ネットショップの問い合わせフォームにどの項目を並べるかは、フォームを作る側の問題ではなく、届いたものを読んで返す側の問題です。設問が足りなければ「ご注文番号をお知らせください」から始まる聞き返しが毎回発生し、多すぎれば送信される前に離脱されます。この記事では、ネットショップの窓口に実際に届く問い合わせを型で分けたうえで、それぞれに必要な設問と並び順、そして省いてよい設問の見分け方を整理します。読み終えたときに、いま使っているフォームのどの項目を削り、どの項目を足すかが決められる状態を目指します。
ネットショップの窓口に届くのは「注文のあと」の話がほとんど
ネットショップのウェブサイトに置かれている入力欄は、大きく二種類あります。商品をカートに入れて決済まで進む注文フォームと、文章で用件を書いてもらう問い合わせフォームです。前者はカートシステムが担当し、後者だけが手作業の窓口として残ります。この二つを混同したまま項目を設計すると、問い合わせフォームが中途半端な注文受付になり、どちらの役目も果たさなくなります。
問い合わせフォームに届くのは、注文の流れに乗らなかったものです。具体的には、注文が通ったかどうか分からない、まだ発送されない、届いた品が違う、思っていたものと違うので返したい、といった相談です。買う前の質問も来ますが、件数の重心は明らかに注文のあとにあります。つまり窓口は、決済が終わったあとに残った例外を全部引き受けています。
この前提を置くと、設問の役目もはっきりします。項目は、注文を取り直すためのものではなく、返信を書く人が「どの注文の話か」を特定し、「調べずに書けるか、調べてから書くか」を判断するためのものです。返信を書く人の手が最初に止まるのは、書き始めてから「これが分からないと答えられない」と気づいた瞬間です。設問設計の目的は、この止まる瞬間をゼロに近づけることに尽きます。
届く問い合わせは四つの型に分かれる
窓口に届くものを並べていくと、聞かれていることはおおむね四つに整理できます。
一つ目は注文と配送の確認です。注文が通っているか、いつ出荷されるか、追跡番号を見ても状況が動かない、不在で持ち戻りになった、届け先を変えたい、といった内容です。この型は、注文の記録と配送業者の追跡情報を見れば答えが出ます。ただし、どの注文の話かが分からないと一歩も進めません。
二つ目は届いた品の不具合です。中身が違う、数が足りない、外箱がつぶれている、最初から動かない、といった内容です。この型は、写真がないと状況が確定できません。返信の前に在庫を押さえるか、代替品を手配するかの判断も必要になります。
三つ目は返品と交換の相談です。サイズが合わない、色が想像と違った、使ってみたが合わなかった、といった内容です。この型は、店として決めてある条件に当てはまるかどうかを窓口が判定します。判定に必要な情報は、購入からの経過日数、開封したかどうか、付属品がそろっているかの三つに集約されます。
四つ目は買う前の質問です。在庫はあるか、いつ届くか、この用途に使えるか、といった内容です。この型は件数としては少なく、答えれば注文につながるので、返信の優先順位を上げる価値があります。
設問を設計するときは、この四つを一枚のフォームで受けることを前提にします。四つを別々のフォームに分けると、送る側がどれを選べばよいか分からず、結局いちばん目立つものに全部が集まります。分けるのではなく、一枚の中で最初に用件の種類を選ばせるのが現実的です。
設問を増やすほど返信が早くなるわけではない
聞き返しを減らしたい一心で設問を積み上げると、送信率が落ちます。回答者にとっての入力は、思い出す作業と打ち込む作業の連続で、項目が一つ増えるたびに離脱の機会が増えます。とくにネットショップの問い合わせは、届いた箱を前にした状態や、通勤中にスマートフォンから片手で送られることが多く、入力の負担がそのまま送信されるかどうかを決めます。
一方で、設問が少なすぎると、返信の一往復目が「ご注文番号をお知らせください」で埋まります。この一往復が入ると、返信までの実質的な所要時間は倍以上に伸びます。相手が返してくるまで待ち時間が発生し、その間そのやり取りは未完了のまま窓口に居座り続けるからです。返品の相談では、この待ち時間のあいだにも返品期限が進みます。
だから設問の数は、少なければよいものでも多ければよいものでもありません。判断の基準は数ではなく、その設問が無いときに聞き返しが発生するかどうかです。聞き返しが発生する設問は残し、発生しない設問は削ります。この基準で既存のフォームを見直すと、たいてい二つか三つの項目が削れて、代わりに一つか二つの項目が足りていないことが分かります。
最初の設問は「用件の種類」にする
フォームの一番上に置くべきは、氏名でも連絡先でもなく、用件の種類です。ラジオボタンかセレクトで、四つから五つの選択肢を出します。
選択肢の文言は、店の内部用語ではなく、送る側が自分の状況を当てはめられる言葉にします。たとえば「注文や配送について」「届いた商品に問題がある」「返品や交換をしたい」「購入前の質問」「その他」といった並びです。「受注管理」「RMA」のような業務側の言葉は、送る側が自分のことだと認識できません。
この設問を先頭に置く理由は二つあります。一つは、回答者に対して「ここは何を書く場所か」を先に示せること。もう一つは、この選択によって以降の設問を出し分けられることです。出し分けは条件分岐に対応したフォームであれば設定できますし、対応していなくても、設問文の中に「返品や交換をご希望の方のみ」と補足を書くだけでかなり効きます。
受ける側にとっての効果はさらに大きくなります。用件の種類が最初に決まっていれば、届いた時点で仕分けが終わっています。定型で返せるものと、在庫や配送業者に確認してから返すものが、開く前に分かれます。返信作業を朝と夕方にまとめて処理する運用にしている店では、この一項目があるかないかで処理の速度が変わります。
選択肢を五つより増やさない
選択肢は五つまでに収めます。六つを超えると、送る側が読み比べて迷い始め、迷った結果として「その他」に流れます。「その他」に流れた問い合わせは仕分けの手がかりを失うので、選択肢を細かくしたはずが逆に粗くなります。
「キャンセルしたい」を独立させるかどうかは、出荷の運用次第です。出荷前ならキャンセルを受けるが出荷後は返品扱いになる、という店では、独立した選択肢にすると相手が自分で判断できず、どちらを選んでも同じ場所に届きます。この場合は「注文や配送について」に含めて、本文で状況を書いてもらうほうが実務に合います。
注文を特定するための項目
どの型の相談でも、最初に必要なのは「どの注文の話か」です。ここが埋まっていないと、他の項目が全部そろっていても返信が書けません。
一つ目は注文番号です。自由記述で受けます。設問文には、注文番号がどこに書いてあるかを添えます。「ご注文確認メールの件名または本文の先頭に記載されています」と一行あるだけで、記入率が変わります。桁数や形式が決まっているなら、入力例をそのまま置きます。
二つ目は注文時のメールアドレスです。問い合わせの送信元と、注文したときのアドレスは一致しないことがよくあります。家族の代理で問い合わせている、注文は仕事用のアドレスで出したが返信は私用のアドレスで受けたい、といった事情があるからです。ここが分かれていると、記録を検索しても注文が見つからず、届いていないと判断してしまいます。
三つ目は注文日、または注文したおおよその時期です。注文番号が分からない相手を救うための項目で、任意にします。氏名と注文日の組み合わせがあれば、記録から絞り込めます。
四つ目は購入した場所です。自社サイトのほかにモールにも出店している店では、必ず置きます。モール経由の注文は、返品の条件も返金の道筋も窓口も別建てになっていることが多く、どこで買ったかが分からないまま返信すると、案内した手順が相手の画面と一致しません。
注文番号が書けない相手をどう受けるか
注文番号を必須にすると、確認メールを消してしまった相手が送信できなくなります。送信できなかった相手は問い合わせをやめるのではなく、電話をかけてくるか、SNSに書き込みます。どちらも窓口の負担としては重くなります。
現実的な形は、注文番号を任意にしたうえで、代わりに氏名と注文時のメールアドレスと注文したおおよその時期を任意で並べておくことです。設問文に「注文番号が分からない場合は、下の三つのうち分かるものをご記入ください」と書きます。三つのうち二つが埋まっていれば、記録から特定できることがほとんどです。
特定できなかった場合の返信文は、あらかじめ用意しておきます。「お伺いした内容ではご注文が確認できませんでした」とだけ返すと、相手は自分が疑われていると受け取ります。確認できなかったことと、次に何を教えてもらえれば探せるかを、同じ文面の中に書きます。
住所や氏名をフォームで聞き直さない
配送先の住所を問い合わせフォームで全部入力させている店は少なくありませんが、注文番号が分かれば記録から引けます。フォームで再入力させると、相手は注文したときと違う書き方をすることがあり、どちらが正しいのか窓口が判断できなくなります。
住所を聞くべき場面は一つだけです。届け先の変更を受け付けるときです。この場合も、変更先の住所だけを聞き、変更前の住所は聞きません。変更前は記録にあるからです。設問文に「変更後のお届け先をご記入ください」と書けば、相手も迷いません。
氏名は受けます。ただし、ふりがな、生年月日、性別、電話番号を全部必須にすると、記入の負担だけが増えます。ふりがなは配送の伝票を作り直すときにだけ必要で、問い合わせの段階では要りません。
届いた品の不具合で要る項目
この型は、写真がないと状況が確定しないという点で他と性格が違います。窓口の役目は、商品の良し悪しを判定することではなく、判断する側が判断できるだけの材料を集めることです。
一つ目は対象の商品名または品番です。一度の注文に複数の商品が入っているとき、どれの話かが分からないと在庫も引き当てられません。注文の中身を出し分けられるフォームでなくても、自由記述で「同梱の商品のうち、どれについてのご連絡ですか」と聞けば足ります。
二つ目は不具合の種類です。選択式にします。「違う商品が届いた」「数が足りない」「破損していた」「動かない、または不良がある」「その他」の五つでほぼ収まります。この一項目があると、返信のテンプレートと、次に取る手順が届いた時点で決まります。
三つ目は写真です。届いた品の不具合は、文章の説明だけでは状態が伝わりません。写真があれば、配送中の破損なのか、出荷時点の誤りなのかの見当が付き、配送業者に事故の連絡を入れるかどうかの判断も早くなります。
四つ目は外箱と付属品の状態です。「外箱は保管されていますか」「付属品はそろっていますか」を選択式で聞きます。配送事故として扱うときに外箱が必要になる場合があり、あとから聞くと相手はすでに捨てています。
写真は何を撮るかまで書く
写真を受け取る設問を置くだけでは、必要なものが届きません。設問文に「何を写すか」を書きます。破損の相談なら「外箱の全体が分かるもの」「破損している箇所を近くから写したもの」「送り状のラベルが読めるもの」の三点を指定します。誤配の相談なら「届いた商品の全体」と「注文した商品と分かる部分」です。
枚数の上限も書きます。上限を書かないと、状況を伝えようとして多数の画像が送られてきて、窓口が全部開くことになります。3枚から5枚を上限として設問文に書くのが現実的です。
受け取った画像がどこに残るかも先に確かめます。メールの添付として届く形だと、あとで在庫や出荷の担当が見返すときに、そのメールを探すところから始まります。回答の一覧と同じ場所に画像が残る形になっていれば、確認のたびに受信箱を掘る必要がなくなります。この差は件数が増えるほど効いてきます。
返品と交換の相談で要る項目
返品の相談は、店として決めてある条件に当てはまるかどうかを窓口が判定する型です。判定に必要な情報は決まっているので、設問もそれに合わせます。
一つ目は商品が届いた日です。返品を受け付ける期間は届いた日から数えるのが一般的で、注文日から数えるわけではありません。ここを注文日で聞いていると、判定のたびに配送記録を見ることになります。
二つ目は開封したかどうかです。「未開封」「開封したが使用していない」「使用した」の三択にします。この三つで、受けられるかどうかの判定がほぼ決まります。
三つ目は返品を希望する理由です。選択式にして、「サイズや色が合わなかった」「イメージと違った」「間違えて注文した」「不具合がある」「その他」と並べます。不具合が理由なら、これは返品の型ではなく前の節の型なので、設問の分岐でそちらへ寄せられます。理由によって送料をどちらが負担するかが変わるため、この一項目が返信の中身を決めます。
四つ目は希望する対応です。「返金」「同じ商品と交換」「別の商品と交換」「まだ決めていない」の四択にします。ここを聞かずに返信すると、条件の説明だけを送ることになり、相手が希望を書いてくるまでもう一往復増えます。
返品の可否そのものはフォームで判定しない
条件を設問で聞くことと、条件に当てはまるかどうかをフォームの画面上で自動判定して相手に伝えることは別です。自動で「返品できません」と表示する作りにすると、例外を拾えなくなります。配送中の破損や不良は、期間を過ぎていても受けるのが通常の運用ですし、判定の根拠になる情報を相手が誤って入力していることもあります。
フォームがやるべきなのは、判定に必要な情報を漏れなく集めて、窓口の担当者が一度読めば判定できる形にすることです。判定と、判定結果の伝え方は人が担います。
なお、通信販売の返品については、広告で条件を示していれば店が定めた特約が優先し、示していない場合の扱いが法律で定められています。
通信販売をする場合の商品の販売条件について広告をした者が当該商品の引渡しを受けた購入者は、その売買契約に係る商品の引渡しを受けた日から起算して八日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除を行うことができる。 出典: 消費者庁
つまり、返品の条件は広告の表示側で決まる話であり、問い合わせフォームの設問で決まる話ではありません。フォームは、決まっている条件に当てはめるための材料を集める場所です。条件そのものの書き方や表示の要否については、所管の窓口や専門家に確かめてください。
聞かなくてよい項目
設問を削る判断は、足す判断より難しくなります。無いと困る場面を想像できてしまうからです。判断の基準は一つで、その項目が無いときに聞き返しが実際に発生しているかどうかです。
電話番号を必須にしている店は多いのですが、返信の大半はメールで完結します。電話が必要になるのは、配送業者との調整が入るときと、返金の手続きで本人の確認が要るときだけです。必須にすると、電話を受けたくない相手が送信をやめます。任意にして、設問文に「お電話での確認が必要な場合にのみ使用します」と書くのが現実的です。
購入動機や、どこでこの店を知ったかを聞くアンケートも、問い合わせフォームに混ぜません。相手は困って連絡してきているので、そこに調査の設問を並べると、応対の姿勢そのものが疑われます。調査は注文後のフォローメールで別に行います。
生年月日と性別も、問い合わせの段階では使いません。年齢制限のある商品を扱っている場合でも、それは注文の時点で確認する項目であって、問い合わせで聞き直すものではありません。
会員のログインを必須にする作りも、窓口を狭めます。ゲスト購入を受け付けている店なら、そもそもログインできない相手がいます。プレゼントとして受け取った人が問い合わせてくることもあり、その人は注文者ですらありません。ログインを求めた時点で、その相談は電話かSNSに流れます。
自由記述は最後に一つだけ置く
選択式の設問をどれだけ丁寧に並べても、当てはまらない状況は必ず出ます。最後に「ご要望やご事情を自由にお書きください」という欄を一つ置きます。
置く位置は最後です。先頭に置くと、相手はそこに全部書いてしまい、以降の選択式の設問が空欄のまま送信されます。選択式で状況を確定させてから、補足として自由記述を置く並びにすると、両方が埋まります。
送信されたあとをどう設計するか
項目をどれだけ丁寧に設計しても、送信されたあとの手順が決まっていないと、返信までの時間は縮みません。設問の設計は、返信を書く人が調べる時間を減らすための下準備にすぎません。
送信された直後に相手に届く自動返信には、三つのことを書きます。受け付けたこと、いつまでに返信するか、その間に相手がすべきことがあるかどうかです。二つ目がとくに重要で、「二営業日以内にご返信します」と書いてあれば、相手はその間に催促の連絡をしません。書いていないと、翌日には同じ内容がもう一度送られてきます。土日と祝日に出荷が止まる店では、営業日で数えるのか実日数で数えるのかも決めて書きます。
返品の相談に対する自動返信には、もう一つ加えます。「商品はまだ送り返さないでください」の一文です。これが無いと、案内を待たずに送り返す人が出て、届いた荷物が誰の返品なのか分からなくなります。返送先や送り方は、窓口が条件を判定してから案内します。
自動返信には、送信された内容そのものを全部載せます。相手が自分の書いたことを確認でき、間違いに気づいたときは返信で訂正してきます。これが送信前の確認画面の代わりになります。
窓口の側では、届いたものを一覧で見られる状態にします。受信箱に流し込むだけだと、注文通知や出荷通知に紛れます。回答が一覧として残り、そこに返信したかどうかの状態が付けられるかどうかが、件数が増えたときに効きます。受け付けた内容と、担当者と、いまの状態が同じ画面にそろっているかどうかで、確認にかかる時間が変わります。実際の画面の動きは動くところを見るで確かめられます。
使っている道具との付き合い方
いま無料のフォームで受けているなら、まず設問の設計だけを直します。道具を替えなくても、用件の種類を先頭に足し、注文を特定する項目を足すだけで、往復の回数は減ります。
道具を替える判断が要るのは、件数が増えて、誰が返したかが分からなくなったときです。回答が表に貯まる形の道具は、集める部分は問題なく動きます。表の行が増えて、返信済みかどうかを手で色分けする作業が始まったら、そこが替えどきです。それぞれの道具で何がどこまでできるかは、Googleフォームとの比較で、集めたあとの扱いを軸に整理されています。自社サイトの中に埋め込んで使いたいのか、外部のページで受けてよいのかによっても選択肢は変わります。
自社サイトをWordPressで作っていて、すでにプラグインでフォームを設置している場合は、事情が変わります。送信をメールで飛ばす作りが基本になるので、届いたあとの一覧が手元に残りません。この構造の違いはContact Form 7との比較で、送信されたあとの記録がどこに残るかを軸に整理されています。
返品の相談と修理の受付は構造が同じ
返品の相談は、集めた情報だけでは返信が完結しないという点で、修理やサポートの受付とよく似ています。どちらも、届いた内容を読んで、現物の状態を確認して、店の中の別の担当に判断を渡し、その結果を相手に返すという四つの工程を踏みます。フォームが担当するのは最初の一工程だけです。
修理・サポートの受付の場面で共通して起きているのは、集めるところまでは無料の道具で足りているのに、そのあとを表計算ソフトと受信箱と付箋で継ぎ足していることです。継ぎ足した部分は担当者の記憶に依存し、その担当者が休んだ日に止まります。返品の相談も同じ構造で、返送品が届いてから返金を実行するまでのあいだ、その案件はどこかで待っています。待っている案件がどこに何件あるかが一つの画面で見えるかどうかが、取りこぼしの量を決めます。
問い合わせの受付としてまとめられている場面と比べると、ネットショップの窓口には期限があるという違いがあります。返品を受け付ける期間、配送事故の申し出ができる期間、決済のキャンセルが効く期間は、それぞれ日数で決まっています。設問で日付を集めておくと、この期限を案件ごとに計算できます。集めていないと、期限が近い案件を見つける手段が担当者の記憶しかなくなります。
設問を変えたあとに何を見るか
項目を入れ替えたら、効いたかどうかを確かめます。感覚で判断すると、削るべきでない設問を削ったことに気づけません。
見るのは三つです。一つ目は、返信の一往復目で聞き返した件数です。設問設計の目的そのものなので、ここが減っていなければ足した項目が的を外しています。返信を書くときに、聞き返したかどうかを記録に一言残すだけで数えられます。
二つ目は、フォームを開いた数に対して送信された数です。この割合が下がっていたら、設問を足しすぎています。訪問数を計測していない店でも、送信件数が前の月と比べて明らかに減っていれば同じことが起きていると考えられます。ネットショップの問い合わせ件数は売れた数に連動して動くので、注文件数と並べて見ないと判断を誤ります。
三つ目は、用件の種類ごとの件数です。「その他」が全体の三割を超えていたら、選択肢の言葉が相手に届いていません。配送状況の確認が多いなら、その答えを注文確認メールと出荷通知メールに書き足すほうが効果があります。件数の内訳が取れる形になっていると、次にどこを直すかが数字で決まります。
三か月ためてから直す
設問の入れ替えを毎週やると、比べる材料が貯まりません。変えたら三か月は動かさず、そのあいだに届いたものを見返して次の一手を決めます。
見返すときは、返信文をそのまま読み返すのが早道です。同じ文言を何度も書いていたら、それは設問で先に聞けたはずのことか、商品ページか案内のページに書けるはずのことです。三か月で三回以上書いた文言は、どちらかに移します。この作業を続けると、窓口の仕事は少しずつ定型に寄っていき、出荷作業の合間でも回せる量に収まります。
設問設計のあとに残る仕事
設問を整えると、返信の一往復目で聞き返す回数は減ります。ただし、それで解決するのは工程のうちの一部です。
ネットショップの問い合わせ対応で残る仕事は四つあります。注文の記録と配送の追跡を照らし合わせること、在庫や代替品を押さえること、返送品が届いたかどうかを確かめること、そして返金を実行して相手に伝えることです。設問設計で解決するのは、この四つに入る前の材料集めだけです。
残る四つに共通しているのは、待ち時間があるという点です。相手の返事を待つ、返送品の到着を待つ、決済の処理を待つ。待っているあいだ、その案件は完了していません。完了していない案件が一覧で見えないと、待っていることを忘れます。返信済みかどうかだけでなく、いま何を待っているのかが記録に残る形になっているかどうかが、窓口の詰まり方を決めます。この点で、送信されたあとの道具がそろっているかどうかは、設問の数よりも効きます。
料金の考え方も先に見ておきます。窓口をひとりで回している規模では、月々の費用が数千円変わることより、返信までの時間が半日縮むことのほうが売上に効きます。返信が遅れた返品の相談は、そのまま決済のキャンセルや低い評価につながるからです。料金を見るときは、受け付けられる件数の上限と、扱える担当者の人数を先に確かめると比較しやすくなります。
最後にもう一度、設問設計で判断が要る場面を並べておきます。用件の種類を先頭に置くか、注文番号を必須にするか、注文時のメールアドレスを別に聞くか、購入した場所を聞くか、不具合の種類を選択式にするか、写真の枚数に上限を書くか、届いた日を聞くか、開封の状態を三択で受けるか、希望する対応を先に聞くか、電話番号を任意にするか。この十個を決めれば、ネットショップの問い合わせフォームは一往復で返せる形になります。決め切れない項目があるなら、任意にして三か月置き、実際に書かれたかどうかで判断すれば済みます。書かれない項目は削り、聞き返しが続く項目は必須に上げます。設問の設計は一度で正解にたどり着くものではなく、届いたものを見ながら少しずつ形を整えていく作業です。
Q1. 注文番号は必須にしたほうがよいですか?
必須にすると、確認メールを消してしまった相手が送信できなくなり、その相談は電話やSNSに流れます。任意にしたうえで、氏名、注文時のメールアドレス、注文したおおよその時期を並べて置き、設問文に「注文番号が分からない場合は下の三つのうち分かるものを」と書くのが現実的です。三つのうち二つが埋まっていれば、記録からほぼ特定できます。特定できなかったときの返信文もあらかじめ用意しておいてください。
Q2. 問い合わせフォームで配送先の住所を聞く必要はありますか?
注文番号が分かれば記録から引けるため、確認のためだけに聞く必要はありません。むしろ注文時と違う書き方で入力されると、どちらが正しいのか窓口が判断できなくなります。住所を聞くのは、届け先の変更を受け付けるときだけです。その場合も変更後の住所だけを聞き、変更前は記録にあるので聞きません。設問文に「変更後のお届け先をご記入ください」と書けば相手も迷いません。
Q3. 返品の相談では最低限どの項目が要りますか?
商品が届いた日、開封したかどうか、返品を希望する理由、希望する対応の四つです。届いた日は受付期間の判定に使い、注文日ではなく到着日で数えます。開封の状態は「未開封」「開封したが使用していない」「使用した」の三択で足ります。理由によって送料の負担が変わるため選択式にし、希望が返金か交換かを先に聞いておくと、条件の説明だけで一往復を消費せずに済みます。
Q4. 写真はフォームで受け取ったほうがよいですか?
破損や誤配の相談は写真がないと状況が確定しないため、受け取ったほうが往復は確実に減ります。ただし設問文に何を写すかを書いてください。破損なら外箱の全体、破損箇所の接写、送り状のラベルの三点です。枚数の上限も3枚から5枚と明記します。受け取った画像が回答と同じ場所に残るかどうかも確かめてください。メール添付だけだと、出荷の担当が見返すときに受信箱を探すことになります。
Q5. 電話番号やアンケートの項目は入れてよいですか?
電話番号は任意にして、「お電話での確認が必要な場合にのみ使用します」と添えてください。必須にすると電話を受けたくない相手が送信をやめます。購入動機やどこで知ったかを聞くアンケートは、問い合わせフォームには混ぜません。困って連絡してきた相手に調査の設問を並べると、応対の姿勢そのものを疑われます。調査が必要なら注文後のフォローメールで別に行ってください。
