NPOの事務局に「今月の問い合わせは何件でしたか」と聞くと、正確に答えられる団体は多くありません。参加の申し込みはフォームから、寄付の相談はメールで、活動への質問は電話で、当日の連絡は公式アカウントで届いていて、どこにも合計が存在しないからです。
数えていないと、事務局が忙しい理由を説明できません。人を増やしたい、当番を変えたい、返信の仕組みを直したい。どれも「なんとなく忙しい」では通りません。そして何より、取りこぼしている場面が見えません。
この記事では、参加と寄付の申し込みを受け付けているNPOが、問い合わせの件数をどう数えれば実務が変わるのかを整理します。数えるべき指標を六つに絞り、手作業にしない数え方を示し、数字が出たあとに何を変えるかまでを順に並べます。
事務局が忙しいと感じている場所は、実際とずれる
体感は、直近と強い印象に引っ張られる
事務局の担当者に「どの曜日が忙しいですか」と聞くと、たいてい月曜という答えが返ってきます。実際に届いている件数を数えると、月曜が飛び抜けて多いわけではないことがよくあります。
月曜が重いのは、届く量が多いからではなく、土日に届いたぶんが溜まっているからです。届いた曜日で数えれば土日に分散していますが、処理する曜日で数えると月曜に集中します。この二つを分けずに見ていると、対策を間違えます。人を月曜に増やす対策では、土日に届いた人が二日待つ問題は解決しません。
同じことが時間帯でも起きます。夕方に問い合わせが多いと感じていても、実際には夜間に届いていて、翌朝に事務局が開くときにまとめて見えているだけ、という場合があります。
体感が狂うもう一つの理由が、重い一件の存在です。対応に三時間かかった相談が一件あると、その週は忙しかったと記憶されます。実際には件数が少ない週だったかもしれません。件数と、かかった時間は別の指標です。混ぜて記憶すると、どちらの対策を打てばよいのか分からなくなります。
忙しさの正体が、件数ではないことがある
数えてみると、件数はそれほど多くないのに事務局が回っていない、という結果が出ることがあります。
このとき原因は件数ではなく、一件あたりの往復の数にあります。最初の返信で必要なことが伝わっておらず、質問が返ってきて、答えて、また質問が来る。一件で四往復も五往復もしていれば、件数が少なくても時間は溶けます。
往復の数を数えると、これが見えます。多くの往復が発生している種類の問い合わせが特定できれば、案内の書き方か、最初の返信の中身を直せば済みます。人を増やす話にする前に、確かめる価値のある数字です。
数えていないと、体制を変える根拠がない
NPOの事務局は、たいてい人手が足りていません。だからこそ、人を増やす、当番を組む、道具を替えるといった判断に根拠が要ります。
理事会や運営の会議で「忙しいので人を増やしたい」と伝えても、判断する側は動けません。何件の問い合わせが、どの時期に、どれくらいの時間をかけて処理されているのかが分からないからです。逆に、月ごとの件数と、返信までにかかっている日数が並んでいれば、話が具体的になります。
そもそも団体には、活動の実績を作成して備え置く義務があります。
特定非営利活動法人は、毎事業年度初めの三月以内に、内閣府令で定めるところにより、前事業年度の事業報告書、活動計算書、貸借対照表及び財産目録並びに年間役員名簿等を作成し、これらを、その作成の日から起算して五年が経過した日を含む事業年度の末日までの間、その事務所に備え置かなければならない。 出典: e-Gov
報告のための集計は、どの団体でも年に一度は発生します。それを年度末にまとめてやるか、日々の受付の中で自動的に溜まる形にしておくかで、事務局の負担がまったく違います。同じ数字なら、後者のほうが安く手に入ります。
NPOの問い合わせは、時期と時間帯に強く偏る
募集の告知の直後に集中する
団体の問い合わせは、平らには届きません。イベントの告知を出した直後、会報を発送した直後、報道や交流サイトで取り上げられた直後に跳ねます。
跳ね方は極端です。普段は週に数件の団体でも、告知の直後の二日間に月の半分の件数が届くことがあります。この二日を捌けるかどうかで、その回の参加者数が決まります。捌けなければ、返信を待っている間に相手の関心が薄れます。
つまり、平均の件数を見ていても意味がありません。見るべきは、いちばん多かった日の件数です。そこに合わせて体制を組めるかどうかが、実務上の問題になります。
年度末と、締切の前
もう一つの偏りが、年度に紐づくものです。
寄付は年末と年度末に集まります。控除の手続きに関わる時期だからです。助成金の応募は、公募の締切の直前に集中します。総会の前には会員からの問い合わせが増えます。ボランティアの申し込みは、長期の休みの前に増える団体が多いはずです。
これらは毎年ほぼ同じ時期に来るので、数えておけば予測できます。予測できれば、その時期だけ手伝いを入れる、返信のひな形を先に用意する、といった準備ができます。準備していない団体は、毎年同じ時期に同じように慌てます。
一年ぶんの記録が溜まると、翌年の計画が立てやすくなります。どの月に何件届くかが分かっていれば、事業の日程をずらす判断もできます。総会と大きなイベントを同じ月に置いていた団体が、記録を見て月をずらす、といった判断はここから出ます。
締切のある受付でどう体制を組むかについては助成金・公募の受付に、集中する時期の受け方の整理があります。
事務局がいない時間に届く
いちばん重要な偏りがこれです。参加や寄付を検討する人が動くのは、仕事や家事が終わったあとです。夜と、土日に届きます。
一方で、事務局が動いているのは平日の昼です。有給の職員がいる団体でも、事務局の開所時間は限られています。週に二日か三日しか開いていない団体も珍しくありません。
この差が、そのまま待ち時間になります。金曜の夜に申し込んだ人は、事務局が火曜に開くなら四日待ちます。四日待っている間に、その人は別の団体の活動に申し込んでいるかもしれません。
事務局の時間を延ばすのは現実的ではないので、対処は別のところにあります。届いた時点で自動的に受付の連絡を出すこと、そして返信を早く出せる形にしておくことです。
連休と長期の休みで、待ち時間が跳ねる
年に数回、待ち時間が極端に伸びる期間があります。年末年始、大型の連休、夏の休み。
厄介なのは、この期間に問い合わせが減るわけではないことです。むしろ、休みだからこそ活動を探す人が動きます。ボランティアを始めたい、こどもと参加できる催しを探したい。そうした問い合わせが、事務局が閉まっている期間にまとまって届きます。
連休明けに受信箱を開くと、十日分が溜まっています。上から順に返していくと、いちばん古い問い合わせを出した人が最も長く待たされます。実際には、古い順から返すのが正しい対応です。ところが受信箱は新しい順に並ぶので、意識しないと新しいものから返すことになります。
期間ごとに何件届いたかを数えておけば、休みに入る前に自動の連絡へ休業の期間を入れておく、という準備ができます。「連休明けの最初の開所日から順にご返信します」と書いてあるだけで、催促の連絡が減ります。
何を数えるか、六つの指標に絞る
数え始めると、指標を増やしたくなります。増やすほど集計が重くなり、続きません。次の六つに絞れば、事務局の判断に必要なことはおおむね分かります。
受付の件数
まず全体の件数です。月ごとと週ごとの両方で持ちます。
月ごとは、前年の同じ月と比べるために使います。週ごとは、告知の効果を見るために使います。月だけで見ていると、告知の直後の跳ね上がりが平均に埋もれて見えなくなります。
経路ごとの件数
フォーム、メール、電話、公式アカウント、当日の会場での申し込み。経路ごとに数えます。
ここを分けると、入り口を減らす判断ができます。ほとんど使われていない入り口があれば、案内から外す。逆に、多くの人が使っている入り口が事務局にとって扱いづらい形なら、そこを直す優先順位が上がります。
電話が多い団体では、電話で聞かれている内容も併せて記録しておくと、案内ページに書き足すべきことが分かります。同じ質問が繰り返し来ているなら、それは案内の不足です。
曜日と時間帯
届いた日時で数えます。処理した日時ではありません。
この二つを取り違えると、上に書いた月曜の錯覚が起きます。届いた日時で数えて初めて、事務局が動いていない時間にどれだけ届いているかが分かります。
夜間と土日に届く割合が全体の半分を超えていれば、それは事務局の時間だけでは受けきれないということです。自動の受付連絡を入れる根拠になります。
初回の返信までにかかった時間
届いてから、最初の返信を出すまでの時間です。これが実務上いちばん効く指標です。
平均で見ると実態が隠れます。多くが即日で返せていても、数件が一週間放置されていれば、平均は良く見えます。放置された数件のほうが、団体の印象を決めます。だから、いちばん遅かった件を見る形にしてください。
遅い件を並べると、傾向が出ます。断りの返信が遅い、判断が要る相談が遅い、担当が決まっていない種類が遅い。どれも、対処の方向が違います。
断りが遅いなら、断りのひな形を用意すれば解決します。判断が要る相談が遅いなら、どこまでを事務局で判断してよいかの線を決めれば解決します。担当が決まっていないなら、種類ごとの担当を決めれば解決します。人を増やす必要があるのは、どれにも当てはまらず、単純に量が多いときだけです。
事務局が何に時間を使っているか
件数だけでは、事務局の負担は測れません。一件あたりにかかる時間が種類によって大きく違うからです。
参加の受付は一件あたり数分で終わりますが、支援を求める相談は一件で一時間かかることがあります。取材の対応や、他団体との連携の相談も長くかかります。件数では前者が圧倒的に多くても、時間では後者が上回ることがあります。
厳密に測る必要はありません。種類ごとに、おおよそ何分かかるかを一度だけ見積もっておけば足ります。件数にその時間を掛けると、事務局に必要な人手が概算で出ます。この概算があると、人手の相談が具体的な話になります。
未対応のまま残っている件数
いま手元に何件残っているか。これは過去の集計ではなく、現在の状態です。
この数が分からない状態が、事務局にとって最も苦しい形です。何件残っているか分からないと、終わりが見えません。逆に、残りが三件と分かっていれば、今日中に終わると判断できます。
残っている件数を数えるには、対応が終わったかどうかが記録されている必要があります。メールの既読では代用できません。誰かが開いた印にしかならないからです。
申し込みから確定までの歩留まり
申し込みが入ったうち、実際に参加や寄付に至った割合です。
途中で止まる場面には、必ず理由があります。書類の提出を求めたところで止まる、参加費の振込で止まる、日程の調整で止まる。どこで止まっているかが分かれば、その一手前を直せます。
止まっている件を放置せず、追いかける仕組みがあるかどうかも、ここで見えます。追いかけていない団体では、申し込みの半分が消えていることもあります。
数えられない件数もある
六つの指標で見えるのは、届いたものだけです。届く前に消えた人は数えられません。
案内のページを開いたが申し込みをやめた人、フォームを途中まで入力してやめた人、電話をかけたがつながらずに切った人。これらは記録に残らないので、事務局からは存在しないことになっています。
完全に測ることはできませんが、間接的に見る方法はあります。案内のページを見た人の数と、申し込みの件数を並べる。電話がつながらなかった時間帯を控えておく。どちらも正確な数ではありませんが、傾向は出ます。届いた件数だけを見ていると、入り口で失っているぶんが永遠に見えません。
数え方を、手作業にしないこと
転記して数える運用は続かない
多くの団体が最初にやるのは、表計算に一件ずつ転記する方法です。日付、名前、経路、内容、対応状況を手で入力する。
これは、始めた月は回ります。二か月目から抜けが出ます。三か月目には、忙しい週のぶんがまるごと空きます。理由は単純で、転記が本来の仕事に足されているからです。忙しいときほど抜けるので、いちばん知りたい繁忙期の数字が欠けます。
数えるための入力を増やすのは、失敗する道です。受け付けた時点で自動的に記録が残る形にして、集計はその記録から出すのが正しい順番です。
無料のフォームと表計算の組み合わせでも、回答は自動で記録されます。ただし、返信したかどうか、対応が終わったかどうかは自動では残りません。そこを手で管理し始めた時点で、上と同じ問題が起きます。表計算の運用がどこで限界になるかはGoogleフォームとの比較に整理があり、集計まで含めて考えるときの判断材料になります。
電話と、その場の申し込みをどう混ぜるか
自動で残らないものが二つあります。電話と、イベント会場での直接の申し込みです。
これを完璧に記録しようとすると破綻します。電話を切ってから入力する手間が、電話に出る負担に上乗せされるからです。現実的なのは、内容の詳細ではなく、件数と大まかな種類だけを残すことです。日付と、参加の問い合わせか寄付の問い合わせかの区別だけでも、経路ごとの割合は出せます。
会場での申し込みは、その場で用紙に書いてもらったぶんを、後日まとめて同じ場所に入れるのが確実です。紙のまま別に保管すると、集計から漏れるだけでなく、返信の対象からも漏れます。
集計の周期は、週で見る
月ごとの集計だけでは遅すぎます。告知の直後の反応も、返信の遅れも、月末に気づいたときにはもう手を打てません。
週に一度、五分で見られる形にしてください。見るのは、その週の件数、最も遅かった返信、残っている未対応の数。この三つだけで、事務局の状態はほぼ把握できます。
年度の報告に使う数字は、週ごとの記録が溜まっていれば自動的に作れます。年度末にまとめて数える作業をなくすことが、集計を続ける最大の動機になります。
見る場を決めておくことも大事です。事務局の朝の打ち合わせ、週に一度の定例、月に一度の運営会議。どこで見るかが決まっていないと、数字は作られても誰も見ません。見られない数字は、そのうち作られなくなります。
数え方の定義を、先に文字にする
集計でいちばん揉めるのは、数え方が人によって違うことです。
同じ人から三通のメールが来たら一件か三件か。電話で問い合わせた人が後日フォームからも申し込んだら、二件か一件か。参加を取りやめた人は件数に含めるのか。これらを決めていないと、担当が代わった瞬間に数字が変わります。
決め方に正解はありません。大事なのは、決めて書き残すことです。書き残しておけば、去年と今年を比べられます。書き残していない数字は、翌年には比較の役に立たなくなります。定義を書く場所は、集計の表と同じ場所が確実です。別のファイルに書くと読まれません。
誰が数えるかを、一人に決める
集計は、全員でやると誰もやりません。週に一度、五分で見る担当を一人決めてください。
その一人がやるのは、数字を作ることではなく、確認することです。数字そのものは受付の記録から自動で出る形にしておき、担当は見て気づいたことを共有する。この分担にしておけば、担当が忙しい週でも数字は溜まり続けます。
数字が出たあと、何を変えるか
当番を、届く時間帯に合わせる
曜日と時間帯の数字が出ると、当番の組み方が変わります。
平日の昼に全員がいて、土日に誰もいない体制で、届く件数の半分が土日に来ているなら、そこを合わせにいきます。土日に事務局を開くのではなく、土日に一人だけ返信を見る当番を置く。二時間だけ見る形でも、待ち時間は二日から数時間に縮みます。
当番を置けない団体でも、月曜の朝に土日ぶんをまとめて返す時間を確保するだけで違います。何も決めていないと、月曜の朝は他の仕事から始まり、土日ぶんは午後まで手つかずになります。
案内のページを、数字に合わせて直す
数字が出ると、案内のページのどこを直すべきかも見えてきます。
問い合わせが多い項目は、案内に書かれていないか、書かれていても見つけにくい場所にあります。参加費の有無、持ち物、雨天のときの扱い、こども連れの可否。同じ質問が月に何件も届いているなら、その質問の数だけ案内の不足が繰り返されています。
案内を直す効果は、問い合わせの件数として跳ね返ります。直した翌月に、その項目の質問が減っているかを見てください。減っていれば直った証拠です。減っていなければ、書いた場所が見つけにくいということです。書き足す位置を変えます。
案内を直すのは、事務局の作業を減らす手としては最も効率がよい部類です。一度書き足せば、その後ずっと効き続けます。返信を速くする工夫は毎回の作業ですが、案内の修正は一度きりで済みます。
自動の受付連絡で、待たせない
届いた時点で自動の受付連絡が出る形にすると、待ち時間の体感が大きく変わります。
相手が不安になるのは、届いたかどうかが分からない時間です。届いたことと、いつまでに返事が来るかが分かっていれば、数日待てます。自動の連絡は、返信の代わりではなく、待ってもらうための連絡です。
ここで気をつけたいのは、自動の連絡を出したことで人が返す返信を省かないことです。自動の連絡だけで終わっている団体は、相手からは無視されたのと同じに見えます。
自動の連絡に書くべきことも、数字から決まります。返信までにかかっている実際の日数を見て、それより少し余裕のある目安を書く。三日で返せているなら一週間以内と書く。実態より短い目安を書くと、守れないたびに信用が減ります。
返信の順番を決めておく
溜まった問い合わせをどの順で返すかを決めていない団体は、目についたものから返します。結果として、いちばん古い件が最後まで残ります。
古い順に返す、締切の近い件を先に返す、断りを先に片付ける。どれを選んでもかまいませんが、決めておくことに意味があります。決まっていないと、返しやすいものから返すことになり、重い件が永久に後回しになります。
未対応の残数を数えていると、この偏りに気づけます。残っている件がいつも同じ種類なら、その種類が後回しにされているということです。
募集の出し方を変える
告知の直後に集中するなら、告知の出し方でならすことができます。
同じ内容を、複数の経路から同じ日に出すと、その日に全部が届きます。日をずらして出せば、事務局が捌ける速度に近づきます。会報の発送日と、交流サイトでの告知日と、他団体への案内の日をずらすだけで、山が低くなります。
申し込みの締切を設けている場合も同じです。締切の当日に半分が届く形になりがちなので、早めに申し込んだ人に何らかの利点がある形にすると分散します。
告知に書く内容も、数字から直せます。同じ質問が繰り返し届いているなら、その答えが告知に書かれていないということです。駐車場の有無、こども連れで参加できるか、途中参加ができるか、服装の指定。どれも告知に一行足せば、問い合わせが丸ごと消えます。事務局にとっては、返信を早くすることより、問い合わせを発生させないことのほうが効きます。
入り口の数を減らす
経路ごとの数字が出ると、入り口を整理できます。
入り口が多いこと自体は悪くありませんが、事務局が全部を見に行く形になっていると、確認だけで時間が消えます。使われていない入り口を案内から外し、残した入り口に届いたものが一か所に集まる形にする。この二段で、確認の手間が大きく減ります。
外す判断のときは、少数でも特定の層だけが使っている入り口に注意してください。件数が少なくても、その入り口でしか届かない相手がいることがあります。数字だけで切ると、その層が丸ごと消えます。
止まっている件を、追いかける
歩留まりの数字が出ると、どこで止まっているかが見えます。書類の提出待ちで止まっている件が多いなら、そこに一度だけ確認の連絡を入れる運用を足します。
追いかける作業は、誰の仕事か決まっていないと実行されません。週に一度、止まっている件を見る時間を決めておくのが実務的です。1回の確認の連絡で戻ってくる件は、想像より多くあります。
集計は、報告のためだけの作業ではない
数えられるかどうかは、受付の形で決まる
集計の話をすると、集計の道具を探しに行きがちですが、順番が違います。数えられるかどうかは、受け付けた時点でどう記録されているかで決まります。
受付がメールの受信箱に散っていれば、どう頑張っても正確には数えられません。逆に、申し込みが一か所に入り、対応の段階が記録されていれば、集計は自動的に出ます。送信されたあとを回す道具がそろっているかどうかが、ここで効いてきます。
つまり、集計のために新しい作業を足すのではなく、受付の形を変えることで集計が付いてくる、という順番になります。実際にどう見えるかを確かめたい場合は動くところを見るから画面を追えます。
数字は、団体の外にも効く
集計した数字は、事務局の判断だけでなく、外への説明にも使えます。
助成金の申請書や報告書には、活動の規模を示す数字が要ります。年間の相談件数、参加者数、問い合わせに対応した件数。これらが日々の記録から出てくれば、申請のたびに数え直す作業が消えます。
会員や寄付者への報告にも使えます。団体がどれだけの人と関わったかを数字で示すことは、活動の実感を伝える一つの方法です。ここで注意したいのは、比較できない数字を並べないことです。数え方が去年と違えば、増えたのか減ったのかが分かりません。数え方を決めて、その定義を書き残しておいてください。
外に出す数字には、もう一つ注意点があります。個人が特定できる形にしないことです。参加者の少ない事業で、属性を細かく分けた集計を出すと、誰のことか分かってしまうことがあります。分けすぎない、少人数の区分はまとめる。報告に載せる前に一度見直してください。
数字が減っていることも、意味のある結果
集計を始めると、件数が減っていることに気づく場合があります。ここで数字を隠したくなりますが、減っていること自体が判断の材料です。
減った原因は、活動の内容が変わった、告知の経路が変わった、案内のページが見つけにくくなった、返信が遅くて評判が落ちた、など複数あります。原因を特定するには、経路ごとの数字を見ます。すべての経路が一様に減っているなら、団体の外の事情である可能性が高い。特定の経路だけ減っているなら、その経路に原因があります。
数えていなければ、この判断そのものができません。減っていることに気づくのは、たいてい取り返しがつかなくなってからです。
数えるのをやめない仕組みにする
集計が続かない団体には共通点があります。数えることが誰かの追加の仕事になっていることです。
続く形は一つしかありません。受付の作業をこなすと、副産物として数字が溜まる形です。返信したら記録が残る、対応が終わったら印が付く、その積み重ねが集計になる。この形にしておけば、担当が代わっても数字は途切れません。
逆に言えば、集計のために新しい入力欄を作った時点で、その運用は失敗する見込みが高くなります。入力欄が増えるたびに、忙しい日に飛ばされます。飛ばされた日の数字が欠けると、その月の集計は使えません。使えない集計は、次の月から作られなくなります。
最初の一か月は、粗くてよい
完璧に数えようとすると、始められません。最初の一か月は、届いた日付と経路だけでかまいません。
一か月ぶんが溜まると、それだけで曜日と時間帯の偏りが見えます。偏りが見えたら、次の一か月で返信までの時間を足す。この順で増やしていけば、負担を感じないまま指標がそろいます。
始めるときに用意するものは、多くありません。いま届いているものが、どこに、どう残っているのかを確かめるところからです。残っていない経路があれば、そこを先に直します。
事務局の負担を減らす話と、活動を説明する数字を持つ話は、同じ場所で解けます。受付をどう受けるかを決めることが、その両方の土台になります。会員や参加者の受付をどこから整えるか迷う場合は、会員の入会申し込みやイベントの申し込みにそれぞれの場面での整理があるので、件数の多い場面から手を付けるとよいでしょう。
Q1. 問い合わせの件数は、まず何から数え始めればよいですか?
週ごとの受付件数、経路ごとの件数、届いた曜日と時間帯の三つから始めてください。この三つだけで、事務局が動いていない時間にどれだけ届いているかが見えます。最初から指標を増やすと集計が重くなって続きません。慣れてきたら、初回の返信までの時間と未対応の残数を足します。
Q2. 表計算に一件ずつ転記して数えるやり方では駄目ですか?
始めた月は回りますが、二か月目から抜けが出ます。転記が本来の仕事に足されているためで、忙しい時期ほど抜けます。結果として、いちばん知りたい繁忙期の数字が欠けます。受け付けた時点で自動的に記録が残る形にして、集計はその記録から出す順番にしてください。
Q3. 電話や会場での直接の申し込みは、どう数えればよいですか?
詳細まで記録しようとすると破綻します。日付と、参加の問い合わせか寄付の問い合わせかの区別だけを残せば、経路ごとの割合は出せます。会場で用紙に書いてもらったぶんは、後日まとめて同じ場所に入れてください。紙のまま別に保管すると、集計だけでなく返信の対象からも漏れます。
Q4. 返信までの時間は、平均で見てよいですか?
平均では実態が隠れます。多くを即日で返していても、数件が一週間放置されていれば平均は良く見えます。団体の印象を決めるのは放置された数件のほうです。いちばん遅かった件を見る形にしてください。遅い件を並べると、断りの返信が遅い、担当が決まっていない種類が遅いといった傾向が出ます。
Q5. 数えた結果、事務局の体制はどう変えればよいですか?
まず当番を届く時間帯に合わせます。土日に半分が届いているなら、土日に二時間だけ返信を見る当番を置くだけで待ち時間が二日から数時間に縮みます。当番を置けない場合でも、月曜の朝に土日ぶんを返す時間をあらかじめ確保しておくと、午後まで手つかずになる事態を防げます。
