セミナーの問い合わせ窓口で起きる事故は、二つに集約されます。同じ人に二人が返してしまう二重返信と、誰も返さないまま開催日を迎える放置です。この二つは正反対に見えますが、原因は同じところにあります。届いた一件を、いま誰が持っているのかが見えていないことです。
受付をひとりで回しているうちは、どちらも起きません。全部が自分の仕事だからです。ところがセミナーは、企画した人、集客を担当する人、当日の運営をする人、登壇者、共催の相手と、関わる人が自然に増えていきます。窓口は一つのままなので、届いた瞬間に「これは誰宛か」が誰にも分からない状態が生まれます。
この記事では、参加の申し込みと当日の連絡を同じ窓口で受けている前提で、担当の振り分けをどう決めるかを整理します。振り分けのルールを作る話だけでは終わりません。ルールを作っても止まる場面があり、そこを先に見ておかないと、決めたルールは一週間で形骸化します。
セミナーの主催は、関わる人が多いのに窓口は一つ
一つの窓口に、答える人が何人もいる
セミナーの問い合わせ窓口に届くものは、答えるべき人がばらばらです。
「この内容は初心者でも大丈夫ですか」は、企画した人か登壇者が答えるべき質問です。「請求書の宛名を変更したい」は、経理か、請求を出している人が答えます。「会場の駐車場は使えますか」は、会場を手配した人しか知りません。「途中で退出しても構いませんか」は、運営のルールを決めた人が答えます。
一般的な商品の問い合わせ窓口なら、答えるべき人はだいたい同じ部署にいます。セミナーは違います。登壇者は社外の人であることも多く、会場は貸し会議室の担当者にしか分からないことがあり、共催の相手は別の組織です。
つまりセミナーの窓口は、構造的に「受けた人がそのまま答えられない」問い合わせが混ざる場所です。振り分けが必要になるのは、担当を分けたいからではなく、分けないと答えが出ないからです。
窓口を分けると、参加する側が迷う
答える人が違うのだから、窓口も分ければよいという考え方があります。申し込みはこちら、支払いはこちら、当日のことはこちら、という形です。
これは受ける側にとっては整理されますが、参加する側にとっては負担になります。自分の質問がどの窓口に属するのかを、参加者は判断できません。判断できないまま送ると、間違った窓口に届きます。間違って届いた件は、正しい窓口に転送されるか、あるいはどこにも回されずに消えます。
現場でよく聞くのは、窓口を三つに分けた結果、三つ全部に同じ内容が送られてくるようになったという話です。参加する側が「どれか当たればいい」と考えるからです。三倍の件数を、三か所で処理することになります。
窓口は一つにしておいて、届いた後で振り分ける。これが基本の形になります。参加する側の負担を、受ける側の運用に付け替えるということです。
二重返信と放置は、同じ原因から出ている
「誰が持っているか」が見えていないだけ
二重返信が起きるのは、二人が同時に同じ件を見て、両方が「これは自分が返すものだ」と判断したからです。放置が起きるのは、複数の人が同じ件を見て、全員が「他の誰かが返すだろう」と判断したからです。
判断の向きが逆なだけで、原因は同一です。その件を誰が持っているのかが、どこにも表示されていない。表示されていないから、各自が推測することになります。推測は人によって違うので、重なるか、抜けるかのどちらかが起きます。
この構造を理解しておくと、対策の方向が決まります。返信を丁寧にする、確認を徹底する、声を掛け合う。こうした運用の努力では止まりません。人の注意力に依存する対策は、忙しい時期に必ず破れます。そして問い合わせが集中するのは、まさに忙しい開催直前です。
止めたいなら、持ち主が一件ごとに見える形にするしかありません。見えていれば、二人目は手を出しませんし、誰も持っていない件は目立ちます。
二重返信のほうが、被害としては重い
放置と二重返信を比べると、放置のほうが悪く見えます。返信が届かないのですから当然です。しかし実務上は、二重返信のほうが厄介な場合があります。
理由は、返信の内容が食い違うからです。一人目が「今回は満席のためキャンセル待ちでの受付になります」と返し、二人目が「お席をご用意できます」と返す。受け取った側は混乱し、どちらが正しいのかを問い合わせてきます。信用も落ちます。
セミナーでは、返信の内容が料金や参加の可否に直結します。「特別にご参加いただけます」と誰かが返していた場合、それが残っていなければ当日の受付で食い違いが起きます。会場まで来た人と、名簿を持った受付係のあいだで起きるので、その場では解決できません。
放置は、こちらが謝れば済むことが多い。二重返信は、こちらの内部が揃っていないことが相手に見えます。
放置は、時期が読める
放置が起きる時期は、はっきりしています。開催の直前です。
件数が増え、内容が緊急になり、しかも会場の準備や資料の印刷と並行しています。この時期に届いた件は、読まれはするが返されない、という状態になりやすい。読んだので既読になり、既読なので一覧から目立たなくなり、そのまま開催日を迎えます。
もう一つ、放置が起きやすいのは、判断が必要な件です。特別な事情による参加の相談、取材の申し出、共催の打診。受付の担当者が判断できないので、誰かに聞く必要があります。聞く先が決まっていないと、その場では止まります。止まった件は、一覧の中で他の件に紛れます。
現場では、この判断待ちの件が最も長く滞留すると言われています。緊急でもなく、自分の判断で返せもしない件は、後回しにする理由がそろっています。
振り分けの型は三つある
種類で振り分ける
問い合わせの種類ごとに担当を固定する形です。支払いに関するものは経理、当日の運営に関するものは運営の担当、内容に関するものは企画した人。
長所は、迷いが少ないことです。種類が分かれば担当が決まります。短所は二つあります。一つは、種類が判別できない件が宙に浮くこと。もう一つは、複数の種類にまたがる件が決まらないことです。
セミナーでは、またがる件が実際によく来ます。「日程を変更したいのですが、すでに振り込んだ分はどうなりますか」は、変更の話と支払いの話の両方です。「オンラインに変更したいので、会場の分の資料は郵送してもらえますか」も同じです。種類だけのルールでは決まりません。
種類での振り分けは、大枠として使うのが向いています。細かい線引きまで種類で決めようとすると、ルールが増えて誰も覚えられなくなります。
当番で回す
日ごと、あるいは時間帯ごとに、届いたものを見る人を決める形です。今日は誰、明日は誰。
長所は、抜けが起きにくいことです。誰が見るのかが時刻で決まっているので、「他の誰かが見るだろう」が発生しません。短所は、当番の人が答えられない件が必ず出ることです。その場合は、当番の人が中身を判断して、答えられる人に回すことになります。
セミナーの受付では、この形が向く場面があります。開催の直前です。この時期は件数が多く、内容も定型的なものが多い。当番を決めて、その人が一次的に全部を見て、判断が要るものだけを回す。当番以外の人は準備に集中できます。
手を挙げて取る
届いた一覧を全員が見て、対応できる人が自分で取る形です。
長所は、柔軟なことです。手が空いている人が取るので、詰まりにくい。短所は、誰も取らない件が出ることです。難しい件、判断が要る件、面倒な件は、全員が見送ります。
この形が機能する条件は一つで、取ったことが一覧に表示されることです。表示されないなら、二重返信が起きます。表示されるなら、取られていない件が目立つので、放置にも気づけます。
セミナーでは、組み合わせて使うことになる
三つのどれか一つで回るケースは少なく、実際には組み合わせることになります。
平常時は種類で大枠を振り分け、手を挙げて取る形にする。開催の直前だけは当番を立てて、一次的に全部をその人が見る。当日は会場に行かない人を一人残して、その人が窓口を持つ。時期によって形を変えるのが現実的です。
どの形を使うにせよ、共通して必要なのは、いま誰が持っているのかが件ごとに見えることです。送信されたあとの状態が一件ごとに残る形になっていれば、種類で振っても、当番で回しても、手を挙げて取っても、重なりと抜けは見えます。逆に見えなければ、どの型を選んでも同じ事故が起きます。
ルールを決める前に、決めておくこと
一次窓口を一人にする
複数人で受けるとき、最初に決めるのは、届いたものを最初に見る人です。ここを一人にしておかないと、その後の振り分けが始まりません。
全員が同時に一次窓口を担うと、届いた瞬間に全員が判断を始めます。判断が分かれた時点で、重なるか抜けるかが起きます。一人が見て振り分ける形なら、判断は一回で済みます。
一次窓口の人がやるのは、答えることではありません。中身を読んで、誰が答えるべきかを決めることです。答えられるものは自分で答えてよいのですが、それは役割の一部であって全部ではありません。ここを混同すると、一次窓口の人が全部を抱え込み、その人が詰まった時点で全体が止まります。
判断できないものの行き先を、先に決める
一次窓口の人が判断できない件は必ず出ます。行き先を先に決めておかないと、そこで止まります。
決めておくのは二つです。誰に回すのかと、回した後にどれくらい待つのかです。回した先が動かないまま三日経ったときに、誰が拾い直すのかを決めていないと、回した件は消えます。回した側は「渡したので自分の手を離れた」と考え、回された側は「見ていなかった」で終わります。
セミナーでは、回す先が社外であることがあります。登壇者への内容の確認、会場への設備の確認、共催者への調整。社外に回した件は、こちらの一覧から見えなくなりがちです。回したこと自体を件ごとに残しておかないと、返事が来ていないことに気づけません。
登壇者と共催者に回すときの線
外に回すときには、何を渡すかの線を決めておきます。
事前質問を登壇者に渡す場面を考えます。質問の中身だけを渡すのか、質問した人の氏名や所属も一緒に渡すのか。前者なら渡す情報は最小で済みます。後者は、登壇者が名指しで答えたい場合に必要になりますが、渡す情報が増えます。
共催者に申込者の一覧を渡す場合も同じです。共催という関係だからといって、何でも渡してよいわけではありません。何がどこまで当たるのかは募集の形や関係者の立場によって変わるため、判断に迷う部分は所管の窓口や専門家に確かめてください。運用として言えるのは、渡す必要のない情報を最初から切り離しておけば、毎回の判断が減るということです。
外部の運営会社に受付そのものを任せる場合は、任せた後の扱いも決めておく必要があります。
個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
必要かつ適切な監督が具体的に何を指すかは、任せる範囲によって変わります。受付の側でできるのは、外の人に渡す権限を作業に必要な範囲にとどめ、作業が終わったら戻すことです。担当の振り分けというのは、社内の分担だけの話ではありません。
担当が決まっても止まる場面
担当者が当日、会場にいる
セミナー特有の詰まりがここです。開催当日、担当者は会場にいます。机の前にいません。
平常時の振り分けがうまく回っていても、当日だけは全員が動いています。設営、受付、機材の確認、登壇者の対応。この状態で届いた問い合わせは、誰も見ません。しかも当日の問い合わせは、最も緊急度が高い。
対策は単純で、当日は窓口を見る人を一人決めて、その人を設営から外すことです。設営が一人減っても、当日の受付でのトラブルが減るぶんで釣り合います。オンライン開催なら、配信の操作をする人とは別に、問い合わせを見る人を置きます。配信の操作をしながら質問に答えるのは無理があります。
担当者が休んだ
担当を固定していると、その人が休んだ日に穴が空きます。休むのは病気だけではありません。出張、別の案件、有給。セミナーの募集期間は数週間から数か月に及ぶので、その間に不在の日が必ず入ります。
固定した担当の代わりを、その日ごとに決める運用は破綻します。決める人が休んだら決められないからです。あらかじめ、誰が休んだら誰が見るかを組で決めておきます。
もう一つ重要なのは、担当者しか知らない情報を作らないことです。「この件は前に電話で話がついている」という情報が担当者の頭の中にしかないと、代わりの人は返せません。やり取りの経緯が件ごとに残っていれば、代わりの人でも続きが書けます。
担当が変わったことが残らない
途中で担当が変わることは頻繁にあります。一次窓口から企画の担当へ、企画の担当から経理へ。
変わったこと自体が残らないと、後から誰が持っているのかが分からなくなります。特に、変わった後に相手から二通目が届いたときに困ります。二通目を見た人が、一通目を誰が返したのかを知らないまま返信すると、前の内容と食い違います。
残しておくのは、いつ、誰から誰に移ったか、それだけで足ります。理由まで書く必要はありません。移った記録があれば、続きを追えます。
人が返す件と、人が返さなくてよい件を分ける
全部を振り分けの対象にしない
振り分けの負荷を下げるいちばん確実な方法は、振り分ける件数そのものを減らすことです。
セミナーの窓口に届くもののうち、人の判断が要らないものは意外に多くあります。申し込みを受け付けた事実の返信、開催前日のリマインド、接続用の案内、資料の配布の連絡。どれも中身が同じなので、一件ずつ人が返す必要がありません。
これらを自動で出す形にしておくと、担当が判断すべき件だけが一覧に残ります。振り分けの対象が減れば、振り分ける人の負荷も減ります。逆に、自動で出せるものまで手作業で返していると、忙しい時期に本当に判断が要る件が埋もれます。
注意点として、自動の返信は「人が読んだ」ことを意味しません。自動返信が出ているからといって、その件が処理済みになるわけではない。ここを混同すると、自動返信が出た件が返信済みに見えて、実際の質問に誰も答えないという事態が起きます。自動の返信と、人の返信は、状態として分けておく必要があります。
定員とキャンセル待ちの管理を、担当の頭の中に置かない
セミナー特有の負荷として、定員の管理があります。残席がいくつあるのかは、申し込みが入るたびに変わります。
これを担当の頭の中や、手元の紙で管理していると、その人が不在の日に誰も答えられなくなります。「まだ空いていますか」という問い合わせに、残席を知っている人しか返せない状態です。担当の振り分け以前に、答えるための材料が一人に閉じています。
残席とキャンセル待ちの状況が、窓口を見る人全員に見えていれば、この問い合わせは誰でも返せます。振り分けが要らなくなるわけです。振り分けを設計するときは、そもそも振り分けなくても返せる形にできないかを先に考えます。
キャンセル待ちからの繰り上げも同じです。誰から順に繰り上げるのか、何時までに返事が無ければ次に回すのか。この二つが決まっていれば、繰り上げの連絡は判断ではなく作業になります。作業なら、手が空いている人が誰でもできます。決めていないと、開催の前日にキャンセルが三件出た時点で、判断できる人が呼び出されます。
社外の人が混ざるときの決めごと
権限は、作業に必要な範囲にとどめる
セミナーの運営には、社外の人が入ることがよくあります。運営を委託した会社の担当者、当日だけ手伝うスタッフ、共催の相手方の事務局。
この人たちに窓口を見てもらう場合、どこまで見せるかを決めておきます。当日の受付を手伝う人に、全員分の申込情報と支払いの状況まで見せる必要はありません。当日の名簿として必要な範囲があれば足ります。
見せる範囲を絞る理由は二つあります。一つは、必要のない情報を渡さないためです。もう一つは、絞っておくと事故が起きにくいためです。見える範囲が広いほど、誤って触れる範囲も広くなります。
そして、作業が終わったら戻すこと。当日限りのスタッフが、開催の三か月後も申込情報を見られる状態になっているのは、単に戻す手順が決まっていないからです。渡すときに、いつ戻すかまでを一緒に決めておきます。
共催のときは、どちらの窓口で受けるかを先に決める
共催のセミナーでは、募集ページに両方の連絡先が載ることがあります。参加する側は、どちらに聞いてもよいと考えます。
結果として、同じ人からの同じ質問が、両方の事務局に届きます。両方が返せば二重返信になり、両方が「相手が返すだろう」と考えれば放置になります。組織をまたぐぶん、社内で起きるときより気づくのが遅れます。
決めておくのは、受付の窓口をどちらに寄せるかです。片方に寄せて、もう片方に届いたものは転送する。転送のときに、転送した記録が残る形にしておきます。残らないと、転送したつもりが届いていない事態に気づけません。
答える内容の統一も要ります。参加費の扱い、キャンセルの条件、資料の配布。ここが両者でずれていると、どちらが返すかによって答えが変わります。参加する側から見れば、同じセミナーなのに答えが違う状態です。
状態の種類を、いくつ持つか
四つで足りる
件ごとの状態は、細かく分けるほどよいわけではありません。分けすぎると、どれを選ぶか迷う時間が発生します。
セミナーの受付なら、四つで足ります。まだ誰も見ていない未対応、担当が付いて進行中の対応中、返し終えた返信済み、そして判断待ちや外部の返事待ちの保留です。
この四つのうち、最も重要なのは保留です。保留を持たないと、判断待ちの件が「対応中」に混ざります。対応中に混ざった判断待ちの件は、進んでいるように見えて止まっています。分けておけば、保留がいくつあり、それぞれ何日止まっているかが見えます。
開催が終わった後の件を、閉じる
見落とされやすいのが、開催後の扱いです。セミナーが終わると、窓口の緊張が一気に緩みます。しかし件は残っています。
開催後に届くのは、資料をもう一度送ってほしい、録画はいつ公開されるのか、領収書の再発行、次回の案内が欲しい、といった内容です。緊急ではありませんが、返さなければ相手は待ち続けます。しかも主催側の意識は次の企画に移っているので、返されないまま数週間経ちます。
開催が終わった時点で、残っている件を一度全部見直す作業を入れます。返信済みにできるもの、まだ返していないもの、保留のまま持ち越すもの。この仕分けを開催の翌営業日にやっておくと、次の募集を始めるときに前の件が混ざりません。
混ざると何が起きるかというと、次の回の一覧の中に前回の件が残り、どの回の話なのか分からなくなります。複数の回を続けて開催する形では、回ごとに件を分けておくことが前提になります。
保留には、期限と持ち主を必ず付ける
保留は便利ですが、そのままだと放置の温床になります。保留に置いた瞬間に、一覧の主要な流れから外れるからです。
だから保留には、いつまでという期限と、誰が持っているかを必ず付けます。期限が来たら、進んでいなくても一度戻す。戻したときに、まだ待つのか、待たずに返すのかを判断します。
セミナーの場合、期限の決め方は簡単です。開催日から逆算します。当日の運営に関わる件なら、遅くとも前日までに決着が要ります。参加の可否に関わる件なら、参加者が予定を組めるだけの余裕が要ります。開催日という締切があるぶん、期限は機械的に決められます。
振り分けを決めたあと、続けるための手当て
ルールは、募集の途中で見直さない
振り分けのルールを決めても、募集が始まると例外が出ます。想定していなかった種類の問い合わせ、担当者の不在、件数の急増。そのたびにルールを変えたくなります。
しかし募集の途中でルールを変えると、変える前と後で扱いが違う件が混ざります。誰が持っているのかの基準が途中で変わるので、変更を知らない人が古い基準で動きます。二重返信と放置は、まさにこの食い違いから起きます。
募集の途中で出た例外は、その場では個別に処理して、記録だけ残します。ルールの見直しは、開催が終わってからまとめて行う。この形にしておくと、募集中に基準が揺れません。
例外の記録は、細かく書く必要はありません。どんな問い合わせが来て、誰が処理したか。この二つがあれば、見直しのときに材料になります。
決めたことを、見える場所に置く
振り分けのルールを口頭で共有しただけだと、一週間で忘れられます。特に、募集の期間が長いセミナーでは、決めたときと運用する時期が離れます。
置き場所は、問い合わせを見る場所の近くが理想です。別の書類の中に埋もれていると、確認するために探すことになり、探すくらいなら自分で判断することになります。
書く内容は短くします。一次窓口は誰か、種類ごとの担当は誰か、判断できないときの行き先は誰か、その人が不在のときは誰か。この四つだけです。細かい条件を書き込むほど読まれなくなります。
新しく入った人が、その日から動けるようにする
セミナーの運営には、途中から人が加わることがあります。当日だけのスタッフ、繁忙期の応援、途中で担当を引き継ぐ人。
この人たちが、その日から動けるかどうかは、いま誰が何を持っているのかが見えるかで決まります。見えていれば、空いている件を取るだけで参加できます。見えていなければ、既存の担当者に一件ずつ聞くことになり、聞かれた側の手が止まります。
引き継ぎの資料を作るより、状態が見える形にしておくほうが早い。資料は作った時点で古くなりますが、状態は常に現在のものだからです。
担当を減らせないかを、先に考える
振り分けの話をしてきましたが、そもそも振り分けが要らない件を増やすほうが軽くなります。
残席がいくつあるか、当日の持ち物は何か、会場はどこか。こうした質問は、答えを知っている人が一人しかいなければ振り分けが必要ですが、全員が見られる場所に情報があれば誰でも返せます。振り分けの負荷は、情報が特定の人に閉じているほど重くなります。
開催の情報、定員の状況、キャンセル待ちの並び。この三つを窓口を見る人全員が見られるようにしておくだけで、振り分けが必要な件はかなり減ります。
効いたかどうかを、何で判断するか
振り分けを変えたら、変えた効果を数字で見ます。感覚で判断すると、変えたことを正当化する方向に記憶が寄ります。
見るのは三つです。一つ目は、二重返信が起きた件数。ゼロが目標なので、数えるのは簡単です。二つ目は、誰も持っていない状態で一日以上残った件の数。三つ目は、保留のまま期限を過ぎた件の数です。この三つ目が多いなら、保留の期限が現実的でないか、期限を見る運用がありません。
いずれも、件ごとに担当と状態が残っていれば数えられます。逆に言えば、受信箱で受けている限りは数えられません。数えられる状態にすること自体が、形を変える理由の一つになります。
いまの道具のままで足りるかを判断する材料も、そろえておくと決めるのが早くなります。無料の集計型のフォームで受けている場合、回答が表に落ちたあとに担当や状態をどう扱うかはGoogleフォームとの比較に整理されています。組織で使っているアカウントの範囲で完結させたい場合は、Microsoft Formsとの比較のほうが近い形になります。どちらも、いまの道具で足りる使い方を先に置いた形でまとめられています。
セミナーの申し込みと当日の連絡を同じ窓口で受ける流れそのものは、イベントの申し込みに、定員とキャンセル待ちを含めて整理されています。連続講座のように複数回に分けて募集する形なら、講座の受講申し込みのほうが実際の運用に近い。担当を分けて受ける形が他の場面でどう回っているかは、問い合わせの受付にまとめられています。
最後に、順番について書いておきます。担当の振り分けを決めるとき、多くの主催者は誰が何を担当するかの表から作り始めます。しかしその表は、作った翌週には例外だらけになります。またがる件、判断できない件、担当が不在の日。例外のほうが多くなり、表は見られなくなります。
先に作るべきなのは、表ではなく、いま誰が持っているのかが一件ごとに見える状態です。それさえあれば、振り分けの表が多少ずれていても、重なりと抜けは見つかります。表を精緻にしても、持ち主が見えなければ事故は止まりません。
Q1. セミナーの問い合わせ窓口は、種類ごとに分けたほうがよいですか?
分けないほうが回ります。参加する側は自分の質問がどの窓口に属するかを判断できないため、間違った窓口に届くか、念のため全部に同じ内容を送ってくるかのどちらかになります。三つに分けた結果、三倍の件数を三か所で処理することになった例もあります。窓口は一つにしておき、届いた後で振り分けるのが基本の形です。受ける側の運用に負荷を寄せるほうが、結果として全体は軽くなります。
Q2. 二重返信と返し忘れを、両方まとめて止める方法はありますか?
あります。この二つは同じ原因から出ているためです。原因は、その件をいま誰が持っているのかが表示されていないこと。表示されていないと、各自が推測することになり、推測が重なれば二重返信、全員が他人任せにすれば放置になります。件ごとに持ち主が見える形にすれば、二人目は手を出さず、持ち主がいない件は目立ちます。
Q3. 振り分けの型は、どれを選べばよいですか?
時期によって組み合わせるのが現実的です。平常時は種類で大枠を振り分けて手を挙げて取る形にし、開催直前は当番を一人立てて一次的に全部を見てもらう。当日は会場に行かない人を一人残して窓口を持たせる。どの型でも共通して必要なのは、いま誰が持っているかが件ごとに見えることで、これが無いとどの型でも同じ事故が起きます。
Q4. 判断できない問い合わせが滞留します。どうすればよいですか?
回す先と、回した後に何日待つかを先に決めます。決めていないと、回した側は手を離れたと考え、回された側は見ていなかったで終わります。加えて、状態として「保留」を独立させ、期限と持ち主を必ず付けます。セミナーは開催日から逆算できるので、期限は機械的に決められます。期限が来たら、進んでいなくても一度戻します。
Q5. 開催当日は全員が会場にいて、問い合わせを誰も見られません。どうしていますか?
当日だけは、窓口を見る人を一人決めて設営から外すのが実務的です。当日の問い合わせは最も緊急度が高く、会場の入り口が分からない、接続方法が分からないといった内容が集中します。設営が一人減っても、受付でのトラブルが減るぶんで釣り合います。オンライン開催なら、配信を操作する人とは別に置きます。オンライン開催でも、配信を操作する人とは別に置きます。
