ネットショップの問い合わせ窓口には、文章より先に画像が届きます。潰れた箱を撮った写真、傷の付いた天板の寄り、届いた色が注文と違うことを示す並べ撮り、動かない機器を写した短い動画。注文後の問い合わせと返品の相談を受けている店なら、写真が付いてくるのは例外ではなく普通の状態です。
詰まりが生まれるのは、その写真がメールの添付として飛んでくるところです。受付をひとりか二人で回している店ほど、添付は静かに手数を増やします。開けない、送れない、どの注文のものか分からない、返したかどうかが残らない。そして気づくと、店のメールの受信箱が、お客さまの住所と氏名が写った伝票写真の置き場になっています。
この記事では、ネットショップの受付で写真や書類をどこで受け取るかを決めるために、いま何が詰まっているのかを分解し、受け取り方を変えるときに先に決めておくことを順番に並べます。返品に応じるかどうかという判断そのものには踏み込みません。あくまで、届いたものを受けて返す側の回し方の話です。
ネットショップの問い合わせに写真が付いてくる場面
返品と交換の相談は、言葉だけでは決まらない
注文後に届く問い合わせのうち、配送状況の確認だけで終わるものは、実は多くありません。数と手間を食うのは、届いたものについての相談です。壊れていた、汚れていた、色が違う、部品が足りない、思っていた大きさと違う。この種の相談は、言葉だけでは絶対に決まりません。
「角が潰れています」と書かれても、送った本人が見ている潰れ方と、受け取った側が想像する潰れ方は一致しません。だから送る側は写真を付けます。箱の外側を撮り、開けた中身を撮り、傷の部分に寄って撮ります。これは面倒な客の行動ではなく、話を早く進めようとしている行動です。
受付の側から見ても、写真があるほうが確実に早い。写真が無ければ、交換品を送るのか、返送してもらってから判断するのか、配送中の事故として運送会社に伝えるのかが決まりません。決まらないまま返信すると「まずは状況を詳しく教えてください」という一往復が増え、その一往復のあいだに相手の不満は膨らみます。写真は受付にとっても材料です。
撮ってほしいものと、送られてくるものがずれる
もう一つ、ネットショップ特有の詰まりがあります。返品や交換の可否を判断するために見たいものと、相手が撮ってくるものが、しばしばずれます。
配送中の事故として運送会社に伝えるなら、外装の箱と伝票が写った写真が要ります。初期不良として扱うなら、製造番号や品番のタグが読める写真が要ります。ところが送られてくるのは、傷の部分だけを大きく写した一枚であることが多い。傷は分かるが、それがどの商品のどの個体なのかが分からないので、結局「箱も撮っていただけますか」と聞き直すことになります。
聞き直しは、それ自体が手間であるだけでなく、相手を消耗させます。すでに困っている人に、撮り直しを二回も三回も頼むと、そこで評価が決まります。撮ってほしいものを最初に伝えられるかどうかは、受付の速さそのものです。
送る側は、送り方を選んでいない
見落とされがちなのが、送る側は送信手段をほとんど選んでいないという点です。注文の控えメールに返信すればメールになり、そこにあるのは添付のクリップのマークだけです。だから添付になります。
同じ人が、モールのメッセージ欄では文字だけを書き、チャットの窓口では画像を三枚まとめて送ってきます。行動が変わっているのではなく、目の前にある入り口の形が変わっているだけです。受け取り方を変えたいなら、まず入り口の形を変える必要があります。注意書きやお願いで送り方を矯正しようとしても、うまくいきません。
現場では、問い合わせの入り口が多い店ほど、写真の届き先がばらけると言われています。自社サイトのフォーム、注文控えメールへの返信、モールのメッセージ、公式アカウントのトーク、電話。ひとつの相談が三か所に散ることも珍しくありません。
メールの添付で受け取ると、受付の何が止まるのか
開けない、送れない
まず単純に、開けない画像が届きます。近年のスマートフォンは、標準の設定のままだと従来と違う形式で画像を保存することがあり、店のパソコンの環境によっては開けません。送った本人は自分の画面で普通に見えているので、開けないことに気づきません。「見ましたか」と催促が来て、受付が「開けませんでした」と返す往復が生まれます。
逆方向でも止まります。多くのメールサービスで、添付の上限はおおむね25MB前後に設定されています。最近のスマートフォンは写真一枚が数MBあり、動画なら一本で軽く超えます。返品の相談で動画が送られてくる場面は珍しくありません。動かない機器、異音、開けたときの状態。送信エラーは送った側にだけ返るので、受付側は「問い合わせが来ていない」としか分かりません。返事が無いと感じた相手は、次にレビュー欄か決済会社の窓口へ向かいます。
この二つは、どちらも受付の努力では減らせません。相手の端末の設定と、メールの仕様の問題だからです。だからこそ、受け取る形そのものを変える価値があります。
ファイル名が連番のまま届く
添付で届いた画像のファイル名は、ほぼ例外なく撮影機器が自動で付けた連番です。誰のどの注文のものかは、メールの本文と並べて初めて分かります。ところが受付の作業は、メールを開いたままでは進みません。写真を保存し、フォルダに置き、注文管理の画面と見比べ、運送会社への連絡に添え、あとで見返します。その瞬間に、写真と注文番号のつながりが切れます。
連番のファイルが何百個も溜まったフォルダを開いて、どれが今日の相談の分なのかを探す作業は、想像より時間を食います。しかも探し当てられなかったときに起きるのは、単なる遅延ではありません。別の人の写真を見ながら判断してしまう事故です。返品の相談は個体の状態が写っているので、他人の写真で答えると結論が丸ごとずれます。
一件の相談が、複数のメールに割れる
添付には容量の上限があるので、写真が多いと送る側は分けて送ります。一通目に外装、二通目に中身、三通目に伝票。受信箱には三通が別々に並び、しかも同じ件名で並ぶとは限りません。返信を書く時点で、三通ぶんを頭の中で束ねる作業が発生します。
さらに、返品の相談は数日にわたります。最初の相談、追加の写真、返送した控え、到着後のやり取り。同じ注文について五通も六通も飛び交い、そのあいだに担当が変わることもあります。件としてまとまっていないと、どこまで進んだのかを把握するために、毎回受信箱を検索し直すことになります。
受信箱が、住所と氏名の置き場になる
いちばん重いのはここです。ネットショップに届く写真には、送り状の伝票が写っていることがよくあります。伝票には氏名、住所、電話番号が印字されています。配送事故の相談では、むしろ伝票を撮ってもらうことが必要です。
メールの添付で受け取るということは、それらが受信箱の中に溜まり続けるということです。検索すれば出てきます。転送すれば複製が増えます。スタッフが自分の端末でメールを見ていれば、その端末にも残ります。誰がいつ見たかは、どこにも残りません。
個人情報の保護に関する法律は、事業者に対して次のように定めています。
個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
必要かつ適切な措置が具体的に何を指すかは、事業の規模や取り扱う中身によって変わります。断定はできませんし、判断に迷う場面では所管の窓口や専門家に確かめてください。ただ、受信箱に住所付きの伝票写真が無期限に溜まっている状態が、後から説明しやすい状態でないことは分かります。
いまのやり方のままで足りる場合
先に、変えなくてよい場合を置いておきます。受け取り方を変えるのは手間なので、必要が無いのに動くと、その手間だけが残ります。
一日に届く問い合わせが数件で、そのうち写真が付くものが週に一件か二件なら、添付のままでも回ります。連番のファイルを探す時間は発生しますが、探す母数が小さいので実害が出ません。運用を変えるより、注文管理の画面にメモを残す習慣を作るほうが効きます。
受付を担当する人がひとりで、その人が最後まで一件を持ち切る形なら、件としてまとまっていないことの痛みも小さくなります。頭の中に経緯が残っているからです。ただしこの形は、その人が休んだ日に止まります。休みが取れているかどうかを、判断の材料に入れてください。
取り扱う商品が壊れにくく、返品の相談が「イメージと違った」のような理由に偏っている場合も、写真の重要度は下がります。写真より、返品の条件をどこに書いてあるかを案内するほうが早い。反対に、精密機器、家具、食品、ハンドメイドのように、届いた状態が一件ごとに違うものを扱っているなら、写真は避けられません。
受け取り方を変えると決めたとき、最初に置き換えるもの
入り口にファイルの欄を置く
添付をやめるというのは、写真を受け取らないという意味ではありません。写真は受け取ったほうがいい。変えるのは受け取る場所です。
具体的には、注文後の問い合わせと返品の相談の入り口を送信フォームにして、その中に画像を選ぶ欄を置きます。すると三つが同時に片づきます。第一に、写真と本文と注文番号が同じ一件として届くので、ファイル名が連番でも誰のどの注文か分かります。第二に、届く先が受信箱ではなくなるので、メールを見られる人と伝票写真を見られる人を別々に決められます。第三に、送る前に何を撮ればよいかを画面上で伝えられます。
置く欄は多くする必要がありません。注文番号、注文時の氏名、返信先の連絡先、相談の種類、状況の説明、写真。この6項目で、返信に必要な材料はほぼ揃います。欄が増えるほど途中でやめる人が増えるので、増やしたくなったら「その欄が無いと返信できないか」を基準に削ります。
何を撮ってほしいのかを、送信画面に書く
フォームにした利点のうち、いちばん効くのがここです。画像の欄のすぐ上に、撮ってほしいものを箇条で書けます。
配送中の破損なら、外装の箱全体、伝票の貼られた面、破損している箇所の寄り。初期不良なら、商品の全体、品番や製造番号のタグ、症状が分かる部分。誤配送なら、届いた商品と伝票が同じ画面に入った写真。書いてあれば、聞き直しの往復はほとんど消えます。
書き方は短くします。長い説明文は読まれません。「箱の外側」「伝票の面」「気になる部分の寄り」の三語が並んでいれば、たいていの人はその三枚を撮ります。運送会社に事故として伝えるときに外装の写真が要るという事情は、書いても伝わりにくいので省いて構いません。何を撮るかだけを書きます。
受け取る形式と枚数を、先に決める
欄を作るときに一緒に決めるのが、受け取る形式と枚数です。何でも受け取れる状態にしておくと、長い動画が届きます。動画は容量が大きく、開くのに時間がかかり、どこを見ればよいかも分かりません。
返品と交換の相談で判断に使うのは、たいてい静止画です。外装、全体、症状の寄りで3枚、多くても5枚あれば足ります。上限を決めておけば、送る側も迷いません。動きがないと分からない不具合のために、短い動画を一本だけ受け取れるようにしておく形が現実的です。
形式は、一般的な画像の形式に絞ります。絞ったうえで、うまく送れなかった人のための逃げ道を一つだけ用意しておきます。逃げ道が無いと、送れなかった人は結局メールに添付して送ってきます。
何のために使い、いつまで置くのかを書く
写真を送ってもらう画面には、その写真を何のために使い、どれくらい置いておくのかを書きます。法律は、取得の場面について次のように定めています。
個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
送信画面に一行あるかどうかで、後の運用が変わります。ネットショップの場合、写真は店の中だけで完結しないことがあります。配送事故なら運送会社に、初期不良ならメーカーや仕入先に渡します。渡す先があることを先に書いておくと、渡すたびに確認を取る手間が消えます。「ご相談への回答と、運送会社またはメーカーへの確認にのみ使います」と書いてあれば、判断のたびに迷いません。
受け取った写真を、どこに置くか
注文番号と同じ一件にぶら下げる
写真の受け取りをフォームに変えても、受け取ったあとで別のフォルダに移してしまうと、元の詰まりが戻ります。連番のファイルが並んだフォルダと、相談の一覧を書いた表を、人間の記憶でつなぐことになるからです。
置き場所の理想は単純で、その一件を開けば、写真も本文も注文番号も返信の状況も同じ画面に出ることです。受付を少人数で回している店なら、開く場所が一つであることの効き目は大きい。探す時間がゼロになるだけでなく、探し当てられずに別の人の写真を見る事故も消えます。
同じ画面に置く効き目は、日をまたぐ相談でさらに出ます。返品は、相談、返送、到着確認、返金と、最短でも数日かかります。件としてまとまっていれば、途中で担当が変わっても、開けば経緯が読めます。まとまっていなければ、引き継ぐ側は受信箱を検索するところから始めます。
見られる人を絞る
写真を置く場所を決めたら、次に決めるのは見られる人です。全員が全部を見られる状態は、いちばん楽で、いちばん説明しにくい。
ネットショップの規模なら、絞り方は難しくありません。注文後の問い合わせと返品の相談を見るのは、受付を担当する人と、発送の担当。求人の応募を見るのは、店長と経営者。この二つを混ぜないだけで、状態はかなり良くなります。応募者の履歴書と、お客さまの伝票写真が同じフォルダに並んでいる状態は、どちらの側から見ても望ましくありません。
倉庫を外に委託している場合や、繁忙期だけ人を入れる場合も、ここで効きます。委託先に渡す必要があるのは、その出荷に関する情報だけです。過去の全件が見える権限を渡す理由はありません。
法律は、扱いを外部に任せる場合について次のように定めています。
個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
必要かつ適切な監督が具体的に何を指すかは、任せる範囲によって変わります。判断に迷うときは所管の窓口や専門家に確かめてください。受付の側でできるのは、外の人に渡す権限を作業に必要な範囲にとどめ、作業が終わったら戻すことです。
いつ消すかを、受け取る前に決める
保管の話でいちばん抜けるのが、消す側です。法律は、使う必要がなくなったデータについて次のように定めています。
個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
返品の相談に付いてきた写真がいつまで必要かは、店によって変わります。返金まで終わればもう不要という考え方もあれば、同じ不具合が続いていないかを見るために品番ごとに残したいという考え方もあります。後者を選ぶなら、伝票の写真だけは先に消して、商品の状態が写った写真だけを残すという分け方もできます。
どの考え方でも構いませんが、決めていない状態だけは避けます。決めていないと、事実上は永久保存になります。決め方は、期間を一つ置くだけで足ります。返金や交換が終わってから1年経った件の写真は消す、というような形です。期間を決めておけば、消す作業を月に一度の作業として組み込めます。思い出したときにやる作業は、いずれやらなくなります。
写真以外にも、いろいろなものが届く
決済画面のスクリーンショット
注文後の問い合わせでは、決済に関する画面の写しが送られてきます。二重に引き落とされている、金額が違う、注文が通ったか分からない。相手は状況を示そうとして、決済アプリや明細の画面をそのまま撮ります。
ここに写るのは、カード番号の一部、利用日、他の店での買い物の記録です。店として必要なのは、当該の取引が特定できることだけで、他の買い物の履歴は要りません。受付の側でできるのは、必要な部分だけを送ってもらうよう画面に一言書くことと、届いてしまったものを長く残さないことです。決済の照会が終わったら、その写しは早めに消す扱いにしておきます。
求めていない身分証
まれに、求めていないのに身分証の写真が送られてきます。本人であることを示そうとして、免許証や保険証を撮って添付する人がいます。悪意はありませんが、受け取った側には重い負担が残ります。
対処は二つです。第一に、本人確認のために何が必要なのかを画面に書いておくこと。注文番号と注文時の氏名で照合できるなら、その二つだけを求めると書きます。第二に、届いてしまったときの扱いを先に決めておくこと。返信で「今回は不要でしたので、こちらでは保存しません」と伝えたうえで、実際に削除します。伝えるだけで削除していない状態は、いちばん悪い。
返品の申請書、納品書、領収書
書類も届きます。返送に添えた申請書の控え、納品書の再発行の依頼、宛名を直した領収書の希望。ネットショップでは、書類の依頼が問い合わせのかなりの割合を占めます。
この種の依頼は、写真ではなく文字情報で完結します。ところが自由記述の欄しか無いと、宛名や但し書きが本文の中に埋もれます。欄を分けておけば、そのまま発行の作業に回せます。写真の置き場を決める話は、そのまま「何を欄にして、何を自由記述にするか」を決める話でもあります。
入り口が分かれているとき、どこへ寄せるか
モールと自社サイトでは、受け取れる形が違う
ネットショップの問い合わせは、一か所には来ません。モールのメッセージ欄、自社サイトのフォーム、注文控えメールへの返信、公式アカウントのトーク、電話。少なく見ても4つの入り口があります。
厄介なのは、モールのメッセージ欄では添付の扱いが自社サイトと違うことです。送れる形式や枚数に制限があったり、そもそも画像を添えられなかったりします。制限の中身はモールごとに違い、変更されることもあるので、いま使っているモールのヘルプで確かめてください。制限がある場合、相手は「写真を送りたいのに送れない」状態になり、結局メールで送ってきます。
寄せ方を決めるとき、全部を一本にするのは現実的ではありません。モール経由の問い合わせをモールの外に出すことは、そのモールの規約で制限されていることがあります。決めるべきなのは、写真や書類のような重い中身をどこで受けるかという一点です。
重い中身だけを一か所に寄せる
現実的な寄せ方は、配送状況の確認のような軽いやり取りは各窓口でそのまま受けたうえで、写真の必要な相談だけを一か所に寄せる形です。「商品の状態が分かるお写真をこちらのページからお送りください」という一行と、その先のフォーム。これを各窓口の定型文に入れておきます。
この形の利点は、切り替えを段階的にできることです。全部を一度に移すと、いままで届いていた連絡が届かなくなる時期が生まれます。重い中身から順に移せば、扱いに困るものが先に安全な場所へ移ります。
もう一つの利点は、寄せた先で数えられるようになることです。どの窓口から何件が流れてきたのかが分かれば、次に手を入れる場所も見えます。モールからばかり来る店と、自社サイトからしか来ない店では、置く一行の場所が変わります。
電話とチャットで受けたものを、件として残す
電話は無くなりません。返品の相談は感情が乗るので、書くより話したい人がいます。ただ、電話で受けた内容を紙のメモに書いて貼る運用が残っていると、そこだけが管理の外に出ます。
電話で受けたときに、受付側からフォームの案内を送る形にすると、そこが埋まります。「お伺いした内容の確認と、商品のお写真をこちらから送っていただけますか」と伝えて、短い案内を送る。相手にひと手間を掛けることになりますが、写真が必要な相談なら、どのみち何かの手間は発生します。
チャットの窓口も同じです。チャットは会話が流れるので、あとから経緯を追うのが難しい。写真が出てきた時点で件に切り替えると、返金までの数日を追えるようになります。
受け取り方を変えた直後に起きるつまずき
案内を出しても、しばらくは添付が届く
入り口を変えた直後、添付のメールはゼロにはなりません。注文控えメールに返信する人はいますし、以前に控えたアドレスを使う人もいます。ここで「案内したのに読まない」と考えると運用が続きません。
続く形にするには、添付で届いた分の受け方を先に決めておきます。届いたら、フォームの案内を返して送り直してもらうのか、それとも受付側でその一件をフォーム側に写して続けるのか。どちらでもよいのですが、決めておかないと、届いた人によって扱いが変わります。
多くの店に合うのは後者です。返品で困っている相手に送り直しをお願いすると、そこで不満が一段上がります。受付側が写すほうが早い。写す作業が発生するのは移行の期間だけで、案内が行き渡れば自然に減ります。
通知だけが飛んできて、開くのを忘れる
もう一つよく起きるのが、フォームに変えたことで、かえって見落としが増える時期です。受信箱で受けていたころは、他のメールと並んで目に入っていました。専用の場所に届くようになると、見に行かないと見えません。
対処は単純で、届いたことを知らせる先を、いま一日に何度も開いているものに合わせることです。メールを一日中見ている店ならメール、注文管理の画面を開きっぱなしにしている店ならそちら。習慣を変えずに済む場所に通知を出します。
そのうえで、開かないと閉じられない状態にしておきます。返していない件が一覧の上に残り続ける形なら、見落としは翌日に持ち越されません。通知だけを飛ばして、残っているかどうかがどこにも出ない形が、いちばん抜けます。
全部の欄を必須にしてしまう
三つ目のつまずきが、欄の作り方です。せっかく作るのだからと全部の欄を必須にすると、送信の直前でやめる人が出ます。特に効くのが電話番号と写真です。
必須にするのは、返信ができなくなる欄だけです。注文番号か注文時の氏名のどちらかと、返信先の連絡先が一つ。あとは任意にしておきます。任意にしても、必要な人はちゃんと書きます。書かれなかった項目は、返信のときに聞けば済みます。
注文番号を必須にすると、控えを消してしまった人が詰まります。番号が分からない場合の逃げ道を一行添えておくと、ここで落ちる人が減ります。注文日と登録の連絡先が分かれば、たいていの店は照合できます。
受け取り方を選ぶときに見る軸
いま使っている入り口を変えるとき、どこを比べればよいのかを整理します。作りやすさではなく、届いたあとに自分で回せるかを軸にします。
第一の軸は、送る側にアカウント登録を求めるかどうかです。求める形だと、相談の途中でやめる人が出ます。返品の相談は不満を抱えた状態で送られるものなので、手前に壁を置くと、届く代わりにレビュー欄へ流れます。無料で使える定番の道具と、送信されたあとの扱いがどう違うのかは、Googleフォームとの比較に、回答が表に溜まったあとで何が起きるかという観点から整理されています。
第二の軸は、届いたあとに担当と状況を持たせられるかどうかです。返したかどうかが件ごとに残らないと、二重返信と返し忘れは必ず起きます。返品は数日にわたるので、途中の状態が見える形かどうかが効きます。すでに自社サイトにフォームを置いている店であれば、Contact Form 7との比較に、送信の通知だけが飛ぶ状態と、送信後の管理まで持つ状態の違いがまとめられています。
第三の軸は、ファイルの受け取りが標準で付いているかどうかです。画像の欄を足せるか、上限や形式を指定できるか、届いたファイルが本文と同じ画面に並ぶか。この三点が揃っていないと、結局はフォルダとの往復が残ります。社内で使っている道具の延長で考えたい場合は、Microsoft Formsとの比較も見ておくと、社内向けの集計と、社外からの受付で求められるものの違いが分かります。
実際にどう動くのかを先に見たい場合は、動くところを見るで、送信されたあとの画面がどうなっているかを触れます。フォームを作る画面よりも、届いたあとの画面を長く見たほうが判断がしやすい。送信されたあとの道具がそろっているかどうかは、作る画面を見ても分からないからです。
変えたあと、何を見て良し悪しを判断するか
入り口を変えたら、変えた効果を見る材料が必要です。感覚で判断すると、変えたことを正当化する方向に記憶が寄ります。
見るべきものは三つあります。一つ目は、写真が付いた相談の割合です。添付が届かなくなった代わりに、そもそも写真が届かなくなっていたら、入り口の作りに問題があります。二つ目は、最初の返信までにかかった時間です。返品の相談は返信の速さがそのまま評価につながるので、ここが縮んでいなければ変えた意味が薄い。三つ目は、聞き直しの回数です。撮ってほしいものを画面に書いた効果は、ここに出ます。
この三つは、どれも件ごとの記録が残っていれば数えられます。逆に言えば、受信箱で受けている限りは数えられません。数えられる状態にすること自体が、入り口を変える理由の一つです。
同じ構造は、ネットショップ以外の受付でも繰り返し出てきます。届いたものに写真や書類が付いてきて、その置き場と担当が決まっていないと詰まる。どの場面でどう詰まるのかは、問い合わせの受付に、受け取ってから返すまでの流れとして整理されています。修理や不具合の相談を別の窓口で受けている店なら、修理・サポートの受付のほうも合わせて見ておくと、混ぜてはいけない線がどこにあるのかが分かります。
最後に、順番の話をします。写真の受け取り方を変えるとき、多くの店は「安全な保管方法」から考え始めます。しかしそこから始めると、決めることが多すぎて止まります。先に決めるのは、どこで受け取るかです。受け取る場所が一つに決まれば、撮ってほしいものを書く場所も、見られる人を絞る話も、いつ消すかの話も、その一か所についてだけ決めればよくなります。受信箱と個人端末とフォルダに散らばったまま安全を確保しようとするから、いつまでも終わらないだけです。
Q1. 返品の相談で届いた写真を、メールの添付で受け取り続けても問題はありませんか?
禁止されているわけではありません。問題は、伝票が写った写真が受信箱に無期限に溜まり、誰がいつ見たかも残らない状態になりやすい点です。個人情報の保護に関する法律は、安全管理のために必要かつ適切な措置を求めています。何が適切かは店の規模や中身で変わるため、判断に迷う場面では所管の窓口や専門家に確かめてください。
Q2. お客さまから写真が送れないと言われます。どこを直せばよいですか?
まず容量です。多くのメールサービスで添付の上限は25MB前後で、動画なら一本で超えます。送信エラーは送った側にしか返らないので、店側は届いていないことにすら気づけません。送信フォームに画像の欄を置き、受け取る枚数と形式を先に決めておくと、この往復がなくなります。
Q3. 返品の判断に使う写真は、何を撮ってもらえばよいですか?
配送中の破損なら外装の箱全体と伝票の面、初期不良なら商品の全体と品番のタグ、そして気になる部分の寄りです。合計3枚から5枚で足ります。この三つを画像欄の上に短く書いておくと、聞き直しの往復がほぼ消えます。傷の寄りだけが届くと、どの個体かが分からず必ず撮り直しを頼むことになります。
Q4. 求めていない身分証の写真が届いてしまいました。どうすればよいですか?
本人確認に何が必要かを送信画面に書いておくのが先の対策です。注文番号と注文時の氏名で照合できるなら、その二つだけを求めると書きます。届いてしまった場合は、今回は不要なので保存しない旨を返信で伝えたうえで、実際に削除します。伝えるだけで削除していない状態がいちばん良くありません。
Q5. 受け取った写真は、いつまで置いておけばよいですか?
法律に具体的な期間の定めはなく、店の考え方で決めることになります。大事なのは期間を決めること自体です。決めていないと事実上の永久保存になります。返金や交換が終わってから1年経った件は消す、といった形で一つ期間を置けば、削除を月に一度の作業として組み込めます。伝票が写った写真だけ先に消す分け方もできます。
