美容室の問い合わせは、送る側もスマートフォンから送り、受ける側もスマートフォンで見ています。それにもかかわらず、受け方も返し方もパソコンを前提に組まれていることが多く、そこで時間と事故が生まれます。この記事では、美容室が問い合わせをスマートフォンで受けて返すときに、あらかじめ決めておくべきことを具体的に整理します。読み終えたときに、施術の合間や移動中に返すという前提で、何を許して何を禁じるかを決められる状態を目指します。
スマホで受けて返すのは例外ではなく標準
美容室の窓口を専任で置ける規模の店は多くありません。多くの店では、スタイリストが自分の施術の合間に問い合わせを見ています。その場にパソコンがあることは少なく、レジ横の端末は予約システムが開いたままで、問い合わせを見るのは自分のスマートフォンになります。
つまり、スマートフォンで受けて返すのは、やむを得ない例外ではなく、標準の運用です。標準として扱うなら、標準に合わせた決めごとが要ります。
決めておかないと何が起きるかは、はっきりしています。通知が鳴るたびに施術の手が止まり、片手で打った返信に誤変換が残り、宛先を取り違え、返したかどうかが記録に残らず、そして誰かの私物の端末の中にだけ客の連絡先が溜まっていきます。この五つは、どれもスマートフォンで受けること自体が悪いのではなく、決めていないから起きています。
パソコン前提の運用が合わない三つの理由
一つ目は、画面の大きさです。パソコンの画面なら、問い合わせの一覧と本文と返信の下書きを同時に見られます。スマートフォンでは一つずつしか見られず、行き来のたびに前の内容を覚え直すことになります。表計算ソフトで管理している店では、この行き来が特に重くなります。
二つ目は、入力の速さです。パソコンなら一分で打てる文章が、スマートフォンでは三分かかります。この差が、返信を後回しにする動機になります。後回しにしたものが返し忘れになります。
三つ目は、まとまった時間が取れないことです。パソコンの前に座るのは営業前か営業後ですが、スマートフォンは常に手元にあります。手元にあるぶん、細切れの時間で少しずつ処理することになり、一件を最後まで終えられないまま次の施術に入る場面が増えます。
この三つを踏まえると、決めるべきことが見えてきます。何を通知するか、スマートフォンで何を返してよいか、途中で止めたものをどう残すか、の三つです。
通知をどう設計するか
通知は、施術中の集中を奪う最大の要因です。同時に、届いたことに気づくための唯一の手段でもあります。両立させるには、通知の中身と鳴り方を分けて考えます。
まず、通知の中身を短くします。問い合わせの本文をそのまま通知に流すと、画面に長い文章が出て、読んでしまいます。読めば手が止まります。通知に必要なのは、届いたという事実と、用件の種類と、指名の有無だけです。この三つが分かれば、いま手を止めるべきかどうかが判断できます。
次に、鳴り方を決めます。施術中に音が鳴る設定にしていると、鳴るたびに客の前で端末を気にすることになり、印象が良くありません。音を切って、画面に表示だけ残す設定にすると、手が空いたときにまとめて確認できます。
三つ目に、通知を受ける人を決めます。全員のスマートフォンに全部の問い合わせが通知される設定にしていると、全員の集中が同時に切れます。当番の人だけに通知が届く形にするか、通知は共有の端末だけに出す形にします。
通知を見ても、その場で返さない
通知が来たときに、その場で返すかどうかは、あらかじめ決めておきます。決めていないと、毎回判断することになり、判断そのものが集中を切ります。
原則は、その場では返さないことです。手が空いたときにまとめて返す。この原則を置くと、通知は「あとで処理する分が一件増えた」という情報にすぎなくなり、施術中に見ても手が止まりません。
例外を置くとすれば、当日の来店に関わるものだけです。今から行けるか、遅れそうだ、といった連絡は、返すのが遅れると相手が困ります。ただしこの種の連絡は電話で来ることが多いので、フォームからの問い合わせに例外を作る必要はあまりありません。
通知が届かない事故を防ぐ
スマートフォンで受ける運用でよく起きるのが、通知が届かなくなる事故です。端末の設定で通知が切られていた、迷惑メールに振り分けられていた、通知先のアドレスが古いままだった、といった原因で起きます。
この事故は、起きたことに気づくのが遅れます。通知が来ないので、問い合わせが来ていないと思い込むからです。数日たって相手から電話が来て初めて分かります。
防ぐには、二つの手当てをします。一つは、通知先を一つにしないことです。スマートフォンの通知と、共有の受信箱の両方に届く形にすれば、片方が切れても気づけます。もう一つは、週に一度、記録の一覧を直接開いて件数を確かめることです。通知に頼らず一覧を見る習慣があれば、通知が切れていることに一週間以内に気づけます。回答の一覧と通知が別々に用意されているかどうかは、できることで確かめられます。
スマホで返してよいものと、そうでないもの
スマートフォンで返信を書くこと自体に問題はありません。問題になるのは、スマートフォンで書くのに向かない用件を無理に返そうとしたときです。
スマートフォンで返してよいのは、定型で済むものです。営業時間、駐車場、子ども連れの可否、支払い方法といった来店条件の相談は、定型文を呼び出して名前を差し替えるだけで送れます。片手でも数十秒で終わります。
一次返信もスマートフォンで返せます。受け付けたこと、いま何を調べているか、いつまでに確定の返事をするかの三行なら、移動中でも打てます。むしろ一次返信は速さが価値なので、スマートフォンで返すのに向いています。
向かないのは、調べた結果をまとめて伝える確定返信です。指名の相談に対して、空き状況と所要時間と料金の目安と次の手順を書く返信は、四つの情報を組み立てる必要があります。片手で打つと、どれかが抜けます。抜けた返信は、もう一往復を呼びます。
同じく向かないのが、断りの返信です。受けられない事実を伝え、理由を添え、代わりの提案をする三段構えの文章は、言葉選びに気を使います。移動中に急いで打つと、素っ気ない文章になります。
途中まで打った返信をどう扱うか
スマートフォンで返信を書いていて、途中で施術に戻ることがあります。書きかけの返信をどう扱うかを決めておかないと、そのまま消えます。
いちばん危ないのは、書きかけを下書きに残して、その問い合わせを処理済みだと感じてしまうことです。下書きは自分にしか見えず、他の人からは未対応にしか見えません。ここで二重返信の芽が生まれます。
決めごとは二つです。一つは、書きかけで止めるときに、その問い合わせの状態を変えないこと。返信を送るまでは未対応のままにします。もう一つは、書きかけであることをメモに一行残すことです。「途中まで書いた、空き状況の確認まで済み」と書いてあれば、続きから再開できます。
より確実なのは、スマートフォンでは書きかけを作らない運用です。定型と一次返信だけをスマートフォンで返し、長い返信はパソコンの前に座ってから書く。この線引きにすると、書きかけが発生しません。
誤送信と誤変換を減らす
スマートフォンからの返信で起きる事故は、誤送信と誤変換の二つに集中します。
誤送信は、複数の問い合わせを続けて処理しているときに起きます。前の相手の宛先が残ったまま次の返信を書くと、別の相手に他人の相談内容が届きます。美容室の問い合わせには髪の悩みという私的な内容が含まれるので、影響は小さくありません。
防ぐには、一件ずつ完了させてから次に移ります。開いて、書いて、送って、状態を変えて、閉じる。この一連を終えてから次を開く。スマートフォンは画面が狭いぶん、複数を同時に開く運用に向いていないので、この順番を守りやすい面もあります。
もう一つの手当ては、送信の前に宛先を声に出して確かめることです。原始的ですが、画面が狭くて宛先が上部に小さく表示される環境では効きます。
誤変換は、片手入力と予測変換の組み合わせで起きます。とくに人名と、施術のメニュー名で起きやすくなります。指名されたスタイリストの名前を誤変換したまま送ると、相手には店の管理の甘さとして伝わります。
防ぐには、よく使う単語を辞書に登録します。在籍スタイリストの名前、メニュー名、店名を登録しておけば、誤変換の大半が消えます。登録は一度で済み、その後ずっと効きます。
送信前に確かめる三点
スマートフォンから返信を送る前に確かめるのは三つです。宛先、名前、金額の三つで足ります。
宛先は、いま返そうとしている相手のものかどうか。名前は、相手の名前と、指名されたスタイリストの名前が正しいかどうか。金額は、幅で書いているか、確定額を断定していないかどうか。
金額を確かめる理由は、美容室では実際に見てからでないと確定しないことが多いからです。スマートフォンで急いで打つと、幅で書くべきところを一つの数字で書いてしまいます。書いた金額は約束として受け取られます。「髪の長さと状態によって変わりますが、この範囲になります」という書き方を定型に入れておくと、急いでいるときでも幅が保たれます。
この三点の確認は十秒で終わります。十秒を惜しんで送った返信の訂正には、その何十倍もの時間がかかります。
写真をスマホで受け取るときの扱い
美容室の問い合わせには、参考写真が添えられます。送る側もスマートフォンで撮って送るので、届く写真は容量が大きく、枚数も多くなりがちです。
受ける側がスマートフォンで見る場合、まず容量が問題になります。一枚が数メガバイトある写真が三枚届くと、外出先の回線では開くのに時間がかかります。移動中に確認しようとして、読み込みが終わらないまま次の予定に入る、という場面が起きます。
対策は二つあります。一つは、フォームの側で枚数の上限を書くことです。3枚までと設問文に書き、何を写した写真が欲しいかを指定します。指定しないと、なりたい仕上がりの画像だけが十枚届きます。
もう一つは、写真の確認をスマートフォンでやらないと決めることです。写真が添えられた問い合わせは、パソコンか大きい画面で見る。小さい画面で髪の状態を判断しようとすると、見落としが出ます。専門的な判断は施術する人が下すものなので、窓口の役目は、判断できる大きさの画面で見てもらう段取りをつけることです。
写真の置き場所を決める
届いた写真をどこに置くかは、スマートフォンで受ける運用ではとくに重要になります。
メールの添付として受け取ると、写真は端末の中のメールアプリの中に入ります。来店当日に現場のスタッフが見ようとしても、そのメールを受け取った人の端末にしかありません。写真を見たいスタッフが、受け取った人に転送を頼むことになります。
フォームの回答と写真が同じ場所に保管され、その回答を開けば写真も見られる形になっていれば、この手間が消えます。誰の端末からでも、同じ記録を開けば同じ写真が見られます。実際の動きは動くところを見るで確かめられます。
写真の扱いについては、送る側に一言伝えておきます。何のために使うのか、誰が見るのかが分からないまま送るのは、送る側にとって気持ちのよいことではありません。
移動の合間に処理する段取り
スマートフォンで受ける運用の利点は、パソコンの前に座れない時間を使えることです。移動中、休憩中、開店前の準備が一段落したときに、数分ずつ処理できます。
ただし、この数分をうまく使うには段取りが要ります。開いた瞬間に何をすればよいかが決まっていないと、一覧を眺めるだけで数分が終わります。
段取りの一つ目は、処理の順番を固定することです。届いた順ではなく、定型で返せるもの、期日が迫っているもの、一次返信を出すもの、の順で処理します。届いた順に処理すると、最初の一件が調べる型だった場合、そこで数分を使い切ります。
二つ目は、一回の処理で狙う件数を決めることです。移動中の五分なら二件から三件。この数を決めておくと、途中で切り上げる判断がしやすくなります。決めていないと、全部片付けようとして中途半端なところで止まります。
三つ目は、処理できなかったものに印を残すことです。次に開いたときに同じものを読み直さずに済みます。読み直しは毎回発生している隠れた作業で、件数が積み上がるほど効いてきます。
一覧の見え方が段取りを決める
数分で処理できる件数は、一覧の見え方でほぼ決まります。
一覧に用件の種類が出ていれば、開かずに定型で返せるものが分かります。出ていなければ、一件ずつ開いて中身を読むことになり、それだけで数分が終わります。
一覧に状態が出ていれば、未対応のものだけを見られます。出ていなければ、返したかどうかを思い出しながら追うことになります。
一覧に担当が出ていれば、自分が返すべきものだけを見られます。出ていなければ、全部が自分の視界に入り、他の人が処理中のものまで気にすることになります。
小さい画面では、この三つが出ているかどうかの差が特に大きくなります。パソコンの広い画面なら、余計な情報が並んでいても目で飛ばせます。スマートフォンでは、一画面に入る行数が限られるので、余計な情報が一つあるだけで見える件数が減ります。
私物の端末で受けることの線引き
スマートフォンで受けるということは、多くの場合、スタッフの私物の端末で客の情報を扱うということです。ここには線引きが要ります。
個人情報取扱事業者は、その従業者に個人データを取り扱わせるに当たっては、当該個人データの安全管理が図られるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
何をどこまで行うのが適切かは、事業の規模や取り扱う情報によって変わります。判断に迷う部分は、所管の窓口や専門家に確かめてください。
運用として決めておきたいのは四つです。
一つ目は、私物の端末で見ることを認めるかどうかです。認めないなら共有の端末を用意する必要があり、費用がかかります。多くの店は認める方向になりますが、認めると決めたなら次の三つを合わせて決めます。
二つ目は、端末の画面をロックすることです。ロックされていない端末を店内に置いたまま施術に入ると、誰でも見られる状態になります。
三つ目は、端末を紛失したときにすぐ知らせる手順です。知らせる相手と、その後に何をするかを決めます。人ごとにアカウントが分かれている形なら、そのアカウントを止めるだけで済みます。共有のアドレスとパスワードを全員で使い回している形だと、パスワードを変えて全員に配り直すことになります。
四つ目は、退職するときに何を消すかです。私物の端末に残った客の連絡先やメッセージをどう扱うかは、退職の前に確認します。個人のアドレスやSNSでやり取りしていた分は、店の記録には残っていません。
電池と電波という前提条件
スマートフォンで窓口を回すということは、電池と電波に運用を預けるということです。この二つは、決めごとの外側にある前提条件ですが、切れたときに窓口が止まります。
電池は、営業中に切れます。予約システムを開いたまま、写真を確認し、返信を打っていれば、夕方には残りが少なくなります。切れたときに備えて、店内に充電できる場所を決めておきます。個人の端末を店の電源で充電することを認めるかどうかも、あわせて決めておくと後で揉めません。
電波は、店内で弱い場所があります。地下や、ビルの奥まった場所にある店では、店内の一部で通知が届きません。届かない場所で施術している時間帯は、通知に気づけないことになります。店内の無線の接続を用意しておくと、この問題は解消します。
移動中の電波も条件です。地下鉄で移動する時間帯に処理しようとすると、写真の読み込みが終わりません。移動中に処理する前提を置くなら、写真の確認を含まない用件だけを処理する、という線引きが現実的になります。
端末を替えたときに起きること
スタッフがスマートフォンを買い替えたときに、通知が届かなくなる事故が起きます。設定が引き継がれず、通知の許可が初期状態に戻るからです。
本人は買い替えたことを覚えていますが、通知が来ないことと結び付けません。数日たって「最近問い合わせが来ない」と言い出して、そこで初めて分かります。
防ぐには、端末を替えたときにやることを一つ決めておきます。替えた本人が、自分のフォームに一件テストの問い合わせを送って、通知が届くことを確かめる。これだけで、事故は防げます。テストの問い合わせは、確認したら完了に移して記録から外します。
送る側のスマホ表示を確かめる
受ける側の話をしてきましたが、送る側もスマートフォンです。フォームがスマートフォンで使いにくいと、そもそも問い合わせが届きません。
確かめるのは四つです。
一つ目は、入力欄が指で押しやすい大きさかどうかです。パソコンで作ったフォームをそのまま出すと、選択肢が小さく並んで押し間違えます。
二つ目は、日付の入力がカレンダーから選べるかどうかです。文字で日付を書かせると、書式がばらつき、受ける側が読み替える手間になります。「来週の土曜」「今月末あたり」といった書き方で届くと、どの日を指しているのかを確かめる往復が発生します。
三つ目は、写真の添付がその場でできるかどうかです。スマートフォンのカメラロールから直接選べる形になっていないと、送る側はいったんパソコンに移すことになり、そこで送信をやめます。その場で撮って添付できる形なら、なお離脱が減ります。
四つ目は、送信ボタンが押せる位置にあるかどうかです。長いフォームの一番下にあると、そこまでスクロールする途中で離脱されます。あわせて、送信したあとに何が表示されるかも確かめます。真っ白な画面に一行だけ出る形だと、送れたかどうかが伝わらず、同じ内容が二回送られてきます。送信後の画面に、受け付けたことと、いつまでに返信するかを書いておくと、二重送信も催促も減ります。
もう一つ、入力の途中で電話がかかってきたときにどうなるかも試しておきます。アプリを切り替えて戻ったときに入力内容が消える作りだと、そこで多くの人が入力をやめます。スマートフォンからの問い合わせでは、この中断が頻繁に起きます。
これらは実機で確かめるしかありません。自分のスマートフォンで自分のフォームに送信してみると、数分で分かります。この確認をしていないフォームは、たいてい二つか三つ問題を抱えています。使っている道具がスマートフォンでどう表示されるかは、Googleフォームとの比較やMicrosoft Formsとの比較で、回答者側の見え方も含めて整理されています。
回答者に登録を求めない
送る側のスマートフォンで最も離脱が起きるのが、アカウントの登録を求められる場面です。問い合わせをするだけなのに登録が必要だと分かると、そこで多くの人がやめます。
美容室の問い合わせは、まだ来店したことのない人から届くものが多くを占めます。店との関係が何もない段階で登録を求めるのは、相手にとって負担が大きくなります。
使っている道具の設定で、回答に登録が必要かどうかは変えられることがあります。設定を確かめて、登録が要る形になっているなら外します。外せない道具なら、そこは選び直しの理由になります。
定型文をスマホから呼び出せるようにする
スマートフォンでの返信を速くする方法の中で、最も効果が大きいのが定型文です。ただし、定型文が使える形で手元にないと意味がありません。
よくあるのが、定型文をパソコンの中の文書ファイルにまとめている状態です。スマートフォンからは開けないので、結局その場で打つことになります。定型文があること自体は正しいのに、置き場所のせいで使われていません。
置き場所は三つの選択肢があります。端末の辞書に短い読みで登録する方法、共有のメモに置く方法、返信を書く画面から直接呼び出せる形にする方法です。
辞書に登録する方法は、短い定型に向きます。「へんしん1」と打つと一次返信の三行が出る、という形です。長い文章は辞書に入れにくいので、三行程度が上限になります。
共有のメモに置く方法は、長い定型に向きます。ただし、メモを開いてコピーして、返信の画面に戻って貼り付ける、という行き来が発生します。スマートフォンではこの行き来が重くなります。
返信の画面から直接呼び出せる形が最も速くなります。呼び出して、名前と日付を差し替えて送る。行き来が無いので、片手でも数十秒で終わります。
定型文に入れておくべき言い回し
スマートフォンで急いで打つと抜けやすい言い回しは、あらかじめ定型に含めておきます。
一つは、料金を幅で書く言い回しです。「髪の長さと状態によって変わりますので、実際に拝見してから確定させていただきます」という一文を定型に入れておけば、急いでいても金額を断定しません。
二つ目は、返信の期限を伝える言い回しです。「本日中に改めてご連絡いたします」という一文があると、一次返信として成立します。
三つ目は、来店前に用意してほしいものを伝える言い回しです。過去の施術履歴が分かるもの、なりたい仕上がりの画像など、来店時にあると助かるものを一文にまとめておきます。
四つ目は、確認の連絡を締める言い回しです。「ご不明な点がございましたら、このメールにご返信ください」と書いておくと、相手が電話ではなくメールで返してきます。電話が減れば、施術中の中断も減ります。
スマホ前提の運用に切り替える順番
決めごとが多く見えますが、手を付ける順番は決まっています。
まず通知を整えます。中身を短くし、音を切り、受ける人を絞る。ここまでは設定の変更だけで、その日のうちに終わります。
次に、スマートフォンで返してよい用件を決めます。定型と一次返信だけをスマートフォンで返し、確定返信と断りの返信はパソコンで書く。この線引きを全員で共有します。
三つ目に、辞書登録をします。在籍スタイリストの名前とメニュー名を登録すれば、誤変換が大きく減ります。あわせて定型文を、返信を書く場所から呼び出せる形に移します。パソコンの中の文書ファイルに置いたままでは、スマートフォンからは使えません。
四つ目に、自分のスマートフォンで自分のフォームに送信して、送る側の使い勝手を確かめます。押しにくい選択肢、書式のばらつく日付欄、添付できない写真、押せない送信ボタン。この四つのどれかが必ず見つかります。見つかったら直します。直せない仕様なら、それは道具を選び直す材料になります。
ここまでは費用がかかりません。それでも詰まるとしたら、詰まっているのは道具の側です。回答の一覧をスマートフォンで開いたときに、状態と担当が読み取れず、返信もその画面から出せないなら、スマートフォンでの運用に道具が追いついていません。問い合わせの受付で繰り返し起きているのがこの構図で、集める部分は無料の道具で足りているのに、集めたあとを受信箱と表計算ソフトで継ぎ足しているために、小さい画面での行き来が発生しています。
費用の見当は料金で確かめられますが、比べるべきは月額そのものではありません。施術の合間に片手で処理できる件数が何件増えるかで判断すると、判断がぶれません。窓口をひとりで回している店では、移動中に三件処理できるようになるだけで、営業後に残る仕事が消えます。
道具を選ぶときに、スマートフォンでの見え方を確かめる手順も決めておきます。試すのは三つです。自分のスマートフォンで回答の一覧を開いて、用件の種類と状態と担当が読み取れるか。その画面から返信が出せるか。返信を送ったあとに状態が変わるか。この三つが片手で完結するなら、スマートフォンでの運用に耐えます。どれかでパソコンに戻る必要があるなら、その部分が営業後の仕事として残ります。
最後に、スマートフォンで受けて返す運用は、便利さと引き換えに境界が曖昧になることを書いておきます。端末が常に手元にあるので、休みの日にも通知が届き、見てしまえば気になります。休みの日に通知を切ることを、店として認めておくことが要ります。認めていないと、休んでいるはずのスタッフが返信を続け、その状態が当たり前になります。長く続く運用にするには、返さなくてよい時間を明確に決めておくほうが結果として安定します。
Q1. 施術中に通知が来たら、その場で返すべきですか?
原則としてその場では返さず、手が空いたときにまとめて返します。返すかどうかを毎回判断すること自体が集中を切るため、あらかじめ決めておいてください。そのうえで通知の中身を短くし、届いたことと用件の種類と指名の有無だけが分かる形にします。この三つが分かれば手を止めるべきかが判断でき、長い本文を通知で読んでしまう事故も防げます。音は切って表示だけ残す設定が向いています。
Q2. スマホで返してよい問い合わせと、そうでないものの線引きは?
定型で済む来店条件の相談と、三行で足りる一次返信はスマホで返して構いません。向かないのは、空き状況と所要時間と料金と次の手順を組み立てる確定返信と、断りの返信です。四つの情報を片手で打つとどれかが抜け、抜けた返信はもう一往復を呼びます。断りの返信は言葉選びに気を使うため、急いで打つと素っ気なくなります。この二つはパソコンで書いてください。
Q3. 誤変換や誤送信はどう防げばよいですか?
誤変換は、在籍スタイリストの名前とメニュー名と店名を端末の辞書に登録すれば大半が消えます。登録は一度で済みます。誤送信は、一件ずつ完了させてから次を開く運用で防げます。開いて、書いて、送って、状態を変えて、閉じる。この順を守ってください。送信前に確かめるのは、宛先、名前、金額の三点です。金額は確定額で断定せず、幅で書く定型にしておきます。
Q4. 参考写真はスマホで確認してもよいですか?
写真の受け取り自体はスマホで構いませんが、髪の状態の確認は大きい画面で行ってください。小さい画面では見落としが出ます。あわせてフォームの設問文で枚数の上限を三枚程度と書き、何を写した写真が欲しいかを指定します。指定しないと仕上がりの画像だけが十枚届きます。写真が回答と同じ場所に残る形なら、当日に別のスタッフが同じ記録から見られます。
Q5. 私物のスマホで問い合わせを受けてもよいですか?
認める店が多いですが、認めるなら三つを合わせて決めてください。端末の画面をロックすること、紛失時に誰へどう知らせるか、退職時に端末に残った情報をどう扱うかです。人ごとにアカウントが分かれていれば、辞めた人のアカウントを止めるだけで済みます。共有のアドレスとパスワードを使い回していると、辞めるたびにパスワードを変えて全員に配り直すことになります。
