クリニックが集めた応募者の情報の扱いは、患者の情報の扱いに慣れている職場ほど、かえって見落とされがちです。診療所の職員は、カルテを院外に持ち出さない、患者の名前を待合室で大きな声で呼ばない、といった決まりを日々守っています。ところが、応募者の履歴書は院長のスマートフォンに残り、面接の予定は患者の予約システムに入り、不採用の人の書類は事務室の棚に何年も置かれたまま、ということが珍しくありません。この記事では、診療所が応募者の情報を扱うときに、患者の情報とどう分けて考えるか、情報が残っている場所をどう洗い出すか、見られる人をどう絞り、いつ消すかをどう決めるかを整理します。法令の解釈が関わる部分は、公的機関の資料で確かめられる範囲にとどめています。個別の判断に迷うときは、所管の窓口や専門家に確かめてください。
患者の情報の決まりは、応募者の情報にそのまま当てはまらない
医療機関には、患者の個人情報の扱いについて、厚生労働省が示しているガイダンスがあります。診療所の多くは、このガイダンスをもとに院内の掲示や規程を作っています。そのため、院内の個人情報の決まりといえば患者の情報のこと、という理解になりがちです。
ガイダンスは、自らが対象とする情報の範囲について、次のように書いています。
本ガイダンスは、医療・介護関係事業者が保有する生存する個人に関する情報のうち、医療・介護関係の情報を対象とするものであり、また、診療録等の形態に整理されていない場合でも個人情報に該当する。 出典: mhlw.go.jp
応募者の履歴書や面接の記録は、医療の提供のために集めた情報ではありません。採用のために集めた情報です。扱いを考えるときは、個人情報保護法そのものと、個人情報保護委員会が示している一般のガイドライン、そして労働者の募集について定めた職業安定法とその指針が手がかりになります。
これは、応募者の情報を患者の情報より軽く扱ってよい、という意味ではありません。院内の掲示や規程が患者の情報を前提に作られていると、応募者の情報には誰が責任を持つのか、どこに置くのか、いつ消すのかが、どこにも書かれていない状態になりやすい、ということです。まずは、患者の情報とは別に、応募者の情報の扱いを院内で決める必要がある、と認識するところから始めてください。
集める前に、何に使うかを応募者に伝える
扱いの出発点は、応募者の情報を集めるときに、何に使うのかを伝えておくことです。診療所の応募フォームや求人の案内には、患者向けの個人情報の掲示の文面をそのまま貼っていることがあります。「当院では、患者さまの個人情報を診療と保険請求のために利用します」という文面は、応募者にとっては何も伝えていないのと同じです。
労働者の募集について厚生労働省が示している指針には、募集を行う者が業務の目的を明らかにするに当たって、個人情報がどのような目的で収集され、保管され、使用されるのかを、求職者等が一般的かつ合理的に想定できる程度に具体的に明示すること、と書かれています。
診療所の応募フォームであれば、次の程度の文面で、使い道が具体的に伝わります。
・ご記入いただいた情報とお送りいただいた書類は、当院の看護師(または医療事務)の採用選考と、選考に関するご連絡のためにのみ使います ・選考の書類を見るのは、院長、事務長、面接に同席する看護主任です ・選考が終わったあとは、結果をお知らせした月の翌月末までに処分します ・法人内の他の診療所の募集をご案内する場合は、事前にご本人の同意をいただきます
見られる人と消す時期まで書いておくと、応募者は安心して応募でき、院内でも決めたことを守る目安になります。文面に書いたことと、実際の運用がずれないよう、この記事の後半で決める内容と合わせて見直してください。患者向けの掲示とは別に、採用のための文面を1つ用意する、ということです。
応募者の情報が残っている場所を、診療所の中で洗い出す
扱いを決める前に、応募者の情報がいまどこに残っているかを書き出します。診療所では、次のような場所に分散していることが多くあります。
・応募フォームの回答の一覧と、添付されたファイル ・フォームの通知メールが届くメールボックス(院長の個人のアドレス、事務長のアドレス、診療所の代表のアドレス) ・求人媒体の管理画面に残る応募者の情報 ・紹介会社から届いたメールと、紹介会社の専用の画面 ・ハローワークの紹介状 ・郵送や持参で受け取った履歴書と職務経歴書 ・受付で電話を受けたスタッフが書いたメモ ・面接の日程を入れたカレンダー ・院長や主任が面接中に書いたメモ ・院長のスマートフォンのメッセージアプリに届いた、紹介者からの連絡や履歴書の写真
このうち、診療所ならではの場所が2つあります。
面接の予定を、患者の予約システムに入れていないか
診療所では、院長の時間の管理を、患者の予約システムや電子カルテの予約の画面で行っていることがあります。昼休みに面接を入れるとき、その時間に患者の予約が入らないよう、予約の画面に「面接 〇〇さん」と入力して枠を押さえる。この運用は手軽ですが、応募者の名前が患者の予約と同じ画面に残り、予約の履歴として後から検索できる状態になります。
受付のスタッフは全員が予約の画面を見るため、応募の事実がスタッフ全員に伝わります。応募者がのちに患者として来院したとき、予約の履歴に面接の記録が出てくることもあります。面接の枠を押さえるなら、予約の画面には「院長不在」のように名前を書かない形で入れ、応募者の名前は採用の一覧だけに書いてください。
院長のスマートフォンに、履歴書の写真が残っていないか
地域の診療所では、知人の院長や、職員、患者の家族から「看護師を探しているなら、この人はどうか」と紹介が届くことがあります。紹介は、院長の個人のスマートフォンにメッセージで届き、履歴書を写真で撮って送ってくることもあります。院長は昼休みにそれを見て、事務長に転送します。
この形では、応募者の情報が、院長のスマートフォンのメッセージアプリと写真の保存先、転送を受けた事務長のスマートフォンに残ります。院長が機種を変えれば、古い端末と一緒に情報がどこかに残ります。紹介で届いた情報も、受け取ったら採用の一覧に移し、メッセージと写真は院長と事務長の端末から消す、と決めておいてください。紹介者には、次からは履歴書の写真をメッセージで送らず、応募者本人に応募フォームから応募してもらうよう伝えます。
応募者が患者だったとき、カルテを見ない
地域の診療所では、応募者が自院の患者であることがよくあります。院長やスタッフが応募者の顔を見て、患者だと気づくこともあります。
このとき、院内で起きやすいのが、応募者のカルテを開いてみることです。持病がないか、通院の頻度はどうか、以前に何の病気で来院したか。採用したあとに急に休まれると困る、という不安から、つい確かめたくなります。受付のスタッフが、面接に来る人がどんな患者なのか、好奇心から電子カルテで名前を検索してしまうこともあります。
個人情報保護法には、利用目的による制限として、次の規定があります。医療・介護関係事業者向けのガイダンスにも、この条文が引かれています。
法第十八条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。 出典: mhlw.go.jp
患者がカルテに残された情報を診療所に預けたのは、診療を受けるためです。その情報を採用の判断に使うことは、患者として伝えた情報の使い道を超えることになります。健康に関する情報は、個人情報の中でも取り扱いに特に配慮が要る情報でもあります。院長であっても、応募者のカルテを採用のために開かない、と院内で明確に決めておいてください。
スタッフに向けては、「応募者が患者であっても、採用のためにカルテを見ない。名前を検索しない」と、採用の手順の中に書いておきます。電子カルテに閲覧の記録が残る仕組みがあるなら、そのことも伝えておくと、好奇心からの検索を防げます。逆の向きにも注意が要ります。採用の一覧や面接のメモに書いた応募者の情報を、その人が患者として来院したときの診療に持ち込まないことです。面接で聞いた前の職場の話や家庭の事情を、診察や受付の会話で持ち出すと、応募者は採用の場で話したことが診療の場に漏れたと感じます。採用の情報と診療の情報は、どちらの向きにも混ぜない、と決めておいてください。
応募者の側からは、「患者として通っていることが採用に影響しないか」と心配されることがあります。面接で聞かれたら、患者としての情報は採用には使わないこと、選考は応募の書類と面接の内容で行うことを、そのまま伝えてください。
見られる人を、役割で決める
応募者の情報を見られる人は、役割で決めます。診療所の規模であれば、次の程度に絞れます。
・院長:すべての応募者の情報 ・事務長または採用の窓口を担う事務:すべての応募者の情報 ・看護主任:看護師の応募者のうち、面接に同席する人の情報 ・受付のリーダー:医療事務の応募者のうち、面接に同席する人の情報
受付のスタッフや、面接に同席しない看護師は、応募者の情報を見る必要がありません。電話の応募を受けたスタッフや、持参の履歴書を受け取ったスタッフは、受け取って窓口に渡すまでの役割で、そのあとの選考の情報は見ません。
役割で決めるときに、診療所で見落としやすい人がいます。
院長の家族
家族で運営している診療所では、院長の配偶者が事務長を務めていることがよくあります。事務長として採用の窓口を担っているなら、上の役割のとおり、すべての応募者の情報を見て構いません。一方で、職員ではない家族が、経理の手伝いや院長の予定の管理のために、院長のメールや予定表を見ていることもあります。院長のメールボックスに応募の通知が届く形だと、採用の窓口を担っていない家族にも応募者の情報が見えます。応募の通知は、院長の個人のメールではなく、採用の窓口の宛先に届く形にしてください。
辞めたスタッフ
求人媒体の管理画面や、応募フォームの管理画面に、ログインの情報を共有して入っている診療所があります。以前に採用の窓口を担っていた受付のリーダーが退職したあとも、同じログインの情報のまま使い続けていると、辞めた人が応募者の情報を見られる状態が残ります。採用の窓口を担う人が変わったら、ログインの情報を変えるか、個人ごとのアカウントを止めてください。
外部の専門家
税理士や社会保険労務士に給与や社会保険の手続きを頼んでいる診療所では、採用が決まった人の情報を渡すことになります。渡すのは入職の手続きに必要な情報だけで、不採用の人を含む応募者の一覧や、面接の記録を渡す必要はありません。
スタッフの間で、応募者の話題をどう扱うか
見られる人を絞っても、情報は書類や画面の外からも広がります。診療所は職員の数が少なく、休憩室も1つで、昼休みには全員が同じ部屋で食事をとります。「今日の昼、面接の人が来るらしい」「近所の〇〇さんの娘さんが受付に応募したって」という会話は、ごく自然に起きます。
地域の診療所では、この会話がそのまま待合室や地域に広がるおそれがあります。受付のスタッフが、患者として来た応募者の家族に「娘さん、面接に来られましたね」と声をかける。応募者本人は、家族にも職場にもまだ話していなかったかもしれません。
スタッフに向けて、次の2つを伝えておいてください。
・応募者の名前や、応募したという事実は、採用が決まって入職の日が決まるまで、院内でも話題にしない ・面接に来た人を見かけても、患者や来院者の前で、その人について話さない
欠員の補充の採用では、辞めることが決まっているスタッフが、後任の候補について知りたがることもあります。引き継ぎのために後任の人となりを知りたい、という気持ちは分かりますが、選考中の応募者の情報を伝える必要はありません。伝えるのは、採用が決まってから、入職の日と名前だけで足ります。
採用した人の応募の情報を、職員の記録にそのまま持ち越さない
採用が決まった人の応募の情報は、そのまま職員の記録に移したくなります。ただ、応募の段階の情報には、職員の記録として持ち続ける必要のないものが含まれています。
面接のメモには、院長や主任が面接の場で感じたことが書かれています。「処置の経験は浅い」「受付での応対は硬そう」といった、選考のときの印象です。入職したあとも事務室の職員の記録にこのメモが残っていると、何年も前の印象が、その職員を見る目に影響しかねません。日程調整のメールや、応募フォームの自由欄に書かれた質問も、入職後に使うことはほとんどありません。
採用が決まったら、職員の記録に移すものを、雇用の契約と入職の手続きに使う書類、免許の確認の記録など、働くうえで必要なものに絞ってください。応募の段階の情報は、不採用の人の情報と同じ時期に、同じ手順で片付けます。採用した人の書類だけ片付けの対象から外すと、応募の書類の箱に、辞めた職員の何年も前の履歴書が残り続けることになります。
他の診療所に紹介したくなったとき
地域の診療所の院長どうしは、医師会の集まりや勉強会で顔を合わせます。「うちでは採用できなかったが、よい看護師だったので、看護師を探している先生の診療所に紹介したい」という場面は、珍しくありません。医療法人が複数の診療所を持っていて、本院の応募者を分院に回したい、ということもあります。
自院とは別の医療機関に応募者の情報を渡すことは、応募者から見れば、応募していない先に自分の情報が届くことです。労働者の募集について定めた指針では、個人情報の保管や使用は収集目的の範囲に限られ、他の目的を示して本人の同意を得た場合などはこの限りでない、とされています。他の診療所に紹介したいなら、情報を渡す前に、応募者本人に「〇〇クリニックでも看護師を募集しています。ご紹介してもよろしいですか」と聞き、同意を得てから渡してください。同意を得たら、同意を得た日と、どこに紹介したかを採用の一覧に書いておきます。
同じ医療法人の中の分院に回す場合も、応募者が応募したのは本院の募集です。分院の案内を受けてよいかを、同じように本人に確かめてから回すほうが、応募者との行き違いがありません。応募の段階で、法人内の他の診療所の案内を受けてもよいかを選んでもらう欄をフォームに置いておくと、あとで改めて聞く手間が省けます。
前に勤めていた病院に、勤務の様子を問い合わせたくなることもあります。看護師の転職では、前の病院の看護部長と院長が知り合い、ということも地域ではあり得ます。応募者に黙って前の職場に問い合わせると、本人がまだ退職を伝えていない職場に転職の意向が伝わってしまうおそれがあります。問い合わせるなら、必ず本人の同意を得てからにしてください。
いつ消すかを、診療所の決まりにする
不採用になった応募者の書類や、途中で辞退した応募者の情報を、いつまで持っておくか。この点について、不採用者の書類を何年保管しなければならない、という一律の決まりはありません。一方で、個人情報保護法には、利用する必要がなくなった個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない、という努力義務の規定があります。
つまり、診療所が自分で決める必要があります。決めるときの考え方は、次の順番です。
1つ目に、選考が終わったら使わない情報を分けます。不採用の人の履歴書、面接の記録、日程調整のメールは、結果を連絡し、応募者からの問い合わせにひととおり答え終えたら、使う場面がなくなります。
2つ目に、残しておく理由がある情報を決めます。次の募集のときに声をかけたい人がいるなら、その人から同意を得たうえで、連絡先と職種と経験だけを残す、というように、残す情報と期間を絞ります。
3つ目に、消す日を暦で決めます。「結果を連絡した月の翌月末に、その月に結果を連絡した人の書類をまとめて消す」のように、月に1回、決まった日に片付ける形にすると、忘れにくくなります。医療事務の応募が多く集まった月でも、月末の昼休みに一度で片付けられます。
決めた期間は、応募フォームの説明や、応募者への結果の連絡に書いておくと、応募者にも伝わります。「応募書類は選考終了後、翌月末までに責任を持って処分します」の程度で十分です。
消す場所ごとに、消し方を決める
いつ消すかを決めたら、洗い出した場所ごとに、誰がどう消すかを決めます。
・紙の書類:シュレッダーにかけるか、診療所がカルテや紹介状の廃棄に使っている機密文書の回収に出す。回収の箱に入れるまで、事務室の鍵のかかる引き出しに置く ・応募フォームの回答と添付ファイル:フォームの管理画面から削除する。回答を表計算ソフトに書き出していたなら、書き出したファイルも消す ・通知メール:採用の窓口の宛先に届いた通知メールを削除する。院長の個人のアドレスに転送していたなら、そちらも消す ・求人媒体の管理画面:媒体ごとに応募者の情報を削除できるかを確かめ、できる範囲で消す ・カレンダーと予約システム:面接の予定に名前を書いていたなら、予定を消すか、名前を消す ・面接のメモ:紙なら書類と一緒に処分し、応募の一覧に書いていたなら、一覧の該当の行から消す ・院長や事務長のスマートフォン:紹介で届いたメッセージや履歴書の写真を消す
診療所は、カルテや検査の結果を廃棄するための機密文書の回収を、すでに業者に頼んでいることが多いものです。応募者の紙の書類も同じ回収に出せば、新しい手段を用意する必要はありません。回収の箱に入れた日を、採用の一覧に書いておくと、消したことが記録に残ります。
紹介会社から届いた情報は、診療所の側で消せる範囲と、消せない範囲があります。紹介会社から届いたメールや、院内で印刷した紹介の書類は、他の応募者の情報と同じ手順で消せます。一方で、紹介会社の専用の画面に残っている応募者の情報や、紹介会社そのものが持っている情報は、診療所の側では消せません。選考が終わったら、紹介会社の担当者に結果を伝えるときに、診療所の側では書類を処分したことを伝え、専用の画面の情報の扱いは紹介会社の決まりに従う、と整理しておいてください。ハローワークの紹介状も、結果を連絡し終えたら他の書類と同じ時期に処分します。
データの削除は、場所の数だけ手間がかかります。月末の片付けのたびに7つの場所を回るのは現実的ではないため、応募の情報を置く場所そのものを減らしておくことが、消し忘れを防ぐいちばんの近道です。
応募者から、見せてほしい、消してほしいと言われたとき
応募者から、「応募したときの書類を返してほしい」「自分の情報を消してほしい」と連絡が来ることがあります。不採用の連絡をしたあとや、途中で辞退した応募者から届くことが多い連絡です。
労働者の募集について定めた指針では、募集を行う者は、個人情報の管理についての措置を講じるとともに、求職者等からの求めに応じて、その措置の内容を説明しなければならない、とされています。消してほしいと言われたら、どこに何が残っていて、いつまでにどう消すかを、応募者に分かる言葉で伝えてください。洗い出した場所の一覧があれば、この説明はすぐにできます。
開示や削除の求めへの対応の細部は、個人情報保護法の規定に沿って考える必要があります。求めの内容によって扱いが変わるため、迷う場合は個人情報保護委員会の案内や、専門家に確かめてください。
情報をなくしたかもしれないときに、最初にすること
応募者の履歴書が入った封筒が見当たらない、応募者の情報を載せたメールを別の宛先に送ってしまった、院長のスマートフォンを置き忘れた。こうしたことが起きたら、最初にするのは、何の情報が、何人分、どこに行ったかを確かめて書き出すことです。
診療所は、患者の情報について、漏えいのときの手順を決めていることがあります。その手順が、応募者の情報にも使えるかを確かめておいてください。誰に報告するか、応募者本人に知らせるか、個人情報保護委員会への報告が必要かどうか。報告が必要になる場面は、漏えいした情報の中身や人数によって決まっているため、個人情報保護委員会の案内で確かめてください。応募者の情報に健康に関する記載が含まれていた場合は、とくに慎重な確認が要ります。
情報を1か所に寄せられるかを見極める
ここまでの扱いを、いまの受け方で回せるかは、次の問いで見極められます。
・応募が月に数件で、履歴書は面接の日に持参してもらい、事務長がひとりで管理しているなら、紙と表計算ソフトの一覧で十分回ります ・応募者の情報が、院長のメール、事務長のメール、求人媒体、紹介会社、紙の書類と5か所以上に分かれているなら、置き場所を減らせるかが分かれ目です ・看護主任や受付のリーダーに、担当する職種の応募者だけを見せたいなら、見られる人を分けられるかを確かめてください ・月末に消すときに、どこを回ればよいかが一覧で分かるかも見ておきます
Googleフォームで応募を受けている場合、回答はフォームとスプレッドシート、添付ファイルはGoogleドライブに残ります。消すときにどこを回るか、見る人をどう分けるかは、Googleフォームとの比較で整理しています。Contact Form 7で受けている場合は、応募の内容がメールで届くため、受け取った全員のメールボックスに情報が残ります。この点はContact Form 7との比較にまとめています。
応募の記録とファイルを1か所に置き、担当者を決めて選考から片付けまで回す流れは、採用の応募受付で紹介しています。見られる人を分けられるか、回答を削除できるかといった機能の範囲はできることで、画面での扱いは動くところを見るで確かめられます。
利用する人数ごとの費用は料金に、データの保存や削除についての疑問はよくある質問にまとめています。まずは、この記事で挙げた場所を1つずつ見て、いま応募者の情報が何か所に残っているかを数えてみてください。送信されたあとの道具がそろっているかどうかは、その数を減らし、月末の片付けを一度で終えられるかで判断できます。
Q1. 患者の個人情報の院内規程があれば、応募者の情報もそれに従えばよいですか?
院内規程が患者の情報を前提に作られている場合、応募者の情報の置き場所や消す時期が書かれていないことが多くあります。厚生労働省の医療・介護関係事業者向けのガイダンスは、医療・介護関係の情報を対象としています。応募者の情報は採用のために集めた情報として、個人情報保護法や職業安定法の指針をもとに、見られる人と消す時期を別に決めてください。
Q2. 応募者が自院の患者だった場合、カルテを見て健康状態を確かめてもよいですか?
採用のためにカルテを見ることは避けてください。患者が診療所に伝えた情報は診療を受けるためのもので、採用の判断に使うと、その使い道を超えることになります。院長を含め、応募者のカルテを採用のために開かない、名前を検索しないと院内で決めておき、選考は応募の書類と面接の内容で行ってください。
Q3. 不採用になった応募者の履歴書は、何年保管しなければなりませんか?
不採用者の応募書類を何年保管しなければならない、という一律の決まりはありません。個人情報保護法には、利用する必要がなくなった個人データを遅滞なく消去するよう努める規定があります。結果を連絡した月の翌月末にまとめて処分する、というように診療所として期間を決め、応募者にも伝えておくと運用しやすくなります。
Q4. 採用できなかった看護師を、知り合いの院長の診療所に紹介してもよいですか?
情報を渡す前に、応募者本人に紹介してよいかを聞き、同意を得てから渡してください。応募者が応募したのは自院の募集で、別の医療機関に情報が届くことは想定していません。同意を得たら、同意を得た日と紹介先を採用の一覧に記録しておきます。同じ医療法人の分院に回す場合も、本人に確かめてからにするほうが行き違いがありません。
