デザイン事務所の問い合わせ返信をひな形にしたい、という動機はたいてい同じところから出てきます。制作の相談と見積もりの依頼を受けていると、毎回ほぼ同じことを書いている。それなのに一通に20分かかっている。制作の手を止めて書いているので、返信が溜まると仕事全体が止まる。
そこでテンプレートを作ろうとするのですが、多くの場合ここで詰まります。相談の中身が毎回違うので、ひな形にした文面が結局そのままでは使えない。使えないひな形は開かれなくなり、また一から書く生活に戻ります。あるいは逆に、無理にそのまま送った結果、相手の相談内容と噛み合わない文面が届いて、信用を落とします。
問題は、返信を全部ひな形にしようとしていることです。デザイン事務所の返信には、そのまま送ってよいものと、必ず手を入れなければならないものがはっきり分かれています。この記事では、その分け方の基準を示したうえで、それぞれの中身と置き場所を決められるようにします。デザインの提案の中身そのものには触れません。受けて返す側の回し方だけを扱います。
デザイン事務所の返信が定型にしにくい理由
相談の中身が毎回違う
同じ問い合わせ窓口に、名刺一種類の相談と、Webサイト全面リニューアルの相談と、商品パッケージの相談が並んで届きます。金額の桁も、必要な打ち合わせの回数も、確かめるべき条件も違います。一通のひな形でこの幅を覆おうとすると、当たり障りのない文面になり、結局どの相談にも合いません。
さらに、相手の準備の度合いも違います。原稿もロゴも用意ができていて部数まで決まっている相談と、「何を頼めばよいか分からない」から始まる相談が同じ日に届きます。前者には条件の確認だけを返せばよく、後者には何を決める必要があるのかから伝えることになります。この二つに同じ文面を返すと、片方には冷たく、もう片方には長すぎます。
だから、ひな形を一つ作って全部に使う設計は最初から成立しません。相談の種類ごとに、使う部品を組み合わせる形にするほうが現実的です。
金額に触れる文面は使い回せない
見積もりを出す返信は、ひな形にしてはいけない代表です。条件が一つ違うだけで金額が変わるのに、文面が前の案件のまま残っていると、条件の記述と金額が食い違います。届いた側は金額のほうを信じるので、後から「そちらの提示と違う」という話になります。
とくに危ないのが、前の相手の会社名や案件名が残っているパターンです。ひな形を上書きして使う運用をしていると、必ず一度は起きます。他社の案件名が入った見積もりが届いた時点で、相手が受け取るのは金額の情報ではなく、この事務所は情報の管理が雑だという印象です。
金額に触れる文面については、ひな形にするのは項目の並びだけにして、中身は毎回書く。この線を引いておくと事故が減ります。
断りの文面がいちばん書きにくい
手が空いていない、条件が合わない、予算が見合わない。断る返信は、書くのに時間がかかるうえ、後回しにされます。後回しにされた結果、返信しないまま放置される件がいちばん多いのがこの種類です。
放置は、断るより悪い結果を生みます。相手は待ち続け、他を探し始め、この事務所は返事をくれないという評価を持ちます。断りを早く返していれば、条件が合う別の案件で声がかかる可能性が残ります。
断りの文面こそ、ひな形にする価値があります。ただし、そのまま送れる形にはなりません。理由の部分だけは相手ごとに変わるからです。骨組みを用意しておいて、理由の一文だけ書き足す形にすると、書く時間が数分に縮みます。
そのまま送れる文面と、手を入れる文面を分ける
分け方の基準は一つ
判断の基準は単純です。その文面のなかに、相手ごとに変わる部分があるかどうか。無ければそのまま送れます。あれば手を入れる文面です。
宛名だけが変わるものは、そのまま送れる側に入れて構いません。宛名の差し込みは仕組みで解決できるからです。変わるのが宛名だけでなく、条件、金額、日程、理由といった中身に及ぶなら、手を入れる文面です。
この基準で分けると、デザイン事務所の返信はおおむね次のように整理できます。そのまま送れるのは、受付の控え、素材の送り方の案内、日程の候補提示、休業の案内、着手と納品の連絡。手を入れるのは、条件を確かめる返信、見積もりの提示、断り、金額の相談への返答。前者を仕組みに任せ、後者に時間を使う形が、いちばん無理がありません。
そのまま送れる文面は、書く手間をゼロにする
そのまま送れると分かった文面は、人が送る作業自体をやめられます。受付の控えを手で送っている事務所はまだ多いのですが、これは自動で返せる種類の文面です。相談が届いた瞬間に返るほうが、数時間後に人が送るより相手の安心につながります。
自動で返す文面には、取り扱いについての一文も入れておけます。個人情報の保護に関する法律は、取得の場面について次のように定めています。
個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
何をどう書けば足りるのかは事務所によって変わるため、判断に迷う場面では所管の窓口や専門家に確かめてください。ここで押さえておきたいのは、そのまま送れる文面のなかに、毎回書くのが面倒で抜けがちな要素をまとめて入れておけるという点です。
手を入れる文面は、変える部分だけを決めておく
手を入れる文面をひな形にするコツは、全文を用意しないことです。全文があると、どこを直すべきかが分からなくなり、直し忘れが起きます。骨組みと、埋める場所の指示だけを用意します。
たとえば見積もりの提示なら、条件の確認、金額、含まれる範囲、含まれない範囲、有効期限、次に決めてほしいこと。この六つの並びだけを固定して、中身は毎回書く。並びが固定されていれば、書き漏れが起きません。書く時間も、白紙から始めるより大幅に短くなります。
そのまま送れるひな形の中身
受付の控え
相談が届いたことを伝える文面です。入れる要素は四つ。届いたこと、返信までの目安の日数、素材の送り方の案内、取り扱いについての説明へのリンク。
返信までの目安を書いておくと、催促が減ります。3営業日以内に返す、と書いておけば、相手はその間待ちます。書いていないと、翌日には他の事務所にも問い合わせを出します。目安は短く書きすぎないことが大事で、守れる範囲で書きます。守れない目安を書くと、書かないほうがましな結果になります。
素材の送り方の案内をここに入れておくと、添付で詰まる往復が減ります。相談の段階では画像かPDFで足りること、大きなデータは受注後に別の方法で受け取ること。この二つを最初に伝えるだけで、容量の上限に当たって届かない事故がほとんど消えます。
素材の送り方の案内
受付の控えとは別に、素材が足りないときに送る案内も用意できます。何を送ってほしいか、どの形式で、何枚まで。この三つが書いてあれば、相手ごとに変える必要はありません。
案件の種類ごとに用意しておくと、さらに使いやすくなります。ロゴの相談なら現行のロゴと使用箇所の写真、印刷物なら現物の表と裏、Webなら既存サイトのURLと変えたい箇所を示した画面の写し。種類ごとの版を三つか四つ用意しておけば、選んで送るだけになります。
検討中の相手に、もう一度声をかける文面
見積もりを出したあと、返事が来ない相手に送る文面です。これもそのまま送れます。前回の見積もりの内容には触れず、検討の状況を尋ねるだけの短い文面にしておくと、どの案件にも使えます。
送る時期を決めておくと、判断が要らなくなります。見積もりを出してから2週間返事が無ければ一度声をかける、といった形です。時期を決めていないと、気が向いたときだけ送ることになり、送り忘れた案件がそのまま消えます。件ごとに状況が残る形になっていれば、対象を抜き出すだけで済みます。
打ち合わせの日程を出す文面
相談が具体化すると、一度話す場を作ることになります。この日程調整の文面も、そのまま送れる側です。候補の日時を三つ並べ、オンラインと対面のどちらでもよいことを添え、所要時間の目安を書く。この形が固定されていれば、変わるのは候補の日時だけです。
所要時間を書いておくと、相手が予定を組みやすくなります。30分で済む確認なのか、1時間必要な打ち合わせなのかで、相手の準備も変わります。書いていないと、相手は長めに枠を取ることになり、その分だけ調整が難しくなります。
候補を三つ出すのは、往復を減らすためです。一つだけ出すと合わなかったときにもう一往復かかります。五つ以上出すと選ぶ手間が生まれます。三つが実務上ちょうどよい数として使われています。
休業と、立て込んでいるときの案内
年末年始や夏季の休業、展示会や大型案件で手が空かない時期。この種の案内も、そのまま送れます。休業中に届いた相談に自動で返る形にしておくと、相手は待つ理由が分かります。
立て込んでいる時期の文面には、いつ以降なら着手できるかを入れます。書かずに「立て込んでおります」とだけ返すと、断られたと受け取られます。時期が書いてあれば、待てる相手は待ちます。
着手と納品を知らせる文面
受注が決まったあとにも、そのまま送れる文面があります。着手した旨と次に相手にお願いすることを知らせる連絡、初校を送るときの確認事項を並べた連絡、納品時のデータの受け渡し方法を伝える連絡。この三つは、案件が違っても書く内容がほとんど同じです。
とくに初校を送るときの文面は、固定しておく価値が大きい。確認してほしい箇所、修正の伝え方、返答の期限。この三つが毎回同じ形で書かれていれば、相手も修正の出し方に慣れます。修正が口頭やばらばらの経路で届くと、抜けが生まれ、二校三校と回数が増えます。回数が増えると、見積もりに含めた範囲を超えます。
納品時の文面には、データの保管期間を入れておけます。事務所側でいつまで元データを持っておくのかを書いておくと、後年の問い合わせに答えやすくなります。書いていないと、何年前の案件でも持っている前提で連絡が来ます。
手を入れる文面で、決めておく骨組み
条件を確かめる返信は、質問を絞る
相談を受けて最初に返す返信で、確かめたいことは山ほどあります。しかし全部を並べると、相手は答える気をなくします。質問が10個並んだ返信を受け取って、その場で全部埋める相手はほとんどいません。
絞るなら、金額が変わる条件から選びます。用途と使う場所、必要な数量やページ数、原稿と素材を誰が用意するか、希望の時期。この四つが決まれば、おおよその金額は出せます。細かい条件は、金額の合意ができてから聞けばよい。
質問の並びを固定しておくと、返ってきた答えの並びもそろいます。案件が増えたときに見返しやすくなり、後から条件を数えることもできるようになります。相談を受ける項目としてフォームに組み込めるものは、そちらに寄せておくと、この返信そのものが不要になる場合もあります。
見積もりを出す返信で外せない要素
金額だけを書いた返信は、後で必ずもめます。含まれる範囲と含まれない範囲を書いていないと、修正の回数や追加の対応をめぐって認識がずれます。
外せないのは六つです。前提とした条件、金額、含まれる範囲、含まれない範囲、有効期限、次に決めてほしいこと。とくに「含まれない範囲」は書きにくいので抜けやすいのですが、ここが抜けると後の負担が全部事務所に来ます。印刷費は別であること、写真の撮影は含まないこと、修正は何回までかといった線を、金額と同じ画面に書いておきます。
有効期限を書く理由は、条件が古くなるからです。半年後に「あの見積もりで」と言われたときに、断りにくくなります。期限が書いてあれば、条件を確かめ直す会話から始められます。
断りの返信
骨組みは三つです。相談への礼、受けられない旨、可能であれば代わりの選択肢。理由の部分だけを毎回書き足します。
理由は詳しく書きすぎないほうがよい。手が空いていない、条件が合わない、この二つの範囲で十分です。予算が理由の場合は、金額の話に踏み込むと交渉が始まってしまうので、扱える範囲を伝えるだけにとどめます。
代わりの選択肢を添えられる場合は添えます。時期をずらせば受けられる、規模を絞れば受けられる、といった条件です。添えられないなら無理に書かず、短く返します。断りの返信は、早いことがいちばんの価値です。丁寧に書こうとして三日置くより、簡潔に翌日返すほうが相手のためになります。
金額の相談への返答
見積もりを出したあとに、もう少し下げられないかという相談が来ます。この返信も骨組みを決めておけます。下げられるかどうかを先に答え、下げられる場合は何を減らすことで下がるのかを示し、下げられない場合は金額の内訳のどこが動かせないのかを一言添える。
大事なのは、金額だけを動かす返信をしないことです。同じ内容のまま金額だけ下げると、最初の提示が高かったことになります。減らす範囲とセットで示せば、条件が変わったから金額が変わったという説明になります。ページ数を減らす、修正の回数を絞る、写真の支給を相手側にお願いする。減らせる項目をあらかじめ三つほど用意しておくと、この返信が短時間で書けます。
案件の種類ごとに、使う部品の組み合わせを決める
ひな形を一つの完成した文面として持つのではなく、部品として持つと、幅のある相談に対応できます。組み合わせを種類ごとに決めておけば、選ぶ作業も迷いません。
ロゴやマークの相談に返すとき
この種類の相談で最初に確かめたいのは、現行のロゴの元データがあるかどうかと、使っている場所の範囲です。看板や封筒や社用車まで含むと、作り直したときの影響が広がり、見積もりの前提が変わります。
返信の部品としては、条件を確かめる質問と、素材の送り方の案内を組み合わせます。相談の段階で送ってほしいのは、現行のロゴが分かる画像と、使用箇所の写真。この二つを案内する文面を用意しておけば、毎回書く必要がありません。作り直しの範囲が決まってから、金額の話に進みます。
印刷物の相談に返すとき
部数、サイズ、ページ数、色の数、印刷まで含むかどうか。金額が変わる条件がはっきりしているので、質問の並びを固定しやすい種類です。ここは項目としてフォームに組み込んでしまうと、返信そのものが一段階減ります。
原稿と写真を誰が用意するかも、この段階で確かめます。事務所が原稿を書く場合と、支給された原稿を組む場合では、工程が大きく違います。ここが曖昧なまま金額を出すと、後から範囲の話でもめます。返信の部品として、この確認を必ず入れる形にしておきます。
Webサイトや動画の相談に返すとき
この種類は、相談の段階で条件が固まっていないことがほとんどです。「古いので新しくしたい」から始まる相談に、いきなり金額を返すことはできません。
返信の部品としては、いまのサイトのURLを確かめる質問、変えたい範囲を具体的に聞く質問、公開の希望時期を聞く質問を組み合わせます。あわせて、一度話す場を作る日程調整の文面を添えると進みます。文字のやり取りだけで範囲を固めようとすると、往復が五回も六回も続きます。どの種類で早めに話す場を作るかを決めておくと、返信の判断が要りません。
ひな形に書き込んではいけないもの
一度書いた文面は、そのまま何十回も送られます。だから、ひな形に混ぜてはいけない種類の記述があります。
守れるかどうかが案件によって変わる約束
「一週間で初校をお出しします」といった納期の記述を、そのまま送る文面に固定してしまうと、案件の規模に関係なく約束することになります。名刺なら守れても、パンフレットでは守れません。守れなかった一件で、文面全体の信用が落ちます。
納期に触れるなら、幅を持たせるか、条件を確かめてから返す文面のほうに置きます。受付の控えに書くのは、返信までの日数だけにとどめるのが安全です。返信の日数なら、案件の規模に関わらず守れます。
前の案件の痕跡
ひな形を上書きして使う運用をしていると、前の相手の会社名、案件名、金額、担当者名がどこかに残ります。本文で気づいても、件名や添付ファイルの名前に残っていることがあります。届いた側から見れば、他社の情報が自分のところに来ているという事実だけが伝わります。
これを防ぐには、上書きして使う運用そのものをやめることです。空のひな形から毎回始める形にすれば、痕跡は構造的に残りません。返信を書く画面でひな形を呼び出す形になっていれば、前の内容が混ざる余地がなくなります。
前の制作者や他社の仕事を下げる表現
相談には、以前どこかに頼んで満足しなかった話が添えられていることがあります。それに同調して前の制作者を下げる書き方をひな形に入れると、別の相手に送ったときに角が立ちます。相談者自身が前の制作を選んだ当事者である場合もあります。
現物についての評価は、条件を確かめる会話のなかで個別に扱う話です。定型の文面には入れません。ひな形に入れてよいのは、どの相手にも同じように成り立つ事実と手順だけです。
返信が遅れる原因は、文面ではなく手順にあることが多い
ひな形を作っても返信が速くならない事務所があります。その場合、詰まっているのは文面を書く時間ではありません。書き始めるまでの手順です。
誰が返すかが決まっていない
担当が二人以上いる事務所で、届いた相談を誰が返すかが自動で決まっていないと、そこで止まります。お互いに相手が返すと思って数日過ぎる。あるいは二人が同時に返して、内容の違う二通が同じ相手に届く。どちらも、ひな形の出来とは関係のない場所で起きています。
決め方は単純で構いません。案件の種類で分ける、曜日で分ける、届いた順に交互に持つ。どの決め方でも、決まっていることのほうが重要です。決まっていれば、返信が遅れたときに誰の手元で止まっているかが分かります。
下書きが個人の手元に閉じている
書きかけの返信が、担当者のメールソフトの下書きに入ったまま数日経つことがあります。他の人からは見えないので、止まっていることに誰も気づきません。相談者から催促が来て、そこで初めて分かります。
件ごとに状況が持てる形になっていれば、返信の途中という状態が外から見えます。見えていれば、手が空いた人が引き取れます。個人の下書きに閉じている限り、この引き取りができません。
返したかどうかが残らない
いちばん多い詰まりがこれです。返信したかどうかが件ごとに残らないと、二重返信と返し忘れは必ず起きます。返し忘れは相談者の側からは分からないので、事務所には何も伝わりません。相談が来なかったのと同じ扱いになります。
ひな形を整える前に、この記録の部分を先に整えたほうが効く場面もあります。文面の質より、返っているかどうかのほうが、相手にとっては大きい差だからです。
ひな形をどこに置くかで、使われるかどうかが決まる
用意したひな形が使われない理由は、たいてい置き場所です。個人のメールソフトの下書きに置いてあると、その人しか使えません。担当が二人いれば、二つの版がそれぞれ育っていきます。
共有のファイルに置く形にすると、全員が同じ版を使えます。ただし、返信を書くたびにそのファイルを開き、コピーして貼り付ける手順が残ります。手順が三つ以上あるものは、忙しいときに飛ばされます。
いちばん飛ばされにくいのは、返信を書く画面にひな形が並んでいる形です。相談の中身を見ながら、その場でひな形を選んで、変える部分だけを直して送る。この形なら手順は一つです。件ごとに誰がいつ何を送ったかが残る仕組みになっていれば、二重返信も防げます。
道具を比べるときは、この観点で見ると判断がつきます。無料で使える定番の道具と、送信されたあとの扱いがどう違うのかは、Googleフォームとの比較で、回答が表に溜まったあとに何が起きるかという観点から整理されています。すでにサイトにフォームを置いている事務所であれば、Contact Form 7との比較に、送信の通知だけが飛ぶ状態と、送信後の管理まで持つ状態の違いがまとめられています。返信の履歴が件ごとに残るかどうかは、ここで分かれます。
実際にどう動くのかを先に見たい場合は、動くところを見るで、送信されたあとの画面がどうなっているかを触れます。送信されたあとの道具がそろっているかどうかは、フォームを作る画面を見ても分かりません。どこまでが基本に含まれるのかは料金に書かれています。
ひな形が増えすぎたときの整理
使い始めると、ひな形は増えます。増えること自体は悪くありませんが、選ぶのに時間がかかる状態になったら整理の時期です。
使われていない版を消す
三か月使って一度も選ばれなかった版は、消して構いません。残しておくと、選ぶときの候補として毎回目に入り、判断の時間を増やします。消したあとで必要になったら、そのとき作り直せばよい。作り直すのは数分の作業です。
似た版が二つあるときは、片方に寄せます。「初めての相手への返信」と「紹介からの相談への返信」が中身のほとんど同じ文面になっているなら、一つにして、違う一文だけ書き足す形にします。版を分ける価値があるのは、中身の半分以上が違うときだけです。
名前を、選ぶ側の言葉で付ける
ひな形の名前が「返信1」「返信2」になっていると、開いてみないと中身が分かりません。選ぶのに時間がかかる原因は、たいていここにあります。
名前には、いつ使うかを書きます。「相談を受けた直後に返す」「素材が足りないときに送る」「見積もり後に返事が無い相手へ」。使う場面が名前になっていれば、開かずに選べます。担当が増えたときも、説明せずに使ってもらえます。
ひな形を使い始めたあと、何を見て直すか
作ったひな形は、作った時点では完成していません。使いながら直す前提で置きます。直す材料になるのは三つです。
一つ目は、送るときに毎回同じ場所を書き足しているかどうか。書き足している箇所があるなら、それはひな形に入れるべき要素です。二つ目は、返信のあとに同じ質問を追加で受けていないか。受けているなら、その答えをひな形に足せば往復が一つ減ります。三つ目は、そのまま送れると分類した文面を、実際にはそのまま送れていないかどうか。手を入れているなら、分類のほうが間違っています。
この三つは、件ごとの返信が記録に残っていれば見返せます。個人のメールソフトに散らばっていると、見返す作業が現実的でなくなります。ひな形を育てる仕組みそのものが、記録の残り方に依存しています。
デザイン事務所以外の受付でも、同じ構造が出てきます。届いたものへの返信を定型にしたいが、中身が毎回違うので定型にならない。どの場面でどう詰まるのかは、問い合わせの受付に、受け取ってから返すまでの流れとして整理されています。
直す作業は、月に一度まとめてやると続きます。返信のたびに直そうとすると、目の前の案件が優先されて手が回りません。決めた日に、その月に送った返信をいくつか見返して、書き足した箇所を拾う。この作業に必要なのは十数分で、続けるほどひな形が実務に近づきます。
始めるときは、そのまま送れる文面から手を付けるのが確実です。受付の控えと素材の送り方の案内。この二つを用意して自動で返る形にするだけで、返信にかかる時間の一部がその日から消えます。手を入れる文面の骨組みは、そのあとで作れば間に合います。骨組みを作るときも、白紙から考える必要はありません。直近に送った返信を三通ほど並べて、共通している部分を抜き出せば、それがそのまま骨組みになります。実際に送った文面から作った骨組みは、頭で考えたものより実務に合います。書き足している箇所も同時に見えるので、部品として足すべきものがその場で分かります。三通で足りなければ五通並べます。数を増やすほど共通部分がはっきりし、案件ごとに変わる部分との境目が見えてきます。この境目が、そのまま送れる文面と手を入れる文面の分かれ目です。分かれ目が自分の事務所の実務から出てきたものであれば、作った後も使われ続けます。
Q1. 見積もりの文面もテンプレートにしてよいですか?
項目の並びだけを固定して、中身は毎回書く形をおすすめします。前の案件の文面を上書きして使うと、条件と金額が食い違ったり、他社の会社名や案件名が残ったまま届いたりします。前提とした条件、金額、含まれる範囲、含まれない範囲、有効期限、次に決めてほしいこと。この並びを固定しておけば、書き漏れは防げます。とくに含まれない範囲は書きにくいので抜けやすく、抜けると後の負担が全部事務所に来ます。
Q2. 断りの返信は、理由をどこまで書けばよいですか?
手が空いていない、条件が合わない。この範囲で十分です。詳しく書くほど交渉の余地が生まれ、やり取りが長引きます。予算が理由の場合も、扱える範囲を伝えるだけにとどめます。断りの返信でいちばん価値があるのは早さで、丁寧に書こうとして三日置くより、簡潔に翌日返すほうが相手のためになります。時期をずらせば受けられる、規模を絞れば受けられるという条件があれば、それだけ添えます。
Q3. 受付の控えは、人が手で送ったほうが丁寧ですか?
相談が届いた瞬間に自動で返るほうが、数時間後に人が送るより相手の安心につながります。控えに入れる要素は、届いたこと、返信までの目安の日数、素材の送り方の案内、取り扱いについての説明へのリンクの四つです。目安の日数は守れる範囲で書きます。守れない日数を書くと、書かないほうがましな結果になります。素材の送り方をここで伝えておけば、容量の上限に当たって届かない事故もほとんど消えます。
Q4. ひな形はいくつくらい用意すればよいですか?
最初は、そのまま送れる文面を三つか四つで足ります。受付の控え、素材の送り方の案内、検討中の相手への声かけ、休業の案内。手を入れる文面は、条件を確かめる返信、見積もりの提示、断りの三つの骨組みだけ用意します。最初から数を揃えようとすると、使われない版が増えて管理のほうが重くなります。実際に送るたびに同じ箇所を書き足しているなら、そこを足していく形で育てるのが確実です。
Q5. ひな形を作ったのに使われません。どこを直せばよいですか?
たいていは置き場所です。個人のメールソフトの下書きに置いてあると、その人しか使えず、担当ごとに別の版が育ちます。共有のファイルに置いても、開いてコピーして貼る手順が残り、忙しいときに飛ばされます。返信を書く画面にひな形が並んでいて、選んで直して送れる形にすると、手順が一つになります。手順が三つ以上あるものは、忙しいときに必ず飛ばされると考えておくほうが安全です。
