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美容室で問い合わせの担当を決める|二重返信と放置を同時に止める

2026年9月4日 ・ Halict編集部

美容室の問い合わせで起きる事故は、二重返信と放置の二つに集約されます。この二つは正反対の失敗に見えますが、原因は同じで、誰が返すかが決まっていないことです。この記事では、美容室の問い合わせの担当を決める振り分けの型を三つに整理し、それぞれがどの規模の店に向くのか、取ったことをどうやって見えるようにするのかを具体的にまとめます。読み終えたときに、自分の店で採るべき振り分けの型と、明日から変えるべき一手が決められる状態を目指します。

二重返信と放置は同じ原因から起きる

問い合わせ用の共有アドレスに届いたメールを、複数のスタッフが見ている。この状態で起きることは二つに一つです。

一つは、複数の人が同じ問い合わせに返してしまうことです。開いた人が「自分が返そう」と思って書き始め、別の人も同時に同じことをする。相手には二通の返信が届き、しかも中身が食い違っていることがあります。指名の相談で、片方が「空いています」、もう片方が「埋まっています」と返した場合、相手は店の管理を疑います。

もう一つは、誰も返さないことです。開いた人が「誰かが返すだろう」と思って閉じる。全員が同じことをすると、その問い合わせは誰の手にも渡らないまま数日を過ごします。相手はしびれを切らして電話をかけてくるか、別の店に行きます。

この二つは、共有アドレスを複数人で見ているという同じ状況から生まれます。片方を防ごうとして「必ず誰かが返す」と徹底すれば二重返信が増え、「勝手に返さない」と徹底すれば放置が増えます。片方だけを直そうとしても、もう片方に振れるだけです。

同時に止めるには、届いた一件ごとに担当が決まり、その担当が誰なのかを全員が見られる状態を作るしかありません。つまり、振り分けの仕組みが要ります。

美容室で振り分けが難しくなる事情

一般的な問い合わせ窓口と比べて、美容室には二つの固有の事情があります。

一つ目は、指名という概念があることです。指名の相談は、名指しされた本人が答えるのが最も速く、正確です。出勤日も、その日の予約の埋まり具合も、本人が把握しています。しかし本人は施術中で端末を触れません。窓口の担当者が代わりに調べるか、本人の手が空くまで待つか、どちらかを選ぶことになります。

二つ目は、窓口の専任者がいないことです。全員が施術者を兼ねているので、確認できる時間が人によってばらばらです。営業時間中ずっと画面を見ていられる人はいません。この状態で「早い者勝ちで返す」運用にすると、たまたま手が空いた人に負担が偏り、その人が休んだ日に窓口が止まります。

この二つを踏まえると、美容室の振り分けは「指名の有無で分ける」ことが出発点になります。指名の相談は本人へ、それ以外は当番へ。この一本の線を引くだけで、迷う場面がかなり減ります。

振り分けの型は三つある

美容室で現実的に運用できる振り分けの型は三つです。店の人数と、問い合わせの件数で選びます。

当番制

日ごと、または週ごとに窓口の当番を決める形です。その日に届いたものは、内容にかかわらず当番が一次対応をします。指名の相談も、まず当番が受けて、必要なら本人に確認します。

向いているのは、スタッフが三人から五人程度で、問い合わせが一日に数件の店です。当番が明確なので、放置は起きません。二重返信も、当番以外は触らないという取り決めがあれば防げます。

弱点は、当番の負担が偏ることです。当番の日に予約が詰まっていると、問い合わせに手が回りません。これを避けるには、当番の日は予約を少し空けておくか、当番を半日単位にします。

もう一つの弱点は、指名の相談で確認の往復が増えることです。当番が本人に聞き、本人が答え、当番が相手に返す。この三段の伝言が入るぶん、時間がかかり、情報が落ちます。件数が少ないうちは問題になりませんが、指名の相談が増えてきたら次の型に移ります。

指名者直通

指名の相談は名指しされた本人が直接返し、それ以外を当番が受ける形です。

向いているのは、指名の相談が問い合わせの半分以上を占める店です。伝言が消えるので、返信が速く、正確になります。相手にとっても、指名した本人から返事が来るほうが安心感があります。

弱点は、本人が休みや退職のときに止まることです。この型を採るなら、休みの日の代わりを誰にするかを先に決めます。決めていないと、その人あての問い合わせだけが数日残ります。

もう一つの弱点は、返信の中身が本人の裁量になることです。料金の伝え方や、断り方が人によって違うと、店として一貫しない印象になります。定型文を共有して、そこから外れないようにします。

店長一次受け

すべての問い合わせを店長がいったん受け、中身を見て担当に振る形です。

向いているのは、スタッフが多く、問い合わせの内容が幅広い店です。振り分けの判断が一人に集約されるので、迷いがありません。返信の質も、店長が見ているぶん揃います。

弱点は、店長がボトルネックになることです。店長が施術に入っている時間帯は、振り分けが止まります。件数が増えると、振り分けるだけで時間を使い切ります。

この型を採るなら、振り分けの時間を一日二回に固定します。朝と夕方に見て、その場で全部振る。振ったあとの返信は担当に任せて、店長は返ったかどうかだけを見ます。

取ったことを見えるようにする

どの型を採っても、共通して必要なのが「誰が取ったか」を全員が見られる状態です。ここが無いと、型を決めても二重返信は止まりません。

見えるようにする方法は、道具によって変わります。

共有アドレスをメールソフトで見ている場合、返信する前に一言メッセージを流す運用にします。店のチャットに「〇〇様の問い合わせ、△△が対応します」と自分の名前を添えて書いてから返信を書く形です。原始的ですが、三人程度までなら機能します。四人を超えると、チャットの流れが速すぎて見落としが出ます。

表計算ソフトで管理している場合、担当者の列を作って名前を入れます。入れてから返信を書く、という順番を守ります。返信を書いてから入れる運用にすると、書いている間に別の人が取ります。この順番の徹底が、表計算ソフトでの管理の限界を決めます。

回答ごとに担当を割り当てられる道具を使っている場合、割り当てた時点で他の人の画面にも反映されます。取る動作と、取ったことを知らせる動作が一つになるので、順番を守る意志の力が要りません。担当と状態が同じ画面にそろっているかどうかは、できることの一覧で確かめられます。

担当は「取る」ものか「振る」ものか

担当を決める動作には二種類あります。自分から取る形と、誰かが振る形です。

自分から取る形は、手が空いた人が自発的に担当になります。速く動きますが、誰も取らない問い合わせが出ます。誰も取らないのは、たいてい面倒な問い合わせです。断りの返信が必要なもの、確認が要るもの、内容がよく分からないものが残ります。

誰かが振る形は、振る人の手間がかかりますが、取り残しが出ません。面倒な問い合わせにも担当が付きます。

現実的なのは、両方を混ぜることです。基本は自分から取る形にして、一日の終わりに誰も取っていないものを当番か店長が振る。この二段構えにすると、速さと取り残しの防止が両立します。

取ったまま返さない状態を見つける

担当が決まっても、その人が返すとは限りません。取ったまま忙しくなって、そのまま忘れることがあります。この状態は、放置よりも見つけにくくなります。担当が付いているぶん、誰かが処理していると全員が思い込むからです。

見つけるには、取ってから返すまでの時間に上限を置きます。取ったまま一日たったものは、担当が付いていても未対応として扱う。この線を引くと、抱え込みが表面化します。

道具の側で、担当が付いてから経過した時間が分かる形になっていれば、点検は一目で済みます。分からない形なら、一日の終わりに担当者ごとに未返信の件数を口頭で確認します。人数が少ないうちは口頭で足りますが、五人を超えると回らなくなります。

休みと退職をどう引き継ぐか

振り分けの仕組みが最も試されるのが、担当者がいなくなるときです。

休みの日の扱いは、事前に決められます。指名者直通の型を採っているなら、休みの人あての問い合わせを誰が受けるかを曜日ごとに決めておきます。決めていないと、休みの人の受信箱に溜まり、出勤した日にまとめて処理することになります。指名の相談は日程が絡むので、二日遅れると希望の日が埋まります。

退職の扱いは、より慎重に扱う必要があります。退職した人あての指名の問い合わせは、退職後もしばらく届き続けます。この問い合わせにどう答えるかを、退職の前に決めておきます。

決めるのは三つです。退職の事実をどこまで伝えるか、代わりに誰を案内するか、案内する相手の同意を取ってあるか。三つ目は見落とされがちですが、勝手に別のスタッフを案内すると、その人の予約が想定外に埋まります。

退職した人が使っていたアドレスの扱いも決めます。個人のアドレスでやり取りしていた場合、そのやり取りは退職と同時に見えなくなります。店の共有の窓口から返す取り決めがあれば、履歴が残り、引き継いだ人が経緯を追えます。

引き継ぎに必要な情報

担当を引き継ぐとき、引き継ぐ側が知りたいのは四つです。この問い合わせは何を聞いているか、いまどこまで返したか、次に何をする約束になっているか、いつまでにやるか。

この四つが記録に残っていれば、引き継ぎは一分で終わります。残っていなければ、引き継ぐ人が過去のやり取りを最初から読み直すことになり、十分から二十分かかります。件数が積み上がっている状態で担当者が急に休むと、この読み直しだけで午前が終わります。

四つのうち、三つ目と四つ目が最も抜けます。返信の履歴を読めば一つ目と二つ目は分かりますが、次に何をする約束かは、返信文に書いていないことがあるからです。「確認して折り返します」と返したまま、何を確認するかを書き残していない、という形が典型です。返信のたびに、次の一手を一行で記録に残す習慣をつけると、引き継ぎの負担が大きく減ります。

用件の種類で振り分けを自動にする

人が中身を読んでから振り分けている限り、読む手間は件数に比例して増えます。読まずに振り分けられる部分を先に切り出すと、この手間が頭打ちになります。

切り出すための材料は、フォームの設問です。フォームの先頭に用件の種類を選ぶ設問を置き、その選択肢と担当を対応させます。指名の相談が選ばれたら指名された相手へ、髪と施術の相談が選ばれたら当番へ、来店条件の相談が選ばれたら当番へ。この対応表を作れば、届いた時点で振り分けが終わります。

指名の相談をさらに細かく振るには、指名したい相手を選ぶ設問を選択式にします。自由記述だと表記がゆれて自動の振り分けができません。「〇〇さん」「〇〇先生」「インスタで見た人」と書かれると、機械には誰のことか分かりません。在籍スタイリストを選択肢に並べておけば、選ばれた相手にそのまま振れます。

選択肢に「誰でもよい」「決めていない」を入れておくのを忘れないでください。入れないと、決めていない相手が適当に誰かを選び、その人に振られます。振られた本人は身に覚えのない指名を受け取ることになり、返信の中身が噛み合いません。

自動の振り分けが効かない問い合わせ

自動で振れないものは必ず残ります。用件の種類で「その他」が選ばれたもの、自由記述の中身が選択肢と食い違っているもの、複数の用件が一通に混ざっているものです。

複数の用件が混ざる形は、美容室ではよく起きます。「〇〇さんの空き状況を知りたいのと、縮毛矯正ができるか相談したいのと、駐車場があるか教えてほしい」という一通が届きます。この一通は三つの担当にまたがります。

扱い方は二つあります。一つは、一通に一人の担当を付けて、その人が全部まとめて答える形。もう一つは、一通の中で答える部分を分けて、それぞれの担当が書いた内容を一人がまとめて送る形です。

件数が少ないうちは前者で足ります。当番がまとめて調べ、まとめて返す。後者は、確認の往復が増えるぶん時間がかかるので、内容が専門的に分かれている場合だけにします。

どちらにしても、複数の用件が混ざった問い合わせは、答え漏れが起きやすい型です。返信を送る前に、聞かれたことを一つずつ数えて、全部に答えているかを確かめる習慣をつけます。三つ聞かれて二つしか答えていない返信は、必ずもう一往復を呼びます。

振り分けを決めても止まらないもの

振り分けの仕組みを入れても、止まらない事故がいくつか残ります。先に知っておくと、仕組みのせいだと誤解せずに済みます。

一つ目は、電話で受けた相談です。フォームから届いたものには担当が付きますが、電話で受けたものは受けた人の頭の中にしかありません。電話で受けて「折り返します」と言ったまま忘れる事故は、フォームの仕組みでは防げません。防ぐには、電話で受けた相談のうち、その場で完結しなかったものを、受けた人が記録に入力する運用が要ります。手間に見えますが、これをやらないと記録の入口が二つに分かれ、点検も二回することになります。

二つ目は、SNSのメッセージで届く相談です。美容室は写真を見せる業種なので、SNSから直接メッセージが来ます。この経路は、たいてい特定の一人のアカウントに届き、その人しか見られません。担当を振る余地がなく、その人が休むと止まります。SNSのメッセージをどこまで受けるかは、あらかじめ方針を決めます。受けないと決めるなら、プロフィールにフォームの入口を書いて誘導します。受けると決めるなら、届いた内容を記録に転記する手順を作ります。

三つ目は、常連客からの個人的な連絡です。担当のスタイリストと個人的に連絡先を交換している場合、そのやり取りは店の記録に残りません。これ自体は美容室の商習慣として珍しくありませんが、その担当が退職したときに、その客の履歴がまるごと失われます。どこまでを個人のやり取りにして、どこからを店の記録に残すかの線を、店として一度決めておきます。

経路をひとつに寄せる

三つの事故に共通するのは、受付の経路が複数あることです。経路が増えるほど、担当を振る仕組みの外側にこぼれるものが増えます。

寄せる方向は、フォームです。電話は残しますが、その場で答えられるものだけに絞ります。SNSは、受けたらフォームへ誘導します。個人的な連絡は、店の記録に残す部分だけを転記します。

寄せた結果、フォームに集まる件数は増えます。増えた件数を振り分ける仕組みがあれば、経路が減ったぶん全体の手間は減ります。仕組みが無いまま寄せると、フォームが詰まって元の木阿弥になります。順番としては、振り分けの仕組みを先に作り、経路を寄せるのは後です。

情報を見られる人の範囲を決める

担当を振り分けるということは、誰がどの問い合わせを見られるかを決めることでもあります。美容室の問い合わせには、髪の悩みや、写真や、連絡先が含まれます。

個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。 出典: 個人情報保護委員会

具体的に何をどこまで行うべきかは、事業の規模や取り扱う情報の性質によって変わります。判断に迷う部分は、所管の窓口や専門家に確かめてください。

運用として決めておきたいのは三つです。

一つ目は、問い合わせを見られる人の範囲です。全員が全部見られる形が最も運用は楽ですが、アルバイトを含む全員が見られる必要があるかは考えます。

二つ目は、退職した人のアクセスを止める手順です。共有アドレスのパスワードを全員で使い回している店では、一人が辞めるたびにパスワードを変えることになります。人ごとにアカウントが分かれている形なら、その人のアカウントを止めるだけで済みます。

三つ目は、私物の端末で見ることを認めるかどうかです。認めるなら、画面をロックすることと、端末を紛失したときにすぐ知らせることを取り決めます。

件数が増えたときに何を変えるか

振り分けの型は、件数によって変えていくものです。一度決めたら固定するものではありません。

一日3件程度なら、当番制で足ります。チャットで一言流す運用でも二重返信は起きません。

一日10件を超えたあたりから、口頭とチャットでの共有が追いつかなくなります。担当を記録に残す形に移ります。

一日20件を超えると、振り分ける動作そのものが仕事になります。この規模では、用件の種類で自動的に振り分ける形が必要になります。指名の相談は指名された本人へ、来店条件の相談は当番へ、といった振り分けを、フォームの回答内容から自動で行える形です。

複数の店舗を持っている場合は、件数に関係なく早い段階で仕組みが要ります。店舗をまたいだ問い合わせが混ざると、どの店の当番が受けるのかが曖昧になります。フォームに店舗を選ぶ設問を置き、選ばれた店舗の担当へ自動で振る形にすると、この曖昧さが消えます。

道具を替えるかどうかの判断は、この件数の目安と、いまの詰まり方を突き合わせて決めます。回答が表に貯まる形の道具は、集める部分は問題なく動きます。担当の列を手で埋め、色を手で塗り、経過時間を目で数えている状態になったら、振り分けの部分が道具の外にはみ出しています。それぞれの道具が担当の割り当てをどこまで扱うかは、Googleフォームとの比較Contact Form 7との比較で、集めたあとの扱いを軸に整理されています。実際の動きは動くところを見るで確かめられます。

振り分けの型を変えるときの移し方

いまの型が合わなくなったとき、次の型に移る作業でつまずく店があります。移し方には順番があります。

まず、いまの型で残っている未返信をゼロにします。移行の途中で古い問い合わせが残っていると、新旧どちらの決めごとで扱うのかが曖昧になり、そこで取りこぼしが起きます。移行の前日までに、未返信を全部処理するか、処理できないものを一つの担当にまとめて預けます。

次に、新しい型の決めごとを全員に伝えます。伝えるのは口頭ではなく、文字にしたものを見せます。口頭で伝えると、聞いた人ごとに解釈が変わり、移行後の一週間が混乱します。

そのうえで、切り替える日を決めます。日をまたいで少しずつ移すのではなく、ある日から全部が新しい型になる形にします。少しずつ移すと、どちらの型で扱うかを一件ごとに判断することになり、判断の手間が増えます。

切り替えた最初の一週間は、毎日終わりに全員で確認します。確認するのは、その日に届いたものが全部担当が付いているかどうかだけです。付いていないものがあれば、その場で振ります。一週間続けると、新しい型が習慣になります。

移行でよく起きる問題

当番制から指名者直通に移すときによく起きるのが、指名の相談だけが速くなって、それ以外が遅くなる現象です。指名された本人は自分あての問い合わせに反応しますが、当番が受ける分は「誰かの問い合わせ」になり、優先度が下がります。防ぐには、当番が受ける分にも期限を決めて、期限を過ぎたものが目立つようにします。

店長一次受けに移すときによく起きるのが、店長の手が回らずに振り分けが滞る現象です。振り分けの時間を一日二回に固定していないと、施術の合間に少しずつ振ることになり、結局止まります。振り分けの時間を予約表の上で確保しておくのが前提になります。

自動の振り分けに移すときによく起きるのが、選択肢の作りが甘くて誤って振られる現象です。指名したい相手の選択肢に「決めていない」が無いと、決めていない人が誰かを選び、その人に振られます。移行の前に、選択肢の中に「該当なし」に当たるものが全部そろっているかを確かめます。

振り分けの決めごとを文字にする

型を選んだら、それを文字にします。頭の中で決めた振り分けは、決めた人以外には存在しません。新しく入ったスタッフは、誰に聞けばよいかも分からないまま、共有アドレスを開くことになります。

書くのは一枚で足ります。項目は六つです。

誰が当番か、どの周期で回るか。指名の相談は誰が返すか。当番が休んだ日は誰が代わるか。取ったことをどこに記すか。取ってから何時間以内に返すか。誰も取っていないものを誰がいつ振るか。

この六つが書いてあれば、初めて窓口に入る人でもその日から動けます。書いていないと、先輩に聞きながら覚えることになり、聞いた内容は人によって違います。

一枚は、窓口の作業をする場所から見える形で置きます。共有のフォルダの奥にしまうと誰も開きません。休憩室に貼るか、窓口を開いたときに最初に目に入る場所に置きます。

決めごとを見直す周期

一度書いたら、三か月に一度見直します。見直す材料は三つです。

一つ目は、その三か月で起きた二重返信と放置の件数です。ゼロなら型は合っています。起きているなら、どの場面で起きたかを見て、決めごとに一行足します。

二つ目は、担当ごとの処理件数の偏りです。特定の一人に集中していたら、当番の周期か、振り分けの対応表を直します。偏りは本人が言い出しにくいので、数字で見つけます。

三つ目は、問い合わせの件数の推移です。件数が増えていれば、次の型に移る時期が近づいています。増えてから慌てて移るより、増える前に移るほうが移行の負担が軽くなります。

振り分けを決めることで変わるもの

担当を決める仕組みを入れると、二重返信と放置が止まります。これは直接の効果です。

間接的な効果のほうが大きくなることがあります。担当が決まっていると、その人は自分の問い合わせとして扱うので、返信の中身が丁寧になります。誰のものでもない問い合わせは、誰も責任を感じないぶん、事務的な返信になりがちです。美容室の問い合わせは来店前の第一印象を作るので、この差は予約につながる確率に影響します。

もう一つは、店の中の会話が減ることです。「あれ返した?」「これ誰が見てる?」というやり取りは、一件あたりは数十秒でも、一日に何度も起きます。担当と状態が見える形になっていれば、この会話が丸ごと消えます。消えた時間は施術か接客に戻ります。

問い合わせの受付で共通して起きているのは、集める部分は無料の道具で足りているのに、集めたあとの担当と状態を、受信箱と表計算ソフトと口頭の確認で継ぎ足している構図です。継ぎ足した部分は人の記憶に依存し、忙しい日と、人が入れ替わるときに壊れます。振り分けを仕組みにするというのは、記憶に依存していた部分を記録に移す作業です。

始め方は簡単です。まず指名の有無で線を引き、次に当番か直通かを決め、最後に取ったことをどこに残すかを決める。この三つを決めて一か月運用すれば、いまの型が自分の店に合っているかどうかが分かります。合っていなければ、件数の目安に照らして次の型に移ります。

一か月を終えたときに確かめることも決めておきます。二重返信が何件起きたか、返信までに一日以上かかったものが何件あったか、誰も取らずに残ったものが何件あったか。この三つを数えれば、型が合っているかどうかは数字で判断できます。感覚で「うまく回っている」と判断すると、たいてい担当が偏っている人だけが疲れている状態を見落とします。

数える作業自体は、記録が一か所にまとまっていれば数分で終わります。まとまっていない状態で数えようとすると、受信箱と表計算ソフトと記憶を突き合わせることになり、その作業だけで半日かかります。振り分けの仕組みを整えることは、点検を可能にすることでもあります。点検できない運用は、壊れていることに気づけません。

美容室の窓口は、施術の合間に回すという制約が外れることはありません。その制約の中で回すには、判断の回数を減らすしかなく、振り分けを決めるというのは、判断を事前に済ませておく作業です。届いたものを見るたびに「これは誰が返すか」を考えるのをやめられれば、窓口にかかる時間は確実に短くなります。

振り分けを決めることで得られるものは、時間だけではありません。誰が何を抱えているかが見えると、負担の偏りが分かります。特定の一人に問い合わせが集中している状態は、その人が辞めたときに窓口が丸ごと止まることを意味します。担当が記録に残っていれば、偏りは数字で見つかり、辞める前に手を打てます。

もう一つ得られるのが、返信の質を揃える足場です。誰が返したかが分かれば、返信の中身を見返せます。見返せば、料金の伝え方や断り方が人によって違うことに気づけます。気づけば定型文を用意して揃えられます。担当が分からない運用では、この改善の入口そのものがありません。

Q1. 二重返信と放置は、どちらから直せばよいですか?

どちらか一方を直そうとすると、もう片方に振れます。「必ず誰かが返す」と徹底すれば二重返信が増え、「勝手に返さない」と徹底すれば放置が増えるからです。同時に止めるには、届いた一件ごとに担当が決まり、その担当が誰なのかを全員が見られる状態を作ります。まず指名の有無で線を引き、指名の相談は本人、それ以外は当番、という一本の振り分けから始めてください。

Q2. 指名の問い合わせは本人が返したほうがよいですか?

指名の相談が問い合わせの半分以上を占めるなら、本人が直接返す形が速く、正確です。出勤日も予約の埋まり具合も本人が把握しているため、当番が本人に聞いて返す三段の伝言が消えます。ただし本人が休みや退職のときに止まるので、休みの日の代わりを曜日ごとに決めておいてください。料金の伝え方や断り方が人によって揺れないよう、定型文の共有も必要です。

Q3. 担当は自分から取る形と、誰かが振る形のどちらがよいですか?

両方を混ぜるのが現実的です。基本は手が空いた人が自分から取る形にすると速く動きますが、断りの返信が要るものや内容が分かりにくいものが誰にも取られずに残ります。そこで一日の終わりに、誰も取っていないものを当番か店長が振ります。この二段構えにすると、速さと取り残しの防止が両立します。

Q4. 担当者が退職したあとの指名の問い合わせはどう扱いますか?

退職前に三つを決めておきます。退職の事実をどこまで伝えるか、代わりに誰を案内するか、案内する相手の同意を取ってあるか、です。三つ目は見落とされがちですが、勝手に別のスタッフを案内するとその人の予約が想定外に埋まります。また、個人のアドレスでやり取りしていた履歴は退職と同時に見えなくなるため、返信は店の共有の窓口から送る取り決めが要ります。

Q5. 何件くらいから振り分けの仕組みが必要になりますか?

一日三件程度なら当番制とチャットでの一言共有で足ります。一日十件を超えると口頭とチャットの共有が追いつかず、担当を記録に残す形が必要になります。一日二十件を超えると振り分ける動作そのものが仕事になるため、用件の種類から自動で振る形が要ります。複数店舗を持つ場合は件数に関係なく、店舗を選ぶ設問と自動の振り分けを早い段階で用意してください。

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