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デザイン事務所の問い合わせを数える|問い合わせの中身を分けて数える

2026年9月4日 ・ Halict編集部

デザイン事務所の問い合わせを数えている事務所は多い。月末に受信箱をさかのぼって、今月は何件だったかを表計算に書き込む。ところが、その数字を見て何かを決めたことがあるかというと、たいていありません。先月より多かった、少なかった。それで終わります。

理由ははっきりしています。総数だけを数えているからです。制作の相談と見積もりの依頼を受け付けている窓口には、性質のまったく違うものが同じ1件として入ってきます。名刺を作りたいという確定した依頼と、そもそも何を頼めばよいか分からないという相談と、印刷会社からの営業の売り込み。これらを足した数字からは、何の判断も出てきません。

この記事では、デザイン事務所の問い合わせを何で分けて数えるか、1件の区切りをどこに置くか、数えた結果から何を決められるのかを順に並べます。デザインの内容や提案の中身には触れません。届いたものを受けて返す側が、自分の窓口の状態を把握できるようにすることだけを扱います。

総数だけを数えても、次の判断につながらない理由

「今月は30件」から出てくる問いが無い

月に30件という数字を見たとき、次に何を決めればよいのかが分かりません。多いのか少ないのかを判断する基準が無いからです。前月と比べても、季節の差なのか、施策の効果なのか、たまたまなのかが分かりません。

数字が判断につながるのは、その数字が二つに割れるときです。30件のうち見積もりまで進んだのが12件、受注に至ったのが4件。この形になって初めて、どこで落ちているのかという問いが立ちます。落ちている場所が分かれば、そこを直すかどうかを決められます。総数だけでは、直す場所が指せません。

さらに言えば、総数は増やす方向にしか動かせない数字です。増やすには広告や紹介の経路を増やすことになり、費用がかかります。一方、途中で落ちている割合を減らすのは、受付の回し方を変えるだけで動く場合があります。手前に効く材料を持っていないと、費用のかかる打ち手しか選べません。

中身の違う相談が、同じ1件になっている

デザイン事務所の窓口に届くものは、性質の幅が極端に広い。Webサイト全面リニューアルの相談と、名刺の追加発注と、既存のチラシの一行だけ直したいという依頼が、同じ1件として数えられます。金額の桁が二つも三つも違うのに、同じ重みで数えている状態です。

この状態で「今月は件数が減った」と判断すると、実態を取り違えます。小さな追加発注が減っただけで、大きな案件の相談は増えているかもしれません。逆に、件数は増えているのに売上が伸びない月は、小さな相談ばかりが増えている可能性があります。中身を分けていないと、この区別ができません。

数えていないものが多すぎる

もう一つの問題は、母数の抜けです。サイトのフォームから届いたものは数えているが、電話で受けた相談は数えていない。既存の取引先から担当者の個人のメールに直接来た依頼は数えていない。紹介で会って、その場で話が決まったものも数えていない。

抜けたまま数えると、経路ごとの比較ができなくなります。フォームからの相談が月に10件で、電話が15件だとしたら、サイトの改善より電話の受け方の整備のほうが効きます。しかし電話を数えていなければ、この判断そのものが出てきません。数え始めるときは、抜けている経路を先に洗い出すほうが順番として正しい。

デザイン事務所の問い合わせを、何で分けるか

制作物の種類で分ける

いちばん基本になる分け方です。ロゴやマーク、名刺や封筒といった事務用品、チラシやポスターといった販促物、パンフレットや会社案内、Webサイト、パッケージ、看板や店舗の表示物、動画。事務所が受けている範囲に合わせて、五つから八つ程度に分けます。

分ける数を増やしすぎると、入力のときに迷います。迷う分類は使われなくなります。「その他」を一つ置いておいて、そこが増えてきたら分け方を見直す形にすると、無理なく育てられます。

この分け方が効くのは、事務所が何で選ばれているかが見えるからです。相談の半分がチラシで、受注の八割がパンフレットなら、チラシの相談への返し方を変える価値があります。逆に、相談がほとんど来ていない分野をサイトの前面で打ち出しているなら、見せ方がずれています。

相談の段階で分ける

同じ「ロゴの相談」でも、進み具合が違います。予算も時期も決まっていて発注前提の依頼、金額を知りたいだけの見積もり依頼、そもそも何を頼めばよいか分からない情報収集の段階。この三つは、返信の書き方も、受注に至るまでの時間もまったく違います。

段階で分けて数えると、窓口に何が届いているのかが見えます。情報収集の段階の相談が大半を占めているなら、サイトに載せる情報を増やすことで、届く前に相手の疑問を解けます。発注前提の依頼が多いのに受注に至っていないなら、返信の速さか金額の出し方に原因があります。

段階は、相談の本文を読めば判別できます。判別を人の感覚に任せると、担当ごとにぶれます。フォームの項目として「検討の段階」を用意しておくと、相談者自身が選んでくれるので、ぶれが減ります。

入ってきた経路で分ける

サイトのフォーム、電話、既存の取引先からの直接の連絡、紹介、名刺交換の後の連絡、SNSの経由。経路ごとに、受注に至る割合はかなり違います。紹介で来た相談の成約率が高いのは多くの事務所で共通していますが、その差が実際にどれくらいなのかは、数えてみないと分かりません。

経路を分けると、どこに手をかけるかの判断が変わります。サイトからの相談が月に数件しか来ていない事務所が、サイトの文言を練り直すより、紹介が生まれる仕組みを整えるほうが早い場合があります。逆に、サイトから多く来ているのに受注につながっていないなら、届く前の期待と実際の提供内容がずれています。

結果で分ける

最後に、その相談がどうなったかです。受注した、見積もりを出したが返事が無い、事務所側から断った、条件が合わずに終わった、返信しないまま流れた。この最後の「返信しないまま流れた」を数えることが、実は最も価値があります。

返信していない件は、受信箱で数えると見つかりません。返した件と返していない件が同じ場所に並んでいて、見分けが付かないからです。件ごとに状況が残る形になっていて初めて、数として出てきます。数として出てくれば、それが月に何件あるのかが分かり、対策を打つかどうかを決められます。

数えるときの単位をそろえる

1件をどこで区切るか

同じ相手から三通の相談が届いたとき、3件と数えるのか1件と数えるのか。ここを決めていないと、月ごとに数え方が変わり、比べられなくなります。

実務上使いやすいのは、案件を単位にする決め方です。同じ相手でも、名刺の依頼とパンフレットの相談は別の案件なので2件。同じ案件について三通届いたなら1件。この決め方だと、受注や失注の数と対応が取れます。相談者の人数を数えたいときは、案件の記録から後で数え直せます。

再相談の扱いも決めておきます。半年前に見積もりを出して流れた相手から、また連絡が来た。これを新しい1件と数えるか、前の件の続きと数えるか。新しい1件にしておくほうが、期間ごとの集計が素直になります。前の件との関係は、記録の中で結び付けておけば追えます。

日付をどれで取るか

相談が届いた日、最初に返信した日、受注が決まった日。集計の軸をどれにするかで、同じ月の数字が変わります。

窓口の状態を見るなら、届いた日で数えるのが基本です。返信した日で数えると、返信が遅れた件が翌月に移り、遅れていること自体が数字から消えます。受注が決まった日で数えるのは、売上の集計としては正しいのですが、窓口の集計とは別に持つべきものです。

三つの日付を全部残しておくと、その間の日数を後から計算できます。届いてから最初の返信までの日数、返信から受注までの日数。この二つが出せると、どこで時間がかかっているのかが具体的に分かります。

数えないものを決める

窓口には、制作の相談以外のものも届きます。印刷会社やシステム会社からの営業の売り込み、求人媒体の勧誘、明らかな迷惑メール。これらを混ぜて数えると、数字が膨らむだけで意味を失います。

「対象外」の分類を一つ置いて、そこに落とす形にします。消してしまうと、後から売り込みがどれくらい来ているかを確かめられなくなるので、残したうえで集計から外すほうが扱いやすい。売り込みが極端に増えている時期は、フォームの作りが機械的な送信に狙われている可能性があり、それ自体が気づきの材料になります。

金額の規模で分ける

制作物の種類とは別に、想定される金額の規模で分けておくと、判断の材料が増えます。数万円で終わる依頼、数十万円の案件、それ以上の案件。三段階で十分です。

規模を分けると、件数と売上のずれが見えます。件数の大半が小さな依頼で、売上の大半が少数の大きな案件から出ている状態は、多くの事務所で起きています。この状態のときに件数を増やす施策を打つと、小さな依頼ばかりが増えて、手は忙しくなるのに売上が変わりません。

規模の分類は、相談を受けた時点では正確に分かりません。見積もりを出した時点で埋める形にしておくと、無理なく溜まります。相談の時点で分かる範囲は、部数やページ数といった条件から推測できるので、そちらは別の項目として持っておきます。

数えた記録を、いつまで持つか

集計のために記録を残すと、そこには相談者の氏名や連絡先も一緒に残ります。数えることと、個人の情報を持ち続けることは別の話なので、期間を分けて考えておく必要があります。

個人情報の保護に関する法律は、不要になった情報について次のように定めています。

個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない。 出典: 個人情報保護委員会

集計に必要なのは、件数と分類と日付です。氏名や連絡先が無くても数えられます。動きが無いまま一定期間が過ぎた件は、連絡先を消したうえで集計用の情報だけを残す、という分け方ができます。何をどこまで残してよいかの判断に迷う場面では、所管の窓口や専門家に確かめてください。

数えた結果から、何を決められるか

見積もりまで進んだ割合

届いた相談のうち、見積もりを出すところまで進んだのは何件か。ここが低い場合、原因は二つに絞られます。相談の質が低いか、条件を確かめる往復で止まっているか。

前者なら、サイトで先に伝える情報を増やすことで、条件の合わない相談を減らせます。後者なら、最初の返信で聞く質問の数を絞るか、フォームの項目として先に聞いておくことで改善します。どちらが原因かは、止まった件の記録を数件読めば判別できます。

受注に至った割合

見積もりを出したうちの何件が受注になったか。この割合は、制作物の種類ごとに大きく違うのが普通です。全体の平均だけを見ていると、極端に低い分野があっても気づけません。

割合が低い分野については、金額の出し方か、見積もりに書く範囲に原因があることが多い。含まれる範囲と含まれない範囲を書いていない見積もりは、比較されたときに不利になります。分野ごとに割合が出せると、どこを見直すかを絞れます。

最初の返信までの日数

窓口の状態を最も端的に表す数字です。見積もりの依頼は、返信が遅れた時点で他社に流れます。この日数が伸びている月は、必ず理由があります。制作が立て込んでいた、担当が不在だった、返す人が決まっていなかった。

数字として出しておくと、忙しさの言い訳が具体的な対策に変わります。3営業日を超えた件が何件あったかを数えれば、超えた件に共通する条件も見えます。

断った理由の内訳

事務所側から断った件について、理由を分類して数えます。手が空いていない、条件が合わない、予算が見合わない。この内訳は、事務所の方向を決める材料になります。

手が空いていないという理由が多いなら、外部の協力者を増やすか、単価を上げるかの判断が要ります。予算が見合わない相談が多いなら、サイトでの見せ方が想定より安い層を呼んでいます。断りの理由は記録に残りにくいので、断る返信を送るときに一緒に選べる形にしておくと溜まります。

数字が動いたとき、原因を切り分ける

数え始めると、月ごとに数字が上下します。その上下を見て慌てないために、原因の切り分け方を先に持っておきます。

件数が減った月

まず疑うのは、数え漏れです。忙しい月ほど転記が飛ぶので、実際には減っていないのに減って見えることがあります。届いた場所でそのまま数えている形なら、この疑いは消えます。手で転記している形なら、まずここを確かめます。

次に、経路ごとに分けて見ます。全部の経路が同じように減っているなら、季節の影響である可能性が高い。デザイン事務所への相談は、年度の切り替わりや決算の時期、展示会や催事の前に集中する傾向があります。特定の経路だけが減っているなら、その経路に原因があります。サイトからだけ減っているなら、検索結果での見え方かサイトの作りに変化があった可能性があります。

制作物の種類で分けても切り分けられます。単価の低い分野だけが減っているなら、売上への影響は小さい。単価の高い分野が減っているなら、件数の減り幅が小さくても手を打つ理由があります。

受注の割合が落ちた月

見積もりを出した数は変わらないのに、受注が減った。このとき見るのは、断られた理由の内訳です。予算が理由で断られた件が増えているなら、金額の出し方か、届いている相談の層が変わっています。他社に決まった件が増えているなら、返信の速さか、見積もりに書いている範囲が比較で不利になっています。

理由が記録に残っていないと、この切り分けができません。断られたときに理由を聞くのは気が重い作業ですが、一言だけ尋ねる形にしておくと集まります。聞けなかった件は「不明」として残し、不明が多すぎるようなら聞き方を変えます。

返信までの日数が伸びた月

この数字が伸びる原因は三つしかありません。届く件数が増えた、返す人の手が足りなかった、誰が返すかが決まっていなかった。件数と突き合わせれば、一つ目かどうかはすぐ分かります。

件数が変わっていないのに日数が伸びているなら、二つ目か三つ目です。この二つは対策が違います。手が足りないなら、そのまま送れる文面を自動で返す形にして手作業を減らす。決まっていないなら、案件の種類や曜日で担当を分ける決まりを作る。原因を確かめずに「もっと早く返そう」と決めても、翌月には元に戻ります。

数え方を変えるときに、気をつけること

分類を足したり、定義を変えたりすると、前後の数字が比べられなくなります。変えること自体は必要ですが、変え方には注意が要ります。

変えた日を記録に残す

分類を足した月、状況の言葉を変えた月、1件の区切りの決め方を変えた月。これらを記録に残していないと、数か月後に数字が動いた理由が分からなくなります。実際には数え方が変わっただけなのに、施策の効果だと読み違えます。

残すのは一行で足ります。何月から何を変えたか。この一行があるだけで、後から見返したときの解釈が変わります。数字だけを並べた表は、時間が経つほど読めなくなります。

過去にさかのぼって埋めない

新しい分類を足したとき、過去の分も埋めたくなります。しかし、当時の記録から後で分類を推測して埋めた分は、精度が低い。推測で埋めた行と、その場で選んだ行が同じ表に並ぶと、どちらがどちらか分からなくなります。

足した月から数え直すほうが正確です。比べる期間が短くなりますが、精度の低い長い期間より、精度の高い短い期間のほうが判断に使えます。過去との比較が必要なら、変えていない項目だけで比べます。

分類の定義を、短い言葉で書いておく

「見積もり提出済み」がどの状態を指すのか、人によって解釈が違います。概算の金額を口頭で伝えた場合は含むのか、正式な書面を出した場合だけなのか。定義を書いていないと、担当ごとに違う基準で入力され、数字が意味を失います。

定義は一行ずつで足ります。分類の名前の横に、どの状態を指すのかを書いておく。担当が増えたときも、説明せずに同じ基準で入力してもらえます。これを書いていない状態で人数を増やすと、数字の信頼性が一気に落ちます。

数える作業を、いつ誰がやるか

数え方を決めても、作業として組み込まれていないと続きません。三か月で止まる事務所と、続く事務所の差はここにあります。

入力の時点を、月末にしない

月末にまとめて転記する形は、いちばん飛びます。一か月分をさかのぼる作業は重く、忙しい月ほど後回しになり、翌月にはさらに重くなります。

続くのは、相談に返信する時点で分類まで済ませる形です。返信を書くときには相談を読んでいるので、分類を選ぶのは数秒の作業です。この数秒を返信の流れに組み込んでしまえば、集計のための作業時間は実質ゼロになります。相談が届いた場所でそのまま分類できる形になっているかどうかが、ここで効きます。

見る時点と、見る人を決める

数字は、見る予定が入っていないと見られません。月に一度、決まった日に見ると決めておきます。見る項目も決めておきます。件数、種類ごとの内訳、見積まで進んだ割合、受注の割合、返信までの日数、断りの理由。この六つを毎回同じ形で見ると、変化に気づけます。

複数人の事務所であれば、この場に担当が全員いるほうがよい。数字を集める人と返信する人が分かれていると、数字の背景が分からず、判断が的外れになります。返信している本人が数字を見ると、なぜその月がそうなったのかを説明できます。

数えた結果を、次の打ち手につなげる

数字が出せるようになると、打ち手を選べるようになります。ここで大事なのは、いちばん動かしやすいところから手を付けることです。

手前より、途中を先に直す

相談の数を増やす打ち手は、費用と時間がかかります。広告を出す、サイトを作り直す、紹介の仕組みを作る。どれも効果が出るまで数か月かかります。

一方、途中で落ちている割合を減らす打ち手は、受付の回し方を変えるだけで動きます。返信までの日数を縮める、見積もりに含まれない範囲を書く、返していない件を無くす。どれも今週から始められて、来月の数字に出ます。数えていない事務所は、この手前の打ち手しか思いつきません。

打ち手を一つずつ試す

複数の変更を同時に入れると、どれが効いたのか分かりません。返信を速くして、見積もりの書き方を変えて、サイトの文言も直した月は、数字が動いても理由が特定できません。

一か月に一つだけ変える形にすると、時間はかかりますが、効いたものが分かります。効いたものは残し、効かなかったものは戻せます。効いたかどうかを判断するには、変える前の数字が要ります。数え始める価値はここにあります。

効かなかったことも記録する

試して効かなかった打ち手は、記録に残しておきます。残していないと、数か月後に同じことをもう一度試すことになります。人が入れ替わればなおさらです。

何を試して、どうなったか。この二行を残しておくだけで、同じ試行の繰り返しが防げます。数字を数える目的は、報告のためではなく、この積み重ねを作るためです。

表計算で数えることの限界

多くの事務所は、表計算のファイルで数えています。始めるのが早く、費用もかからないので、最初の選択としては合理的です。限界が来るのは、次の三つが重なったときです。

一つ目は、入力が手作業であることです。受信箱を見て表に転記する作業は、忙しい時期に飛びます。飛んだ月の数字は、後から埋めようとしても正確になりません。二つ目は、返信の状況が表に入らないことです。返したかどうかは受信箱にあり、集計は表にある。二か所を突き合わせる作業が発生します。三つ目は、複数人が同時に触ると壊れることです。行がずれる、同じ行を二人が書き換える、古い版が上書きされる。

これらは表計算の欠点ではなく、用途の違いです。集計する道具としては優秀ですが、届いた相談を受けて返す道具ではありません。受けて返す場所と数える場所が分かれている限り、転記の手作業は消えません。

数えるための道具を選ぶとき、この転記が消えるかどうかが最大の分かれ目になります。転記が残る形をいくつ比べても、続かないという結果は同じです。

数える場所を選ぶときの軸

数える作業を続けるには、相談が届いた場所でそのまま数えられることが要ります。道具を比べるときは、この観点で見ると判断がつきます。

第一に、届いた相談に分類と状況を持たせられるかどうか。持たせられなければ、結局どこかに転記することになります。無料で使える定番の道具と、送信されたあとの扱いがどう違うのかは、Googleフォームとの比較で、回答が表に溜まったあとに何が起きるかという観点から整理されています。

第二に、返信したかどうかが件ごとに残るかどうか。ここが残らないと、返していない件を数えられません。すでにサイトにフォームを置いている事務所であれば、Contact Form 7との比較に、送信の通知だけが飛ぶ状態と、送信後の管理まで持つ状態の違いがまとめられています。

第三に、複数人で同時に触れるかどうか。実際にどう動くのかを先に見たい場合は、動くところを見るで、送信されたあとの画面がどうなっているかを触れます。送信されたあとの道具がそろっているかどうかは、フォームを作る画面を見ても分かりません。どこまでが基本に含まれるのかは料金に書かれています。

数え始める最初の月にやること

分類を最初から完璧に作ろうとすると、始まりません。最初の月は、制作物の種類と結果の二つだけで足ります。この二つがあれば、種類ごとの受注の割合という、いちばん使える数字が出ます。

経路と段階は、二か月目以降に足します。足すときは、それまでの記録をさかのぼって埋めようとしないことです。埋めた分は精度が低く、後から見返したときに判断を誤らせます。足した月から数え直すほうが正確です。

最初の月にもう一つやっておくとよいのは、いま抜けている経路の洗い出しです。サイトのフォーム以外にどこから相談が入っているのかを、心当たりで構わないので書き出します。電話、担当者の個人のメール、名刺交換の後の連絡、既存の取引先からの口頭の依頼、紹介。書き出してみると、数えていない経路のほうが多い事務所も珍しくありません。全部を一度に一本化する必要はなく、まず存在を把握しておけば、後から順に寄せられます。

三か月続けると、季節の差と施策の効果を見分けられるようになります。一か月の数字だけで判断すると、たまたまの上下を効果だと読み違えます。数え始めた直後にいちばん起きやすい失敗がこれです。

デザイン事務所以外の受付でも、同じ構造が出てきます。届いた件数は数えているが、中身を分けていないので次の判断が出てこない。どの場面でどう詰まるのかは、問い合わせの受付に、受け取ってから返すまでの流れとして整理されています。求人の応募を同じ窓口で受けている事務所であれば、採用の応募受付のほうも合わせて見ておくと、混ぜて数えてはいけない線がどこにあるのかが分かります。

分類を決めるときに迷ったら、事務所の会話に出てくる言葉をそのまま使うのが確実です。日々「あの印刷の件」「ロゴの相談」と呼んでいるなら、それが実務に合った分類です。外から持ってきた整った分類は、名前と実態が一致せず、入力のたびに迷います。迷う分類は使われなくなり、使われない分類は数字を歪めます。

数えることの目的は、報告用の数字を作ることではありません。どこで落ちているのかを指せるようにすることです。落ちている場所が指せれば、直すかどうかを決められます。総数だけを数え続けている限り、この判断はいつまでも出てきません。分けて数えるために必要なのは、新しい仕組みより先に、分ける基準を決めることです。基準さえ決まっていれば、最初の月は手で数えても構いません。数えた結果に意味があると分かってから、続けやすい形に移せば足ります。手で数えた一か月分でも、種類ごとの受注の割合が出るだけで、翌月に何を変えるかの話ができるようになります。数える手間より、話ができるようになることのほうが価値があります。

Q1. 分類はいくつくらい用意すればよいですか?

最初は制作物の種類を五つから八つ、結果を四つか五つで足ります。分類を増やしすぎると入力のときに迷い、迷う分類は使われなくなります。「その他」を一つ置いておいて、そこが増えてきたら分け方を見直す形にすると無理なく育てられます。経路や検討の段階は、二か月目以降に足すほうが続きます。足すときに過去の分をさかのぼって埋めようとすると精度が落ちるので、足した月から数え直すほうが正確です。

Q2. 同じ相手から複数回連絡が来た場合、何件と数えますか?

案件を単位にする決め方が使いやすい。同じ相手でも、名刺の依頼とパンフレットの相談は別の案件なので2件、同じ案件について三通届いたなら1件です。この決め方だと受注や失注の数と対応が取れます。相談者の人数を数えたいときは、案件の記録から後で数え直せます。半年前に流れた相手から再び連絡が来た場合は、新しい1件として数えるほうが期間ごとの集計が素直になり、前の件との関係は記録の中で結び付けておけます。

Q3. 電話で受けた相談も数えるべきですか?

数えるべきです。抜けたまま数えると経路ごとの比較ができません。フォームからが月に10件で電話が15件なら、サイトの改善より電話の受け方の整備のほうが効きますが、電話を数えていなければこの判断そのものが出てきません。受付が代わりに入力するか、折り返しでフォームの案内を送る形を決めておきます。最初は相手と内容と日付だけでも、記録としては十分に成立します。

Q4. 集計のために、相談者の連絡先はいつまで残せばよいですか?

集計に必要なのは件数と分類と日付で、氏名や連絡先が無くても数えられます。動きが無いまま一定期間が過ぎた件は、連絡先を消したうえで集計用の情報だけを残す分け方ができます。法律に具体的な期間の定めはないため、事務所で区切りを決めることになります。決めていない状態は事実上の永久保存になるので、区切りを置くこと自体に意味があります。判断に迷う場面では所管の窓口や専門家に確かめてください。

Q5. 表計算での集計は、いつまで続けられますか?

入力が手作業であること、返信の状況が表に入らないこと、複数人が同時に触ると壊れること。この三つが重なった時点で限界が来ます。集計する道具としては優秀ですが、届いた相談を受けて返す道具ではありません。受けて返す場所と数える場所が分かれている限り、転記の手作業は消えず、忙しい月に飛びます。飛んだ月の数字は後から埋めても正確になりません。

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