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不動産会社の問い合わせを数える|取りこぼしている時間帯を見つける

2026年9月5日 ・ Halict編集部

不動産会社の窓口で「今月は問い合わせが少ない」という話が出たとき、その根拠が担当者の体感だけであることは珍しくありません。実際には件数は変わっておらず、返せていない時間帯が増えていただけ、ということが起こります。「不動産会社 問い合わせ 件数 集計」と調べる人がほしいのは、集計の方法そのものより、数えた結果から何を直せばよいのかという道筋です。この記事では、何を数えるか、1件をどう定義するか、時間帯と曜日と流入元でどう切り分けるか、そして数えられない状態から抜ける手順を並べます。

数えていない会社が見落としているのは、件数ではなく落ちた場所

問い合わせを数えていない会社でも、成約の件数は数えています。決まった数は売上に直結するので、当然です。ところが、決まらなかった問い合わせがどこで落ちたのかは、ほとんどの会社が数えていません。

落ちる場所は、大きく4つあります。第1に、届いたことに誰も気づかなかった場合。第2に、気づいたが誰が返すか決まらないまま時間が過ぎた場合。第3に、返したが遅すぎて他社で決まっていた場合。第4に、返したが内容が足りず往復が続いて離脱した場合。

このうち第1と第2は、数えないと存在自体が見えません。返していない問い合わせは、当然ながら返信の履歴にも成約の記録にも出てきません。担当者の記憶にも残りません。数字の上では「そんな問い合わせは来ていなかった」ことになります。

第3の遅さは、成約率を下げますが、これも受付から返信までの時間を記録していなければ気づけません。不動産の問い合わせは比較検討が前提で、同じ相手が複数社に同時に当たっています。早いほど内見の予約が取れるという構造がある以上、遅さは静かに機会を奪います。

数えるという作業の目的は、件数を報告することではありません。落ちた場所を特定して、そこを直すことです。目的をここに置くと、数えるべきものが自然に絞られます。

体感が当てにならない理由

窓口の担当者からしばしば出るのは「最近は問い合わせが減った」という話です。ところが実際に数えてみると、件数は変わらず、内訳が変わっていることがよくあります。空室の問い合わせが減って設備の不具合の報告が増えていた、電話が減ってフォームからが増えていた、といった変化です。

体感が狂う理由ははっきりしています。人は、対応に時間がかかったものを強く記憶し、すぐ終わったものを忘れます。長い電話が3件あった日は「今日は問い合わせが多かった」と感じ、短いフォームの返信を10件返した日は記憶に残りません。体感で対策を決めると、時間のかかる案件を減らす方向にばかり手が向きます。

何を数えるか、5つに絞る

数える項目を増やすと続きません。次の5つに絞ります。

受け付けた件数

すべての出発点です。フォーム、電話、ポータルサイト経由、店頭、いずれも同じ数え方で1件にします。この時点で、経路ごとに別々の場所に記録されていると合算できません。数える準備とは、まず記録の置き場所を1つにすることです。

一次返信までの時間

受け付けてから、最初の返信を出すまでの時間です。これが集計のうちでもっとも実務に効きます。平均だけを見ず、当日中に返せた件数、翌営業日に返した件数、それ以降になった件数の3つに分けて数えます。平均が数時間でも、その中に2日かかった案件が混ざっていれば、そこが取りこぼしの発生源です。

返していない件数

いま現在、まだ一次返信を出していない件数です。これは集計というより日々の運用の指標ですが、月末に数えると驚く数が出ることがあります。0件が当たり前の状態を作るのが目標になります。

内見に進んだ件数

問い合わせのうち、内見の予約まで進んだ数です。空室の問い合わせから内見までの転換は、返信の速さと内容に強く影響されます。ここが落ちていれば、返信の型を見直す合図になります。

決まった件数

申し込みや契約に至った数です。すでに数えている会社が多い項目ですが、上の4つと同じ台帳の上で数えられていることが重要です。別の場所で数えていると、どの問い合わせが決まったのかを結びつけられません。

この5つがそろうと、受付から成約までの落ち方が一本の線で見えます。逆に、5つのうちどれかが別の場所にあると、線がつながりません。

線でつながると、割り算ができるようになります。受け付けた件数のうち何割が内見に進んだか、内見のうち何割が申し込みに至ったか。この2つの割合は、月ごとに追う価値があります。件数そのものは市況や掲載の量で動きますが、割合は受付の回し方で動きます。件数が減っている月でも割合が上がっているなら、受付の改善は効いています。逆に件数が増えているのに割合が下がっているなら、増えた分を捌ききれていません。

割合を出すときは、分母をそろえます。今月受け付けた分の内見への転換を見るのか、今月内見に進んだ分がいつの問い合わせだったのかを見るのか。不動産の場合、問い合わせから内見まで数日、内見から申し込みまでさらに数日かかるので、月をまたぐ案件が必ず出ます。どちらの数え方でも構いませんが、途中で変えないことが条件になります。受け取ったあとに担当と状況を持たせて返信まで進める考え方はできることに整理されているので、記録の置き場所を1つにする設計の参考になります。

時間帯で数えると、取りこぼしが見える

数え方の中で、いちばん発見が多いのが時間帯の切り分けです。日単位の合計では見えないものが、時間帯に割ると見えます。

営業時間外に届く分をどう扱うか

不動産の問い合わせは、仕事を終えた人が住まいを探す時間に集中します。夜の時間帯に届いた問い合わせが、翌朝の開店後に処理される運用は自然ですが、そこで何時間空いているかを数えている会社は多くありません。

夜に届いた分と、営業時間内に届いた分を分けて、それぞれの一次返信までの時間を測ります。夜の分だけ極端に遅いなら、自動の受付確認を返す仕組みを入れるだけで印象が変わります。受け付けたことと、翌営業日の何時までに返すことを自動で伝えれば、待っている側は他社に流れにくくなります。

早朝も同じです。出勤前に問い合わせる人がいます。開店が10時なら、6時台に届いた分は4時間待つことになります。この4時間を短くする手段があるかどうかを、数字を見てから考えます。

営業時間外の分を数えるときは、届いた時刻をそのまま使います。翌朝に処理した時刻を受付時刻として記録してしまうと、待たせた時間が消えます。この取り違えは、手作業で台帳に転記している会社で必ず起きます。届いた時刻が自動で残る形にしておくことが、時間帯の分析の前提になります。

昼と現地対応中にできる谷

営業時間内なのに返信が遅れる時間帯があります。多くは、担当者が現地に出ている時間と、昼の時間です。

内見の案内が集中する時間帯は、店舗に人が少なくなります。この時間に届いた問い合わせが、担当者が戻るまで放置される構造になっていないかを確かめます。数えると、特定の時間帯だけ一次返信までの時間が長いことがはっきり出ます。

対策は難しくありません。現地に出ている時間帯の一次返信だけを内勤の当番が返す分担にする。この分担を成り立たせるには、一次返信の型があることと、誰が返したかが記録に残ることが必要です。返信したかどうかが表に残らないと、二重返信と返し忘れは必ず起きます。

土日と定休日の扱い

不動産の繁忙は土日に集中しますが、定休日を水曜に置いている会社が多くあります。定休日の前日から翌日にかけて、問い合わせがどう溜まり、どう捌かれているかを数えます。

定休日に届いた分の一次返信が、翌日の午前中に集中して処理されているなら、その午前中は他の業務が滞っています。ここに気づけば、定休日の午前だけ受付確認を自動で返す、当番を1人置く、といった手が選べます。

曜日と季節の波を、体感でなく数字で持つ

時間帯の次に効くのが、曜日と時期の波です。

曜日は、土日に問い合わせが増え、平日の前半に内見の予約が入る、という形が多く見られます。自社の実際の形は数えれば分かります。数えると、人の配置を変える根拠になります。

時期の波は、賃貸であれば進学と異動の時期に集中します。この時期は問い合わせが増えるだけでなく、同じ物件に複数の問い合わせが同時に入るため、返信の速さがそのまま成約に効きます。波が読めていれば、繁忙期だけ一次返信の型を短くする、当番を増やす、といった手が事前に打てます。

波を知らないまま「最近返信が遅い」と担当者を責めるのは、いちばん効果のない対処です。数字は、責める代わりに配置を変えるための材料になります。

流入元ごとに数えると、投じている費用の効き方が見える

問い合わせは、自社サイトのフォーム、ポータルサイト経由、電話、店頭、紹介と、複数の経路から届きます。経路ごとに数えると、費用の使い方の判断材料になります。

経路ごとに見るのは3つです。件数、内見への転換率、そして成約率です。件数だけを見ると、数の多い経路が良く見えます。ところが、件数が多くても内見に進まない経路と、件数は少ないが高い確率で決まる経路があります。

自社サイトのフォームから届く問い合わせは、その物件を名指しで見に来た人からのものが多く、条件がはっきりしています。ポータルサイト経由は数が出やすい一方で、同時に複数社へ送られていることが多く、返信の速さが勝負になります。紹介は数が少なくても決まりやすい傾向があります。

経路ごとの数を出すには、受け付けた時点で経路が記録される必要があります。フォームであれば、どのページから送信されたかを持たせておくと、あとから経路が分かります。電話であれば、受けた人が記録する運用にします。この記録が抜けると、数えたくても数えられません。

電話とポータルサイトの分を、記録に乗せる

経路ごとの集計でいちばん抜けるのが、電話とポータルサイト経由です。この2つは、記録が自動で残らないためです。

電話は、受けた人がその場で記録を作る運用にします。受話器を置いてから思い出して書く形にすると、忙しい日に抜けます。電話機のそばに聞く順番を書いた紙を置き、氏名、連絡先、対象の物件、希望の入居時期、内見の希望の5つを埋める。この5つは受け取り口の項目と同じにしておくと、あとで合算できます。

ポータルサイト経由は、通知のメールが届く形が一般的です。この通知が担当者個人の受信箱にしか届いていないと、他の経路と合算できません。通知の宛先を集約先に向けるか、届いた通知から記録を作る手順を決めます。手作業で写す運用は続かないので、どこまで自動にできるかを先に確かめておきます。

店頭の飛び込みも、記録を作る対象です。件数は多くありませんが、決まる確率が高い経路なので、数から漏れると経路ごとの比較が歪みます。

経路の記録が全部そろわないうちは、そろっている経路だけで比較しないことです。フォーム経由だけを数えて「問い合わせが減った」と判断すると、電話が増えていた場合に真逆の対策を打つことになります。

集計の粒度を、週と月で分ける

集計をどのくらいの間隔で見るかは、指標によって変えます。全部を月次にすると、直すのが遅れます。

日々見るのは、まだ返していない件数だけです。これは集計というより、当日の作業の残りです。朝と夕方に見て、ゼロにして終わる。

週に1度見るのは、一次返信が翌営業日を超えた件数です。1週間という間隔なら、遅れた案件の経緯をまだ覚えている人がいます。月末に振り返っても、3週間前の案件で何があったかは誰も思い出せません。

月に1度見るのは、受付件数、内見への転換、成約、そして経路ごとの内訳です。これらは月単位でないと数が少なすぎて、増減が偶然なのか傾向なのか分かりません。

季節ごとに見るのは、時間帯と曜日の分布です。これは体制を決めるための数字なので、頻繁に見ても打つ手が変わりません。繁忙期に入る前に一度確かめて、配置を決めれば足ります。

粒度を分けておくと、会議で見る数字が絞られます。すべてを月次の一覧に並べると、見る側は数字の多さに疲れて、結局どれも見なくなります。

数字が悪く見えるときに、疑う順番

集計を始めると、最初のうちは悪い数字が並びます。ここで対応を誤ると、集計そのものが嫌われて続かなくなります。疑う順番を決めておきます。

最初に疑うのは、数え方です。定義が途中で変わっていないか、営業メールが件数に混ざっていないか、電話の記録が抜けていないか。数字が急に動いたときは、実態より数え方が変わっている可能性のほうが高くなります。

次に疑うのは、届いたことに気づく仕組みです。返していない件数が多いなら、担当者の怠慢ではなく通知の設計を疑います。共有アドレスに届く形は、全員が「誰かが見るだろう」と考える構造を作ります。

3番目に疑うのが、担当の決め方です。気づいてはいるが誰が返すか決まらない状態は、担当の欄が空のまま置かれることで見えるようになります。空のまま一定時間が過ぎたものを目立たせる作りにすると、放置が減ります。

4番目に、ようやく返信の内容を疑います。速さの問題を内容の問題と取り違えると、文面を作り込んでも数字は動きません。順番を守ると、少ない手数で効きます。

担当者の努力を疑うのは最後です。数字が悪いことを個人の問題として扱うと、翌月から記録が正確でなくなります。集計を続けるうえで、これがいちばん避けたい状態になります。

物件ごと、店舗ごとに数える

全社の合計だけを見ていると、物件ごとの差が消えます。問い合わせが集まる物件と、まったく来ない物件がある場合、対策は全社の平均ではなく物件ごとに決まります。

物件ごとに数えるのは2つです。問い合わせの件数と、内見への転換です。件数が多いのに内見に進まない物件は、掲載している情報と実際の条件がずれている可能性があります。写真が古い、募集条件が変わったのに反映されていない、といった原因はここで見つかります。

逆に、件数が少ない物件は、掲載そのものを疑います。掲載を出していない、写真が少ない、間取り図がない。これは受付の問題ではないので、集計の結果を営業側へ渡す形になります。

店舗が複数ある会社では、店舗ごとの一次返信までの時間を並べます。同じ会社でも店舗によって差が出るのが普通です。差が出ている理由は、体制か、当番の有無か、繁忙の度合いかのいずれかに絞られます。差を見つけたら、速い店舗が何をしているかを聞き取って、他店に広げるのがいちばん早い改善になります。

店舗ごとに数えるには、問い合わせがどの店舗のものかが記録に入っている必要があります。物件から自動で決まる形にしておくと、担当者が入力する手間がなくなり、抜けも起きません。

数える前に、1件の定義を決める

集計を始めるときにもっとも多いつまずきが、1件の定義です。ここが決まっていないと、月ごとに数え方が変わって比べられなくなります。

決めることは4つあります。

第1に、同じ人から複数の物件について問い合わせが来たとき、1件か複数件か。物件ごとに担当が分かれるなら物件ごとに数えるほうが実務に合います。

第2に、同じ人が同じ物件について何度も送ってきたとき、どう数えるか。最初の1件だけを数え、以降はやり取りとして扱う形が自然です。

第3に、明らかな営業メールや業者からの連絡をどう扱うか。数から除くなら、除いた数も分かるようにしておきます。

第4に、電話で受けたものをどこまで含めるか。含めるなら、受けた時点で記録を作る運用が要ります。含めないと決めるのは簡単ですが、電話の割合が高い会社では実態から離れた数字になります。

この4つを紙に書いて、社内で共有します。定義が変わったときは、変えた日を残します。定義を変えたことを忘れて前年と比べると、増減の理由を取り違えます。

数えられない状態から抜ける手順

いま数えられていない会社が、いきなり全部を数え始めようとすると失敗します。段階を分けます。

第1段階は、記録の置き場所を1つにすることです。フォームの回答、電話のメモ、ポータルサイトからの通知メールが3か所に散っている状態では、合算ができません。まずは受け口を集約します。

第2段階は、受付の日時と一次返信の日時が記録される状態にすることです。この2つがあれば、時間帯の分析ができます。手作業で時刻を書き写す運用は続かないので、自動で残る形にします。

第3段階は、状況の欄を持つことです。受付、返信済み、内見予約、申し込み、見送りといった状態を選べる形にすると、どこで落ちたかが数えられるようになります。状態を色分けで表す運用は、色の意味を知らない人が触った時点で崩れます。

第4段階が、集計です。ここまで来て初めて、月末に数える作業が数分で終わります。

この4段階は、順番を飛ばせません。記録が散らばったまま集計だけを始めると、合算のために手作業でコピーする工程が生まれ、その工程が続かずに止まります。逆に、第1段階と第2段階を済ませておけば、集計の形が決まっていなくても、あとから数え直せます。時刻が残っていれば、時間帯の分析は半年後でもできます。残っていなければ、これから半年待つことになります。だから、集計の設計に悩む前に、時刻を残すことだけ先に始めるのが得です。

段階を進める途中で、過去の記録をさかのぼって整える必要はありません。今日から受けるものが記録される状態を作れば、1か月後には1か月分の数字が出ます。過去分の整理に時間をかけると、そこで力尽きます。

無料で始められる手軽さから、回答を表計算ソフトへ集めて数える方法も広く使われています。件数が少ないうちは十分に回りますが、返信したかどうかを表の色で管理し始めると崩れます。表計算で追える範囲と、追えなくなる境目はGoogleフォームとの比較にまとまっています。社内で全社的なグループウェアを使っていて、社内向けの申請と同じ仕組みで扱いたい場合はMicrosoft Formsとの比較が判断材料になります。

数字を見たあとに、何を変えるか

集計は、変えるための材料です。数字ごとに、打てる手を対応させておきます。

一次返信までの時間が長い時間帯が特定できたら、その時間帯の当番を決めるか、自動の受付確認を入れます。当番を決めるのは費用がかからず、効果もすぐ出ます。

返していない件数がゼロにならないなら、届いたことに気づく仕組みを疑います。共有のメールアドレスに届いて誰も自分あてだと思わない、という状態が典型です。通知の宛先を個人に向けるだけで解消することがあります。

内見への転換が低いなら、返信の内容を疑います。空いていると答えるだけで候補日を出していない返信は、必ず往復が2回以上になります。候補日を同時に出す型に変えると、1往復で決まる割合が上がります。

経路ごとの成約率に差があるなら、費用の配分を見直します。ただし、経路の性質が違うことを踏まえて判断します。数が出る経路をやめて数が少ない経路に寄せると、総数が減ることもあります。

届いたものを受けて返す流れの全体像は問い合わせの受付に整理されているので、自社の受付がどこで止まっているかを重ねて見ると、変える場所が絞れます。実際の画面でどう見えるかは動くところを見るで確かめられます。

数えるのをやめてしまう理由と、その避け方

集計を始めた会社の多くが、数か月で止めます。止まる理由は3つに絞られます。

1つ目は、作業が重いことです。月末に半日かけて表を作る運用は、繁忙期に真っ先に飛びます。作業が重いと感じたら、数える項目が多すぎるか、記録が散らばっているかのどちらかです。項目を5つに絞り、記録の置き場所を1つにするのが対処になります。

2つ目は、出した数字が使われないことです。誰も見ない資料を作り続けられる人はいません。週に1度、返していない件数と一次返信が翌営業日を超えた件数の2つだけを見る場を作り、そこで何を変えるかを1つ決める。決めた結果が翌週の数字に出れば、続きます。

3つ目は、数字が個人の評価に使われることです。担当者ごとの返信の速さを並べて詰めると、記録の正確さが失われます。返信していないのに返信済みにする、電話の記録を残さない、といった行動が始まります。数字は配置と仕組みを変えるために使い、個人を評価する道具にしないことが、続けるための条件になります。

止めないための最短の工夫は、集計を人の作業にしないことです。受け付けた時点と一次返信の時点が自動で記録され、集計がいつでも見られる状態になっていれば、作業そのものが発生しません。道具を選ぶときは、この点を「集計機能があるか」ではなく「月末に人が何分かけるか」で確かめます。

集計のために残した記録そのものにも、期限を決める

集計を始めると、過去の問い合わせの記録を長く残しておきたくなります。前年と比べたい、傾向を見たい、という理由です。ここで注意が要るのは、記録に個人情報が含まれている点です。

問い合わせの件数や返信までの時間といった数字は、氏名や連絡先を外しても集計できます。一方で、問い合わせのレコードそのものを何年も残すと、その中の氏名と連絡先と本人確認書類まで一緒に残ることになります。法律は、必要がなくなった個人データについて次のように定めています。

個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない。 出典: e-Gov

集計のために持ち続けたいのは数字であって、個人を特定できる情報ではありません。月ごとの集計結果を別に保存しておけば、元のレコードは保管期間で消せます。集計表と元データを分けて持つ形にしておくと、長期の比較と、個人情報を減らす要請の両方を満たせます。この線引きは事案によって判断が変わるので、実際の運用を決めるときは所管の窓口や専門家に確かめてください。制度の全体像は個人情報保護委員会の解説が出発点になります。

数えることが、受付の設計そのものを変える

集計を始めた会社で共通して起きるのは、数え始めた翌月から数字が良くなることです。仕組みを変えていなくても、見られていることが分かるだけで返信が早くなります。この効果は本物ですが、長続きはしません。仕組みを変えなければ、数か月で元に戻ります。

続けるために効くのは、数字を出す作業を人の手から外すことです。月末に集計担当が半日かけて表を作る運用は、忙しい月に止まります。受け付けた時点と返信した時点が自動で記録され、集計がいつでも見られる状態になっていれば、止まりません。

もうひとつ、見る人を決めることです。数字を出しても誰も見ないなら、出す意味がありません。週に1度、返していない件数と、一次返信が翌営業日を超えた件数の2つだけを見る。この2つに絞ると、会議の時間も短くて済みます。

不動産会社の受付が他の業種と違うのは、同じ物件に複数の問い合わせが同時に入り、先着で状況が変わる点です。だからこそ、返信の速さが数字に直結します。1日の中のどの時間帯で遅れているかを特定できれば、打てる手は具体的になります。全体の平均を追いかけるより、遅れている時間帯を1つ見つけて潰すほうが、効果が早く出ます。

費用の見当をつけるときは、受付を見る人の数と、月に受ける件数の2つを先に数えます。この2つが決まっていれば、比べる軸が定まります。実際の金額は料金で確かめられます。数えるという作業は、道具を入れる前でも紙とペンで始められます。1か月分を手で数えるだけで、どこが落ちているかは十分に見えます。

手で数えるときの現実的な進め方を書いておきます。受信箱から1か月分の問い合わせを日付順に並べ、1件ごとに「届いた日時」「一次返信を出した日時」「その後どうなったか」の3列だけをメモします。100件程度なら、集中すれば半日で終わります。この3列があれば、時間帯の谷も、返していない件数も、内見への転換も出せます。

この半日の作業から得られるのは数字だけではありません。1件ずつ経緯を追うと、返信が遅れた案件に共通する事情が見えてきます。特定の物件について毎回時間がかかっている、特定の曜日に集中して遅れている、電話から始まった案件だけ記録が途切れている。数字にする前の段階で、直す場所の見当がつきます。道具の検討を始めるのは、そのあとで十分です。

Q1. 問い合わせの集計は、何から数え始めればよいですか?

5つに絞ってください。受け付けた件数、一次返信までの時間、まだ返していない件数、内見に進んだ件数、決まった件数です。この5つが同じ台帳の上でそろうと、受付から成約までの落ち方が一本の線で見えます。項目を増やすと続かないので、まずこの5つだけにします。数える目的は件数の報告ではなく、落ちた場所を特定して直すことに置いてください。

Q2. 一次返信までの時間は、平均で見てよいですか?

平均だけでは足りません。当日中に返せた件数、翌営業日に返した件数、それ以降になった件数の3つに分けて数えてください。平均が数時間でも、その中に2日かかった案件が混ざっていれば、そこが取りこぼしの発生源です。遅れた案件を数件だけ開いて経緯を読むと、原因は文面ではなく担当が決まらなかったことや、届いたことに誰も気づかなかったことに行き着きます。

Q3. 1件の数え方は、どう決めればよいですか?

4つを先に決めます。同じ人から複数の物件について来たときの扱い、同じ人が同じ物件について繰り返し送ってきたときの扱い、営業メールや業者からの連絡を除くかどうか、電話で受けた分を含めるかどうかです。これを紙に書いて社内で共有してください。定義が決まっていないと月ごとに数え方が変わり、増減の理由を取り違えます。定義を変えたときは、変えた日を残します。

Q4. 時間帯で数えると、何が分かりますか?

日単位の合計では見えない谷が見えます。夜間や早朝に届いた分が翌営業日まで何時間待たされているか、担当者が現地に出ている時間帯だけ返信が遅れていないか、定休日の翌日に処理が集中していないか。谷が特定できれば、その時間帯だけ当番を置く、自動の受付確認を返す、といった具体的な手が選べます。全体の平均を追うより、遅れている時間帯を1つ潰すほうが効果が早く出ます。

Q5. 集計のために、過去の問い合わせ記録は何年残せばよいですか?

集計に必要なのは数字であって、氏名や連絡先ではありません。月ごとの集計結果を別に保存しておけば、元のレコードは保管期間が来たところで消せます。集計表と元データを分けて持つ形にしておくと、長期の比較と、必要がなくなった個人データを減らす要請の両方を満たせます。保管期間の具体的な線引きは事案によって変わるので、所管の窓口や専門家に確かめてください。

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