セミナーの事務局に届く問い合わせは、内容の幅が広いわりに、型はかなり限られています。空きがあるか、当日でも参加できるか、請求書はもらえるか、行けなくなったらどうなるか。同じ質問が回のたびに繰り返されるので、返信のひな形を作る価値は高い作業です。ただし、ひな形を作ったのに使われない、あるいは作ったせいで往復が増えたという話もよく聞きます。分かれ目は、ひな形が「聞かれたことに答える文」で終わっているか、「相手が次に何をすればよいか」まで書いてあるかです。この記事では、セミナーの受付に届く問い合わせを型に分けたうえで、初回の返信で往復を止めるひな形の組み立て方を扱います。
セミナーの受付に届く問い合わせは、型が決まっている
ひな形を作る前に、何が届いているのかを分けます。分けずに作り始めると、汎用的で当たり障りのない文面が一つできて、結局どの場面にも使えないものになります。届く時期で三つに分けると扱いやすくなります。
申し込みの前に届くもの
開催が告知されてから申し込みまでの間に届く問い合わせは、参加の可否を判断するためのものです。まだ席は空いているか、当日の飛び込み参加はできるか、途中からの入場や途中退席は可能か、資料だけもらえるか、録画は後日見られるか。オンライン開催なら、カメラをオンにする必要があるか、顔や名前が他の参加者に見えるかという質問が加わります。
有料のセミナーでは、支払い方法の質問が必ず来ます。請求書払いにできるか、支払いは開催の前か後か、領収書は発行されるか、社名での申し込みは可能か。法人の参加者は経理の締めに合わせて動くので、この回答が遅れると申し込みそのものが次の回に流れます。
対象者に関する質問も定番です。「同業者でも参加できますか」「学生ですが対象になりますか」「初心者向けと書いてありますが、経験者が参加しても得るものはありますか」。この型は、断る返信になることもあれば、条件付きで受ける返信になることもあり、事務局の判断が要ります。判断が要る型ほど、ひな形の効果が大きくなります。
申し込みの後に届くもの
申し込みが済んだあとは、内容の変更に関する連絡が中心になります。参加者を別の人に代える、参加する回を変える、会場開催からオンライン参加に切り替える、複数名で申し込んだうち一人が来られなくなる。それぞれ、可能かどうかと、いつまでに連絡すればよいかの二つが問われます。
キャンセルと返金の連絡も、この時期に集中します。参加費を受け取っている場合、いつまでのキャンセルなら返金するのか、振込手数料はどちらの負担か、返金にどれくらい掛かるのか。ここが曖昧な返信をすると、そのまま長い往復になります。
請求や経理に関する連絡も続きます。請求書の宛名を変えたい、送付先を変えたい、先方の様式に合わせてほしい、購買システムに登録が必要だから書類がほしい。これらは事務局ではなく経理の担当が対応することも多く、返信の中で誰に引き継ぐかを示せるかどうかが速さを決めます。
開催の当日に届くもの
当日は、返信の速さがそのまま参加者の体験になります。会場にたどり着けない、電車が遅れている、送られてきた接続の案内が見つからない、入室しようとしたら入れない。どれも数分以内に返す必要がある内容で、しかも事務局は会場にいてパソコンの前にいません。
当日用のひな形は、他の場面とは別に用意しておく価値があります。文面が長いと、スマートフォンから送るのに時間が掛かります。当日は短く、必要なことだけを書いた文面のほうが、参加者にとっても読みやすくなります。当日の連絡と申し込みの一覧が同じ場所で見られると、誰からの連絡かを探す時間が消えます。受け取ったあとに担当を決めて状況を追う使い方はイベントの申し込みにまとまっています。
初回の返信で決めるべきは、相手の次の動き
ひな形の良し悪しは、文面の丁寧さではなく、往復の回数で測れます。初回の返信で相手が次に何をすればよいかが決まっていれば、そこで終わります。決まっていなければ、必ずもう一往復増えます。
情報を返すだけの返信は、往復を増やす
「まだ空きがございます」という返信は、質問には答えています。しかし受け取った側は、次にどうすればよいかが分かりません。申し込みページに戻るのか、この返信に返せば申し込みになるのか、席は取っておいてもらえるのか。この曖昧さが、そのまま次の問い合わせになります。
同じ内容でも、「まだ空きがございます。お申し込みは下記のページから承っております。ご入力いただいた時点で席を確保いたします」と書けば、相手の動きが一つに決まります。文字数はほとんど変わりません。違うのは、次の一手を書いているかどうかだけです。
セミナーの申し込みは、思い立った瞬間に終わらないと消えます。返信を読んだその場で申し込みまで進めるかどうかで、実際に来る人数が変わります。返信の文面は案内であると同時に、動線の一部です。
期限を書かないと、判断が先送りされる
「変更は可能です」だけの返信は、相手の判断を先送りさせます。いつまでに連絡すればよいかが分からないので、後回しになり、直前になってから連絡が来ます。直前の変更は事務局の作業を増やすので、期限を書くことは相手のためだけでなく運営のためでもあります。
書き方は具体的にします。「開催の3日前まで」ではなく、その回の具体的な日付を入れるほうが確実です。ひな形の中に日付を差し込む箇所を作っておけば、書き換えは一か所で済みます。期限を過ぎた場合にどうなるかも、同じ返信の中に書いておきます。ここを書かないと、期限を過ぎてから「どうにかならないか」という連絡が来ます。
判断が要る問い合わせは、選択肢を出す
「同業者ですが参加できますか」のような、事務局の判断が要る問い合わせに対しては、可否だけを返すと相手の次の動きが決まりません。断る場合でも、代わりに何ができるのかを添えると、そこで完結します。資料の販売があるならその案内、次回に別の回を用意する予定があるならその案内、公開している記事があるならその案内。
条件付きで受ける場合は、条件を先に書きます。「席に余裕がある場合に限りお受けしております。開催の2日前に空席の状況をご連絡いたします」と書けば、相手は待てばよいと分かります。曖昧に受けると、当日まで双方が状況を把握できないままになります。
ひな形の骨格を五つの部品に分ける
場面ごとに全文を作ると、数が増えたときに管理できなくなります。部品に分けておくと、組み合わせで対応できます。
宛名、受領、回答、次の動き、署名
宛名は、氏名と会社名を差し込む部分です。受領は「お問い合わせいただきありがとうございます」に相当する一文で、届いたことを伝えます。回答は、聞かれたことへの答えです。次の動きは、相手が次に何をすればよいかと、その期限です。署名は、事務局の連絡先と、返信できる窓口です。
このうち差し替えが必要なのは、多くの場合「回答」だけです。宛名、受領、署名は共通で使い回せます。次の動きは、問い合わせの型ごとに数種類を用意しておけば足ります。全文を場面の数だけ作るのではなく、回答と次の動きの組み合わせで作ると、管理する文面の数が大きく減ります。
差し込む箇所を先に決めておく
ひな形の中で毎回書き換える箇所は、決めておかないと書き換え漏れが起きます。前の回の日程が残ったまま送信してしまう事故は、ひな形を使い始めた事務局でよく起きます。差し込む箇所を「〇〇」のような目立つ形にしておくと、書き換え忘れが目に入ります。
差し込む箇所は、できるだけ少なくします。日付、会場、締切、金額。この四つに絞れれば、確認も速くなります。文面の中に日付が五か所出てくるひな形は、そのうち一か所を直し忘れる可能性が五倍あるということです。
差し込む値を自動で埋められる仕組みがあるなら、それに越したことはありません。申し込みの一覧から氏名や会社名や参加する回を引いて文面に入れられれば、書き換え漏れそのものが起きません。手で書き換える箇所が残るなら、送信の前に確認する担当を決めておくか、少なくとも差し込む箇所を目立たせておきます。
断る返信こそ、ひな形にする価値がある
ひな形を作るとき、まず作られるのは受ける返信です。しかし実際に時間が掛かっているのは、断る返信のほうです。満席のとき、対象外のとき、期限を過ぎたとき、要望に応えられないとき。相手の気分を害さないように書こうとして、毎回考え込むことになります。
断る返信のひな形には、三つを入れます。応えられないという事実、その理由、代わりにできること。理由を書かずに断ると、なぜ駄目なのかを尋ねる返信が来ます。代わりにできることを書かないと、そこで関係が終わります。次回の案内を受け取る方法を書いておけば、断った相手が次の回の参加者になります。
満席の連絡は、断る返信の中でも頻度が高い型です。次のような形になります。
〇〇様、お問い合わせいただきありがとうございます。〇月〇日開催の回につきましては、定員に達したため受付を終了しております。キャンセルが出た場合にご案内できるよう、順番のお預かりを承っております。ご希望の場合は本メールにご返信ください。次回の開催が決まりましたら優先してご案内いたします。
断りの一文のあとに、二つの選択肢を置いています。相手はどちらかを選べばよく、こちらは返信の有無で意向が分かります。断って終わりにしないことで、次の回の集客につながります。
対象外である場合の断りは、書き方に注意が要ります。「対象ではありません」とだけ書くと、拒絶として受け取られます。そのセミナーが想定している前提を書いたうえで、それでも参加を希望されるなら受けられるのか、受けられないのかを明示します。前提を書くと、相手が自分で判断できるようになります。
場面別に、何を書くかを決めておく
骨格が決まったら、型ごとに中身を埋めます。ここでは代表的な四つを挙げます。
空き状況と申し込み方法への返信
回答には、現時点の空きの有無を書きます。次の動きには、申し込みの導線と、席の確保がいつ確定するかを書きます。満席が近い場合は、その旨を添えると相手の判断が早くなります。ただし、確認できていない切迫感を演出する書き方は避けます。事実として残席が少ないなら書き、そうでないなら書かないという線引きです。
会場開催で定員が明確な場合は、残席の数を書ける場合があります。数字を書くなら、その時点の実数であることを添えます。書いた後に申し込みが入って食い違うことがあるので、「本日時点で」といった時点を示す言葉を入れておくと、後で説明が要りません。
文面の形としては、次のような組み立てになります。
〇〇様、お問い合わせいただきありがとうございます。〇月〇日開催の回につきまして、本日時点で残席がございます。お申し込みは告知ページの申し込みフォームより承っております。ご入力いただいた時点で席を確保いたしますので、そのままお進みください。ご不明な点がございましたら、本メールにご返信ください。
聞かれた内容への答えは一文で終わっています。残りは、次に何をすればよいか、それによって何が確定するか、困ったときにどこへ連絡すればよいかです。この三つが入っていれば、追加の質問はほとんど来ません。
請求書払いの依頼への返信
法人の参加者からの請求書払いの依頼は、確認すべき項目が多く、往復が増えやすい型です。初回の返信で必要な項目をすべて尋ねると、一往復で済みます。宛名の正式表記、送付先の住所または送付先のメールアドレス、担当者名、部署、支払いの期限、先方指定の様式の有無、注文番号の要否。
これを箇条書きで並べ、「下記をご返信いただければ請求書をお送りいたします」と書けば、相手は一度で返せます。逆に、一つずつ尋ねると、法人の担当者は社内で確認するたびに時間が空くので、日をまたぐ往復が三回、四回と続きます。
文面の形は次のようになります。
〇〇様、お問い合わせいただきありがとうございます。請求書でのお支払いを承っております。発行にあたり、下記をご返信ください。ご返信をいただいてから〇営業日以内にお送りいたします。請求書の宛名、送付先、ご担当者名とご所属、お支払い期限、貴社指定の様式の有無、注文番号や購買システムへの登録の要否。ご不明な点は本メールへのご返信で承ります。
尋ねる項目を並べるときは、相手が答えを持っていない項目が混ざっていないかを確かめます。担当者が経理に確認しないと分からない項目ばかりだと、返信までに時間が掛かります。分かる範囲で先に返してもらい、不足分を後から埋める形でよいと添えておくと、止まりにくくなります。
キャンセルと返金の連絡への返信
キャンセルの連絡には、感情的な負担が伴います。相手は事情があって来られなくなっており、こちらは規定に沿って処理する必要があります。ひな形には、受け取ったことの確認、キャンセルの扱い、返金がある場合はその条件と時期、次回の案内の三つを入れます。
返金の条件は、告知ページに書いた内容と一言一句そろえておきます。返信の文面と告知の記載が食い違うと、そこから話が長くなります。ひな形を作るときに、告知ページの該当箇所をそのまま写しておくと、ずれが起きません。告知の文言を変えたときに、ひな形も同時に直す必要がある点は覚えておきます。
文面の形は次のようになります。
〇〇様、ご連絡ありがとうございます。〇月〇日開催の回について、キャンセルを承りました。お手続きは完了しておりますので、追加のご対応は不要です。お支払いいただいた参加費につきましては、告知ページに記載のとおり〇月〇日までのお申し出のため、〇〇の扱いとなります。振込によるご返金の場合は、下記をご返信ください。またの機会にお会いできれば幸いです。
キャンセルの受領は、処理が終わったことをはっきり書きます。「承りました」だけだと、本当に取り消されたのか不安が残り、確認の連絡が来ます。参加費の扱いを書いたうえで、相手側にまだ作業が残るのかどうかを明示すると、そこで終わります。
代理出席への切り替えを受けている場合は、キャンセルの返信の中でその選択肢も示します。来られなくなった参加者にとって、社内の別の人に振り替えられるなら費用が無駄になりません。事務局にとっても参加人数が保てるので、双方にとって望ましい着地になります。
当日の連絡への返信
当日用のひな形は短くします。遅刻の連絡には「ご連絡ありがとうございます。到着され次第、受付にお声がけください。開始後も入場いただけます」で足ります。会場が分からないという連絡には、建物名と入口の位置と目印を書きます。オンラインで入室できないという連絡には、確認してほしい点を二つか三つに絞って書きます。
当日はスマートフォンから返すことを前提に、文面を短くし、差し込む箇所をゼロにしておくと、そのまま送れます。当日に使うひな形だけを別にまとめておくと、探す時間も消えます。
会場が分からないという連絡への文面は、次のような形になります。
ご連絡ありがとうございます。会場は〇〇ビルの〇階です。1階の〇〇が目印で、そこを入って正面のエレベーターをお使いください。受付は〇階を出てすぐ左手にございます。お困りの際は本メールにご返信いただくか、〇〇までお電話ください。
目印を一つ入れておくと、地図を送るより早く伝わります。会場ごとにこの一行を用意しておけば、当日は会場名を選んで送るだけで済みます。
オンラインで入室できないという連絡には、確認してほしい点を絞って書きます。案内メールに記載した入室用の情報がどれか、名前の入力を求められていないか、別の会議に接続していないか。三つ以上並べると当日は読まれないので、実際に多い原因の上から二つに絞るのが現実的です。それでも解決しない場合の連絡先を最後に書いておきます。
複数人で返すときに決めておくこと
返信する人が二人以上になると、ひな形だけでは足りなくなります。誰が返すのか、いつまでに返すのか、返せない内容をどう回すのか。この三つを決めておかないと、ひな形で短縮した時間が別のところで消えます。
一次返信の期限を決める
問い合わせが届いてから最初の返信までの時間は、決めておくと運用が安定します。営業日の何時間以内、という形で決めるのが一般的ですが、セミナーの受付では開催日との距離によって必要な速さが変わります。開催の1か月前に届いた質問と、前日に届いた質問では、求められる速さが違います。
現実的な決め方は、通常は翌営業日まで、開催の1週間前を切ったら当日中、当日は可能な限り速く、という三段階です。すべてを同じ基準にすると、忙しい時期に守れなくなり、基準そのものが形骸化します。
内容で答えられないときの回し方
参加費の扱い、請求の様式、登壇内容の詳細。事務局の担当が即答できない問い合わせは必ずあります。このとき、調べてから返そうとすると返信が止まります。止まった問い合わせは、忘れられます。
回し方としては、まず届いたことと、いつまでに回答するかだけを先に返します。そのうえで、社内の誰に確認するかを決めます。「経理に確認します」で止めず、誰に、いつまでに、という形にしておくと、返ってこないときに追える状態になります。一次返信のひな形に、この形を組み込んでおくと迷いません。
誰が担当かを一覧で持つ
複数人で返す運用では、担当の割り振りが最大の論点になります。届いた順に手の空いた人が取る形は、速いように見えて、同じ問い合わせに二人が着手する事故を生みます。一件ごとに担当を決め、その担当が一覧から見えるようにしておくと、この事故は起きません。
担当を決める基準も先に置きます。回ごとに分ける、内容の種類で分ける、時間帯で分ける。どれでも構いませんが、決めていないと毎回その場で相談することになり、その相談が返信より時間を食います。
開催後の案内は、返信のひな形と分けて考える
問い合わせへの返信と、開催後に送る案内は、性質が違います。混ぜて設計すると、思わぬところで問題になります。
総務省が所管する法律には、次の定めがあります。
送信者は、次に掲げる者以外の者に対し、特定電子メールの送信をしてはならない。 出典: www.soumu.go.jp
問い合わせへの返信は、相手から連絡が来たことに対する応答です。一方、開催後に一斉に送る次回の案内は、広告や宣伝を含むなら扱いが変わります。どこからが該当するのかの判断は所管の窓口や専門家に確かめてください。運用として押さえておきたいのは、返信のひな形の中に営業的な案内を混ぜ込むと、返信なのか案内なのかが曖昧になる、という点です。
実務的には、返信のひな形には次回の情報を受け取る方法を一行で書くにとどめ、案内そのものは同意を得た相手にだけ別に送る形が扱いやすくなります。申し込みの時点で案内の受け取りに関する項目を分けておけば、送る対象を機械的に絞れます。集める項目と送る対象を紐づける仕組みはできることにまとまっています。
ひな形が使われなくなる理由と、その直し方
ひな形を作っても、数か月後には誰も使っていないという状態になりがちです。原因はだいたい三つです。
置き場所が分からない
文書ファイルにまとめて共有フォルダに置く、という形が最も多く取られますが、返信するときに開くのは受信箱です。返信画面から別のフォルダを開き、目的のひな形を探し、コピーして貼り付け、書き換える。この動作が面倒だと、慣れた人は自分で打ってしまいます。
返信する場所とひな形の置き場所が同じであれば、この問題は消えます。逆に離れているほど、使われる率は下がります。ひな形が使われていないと感じたら、文面の出来を疑う前に、返信の場所からの距離を確かめます。
ひな形の数が増えるほど、探す時間も増えます。二十も三十も並んでいると、目的のものを見つけるより自分で打つほうが速くなります。数を絞ることは、質を上げることと同じくらい重要です。使われていないひな形は消して構いません。残っているだけで、探すときの邪魔になります。
古い情報が残っている
前の回の日程、変更前の会場、改定前の金額。一度でも古い情報のまま送信してしまうと、そのひな形への信頼が失われ、使われなくなります。防ぐには、日付や金額を文面に埋め込まず、差し込む箇所として明示しておくことです。
見直す時期も決めておきます。回ごとに見直すのが理想ですが、続かないなら、告知ページを更新したときに合わせて見る、という契機に紐づけるほうが確実です。作業として組み込まれていない見直しは、実行されないと考えて設計します。
金額や会場のように回ごとに変わる情報は、ひな形の中に書かず、告知ページを見てもらう形にする手もあります。「詳細は告知ページをご確認ください」で済ませられる項目と、返信の中に書いたほうが親切な項目を分けておくと、書き換える箇所が減ります。ただし、告知ページを見てくださいと書くだけの返信は、相手にとって手間が増えるので、重要な項目は返信の中に書きます。
誰が返したかが残らない
ひな形の問題ではありませんが、返信の記録が残らない運用では、ひな形の効果も測れません。返信したかどうかが表に残らないと、二重返信と返し忘れは必ず起きます。事務局が複数人いる回では、同じ問い合わせに二人が別々の内容で返してしまう事故が起きます。
一度この事故が起きると、返信の前に「これ返しましたか」という社内の確認が挟まるようになり、ひな形で短縮した時間がそこで消えます。送信されたあとの道具がそろっている形にできると、ひな形と返信の記録が同じ場所に並びます。
いま使っている道具のままで足りるかを見極める
替えなくてよい場合を先に置きます。問い合わせが月に数件で、返信する人が一人なら、文書ファイルにひな形をまとめておくだけで足ります。共有の必要も、記録の必要もありません。この規模で仕組みを増やすと、管理の手間だけが増えます。
条件が変わるのは、返信する人が二人以上になったときと、複数の回を並行して募集するようになったときです。誰がどこまで返したか、どの回の話なのか、この二つを頭の中で管理できなくなります。広く使われているフォーム作成ツールは、集める部分については十分な機能を持っていますが、返信の記録が残るかどうかは別の話になります。どこまでが得意で、どこから手当てが要るのかはGoogleフォームとの比較に整理されています。
判断のために見る場所は三つです。返信したかどうかが一覧に残るか。ひな形が返信する画面のすぐそばにあるか。問い合わせと申し込みが同じ場所で見られるか。この三つがそろっていれば、ひな形は使われ続けます。仕様を読み比べるより、申し込みが届いてから返信するまでの動きを一度なぞるほうが早いので、実際の画面は動くところを見るから確かめられます。費用の見当を先に付けたい場合は料金を見ておくと、比較の土俵がそろいます。
最初にやることは、直近1か月に返した問い合わせを型ごとに数えることです。空き状況が何件、支払いが何件、変更が何件、キャンセルが何件。数えると、上位の三つか四つで全体の大半を占めていることが分かります。その三つか四つだけひな形を作れば、返信に掛かる時間の大半が短くなります。全部の型を網羅しようとすると、作るだけで終わって使われません。
あわせて数えたいのが、一件あたりの往復の回数です。空き状況の質問が平均で2往復掛かっているなら、初回の返信で次の動きを書き切れていないということです。往復が多い型から順にひな形を直すと、効果が見えやすくなります。件数だけを見て多い型から手を付けると、実は一往復で終わっている型に手間を掛けることになりかねません。
もう一つ有効なのは、返信を書くのに時間が掛かった問い合わせを記録しておくことです。時間が掛かる型は、判断が要る型か、社内の確認が要る型のどちらかです。前者はひな形で解決できますが、後者は確認の道筋を決めないと短くなりません。手を付ける先を間違えないためにも、この区別は先に付けておきます。
告知の書き方を直すことで、そもそも問い合わせを減らせる場合もあります。同じ質問が繰り返し届いているなら、告知ページにその答えが書かれていないか、書かれていても見つけにくい場所にあります。ひな形を作りながら、その内容を告知ページにも反映していくと、返信の件数そのものが減っていきます。
Q1. ひな形はいくつ用意すればよいですか?
直近1か月の問い合わせを型ごとに数えて、上位の三つか四つから作るのが実務的です。多くのセミナーでは、空き状況、支払い方法、変更とキャンセル、当日の連絡で全体の大半を占めます。最初から網羅しようとすると、作る作業だけで終わって使われません。使いながら足りない型が見つかったら、その都度足していくほうが、結果として使われるひな形が残ります。
Q2. 返信のひな形をそのまま送ると、機械的な印象になりませんか?
宛名と、相手が書いてきた内容への一言を足すだけで印象は変わります。ひな形の役割は文面を考える時間を省くことで、まったく手を入れずに送ることではありません。むしろ、毎回ゼロから書くと、忙しい日ほど文面が雑になります。骨格が決まっていれば、相手ごとに足す部分に時間を使えるので、全体としては丁寧な返信になります。
Q3. 断る返信には何を書けばよいですか?
応えられないという事実、その理由、代わりにできることの三つを入れます。理由を書かずに断ると、なぜ駄目なのかを尋ねる返信が来て往復が増えます。代わりにできることを書かないと、そこで関係が終わります。次回の案内を受け取る方法や、公開している資料の案内を添えておくと、今回は断った相手が次の回の参加者になります。
Q4. 当日の連絡用のひな形は分けたほうがよいですか?
分けたほうが使われます。当日はスマートフォンから返すことになり、長い文面や差し込みの多い文面は現実的に使えません。当日用は短く、差し込む箇所をゼロにして、そのまま送れる形にしておきます。遅刻、会場が分からない、接続できないの三つを用意しておけば、当日に届く連絡の大半に対応できます。
Q5. 返信の記録は、どこまで残す必要がありますか?
最低限、誰がいつ返したかが分かれば、二重返信と返し忘れは防げます。返信の全文まで残せると、担当が変わったときに経緯を追えるので、引き継ぎが楽になります。個人のメールボックスにしか記録が無い状態は、その担当が休んだ日に受付が止まる原因になります。問い合わせと申し込みが同じ場所で見られる形にしておくと、探す時間もあわせて消えます。
