美容室で問い合わせの件数を数え始めるとき、たいていは月に何件届いたかから入ります。先月は40件で今月は52件だった。増えている。ここまでは簡単に分かります。
ところが、その数字を見て次に何を変えるかと問われると、答えが出ません。増えた理由も、増えた分がどこから来たのかも、来店に繋がったのかも分からないからです。数えたのに手が打てない状態は、数えていないのとほとんど変わりません。
この記事では、指名と相談の問い合わせを受けている美容室を前提に、何を数えると次の手が決まるのかを整理します。数える対象を五つに絞り、それぞれが何を教えてくれるのか、どこで読み違えるのかを順に並べます。施術や薬剤についての判断には触れません。受付を回す側の話です。
総数だけを数えても、次の手が決まらない理由
総数は、店の外の事情で動く
問い合わせの総数は、店が何もしなくても動きます。年末、成人式の前、卒業と入学の時期、連休の前。美容室の需要には季節の波があり、総数はその波に乗って上下します。
だから、先月より増えたという情報だけでは、店の打ち手が効いたのかどうかが分かりません。去年の同じ月と比べれば少しましになりますが、それでも予約サイトの露出や、近くに新しい店ができたかどうかで動きます。
総数が役に立つのは、急に大きく減ったときの異常に気づく用途くらいです。異常に気づくのは大事ですが、それは「数えて改善する」とは別の話です。
数えていない層が多すぎる
もう一つの理由が、総数の中身が均一ではないことです。美容室に届く問い合わせには、指名の空き確認、髪型の相談、料金の確認、求人の応募、商材の営業、忘れ物の照会が全部混ざっています。
これらを足し合わせた数字は、何の指標にもなりません。営業の電話が増えた月と、指名の相談が増えた月が、同じ数字として出てくるからです。混ざったまま数えると、増減の意味が読めなくなります。
数える目的は、次に変える場所を決めること
数える作業の目的をはっきりさせておきます。目的は、報告のための数字を作ることではなく、次にどこを変えるかを決めることです。
この目的から逆算すると、数えるべき対象が絞れます。変えられる場所に紐づいた数字だけを数えればよい。窓口は変えられます。入り口の欄は変えられます。返信の速さは変えられます。季節は変えられません。変えられないものを丁寧に数えても、手は増えません。
美容室が最初に数える五つ
数える対象は、次の五つで足ります。全部を一度に始める必要もありません。
窓口別の件数
どの入り口から何件届いたか。予約サイトのメッセージ欄、公式アカウント、写真投稿サービス、店のフォーム、電話。この分け方は、そのまま打ち手に繋がります。
相談の種類別の件数
何についての問い合わせだったか。指名の空き確認、髪型の相談、料金の確認、ヘアセットの相談、求人、その他。種類が分かると、入り口の欄に足すべき項目が見えます。
初回の返信までにかかった時間
届いてから最初の返信を出すまでの時間です。指名の相談では、この時間が来店するかどうかに直結します。
返信したあと、来店に至った割合
返信した件のうち、実際に予約が入り、来店した割合です。窓口や相談の種類ごとに分けて見ると、力を入れる場所が決まります。
返していない件が残った日数
返信していない件が、何日残っているか。この数字は、他の四つと違って、悪化がそのまま事故に繋がります。
窓口別に数えると、何が見えるか
力を入れる窓口が決まる
窓口別の件数を並べると、たいてい偏りが出ます。予約サイトからしか来ない店、公式アカウントに集中している店、写真投稿サービスからの相談が多い店。同じ規模の美容室でも、店によって全然違います。
偏りが分かると、置く一行の場所が決まります。相談の入り口を案内する文言を、どの窓口の定型文に入れるべきか。すべての窓口に均等に手を掛けるより、実際に来ている窓口を整えるほうが効きます。
もう一つ分かるのが、手を掛けているのに来ていない窓口です。サイトのフォームを作り込んだのに、そこからは月に数件しか来ていない。この事実が分かれば、フォームを直すより、フォームへの案内をどこに置くかを直すほうが先だと決まります。
窓口によって、来店に至る割合が違う
件数だけでなく、窓口ごとに来店の割合を出すと、もっと役に立ちます。件数が多い窓口が、来店に繋がる窓口とは限らないからです。
写真投稿サービスからの相談は数が多くても、遠方からの問い合わせが混ざるため来店に至りにくいことがあります。逆に、店のサイトのフォームから来る件は数が少なくても、すでに店を調べたうえで送られてくるので割合が高いことがあります。
この二つを取り違えると、打ち手が逆になります。数だけを見て件数の多い窓口に力を入れ、来店が増えないという結果になります。
同じ人が複数の窓口を使う
窓口別に数えるときに、必ずぶつかる問題があります。同じ人が複数の窓口を使うことです。予約サイトで日時を押さえたあとに、写真だけを公式アカウントで送ってくる。電話をかけてから、フォームで詳細を書いてくる。
このとき、二件として数えるか一件として数えるかで、数字が変わります。決めておかないと、月によって数え方が揺れます。実務では、最初に届いた窓口を一件として数えて、後から来たものは同じ件に足す形が扱いやすい。案内の一行をどこに置くかを決めるのが目的なので、最初に接触した窓口が分かればよいからです。
同じ件に足す形にするには、後から来たものを既存の件に結び付ける手作業が要ります。名前と日時で照らし合わせる程度で足りますが、窓口が散らばっていると、この作業自体が重くなります。重ければ、重い理由のほうを先に直します。
電話は数えにくいので、先に決める
窓口別に数えるとき、必ず問題になるのが電話です。かかってきた本数はどこにも残らず、内容も残りません。
数え方を決めるなら、受けた人がその場で件として残す形にするしかありません。手間は増えますが、電話が主力の窓口である店ほど、ここを数えない意味は薄い。紙のメモに書いて貼る形だと、数える対象になりません。
負担が重ければ、期間を区切って数える方法もあります。ひと月だけ全部を残してみて、割合を掴む。毎月続けなくても、構成が分かれば打ち手は決まります。
相談の種類別に数えると、何が見えるか
入り口の欄に足すべき項目が見える
種類別の集計で最も価値があるのが、返信で聞き直している項目の発見です。
たとえば、髪型の相談のうち多くの件で、いまの髪の状態が分かる写真を追加でお願いしているとします。これは、入り口の欄に写真の項目が無いか、あっても何を撮ればよいかが伝わっていないという意味です。欄を直せば、往復が一回減ります。
同じように、希望の日時を毎回聞き直しているなら、日時の候補を書く欄が要ります。指名の有無を聞き直しているなら、指名の欄が要ります。返信の中身を集計すると、フォームの直すべき場所がそのまま出てきます。
断っている相談の中身が見える
もう一つ見えるのが、受けられずに断っている相談です。指名の枠が取れない、日程が合わない、対応していない施術。
断った件の数と理由を数えておくと、店の判断材料になります。同じ理由で断り続けているなら、そこには受け皿が無い需要があるということです。受け皿を作るかどうかは経営の判断ですが、判断するための材料が無ければ、そもそも議題に上がりません。
断った件を数えないと、店には来店した人の情報しか残りません。来なかった人がなぜ来なかったのかは、断った記録の中にしかありません。
季節でずれる種類が見える
種類別に月ごとの推移を並べると、総数の波の正体が分かります。成人式の前はヘアセットの相談が増え、春は求人の応募が増える。総数の増減は、この重なりでできています。
正体が分かると、備えられます。ヘアセットの相談が増える時期には、確認すべき項目を先に聞くひな形を用意しておく。求人が増える時期には、応募の受け皿を別に用意しておく。総数だけを見ていると、忙しくなってから気づきます。
時間を数える
初回の返信までの時間を、どう測るか
初回返信までの時間は、届いた時刻と、最初の返信を出した時刻の差です。単純ですが、記録が残っていないと測れません。受信箱で受けている場合、返信の時刻はメールの送信済みから拾えますが、件と結び付けるのに手間がかかります。
窓口が複数あると、さらに難しくなります。予約サイトで届いて公式アカウントで返した場合、二か所を突き合わせないと差が出ません。数えたいなら、件ごとに届いた時刻と返した時刻が残る形にする必要があります。
平均ではなく、分布で見る
時間の数字は、平均で見ると実態が消えます。ほとんどが数時間で返せていて、数件だけが三日かかっている場合、平均は悪く見えますが、直すべきなのは遅れた数件のほうです。
見るべきなのは、何時間以内に返せた件が何割か、という分布です。24時間以内に返せた割合と、3日を超えた件数。この二つがあれば、状態が分かります。
そして、遅れた件を個別に見ます。遅れた理由はたいてい共通しています。判断が要る相談だった、担当が休みだった、窓口が違った。理由が分かれば、その理由ごとに手を打てます。
営業時間の外をどう扱うか
美容室の問い合わせは、閉店後と定休日に集中します。そこで届いた件の待ち時間を、そのまま数えるかどうかを決めておきます。
どちらでも構いませんが、決めておかないと、月によって数え方が変わります。定休日の並びで数字が動き、動いた理由が分からなくなります。営業時間だけで数えると、店の努力に対する数字になり、時計どおりに数えると、相手が待った時間の数字になります。用途に合うほうを選んで、固定します。
来店に至った割合を数える
予約の記録と結び付ける
問い合わせと来店を結び付けるのが、この集計の難所です。問い合わせは窓口に届き、予約は予約サイトや台帳に入るので、別々の場所にあります。
現実的なやり方は、返信した件の状況を後から更新する形です。予約が入ったら件の状態を変える。来店したらもう一段変える。手作業ですが、件ごとに状態を持てる形になっていれば、負担は小さい。
完全に自動で結び付けようとすると、システムを揃える話になって着手が遅れます。まずは手で更新して、割合の水準を掴むほうが早い。
指名の有無で分ける
来店の割合は、指名の有無で大きく変わります。特定の人を指名した問い合わせは、その人の枠が取れれば高い割合で来店します。指名の無い相談は、他店と比較されている状態なので、割合が下がります。
この二つを混ぜて一つの数字にすると、動きの意味が読めません。指名の割合が増えて全体が上がったのか、指名なしの相談への返信が良くなって上がったのか、区別が付かないからです。
来店しなかった件も、理由を粗く残す
割合を出すだけでは、次の手が決まりません。来なかった件がなぜ来なかったのかを、粗くでよいので残しておきます。
美容室で多いのは、日程が合わなかった、指名の枠が取れなかった、料金が想定と違った、返信が遅れた、そして理由が分からないまま返事が途絶えた、の五つです。分類は選択肢から選ぶ形にして、迷ったら分からないに入れます。厳密さは要りません。
粗くても残しておくと、偏りが見えます。日程が合わなかった件が多いなら、返信で出す候補の数を増やす。料金でずれる件が多いなら、入り口の案内に幅を先に書く。理由が分からない件ばかりなら、返信の中身を見直します。理由を残していないと、割合が低いという事実だけが残り、手が出ません。
追いかけすぎない
来店したかどうかを確かめる作業には、手間がかかります。全件を正確に追おうとすると、集計そのものが業務になり、続きません。
目的は、窓口や種類ごとの差を掴むことです。差が掴めれば、多少の取りこぼしがあっても打ち手は決まります。精度を上げるより、続けられる粗さで毎月続けるほうが役に立ちます。
数えるときにやりがちな読み違い
分母をこっそり切り替える
いちばん多い読み違いが、分母の切り替えです。前の月は営業の電話も含めて数えていて、今月は相談だけを数えている。数字は良くなりますが、良くなったのは数え方です。
防ぐには、何を数えたのかを一緒に残しておくことです。数字だけを残すと、半年後に比べられなくなります。除外した種類を書いておくだけで足ります。
途中の集計を、傾向として読む
月の途中の数字を見て、傾向が変わったと判断するのも危ない。特に来店の割合は、問い合わせから来店までに時間差があるので、直近の月ほど低く出ます。
まだ来店していない件が分母に入っているだけなのに、割合が落ちたと読んで対策を打つことになります。時間差のある指標は、締まった期間だけで比べます。
数字を、人の評価に使う
三つ目は運用の話です。集計した数字をスタッフの評価に直結させると、数字を良く見せる動きが始まります。返信の速さを測っていれば、中身の薄い返信を先に送る動きが出ます。
数字は、次に変える場所を決めるための材料です。誰が悪いのかを決めるための材料にすると、材料の質が落ちます。落ちた材料では、変える場所も決まらなくなります。
数えるために必要な形
件として残っていること
ここまでの五つは、どれも件ごとの記録があれば数えられます。逆に、受信箱と公式アカウントと紙のメモに散らばった状態では、一つも数えられません。
数えられる形にすること自体が、集計の第一歩です。集計の道具を探す前に、記録が一か所に残る形になっているかを確かめます。散らばったまま集計しようとすると、毎月の突き合わせ作業が発生して続きません。
種類が、入り口で決まること
相談の種類を後から人が分類する運用は、続きません。忙しい日に飛ばされ、飛ばされた月の数字が欠けます。
続くのは、送信の画面で相手に選んでもらう形です。指名の相談、髪型の相談、料金の確認、ヘアセット、求人。この程度の選択肢を一つ置くだけで、分類が自動で付きます。選択肢は6つまでに抑えます。多いと選ばれ方が偏り、その他に集まります。
状況が更新されること
来店の割合を数えるには、件の状況が更新される必要があります。返信した、予約が入った、来店した、断った。この四つが件に残れば、割合はそのまま出せます。
更新の手間を減らすには、更新する場所が返信する場所と同じであることが要ります。別の表に転記する形だと、転記が飛ばされます。
消す作業と両立させる
集計のために記録を残す話と、要らなくなった情報を消す話は、ぶつかることがあります。法律は、次のように定めています。
個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
集計に必要なのは件数や種類であって、送られてきた写真や連絡先そのものではありません。数を残しながら中身を消す形にしておけば、両立します。どこまで残せばよいかの判断に迷う場面では、所管の窓口や専門家に確かめてください。
返していない件が残った日数を数える
他の四つとは、性質が違う
五つのうち、この一つだけは性質が違います。他の四つは良し悪しを測る数字ですが、これは事故が起きているかどうかを見る数字です。
返していない件が残っているというのは、すでに誰かが返事を待っているという意味です。数字が悪化した時点で、実害が発生しています。月末に集計して振り返る種類の数字ではなく、毎日見る種類の数字です。
だから、月次の集計表に載せるより、日々の画面に出ているほうが役に立ちます。返していない件が一覧の上に残り続ける形であれば、数える作業自体が要りません。見れば分かる状態が最も強い。
何日残ったら危ないのか
美容室の指名と相談の問い合わせなら、2日を超えた時点で、来店の見込みはかなり下がっていると考えるほうが実態に近い。相手はその間に他の店に問い合わせているからです。
とはいえ、定休日を挟めば二日はすぐ過ぎます。数えるなら、営業日で何日残ったかにしておくほうが、店の中で共有しやすい数字になります。営業日で2日残っている件がゼロかどうか。この形なら、毎朝の確認に組み込めます。
そして、超えてしまった件については、遅れたことに触れて返します。触れずに何事もなかったように返すと、相手は待たされた事実だけを覚えます。遅れた理由を一行添えるだけで、印象は変わります。
滞留が起きる典型の形
滞留した件を並べると、理由はいくつかの型に収まります。
多いのが、判断が要る相談です。できるかどうかを確かめる必要があり、確かめる相手が休みで、そのまま止まる。次に多いのが、窓口が違った件です。普段見ていない窓口に届いて、気づくのが遅れる。三つ目が、返したつもりで返していない件です。誰かが返すと思って、両方が待つ。
型が分かれば、手も決まります。判断が要る件は、確認中であることだけ先に返す。窓口の件は、通知の届き先をそろえる。返したつもりの件は、担当が件ごとに決まる形にする。滞留を数える目的は、この型を見つけることにあります。
集計を続けるための段取り
誰がやるかを決める
集計は、決めた人がいないと消えます。手が空いた人がやる運用は、手が空く月が来ないので、実際には誰もやりません。
決め方は、返信を最も多く書いている人が持つのが自然です。数字の意味を最も分かっている人でもあります。その人がやりやすい形にするために、集計にかかる時間を短くしておくことが条件になります。
いつやるかを決める
日を決めます。月初の何日、シフトを組む日、給与を計算する日。既にある作業に付けておくと、思い出す手間が消えます。
単独の新しい作業として立てると、忙しい月に飛ばされます。一度飛ばすと、翌月には二か月分を集計することになり、面倒になってやらなくなります。飛ばさない仕組みより、飛ばしても復帰できる軽さのほうが実務では効きます。
どこまで書き残すか
集計の結果は、数字と、その月に変えたことを一行だけ残します。長い報告書を作ると、作ることが目的になります。
残す形として実用的なのは、月ごとに一行の表です。窓口別の件数、種類の上位、返信までの時間の割合、来店の割合、滞留した件数、そしてその月に変えたこと。この六つの列があれば、後から見返したときに何が効いたのかを追えます。
追える形になっていることが大事で、精度は二の次です。粗くても続いた記録のほうが、精密でも三か月で途切れた記録より役に立ちます。
予約サイトの数字と、店の集計はずれる
数えている対象が違う
予約サイトの管理画面にも数字が出ます。閲覧数、予約数、メッセージの数。これを店の集計と並べると、必ずずれます。
ずれる理由は単純で、数えている対象が違うからです。サイト側は、そのサイトの中で起きたことしか数えません。店の窓口に直接届いた相談も、電話も、公式アカウントも入っていません。逆に、店の集計に入っていないサイト内の動きもあります。
どちらが正しいという話ではなく、用途が違います。サイト側の数字は、そのサイトでの見え方を良くするための材料です。店の集計は、受付をどう回すかを決めるための材料です。混ぜて一つの数字にすると、どちらの用途にも使えなくなります。
突き合わせは、月に一度で足りる
とはいえ、まったく見ないのも困ります。サイト経由の予約が急に減ったとき、店の集計だけでは気づけないからです。
現実的なのは、月に一度だけ並べて眺める形です。大きくずれた月があれば、理由を探します。掲載の内容が変わった、写真を入れ替えた、近くに新しい店ができた。理由が分かれば打ち手が決まりますし、分からなくても、次の月に同じずれが続くかどうかで判断できます。
毎週突き合わせる必要はありません。突き合わせに時間を掛けると、本来の集計が続かなくなります。
数えなくてよいもの
集計を始めると、数えたいものが増えます。増やしすぎると続きません。数えなくてよいものも決めておきます。
まず、店が変えられないものは数えなくてよい。天候、近隣の店の動き、世の中の景気。眺めても打ち手が出ないので、記録する価値が薄い。
次に、数えても行動が変わらないものです。問い合わせの本文の平均文字数、送信された時間帯の細かい分布。面白い数字ではありますが、それを見て変えることが無いなら、数える手間の分だけ損をします。数える前に「この数字が悪かったら何を変えるか」を自分に一度問うと、要否がはっきりします。
最後に、精度を上げても結論が変わらないものです。来店の割合を小数点以下まで正確に出しても、窓口の優劣という結論は変わりません。粗い数字で結論が出るなら、そこで止めます。集計は、続けられる軽さが最優先です。
求人の応募は、別に数える
混ぜると、両方が読めなくなる
美容室は、スタイリストとアシスタントの募集を出します。求人の応募が同じ窓口に届いている店では、集計に混ざります。
混ざると、両方が読めなくなります。求人の応募は季節と募集の出し方で大きく動くので、相談の件数の動きを打ち消したり、増やしたりします。春に総数が増えたとき、相談が増えたのか応募が増えたのかが分からない状態になります。
分けるのは難しくありません。入り口を別にするか、種類の選択肢に求人を入れるか。どちらかで足ります。
応募で数える項目は、相談とは別
分けたうえで、応募については別の項目を数えます。応募の件数、書類を確認するまでの日数、面談に進んだ割合、採用に至った割合。相談の集計とは項目そのものが違います。
特に効くのが、書類を確認するまでの日数です。応募者は在職中のことが多く、返事が遅いと他の店に決まります。相談の返信と同じ画面に並んでいると、急ぎに見える相談のほうが先に処理され、応募が後回しになりがちです。
分けて数えると、後回しになっている事実がはっきり出ます。出れば、担当を分ける判断ができます。混ぜたまま数えていると、後回しになっていること自体に気づけません。
道具を選ぶときに見る軸
集計できる形にするために道具を変えるなら、比べる点は三つです。
第一の軸は、届いた件が一件ずつ残り、種類と窓口が付いているかどうかです。無料で使える定番のフォームで受けた場合に、回答が表に溜まったあと何が起きるかは、Googleフォームとの比較に、集計の観点も含めて整理されています。
第二の軸は、件の状況を更新できるかどうかです。返信の有無と、予約に至ったかどうかが件に残らなければ、割合は出せません。すでにサイトにフォームを置いている場合は、Contact Form 7との比較に、送信の通知が飛ぶだけの状態との違いがまとめられています。
第三の軸は、時刻が記録されるかどうかです。届いた時刻と返した時刻が残っていないと、返信までの時間は測れません。
何がどこまでできるのかはできることに機能の単位で並んでいます。画面の動きは動くところを見るで確かめられます。送信されたあとの道具がそろっているかどうかは、集計の可否をそのまま決めます。作る画面をいくら見ても、この点は分かりません。
問い合わせの受付を全体としてどう組むかは問い合わせの受付に、求人を別の束として扱う場合は採用の応募受付に、それぞれ流れとして整理されています。
数えたあと、何を変えるか
数字が出たら、変える場所を一つだけ選びます。同時にいくつも変えると、何が効いたのか分からなくなります。
選び方の目安を挙げます。返信までの時間が長いなら、返信のひな形と通知の届き先を変えます。往復の回数が多いなら、入り口の欄を足します。特定の窓口からの来店割合が低いなら、その窓口の案内文を変えます。返していない件が残っているなら、担当が件ごとに決まる形にします。
変えたら、同じ数字をもう一か月見ます。ここで急いで次を変えないことが要点です。効果が出るまでに時間差のある指標があるので、変え続けると測れなくなります。
そして、数え続けること自体を軽くします。毎月の集計に半日かかる形だと、忙しい月に飛ばされ、飛ばした翌月にはやらなくなります。件ごとに記録が残っていて、種類が入り口で付いていれば、集計は数を出すだけの作業になります。数える作業を軽くするための準備が、そのまま受付の詰まりを解く作業と同じものになる。ここが、集計から手を付ける価値のあるところです。
Q1. 美容室の問い合わせは、まず何から数えればよいですか?
月の総数からは始めないほうがよいです。総数は季節の波で動くので、店の打ち手が効いたかどうかが読めません。最初に数えるなら窓口別の件数です。予約サイト、公式アカウント、写真投稿サービス、店のフォーム、電話のどこから来ているかが分かると、案内の一行をどこに置くかがそのまま決まります。
Q2. 件数の多い窓口に力を入れれば、来店は増えますか?
必ずしも増えません。件数が多い窓口と、来店に繋がる窓口は別のことがあります。写真投稿サービスからの相談は遠方が混ざって来店に至りにくく、店のサイトのフォームは数が少なくても割合が高い場合があります。窓口別に件数と来店の割合を両方出して、初めて力を入れる場所が決まります。
Q3. 相談の種類は、誰がどうやって分類すればよいですか?
後から人が分類する運用は続きません。忙しい日に飛ばされ、その月の数字が欠けます。送信の画面で相手に選んでもらう形にすると、分類が自動で付きます。指名の空き確認、髪型の相談、料金の確認、ヘアセット、求人といった選択肢を6つまでに抑えて置きます。多すぎると、その他に集まります。
Q4. 初回返信までの時間は、平均で見てよいですか?
平均は実態を消します。ほとんどが数時間で返せていて数件だけ三日かかっている場合、平均は悪く見えますが、直すべきは遅れた数件です。24時間以内に返せた割合と、3日を超えた件数の二つを見ます。そのうえで遅れた件を個別に見ると、判断が要る相談、担当の不在といった共通の理由が出てきます。
Q5. 集計した数字を、スタッフの評価に使ってもよいですか?
勧められません。返信の速さを評価に直結させると、中身の薄い返信を先に出す動きが始まり、材料としての質が落ちます。数字は、次にどこを変えるかを決めるための材料です。誰が悪いかを決める材料にすると、変える場所を決める役に立たなくなります。用途を分けて運用してください。
