておいてください。回答を受け取る仕組みと、それを後から探す仕組みが分かれていると、この確認に手間がかかります。どこまでが同じで、どこから違うのかはGoogleフォームとの比較に、回答を表計算ソフトで追うときの限界という観点から整理されています。

手が空いた人に回すために要るもの

負荷で振り分ける方式は理想的に見えますが、成立させるには前提の仕組みが要ります。ここを飛ばして方針だけ決めても回りません。

誰が何件抱えているかが見えること

まず、一覧を担当者で絞り込めることです。田中さんが今いくつ抱えているのかが3秒で分かる状態でないと、割り当ての判断ができません。メールの受信箱で回している場合、他の人の受信箱は見えないので、この判断は原理的に不可能です。負荷で振り分けたいなら、問い合わせが1つの一覧に集まっていることが出発点になります。

届いた問い合わせを一覧で持ち、担当と対応状況を付けて返信まで同じ画面で追う形については、問い合わせの受付に業種を横断した形でまとめられています。振り分けの方式を変える前に、まず一覧が作れているかを確かめてください。

抱えている件数ではなく、期限が近い件数で見る

単純な件数で比べると、実態とずれます。確認待ちで動かせない案件を10件抱えている人と、今日中に返さなければならない案件を3件抱えている人では、後者のほうが忙しい状態です。振り分けの判断に使うのは、総数ではなく、期限が今日か明日に迫っている件数です。

そのためには、案件ごとに次にやることの期限が入っている必要があります。期限の列がなければ、負荷は測れません。振り分けを負荷で決めたいなら、期限を持たせるところから始めてください。

外に出ている時間を共有する

誰がいつ案内に出ているかが分からないと、外出中の人に割り当ててしまいます。予定表を別に持っている会社は多いのですが、問い合わせの一覧と予定表が別々の場所にあると、割り当てのたびに2つを見比べることになります。せめて、当日の外出予定だけでも一覧の近くに置いてください。

割り当てたあとに必要な3つの約束

振り分けの方式を決めるだけでは足りません。割り当てたあとの扱いを3つ決めておくと、方式が形骸化しません。

受けたら、受けたと分かる

割り当てられた側が実際に着手したかどうかが分かる状態にしてください。担当者の欄が埋まっているだけでは、その人が気づいているかどうか分かりません。対応状況が未対応から一次返信済みに変わったことが、着手の合図になります。この1段があるだけで、割り当てたのに気づかれていない、という事故が防げます。

割り当てから着手までの時間が長い担当者がいたら、能力の問題ではなく、通知が届いていない可能性を先に疑ってください。外出が多い人ほど、事務所の画面を見る回数が少なくなります。割り当てられたことがその人の手元の端末に届く形になっているかを確かめると、原因が特定できます。

手放すときは、明示的に渡す

自分で対応できないと分かった時点で、別の人に渡します。このとき、担当者の欄を書き換えることを必ずやってください。「後で誰かに頼もう」と思ったまま自分の欄に残っていると、他の人からは対応中に見えます。渡す先が決まっていないなら、当番に戻す。戻す先が1つ決まっていれば、迷いません。

渡すときには、そこまでの経緯を一行添えてください。「管理会社に電話済み、担当者不在で折り返し待ち」の一行があるかどうかで、受けた側が同じ電話をかけ直すかどうかが決まります。同じ確認を二度することは、相手の会社にも迷惑がかかります。渡す作業に10秒かけて、受けた側の10分を節約する、という考え方で書いてください。

期限が過ぎたら、自動で目に入る

割り当てたあとに止まる案件は必ず出ます。期限を過ぎた案件だけを絞り込める状態にしておけば、朝の確認で拾えます。担当者本人が忘れていても、一覧を見た誰かが気づけます。この仕組みが無いと、割り当ては「渡した人の記憶に預ける」ことと同じになります。人の記憶の外に置くことが、振り分けを機能させる条件です。

誰がその確認をするかも決めてください。全員が見る、という決め方は、全員に転送するのと同じで誰も見なくなります。朝の1人を決めて、その人が期限超過の一覧を開き、担当者に声を掛ける。この役割は当番と兼ねてもよいですし、店長や責任者が担ってもかまいません。担う人が1人決まっていることが重要です。

振り分けを決める前に、受け口が1つにまとまっているか確かめる

ここまで方式の話をしてきましたが、前提として、問い合わせが1か所に集まっている必要があります。物件情報サイトの反響が営業宛のメール、自社サイトのフォームが代表アドレス、電話がメモ用紙、という状態のままで振り分けだけを決めても機能しません。割り当てる対象そのものが把握できていないからです。

集める先は1つで構いません。入口はいくつあってもよく、届いた先だけを1つにします。この1つの一覧に、担当と対応状況と期限の列があれば、ここまでに書いた方式はどれでも実装できます。逆にこの一覧が無い状態では、どの方式も口約束のままになります。

集約したかどうかは、簡単に確かめられます。「今日届いた問い合わせは全部で何件か」と聞いて、その場で答えられるかどうかです。答えられないなら、まだ集約できていません。数えるのに何か所も開く必要があるなら、そこが最初に直すところです。方式の議論はその後で構いません。

繁忙期と閑散期で、振り分けを変えてよい

年間を通して同じ方式を守る必要はありません。賃貸の繁忙期は年明けから春先に集中し、この時期は件数が数倍になります。件数が変われば、最適な方式も変わります。

件数が少ない時期は、物件別が効く

閑散期は、1件あたりに時間をかけられます。物件を知っている人が最初から最後まで担当したほうが、確認の往復が減り、案内の質も上がります。当番を置くほどの量がないので、当番の人が手持ち無沙汰になるだけです。この時期は物件別で回して問題ありません。

件数が多い時期は、一次受けを固定する

繁忙期は逆で、一次返信の速さがすべてになります。当番を固定して、その人はその日は外に出ない。それだけで一次返信までの時間は安定します。120件を超えるようなら、当番を午前と午後で分けることも検討してください。半日単位なら、案内の予定とも両立できます。

方式を切り替える時期は、あらかじめ決めておいてください。忙しくなってから話し合うと、その話し合い自体ができません。「件数が1日10件を超えた週から当番制に切り替える」といった基準を決めておけば、判断に時間を使わずに済みます。

切り替えたことを全員が知っている状態にする

方式の切り替えでいちばんよく起きる失敗は、切り替えたことを知らない人が旧方式のまま動くことです。物件別のつもりで待っている人と、当番制のつもりで待っている人が同時にいると、その日の問い合わせは誰にも拾われません。切り替えの日を明示し、その日の朝に一度声を掛けてください。方式そのものより、全員が同じ方式を信じていることのほうが重要です。

電話と店頭の振り分けも、同じ考え方でそろえる

問い合わせの入口はフォームだけではありません。電話と店頭で受けたものも、同じ考え方で振り分けてください。ここが別方式になっていると、結局は全体が見えなくなります。

電話を受けた人がそのまま担当になる、という運用は一見自然ですが、早い者勝ちと同じ問題を抱えます。電話を取りやすい席の人に集中し、外出の多い人には回りません。電話を受けた人は内容を記録するところまでを担い、担当の割り当ては同じ基準で行う。この分け方にすると、入口による偏りが消えます。

記録する項目は、フォームで聞いている項目と同じにしてください。同じにしておくと、電話を受けながら何を聞けばよいかが画面から分かります。物件名と部屋番号、問い合わせの種類、内見の希望日時、連絡がつく時間帯。この順で聞けば、聞き漏らしはほとんど出ません。

店頭で受けた相談も同様です。その場で対応した人がそのまま担当になるのは自然ですが、抱えている件数が多い人が店頭に立っている日は、割り当てを見直したほうが全体は速くなります。店頭対応の記録も一覧に残しておけば、後日その人が休んでいても、来店した相手への対応が続けられます。

振り分けの記録は、後から効いてくる

担当を1件ごとに残しておくと、その場の運用以外にも使い道が出てきます。

誰がどの種類を得意としているかが分かる

半年ほど記録が貯まると、担当別に、どの種類の問い合わせが内見や契約につながっているかが見えてきます。単身向けの賃貸に強い人、ファミリー向けに強い人、売買の相談で成果が出る人。感覚では分かっていても、数字で見ると意外な結果になることがあります。振り分けの型を、この結果に合わせて調整できます。

引き継ぎが速くなる

担当が変わるとき、その人が抱えていた案件を一覧で絞り込めれば、引き継ぎは30分で終わります。担当の欄が空欄だったり、メールの受信箱に散らばっていたりすると、何を引き継ぐべきかを洗い出すところから始めることになります。人の入れ替わりがある職場ほど、この差は大きく出ます。

対応の質を、件数ではなく内容で見られる

件数だけで評価すると、一次返信を大量に出した人が高く見えます。担当ごとに、一次返信までの時間、確認待ちが期限を過ぎた件数、内見に至った件数を並べれば、どこに改善の余地があるかが個別に分かります。この3つが揃っていると、指導の内容も具体的になります。

振り分けを決めても回らないとき

方式を決めたのに改善しない場合、原因は振り分け以外にあります。よくある3つを挙げます。

実は担当ではなく、確認先が詰まっている

一次返信は速いのに、その後が進まない。この場合、詰まっているのは担当の割り当てではなく、空室確認や鍵の手配です。他社管理の物件では、こちらの体制をどれだけ整えても、相手の折り返しを待つ時間は短くなりません。振り分けを変える前に、どの段で止まっているのかを数えてください。第一段階で止まっているなら振り分けの問題、確認の段で止まっているなら待ちの管理の問題です。

特定の1人に集まっている

方式は決めたのに、結局ベテランの1人にほとんどの案件が集まる。これは、他の人に渡せる状態になっていないことが原因です。物件の情報がその人の頭の中にしかない、確認先の担当者との関係がその人にしかない、といった事情があると、渡しても結局その人に聞くことになります。

この場合に効くのは、振り分けの方式ではなく、記録の共有です。確認先の連絡先、過去の同じ物件へのやりとり、その物件で以前に問題になった点。これらが案件の記録として残っていれば、他の人でも対応できます。記録が個人のメールや手帳に閉じているあいだは、何度方式を変えても集中は解消しません。

集中しているベテラン本人が、記録を残す時間を取れないことも多くあります。抱えている件数が多いので当然なのですが、そのままだと状況は変わりません。まず件数を減らして時間を作り、その時間で記録を残してもらう。順番を逆にすると、いつまでも回りません。1週間だけ新規の割り当てを止める、といった思い切った調整が必要になることもあります。

新人に回せない

経験の浅い人に割り当てると返信の質が落ちる、という不安から、結局回せないという話もよく聞きます。ここで有効なのは、一次返信だけを任せることです。受け取った旨、確認中である旨、次の連絡の時期。この3点で構成された定型の返信なら、経験の差はほとんど出ません。確認と案内は経験のある人が受け持ち、一次返信だけを新人が担う。この分け方なら、質を落とさずに負荷を分散できます。

担当を持たせることは、個人情報の管理でもある

問い合わせには氏名、電話番号、勤務先の最寄り駅、家族構成といった情報が含まれます。誰がその情報に触れるのかを決めることは、振り分けの話であると同時に、情報の管理の話でもあります。

個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。 出典: 個人情報保護委員会

全員のメールアドレスに反響を一斉転送する運用は、担当でない人の受信箱にも個人情報が残り続けることを意味します。退職した人の端末や、私物の携帯にも残ります。担当を1件ごとに決めて、必要な人が必要なときに見る形にすると、この広がりを抑えられます。振り分けの見直しは、情報の広がりを絞る作業でもあります。具体的な取り扱いが法律上どう評価されるかについては、所管の窓口や専門家に確かめてください。

権限をどこまで細かく分けられるかは、使っている道具によって差があります。全員が全件を見られる形しかないのか、担当だけが見られる形にできるのか。この点は仕様として公開されている範囲で確かめてください。何ができるのかはできることに整理されており、実際の画面での見え方は動くところを見るで確認できます。

振り分けを変えるときの進め方

最後に、実際に方式を変えるときの手順を整理します。

最初にやるのは、直近1か月の問い合わせについて、誰が返したかを数えることです。人によって件数が何倍も違うなら、負荷の偏りが起きています。全員がほぼ同じなら、偏りではなく別の問題です。数えてから決めてください。方式を先に決めると、いまの実態に合わない型を採ることになります。

次に、一次受けの型を1つ決めます。当番制がもっとも導入しやすく、失敗しても元に戻せます。1週間試して、一次返信までの時間がどう変わったかを見てください。当番の日は外出を入れない、という調整だけで、数字は目に見えて動きます。

そのうえで、本担当への渡し方を決めます。渡す先の決め方(物件別か種類別か)、渡した記録の残し方、渡す先が決まらないときの行き先。この3つが決まれば、方式としては完成です。あとは、期限を過ぎた案件を毎朝5分で確認する習慣を付けるだけです。

道具を入れ替えるかどうかは、その次の判断です。担当と対応状況と期限を1つの一覧で持てているなら、いまの道具のままで振り分けは機能します。持てていないなら、そこを埋めることが先です。送信されたあとの道具がそろっているかどうかで、同じ方針でも運用の重さが変わります。費用の目安は料金にまとまっているので、いまの手作業にかかっている時間と比べて判断してください。

方式を変えたあとは、1か月ごとに担当別の件数と、期限を過ぎた件数を見直してください。数字が動いていなければ、原因は振り分け以外にあります。そのときは確認待ちの管理や記録の共有に目を向けたほうが、早く前に進みます。

変更を全員に伝えるときは、方式そのものより「迷ったときどうするか」を先に伝えてください。新しい方式を覚えることより、判断が付かない場面での行き先が分かっているほうが、現場では役に立ちます。当番に戻す、上長に渡す、どちらでも構いませんが、行き先が1つ決まっていれば、宙に浮く件は生まれません。

最後に、振り分けは目的ではないことを確認しておきます。目的は、届いた問い合わせが決められた時間内に返り、確認が止まったときに誰かが気づくことです。担当を細かく決めても、返信が速くならず、止まった案件が拾われないのであれば、方式を変えた意味はありません。数字で確かめながら、必要な分だけ決める。それが、続く振り分けの作り方です。

Q1. 反響を全員のメールに転送するのは、なぜよくないのですか?

全員に届くと「誰かが対応しているだろう」と考える人が出て、結果的に誰も返さない件が生まれます。同時に、2人が気づいて別々に返信する二重返信も起きます。返したことを他の人に知らせる手段が組み込まれていないためです。転送先を1つにして、そこから1件ずつ担当を割り当てる形にすると、この両方が減ります。

Q2. 物件別と当番制は、どちらがよいですか?

一次受けは当番制、本担当は物件別、という組み合わせが扱いやすい形です。当番は外に出ないので一次返信が速く、本担当は物件を知っているので空室確認や鍵の手配が速く進みます。物件別だけにすると、その担当が案内に出ている時間帯に完全に止まるため、不在時に誰が代わりに受けるかを必ず決めておいてください。

Q3. 手が空いた人に回す方式にするには、何が必要ですか?

誰が何件抱えているかが一覧で分かることが前提になります。メールの受信箱で回していると他の人の状況が見えないため、この方式は成立しません。あわせて、単純な件数ではなく期限が今日か明日に迫っている件数で比べてください。確認待ちで動かせない案件を多く持っている人は、件数ほど忙しくありません。

Q4. 経験の浅い人にも問い合わせを割り当ててよいですか?

一次返信だけを任せる形なら回せます。受け取った旨、確認中である旨、次の連絡の時期。この3点の定型返信であれば経験の差はほとんど出ません。空室確認や鍵の手配、内見の案内は経験のある人が受け持ち、一次返信だけを分担すると、質を落とさずに負荷を分散できます。

Q5. 振り分けを変えても対応が速くなりません。

止まっている段を数え直してください。一次返信は速いのにその後が進まないなら、詰まっているのは担当の割り当てではなく、他社管理の物件への空室確認や鍵の手配です。この場合は、待ちに期限を持たせて、過ぎたものだけを絞り込める形にするほうが効きます。特定の1人に集中している場合は、記録が個人に閉じていることが原因のことが多くあります。

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