NPOの事務局で個人情報の話になると、たいてい話題は「漏らさないためにどうするか」に向かいます。鍵のかかる棚、パスワード、持ち出しの禁止。もちろんどれも要ります。ただ、事務局が実際に困っている場所はそこではありません。困るのは、集めたときに取った同意の範囲が狭すぎて、あとからやりたいことができなくなる場面です。
会報を送りたいが、送ってよいと言われていない。年次報告に寄付者の名前を載せたいが、載せてよいか確認していない。共催のイベントの案内を出したいが、他の団体に名簿を渡してよいのか分からない。どれも、集めるときに一行足しておけば済んだ話です。
この記事では、参加と寄付の申し込みを受け付けているNPOが、集めた個人情報をどう保管し、同意をどこまで取っておけばよいのかを、事務局の動きに沿って整理します。法律の解釈を断定することはしません。判断の分かれる場面では、所管の窓口や専門家に確かめてください。
NPOが集めている個人情報は、想像より広い
名簿が、用途ごとに勝手に増える
団体を数年運営していると、名簿の数が自然に増えます。書き出してみると、たいていの団体で次のようなものが同時に存在しています。
・正会員と賛助会員の名簿 ・寄付をした人の記録 ・ボランティアとして登録した人の一覧 ・イベントごとの参加申し込みの記録 ・講座の受講申し込みの記録 ・会報やメールの配信先の一覧 ・問い合わせをしてきた人のやり取りの履歴
これらは別々の場面で、別々の様式で集まっています。表計算のファイルであることもあれば、紙の申込書のままであることもあり、メールの受信箱にしか残っていないこともあります。同じ人が三つの名簿に載っていて、住所がそれぞれ違う、ということが普通に起きます。
さらに困るのが、これらの名簿がいつ何のために集められたのかを、いまの担当者が知らない場合です。前の担当者が作った表を引き継いで、そのまま使い続けている。この状態だと、その名簿に載っている人が何に同意したのかを誰も答えられません。
寄付者の情報は、保管が長くなる
寄付の受付には、参加の申し込みとは違う事情があります。継続的な関係を前提にしている点と、金銭が動いている点です。
継続的な関係というのは、一度きりの寄付であっても、その後に活動の報告を届け、次の呼びかけをする流れがあるということです。つまり、集めた時点から先も使い続けます。イベントの参加者名簿のように、終わったら役目が終わるものとは性質が違います。
金銭が動いているというのは、団体の会計処理と、寄付者側の税の手続きの両方に関わるということです。寄付をした人が控除を受けるための証明を発行するなら、住所と氏名の正確さが要りますし、団体側の帳簿にも記録が残ります。帳簿や書類の保存については所轄の定めがあるため、団体としての保存年限は国税庁の案内などで確かめたうえで決めることになります。
つまり、寄付者の情報は「使い終わったから消す」と単純には言えません。だからこそ、集めるときに何に使うのかを幅を持たせて伝えておく必要があります。
受益者と相談者の情報は、扱いが別になる
活動の分野によっては、支援の対象になっている人の情報を扱います。生活の困りごとの相談、こどもの居場所づくり、障害のある人の就労支援、外国にルーツのある人への日本語支援。これらの現場では、健康や境遇に関わる情報が自然に集まります。
個人情報の保護に関する法律は、こうした情報について通常より厳しい取り扱いを定めています。
個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない。 出典: 個人情報保護委員会
現場で気をつけたいのは、この種の情報が申し込みフォームの自由記述欄に流れ込んでくることです。イベントの参加申し込みに「配慮してほしいことがあればお書きください」という欄を置くと、そこに病名や家庭の事情が書かれます。書いてもらうこと自体は必要なのですが、その欄に入った内容が、参加者名簿と同じ場所に、同じ人数から見える状態で残ることまでは想定されていません。
自由記述欄を置くなら、そこに書かれたものを誰が見るのか、いつ消すのかを、置く前に決めておくべきです。
名簿が紙と表計算に二重で存在する
もう一つ、事務局でよく起きているのが二重管理です。紙の申込書がファイルに綴じてあり、同じ内容が表計算にも入力されている。片方だけが更新され、片方が古いまま残ります。
問題は、どちらが正しいのかを誰も決めていないことです。住所変更の連絡が来て表計算だけ直せば、紙は古いままです。次に紙を見た人が古い住所で発送します。届かず戻ってきて、原因を探すところからやり直しになります。
さらに、紙は消すのが難しい形です。表計算なら行を消せば済みますが、紙は綴じてある束から一枚だけ抜くことになり、実際にはやりません。結果として、退会した人の申込書が何年も残ります。二重管理は手間が二倍になるだけでなく、削除の実行を難しくします。
同意は「取るか取らないか」ではなく「いつ何に取るか」
利用目的を先に決めないと、同意文が書けない
同意の文言をどう書けばよいか、という相談は多いのですが、順番が逆です。文言は、利用目的が決まっていれば自然に書けます。決まっていないから書けないのです。
法律は、まず利用目的を定めることを求めています。
個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用目的をできる限り特定しなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
団体の場合、書き出すと目的はそう多くありません。参加の連絡をする。会費や寄付の処理をする。会報と活動報告を送る。次の募集を案内する。行政や助成元への報告に集計として使う。活動報告に写真や名前を載せる。おおむねこの範囲です。
大事なのは、思いつく順に並べるのではなく、いま実際にやっていることを全部書き出すことです。すでにやっているのに書き出されていない目的があると、そこが同意の抜けになります。
取得の時点で伝えるべきこと
利用目的が固まったら、それを集めるときに伝えます。法律は次のように定めています。
個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
実務としては、申し込みの画面か用紙に、利用目的を書いた文をひとまとまり置き、そこにチェックを一つ入れてもらう形が最も回ります。長い規約への同意を求めるより、その申し込みで何に使うのかを数行で書くほうが、読まれます。
ここで欲張らないことです。項目を細かく分けて、それぞれにチェックを求める形にすると、送信までの手間が増えて途中でやめる人が出ます。参加や寄付の申し込みは、思い立った瞬間の勢いで進むので、手間が一つ増えるごとに脱落します。申し込みの入り口で何をどこまで聞くかの考え方は問い合わせの受付にも整理があり、項目の絞り方の参考になります。
あとから使い道が増えたときに詰まる
同意で最も詰まるのは、あとから使い道が増えたときです。
イベントの参加者に、次のイベントの案内を出したい。会員向けに始めた講座を、過去の寄付者にも案内したい。年次報告を作るのに、過去の参加者の写真を使いたい。どれも自然な発想ですが、集めたときの目的にそれが入っていなければ、そのままは使えません。
対処は二つに一つです。集める時点で、あらかじめ幅を持たせて目的を書いておくか、必要になった時点で本人に改めて確認するか。前者は現実的ですが、書きすぎると「何に使われるか分からない」という印象を与えます。後者は丁寧ですが、過去の全員に連絡する手間がかかり、連絡先が古くなっていると届きません。
現実的な落としどころは、活動を続けるうえで確実に発生することは最初から書いておき、迷う内容は都度確認する形です。会報の送付、次の募集の案内、活動報告への集計としての利用。この三つは最初から書いておいて困ることが少ない項目です。
未成年から申し込みが来る場面を先に決めておく
こどもや学生が関わる活動をしている団体では、申し込み者が未成年である場面が普通に発生します。高校生のボランティア、学習支援の利用申し込み、こども向けイベントへの参加。
このとき、同意を誰から取るのかという問題が出ます。実務では、保護者の同意を別途もらう形にしている団体が多いはずですが、その運用が申し込みの入り口に反映されていないことがよくあります。フォームは本人が入力し、保護者の同意書は後から紙で提出、という流れになり、二つの書類が別々の場所に残ります。
先に決めておくべきは三つです。何歳から本人だけで申し込めるとするか。保護者の同意をどの形で受け取るか。本人の連絡先と保護者の連絡先を両方持つのか、片方だけにするのか。決めていないと、当日になって緊急の連絡先が分からない、という事態が起きます。
実務で同意が要る場面を、団体の動きに沿って並べる
会報とお礼状を送る
寄付や入会をした人に、お礼と報告を送る。これは団体の基本の動きですが、送付先として住所を使うことが目的に入っていなければ、根拠が曖昧になります。
あわせて決めておきたいのが、送るのをやめる方法です。案内の末尾に、配信を止めたいときの連絡先を書いておく。この一行があるかないかで、事務局に届く苦情の数が変わります。止め方が書いていないと、止めたい人は団体に不信を持ちます。
活動報告に写真と名前を載せる
年次報告や通信に、イベントの写真を載せる。寄付者の氏名を掲載する。どちらも団体としては当たり前の活動ですが、本人から見れば公表です。
写真については、撮影の場で口頭の許可を取っていても、報告書を作る段階では誰に許可を取ったのかが分かりません。参加の申し込みの時点で、撮影と掲載の可否を一項目として聞いておくのが確実です。可否を申し込みの記録に残しておけば、写真を選ぶときに突き合わせられます。
寄付者名の掲載は、より慎重に扱う場面です。掲載を望まない人は一定数います。申し込みの時点で、掲載してよいか、匿名にするか、団体名で載せるかを選べる形にしておくと、あとから問い合わせる手間がなくなります。
他の団体と共催する
共催のイベントで、参加者の名簿を相手の団体と共有する。これは第三者への提供にあたる場面です。法律は次のように定めています。
個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。 出典: 個人情報保護委員会
共催は、企画が動き出してから決まることが多く、参加の受付を始めてから相手が増えることもあります。そうなると、先に集めた人の同意が足りません。共催の可能性がある事業では、募集の段階で共催団体との共有の有無を書いておくのが実務的です。
外部に作業を頼む
会報の宛名の印刷と発送を業者に頼む。会計を事務所に見てもらう。名簿の入力を外部に手伝ってもらう。これらは第三者への提供ではなく、委託として扱われる場面ですが、頼んだあとが放置されがちです。
個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
事務局として現実的にできるのは、渡した相手と渡した中身と渡した日を記録すること、作業が終わったらデータを消してもらうことを最初に取り決めておくことの二つです。渡しっぱなしになっている表が、相手の手元に何年も残っている状態が、いちばん把握しづらい形です。
渡し方も決めておいてください。名簿を表計算のファイルにしてメールに添付する形は、送信の履歴と、相手の受信箱と、相手のパソコンの三か所に複製を作ります。そのうえ、宛先を打ち間違えれば別の人に届きます。渡すたびに複製が増える形は、消す作業も同じ数だけ必要になります。
助成元や行政への報告に使う
助成金を受けている事業では、報告に参加者数や属性の集計を出します。ここは個人を特定しない集計として出す場面が大半ですが、団体によっては参加者名簿の提出を求められることがあります。
求められたときに困らないよう、報告に使う可能性があることを利用目的に入れておくのが安全です。そのうえで、実際に提出するときは、求められている範囲を確かめてください。集計で足りるところに名簿を出す必要はありません。過剰に出す形が習慣化すると、団体の側で何を渡したか分からなくなります。
保管の決め方は、期間と置き場所と持ち出しの三つ
期間を決めていないと、永久保存になる
法律に一律の保存期間の定めはなく、団体で決めることになります。ここで多くの団体が止まります。決められないので、消さないまま残ります。
決め方は難しく考えなくてよく、名簿ごとに役目が終わる時点を書き出すだけです。イベントの参加者名簿は、その事業年度の報告が終わったら消す。問い合わせのやり取りは、対応が終わってから一定の期間が過ぎたら消す。退会した会員の情報は、会計処理と所轄への報告に必要な範囲を残して消す。
期間の長さそのものより、期間を決めて実行に移せる形になっているかどうかが問題です。法律も、必要がなくなったデータについて次のように定めています。
個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
削除を実行するには、どこに何があるかが分かっている必要があります。表計算のファイルが複数の端末に散っている状態だと、消したつもりでもどこかに残ります。期間を決める作業と、置き場所を寄せる作業は、セットでやらないと片方だけでは効きません。
期間を決めたら、消す作業を誰かの仕事にする
期間を決めても、消す作業が誰の仕事か決まっていなければ実行されません。ここまで決めて、ようやく運用になります。
やり方は単純で、月に一度、決めた期間を過ぎたものを見て消す時間を作るだけです。事務局の定例の中に組み込みます。五分で終わる作業ですが、思い出したときにやる形にすると一度もやらずに終わります。
消した記録も残してください。いつ、どの範囲を消したか。この記録があると、後から「あの人の情報はまだあるか」と聞かれたときに答えられます。記録がないと、探して見つからなかっただけなのか、消したから無いのかが区別できません。
消す作業を続けている団体は、そもそも持っている情報が少なくなります。持っている量が減れば、事故が起きたときの影響も小さくなります。守りを固めるより、持たないほうが確実です。
置き場所を一つに寄せる
事務局に長く関わっている人ほど、手元に写しが溜まります。作業のために書き出した表、印刷した名簿、メールに添付して送った控え。悪意はなく、その時々の作業のために作られたものです。
これを減らすには、原本がどこにあるのかを一つに決めるしかありません。原本が決まっていないと、誰も自分の手元の写しを捨てられません。逆に、正しい情報が必ずそこにある場所が決まっていれば、写しを持つ理由が消えます。
無料のフォームと表計算で受け付けている団体では、この「原本の場所」があいまいになりがちです。回答の表があり、そこから抜き出した作業用の表があり、名簿の表があり、どれが最新なのかは作った人しか知りません。表計算の運用がどこで限界になるのかはGoogleフォームとの比較に整理があり、置き場所を寄せる判断の材料になります。
紙の名簿の置き場も決める
画面の中の話だけで終わらせないでください。多くの団体では、紙の申込書と名簿が事務所に残っています。
決めることは三つです。どこに置くか、鍵をかけるか、誰が持ち出してよいか。事務所を他の団体と共有している場合や、公共の施設の一角を借りている場合は、この三つの重みが変わります。
紙は複製が作りにくい代わりに、置き忘れと紛失に弱い形です。イベントの会場に持っていった参加者名簿が、片付けのときに紛れて行方不明になる。これは実際によく起きます。持ち出す紙は、必要な項目だけを印刷したものにしておくと、紛失したときの影響が小さくなります。
持ち出しをどう扱うか
NPOの事務は、事務所の外で進むことがあります。自宅で名簿を入力する、イベント会場に参加者一覧を持っていく、移動中に端末で問い合わせを見る。禁止すれば済む話ではありません。禁止すると、事務が止まるか、隠れて続くかのどちらかです。
現実的なのは、持ち出す形を決めることです。紙の名簿を会場に持っていくなら、当日必要な項目だけを印刷したものにする。連絡先の全部を載せた一覧を持ち歩かない。事務作業を外でやるなら、手元にファイルを落とさず、その場で見る形にする。
見る形にできるかどうかは、使っている道具で決まります。ファイルをやり取りする前提の道具だと、必ず手元に写しが残ります。画面で見る前提の道具なら、写しが増えません。持ち出しの管理は、規則より仕組みで解いたほうが続きます。
情報を減らす方向の見直しは、事務局の作業も同時に減らします。集める項目が減り、確認する項目が減り、消す対象も減る。守る手間と回す手間は、たいてい同じ方向に動きます。
削除と訂正の求めに、どう応じるか
会員や寄付者から「登録を消してほしい」「住所が変わったので直してほしい」という連絡が来ます。ここで事務局が困るのは、その人の情報がどこに載っているのかを把握していないからです。
会員名簿から消しても、過去のイベントの参加者一覧に残り、会報の宛名の表にも残り、前の担当者が作った作業用の表にも残る。次の会報が届いて、本人から再び連絡が来ます。
これを防ぐには、受け付ける時点から情報を一か所に置いておくしかありません。あとから統合するのは、実務的にはかなり難しい作業です。逆に言えば、これから受け付けるぶんについて一か所に集める形にしておけば、時間が経つほど楽になります。
対応の記録も残しておいてください。いつ、誰から、何の求めがあり、どう対応したか。この記録が無いと、同じ求めが繰り返されたときに前回の対応が分かりません。
退会と配信停止は、別の求めとして扱う
事務局が混同しやすいのが、退会と配信停止です。会員をやめたい人と、案内が多いので減らしたい人は、別のことを言っています。
配信を止めたいだけの人の会員登録を消してしまうと、その人は会員としての権利を失います。逆に、退会したいと言っている人の配信だけ止めて登録を残すと、会費の請求が続きます。どちらも、団体への信頼を直接損ないます。
防ぐには、受け付ける側で二つを分けて聞くことです。連絡が来たときに、どちらの意味かを確かめてから処理する。そして、処理した内容を記録に残す。この二つで、ほとんどの行き違いは消えます。
求めに応じるまでの目安を決めておく
削除や訂正の連絡が来てから、実際に処理するまでの日数を決めていない団体は多いはずです。事務局が週に数日しか動いていない団体では、連絡が来てから処理まで二週間かかることもあります。
問題は、その間に会報が発送されてしまう場面です。本人は連絡したつもりなのに届きます。目安を決めておき、受け付けた時点でいったん発送の対象から外す運用にしておくと、この行き違いを防げます。処理が終わるまでの間だけ止める仕組みがあるかどうかは、道具を選ぶときの確認点にもなります。
受付の入り口が、そのまま同意の記録の置き場になる
同意は文言ではなく記録で残る
同意について事務局が最終的に必要とするのは、立派な文言ではありません。誰が、いつ、何に同意したのかという記録です。
紙の申込書で受けている場合、その記録は紙の束の中にあります。探せば出てきますが、写真の掲載可否を確認するために段ボールを開けることは、実際にはやりません。だから確認が省かれます。省かれた確認は、後で問題になります。
申し込みの受付を画面で行っていれば、同意の可否は申し込みの記録の一部として一緒に残ります。写真を選ぶとき、会報を送るとき、寄付者名を載せるときに、その場で突き合わせられます。送信されたあとを回す道具がそろっているかどうかは、ここで効いてきます。
項目を増やす前に、目的から引く
受付の項目を設計するとき、迷ったら足す、という作り方をすると項目が増え続けます。増えた項目は、集めたあと誰も見ません。見ない情報を持つことは、団体にとって負担にしかなりません。
引き算の基準は単純で、その項目が上で書き出した利用目的のどれかに直接ひも付くかどうかです。ひも付かない項目は落とします。生年月日を集めているが、実際には年齢層の集計にしか使っていないなら、年代を選ぶ形で足ります。勤務先を聞いているが名簿に入れているだけなら、聞く必要がありません。
項目を落とすと、申し込みが増えることがあります。入力の手間が減るからです。減らした項目のぶんだけ、団体が管理する情報も減ります。守るものが減り、申し込みが増える。この二つが同じ方向に働く場面は多くないので、見直す価値があります。
会員の入会と、イベントの参加と、寄付の申し込みでは、必要な項目も残す期間も違います。場面ごとに分けて考えたい場合は会員の入会申し込みやイベントの申し込みにそれぞれの整理があり、項目を引くときの基準になります。
誰が見られるかを、役割で決める
同意と保管の話は、最終的に「誰が見られるか」に行き着きます。ここを人ではなく役割で決めておくと、交代のたびに設定をやり直さずに済みます。
参加の受付を見る役割、寄付の記録を見る役割、相談の内容を見る役割。この三つを分けておくだけで、事務局の大半の場面は足ります。全員が全部を見られる状態は、便利ですが、辞めた人がいつまで見られるのかを把握できない状態でもあります。
共有のアドレスとパスワードを回している団体では、この把握が特に難しくなります。パスワードを変えれば全員が入れなくなるので、変えられません。結果として、何年も同じパスワードが使われ続けます。役割ごとに入り口を分けられる形にしておくと、抜けた人のぶんだけを止められます。どこまで分けられるかは道具によって違うため、できることのような機能の一覧で、権限の分け方を先に確かめておくとよいでしょう。
決めた内容は、公開する場所に置く
最後に、決めた利用目的と保管の方針は、団体のサイトに置いてください。申し込みの画面から見に行ける場所に置くことが大事です。
置いておく効用は二つあります。一つは、取得のたびに長い文言を読ませなくて済むこと。もう一つは、担当が代わったときに、団体としての決めごとが引き継がれることです。前の担当者の頭の中にしかない方針は、引き継がれません。
書く内容は多くなくてかまいません。何を集めているか、何に使うか、誰に渡すことがあるか、どれくらいの期間持つか、消してほしいときの連絡先。この五つが書いてあれば、申し込む側が知りたいことはおおむね埋まります。他団体の文面をそのまま写すと、実際にやっていないことまで書いてしまうので、自分の団体の動きに合わせて書き直してください。
更新の時期も決めておくと続きます。事業の内容が変われば、集める情報も使い道も変わります。年次の総会に合わせて見直す、といった形で定例に組み込んでおけば、何年も前の内容が残り続ける事態を避けられます。
個人情報の扱いは、事故を防ぐための守りの作業に見えますが、実務としてはむしろ、活動を止めないための準備です。同意が取れているから写真が使え、目的を書いてあるから会報が送れ、期間が決まっているから消せる。集めるときに決めておく手間は、あとで確認して回る手間より、はるかに小さく済みます。
手を付ける順番も決まっています。まず、いま実際にやっていることを利用目的として全部書き出す。次に、これから受け付けるぶんについて、その目的を伝えたうえで一か所に集める形にする。最後に、名簿ごとの保存期間を決めて、削除を定例の作業に組み込む。過去に集めたぶんの整理は最後で構いません。先に入り口を直しておけば、時間が経つほど整理の対象は減っていきます。逆に、入り口を直さないまま過去の整理から始めると、整理している間に同じ形の記録が増え続けます。
Q1. 参加や寄付の申し込みで、同意はどこまで細かく取ればよいですか?
チェック項目を細かく分けるほど丁寧に見えますが、送信までの手間が増えて途中でやめる人が出ます。実務的には、利用目的を数行にまとめて一か所で同意を取り、写真の掲載可否や寄付者名の公表のように本人によって答えが分かれる項目だけを別に聞く形が回ります。判断に迷う場面では所管の窓口や専門家に確かめてください。
Q2. あとから使い道が増えたとき、過去の名簿はそのまま使えますか?
集めたときの利用目的に入っていなければ、そのままは使えません。対処は、必要になった時点で本人に改めて確認するか、次に集めるときから目的を広げて書いておくかのどちらかです。会報の送付、次の募集の案内、集計としての利用の三つは、最初から書いておいて困ることが少ない項目です。
Q3. イベントの写真を活動報告に載せるとき、何を確認しておけばよいですか?
撮影の場で口頭の許可を取っていても、報告書を作る段階では誰に許可を取ったのかが分かりません。参加の申し込みの時点で撮影と掲載の可否を一項目として聞き、その可否を申し込みの記録に残しておくと、写真を選ぶときに突き合わせられます。可否が写真とは別の場所にあると、確認そのものが省かれます。
Q4. 集めた名簿は、いつまで保管しておけばよいですか?
法律に一律の期間の定めはなく、団体で決めることになります。名簿ごとに役目が終わる時点を書き出すのが決め方の基本です。ただし寄付の記録は会計と税の手続きに関わるため、帳簿書類の保存年限を確かめたうえで決めてください。期間を決めていないと事実上の永久保存になります。
Q5. 会報の発送や名簿の入力を外部に頼むときは、何をしておけばよいですか?
渡した相手と中身と日付を記録し、作業が終わったらデータを消してもらうことを最初に取り決めておいてください。法律は、委託先に対する必要かつ適切な監督を求めています。渡しっぱなしになった表が相手の手元に何年も残っている状態が、団体としていちばん把握しづらい形になります。
