工務店で問い合わせの担当を振り分ける仕組みが決まっていないと、同じ相手に2人が別々に返信する事故と、誰も返さずに数日が過ぎる事故が交互に起きます。この2つは正反対に見えて、原因は同じです。届いた問い合わせに持ち主がいないことです。この記事では、リフォームの相談と現地調査の依頼を受ける工務店の窓口を前提に、担当を決める基準と、決めたあとに実際に回すための仕掛けを組み立てます。
二重返信と放置は同じ原因から起きる
対策を考える前に、この2つが同じ問題の裏表であることを押さえておきます。別々の対策を打とうとすると、片方を直したときにもう片方が悪化します。
持ち主が決まっていない状態が両方を生む
問い合わせがメールで全員に届く形になっていると、その1件は全員のものであり、同時に誰のものでもありません。手が空いている人が2人いれば2人とも返しますし、全員が忙しければ全員が「あとで誰かが見るだろう」と思って通り過ぎます。件数が少ないうちは前者が、増えると後者が起きやすくなります。
工務店の窓口で特にこれが起きやすいのは、現場に出ている人と事務所にいる人が混在しているからです。事務所にいる人は見えているが判断できない、現場の人は判断できるが見ていない、という状態になります。この状態で「気づいた人が返す」という運用にすると、気づく人が日によって変わり、返信の質も速さもばらつきます。
持ち主を決めるというのは、その1件について「返す責任がこの人にある」と外から見て分かる状態にすることです。頭の中で決めただけでは、本人が忘れたときに誰も気づけません。届いたものの上に、担当者の名前が載っている必要があります。
二重返信が相手に与える印象
同じ問い合わせに2人から返信が届くと、相手はまず戸惑います。それだけなら小さな話ですが、中身が食い違っていると信用の話になります。1通目が「現地調査は来週の火曜に伺えます」、2通目が「まずはお見積もりの前提を伺えますか」だと、社内で連携していないことが伝わります。
リフォームは金額が大きく、工期も長い取引です。相手は工事の技術と同じくらい、この会社が段取りよく動けるかを見ています。二重返信は、その段取りの部分で不安を与えます。1回の事故が、そのまま相見積もりの他社に流れる理由になります。
放置が発覚するのは相手の催促のとき
放置のほうは、社内では気づけません。届いたものが受信箱の下のほうに沈み、誰も探さないからです。発覚するのは、相手から「先日の件はどうなりましたか」という電話が入ったときです。この時点で、返信の遅れという事実に加えて、催促されて初めて動いたという印象が乗ります。
催促の電話すら来ない場合もあります。返事が来ないと判断されて、そのまま他社へ移った場合です。この場合は社内で永久に発覚しません。問い合わせは来ているのに受注に結びつかない、という状態の一部は、ここから来ています。
担当を分ける基準を決める
割り当てを速くするには、基準が先に決まっている必要があります。基準がないと、割り当てのたびに相談が発生し、その相談自体が待ち時間になります。工務店で使える基準は主に3つです。
地域で分ける
対応範囲が広い工務店では、地域で分けるのが最も分かりやすい基準です。現地調査で人が動く以上、移動の効率がそのまま1日の件数に効きます。同じ方面の案件を同じ人が持てば、1日に2件回るといった組み方ができます。
地域で分ける場合、境目をどう扱うかを先に決めておきます。市の境や、担当エリアのちょうど中間にある住所は必ず出てきます。境目のものは当日の予定が空いているほうが取る、という但し書きを1行足しておけば、そこで止まりません。
地域で分けるやり方の弱点は、問い合わせの量が地域によって偏ることです。駅前の集合住宅が多い地域と、戸建てが点在する地域では、届く件数も内容も変わります。偏りが続くようなら、境界線を引き直します。
工事の種類で分ける
水回り、外装、内装、間取りの変更、といった工事の種類で分ける基準です。得意分野がはっきりしている工務店では、この分け方のほうが返信の質が上がります。1通目から具体的な話ができ、相手の信頼を得やすくなります。
この基準を使う条件は、フォームで対象の場所を選択式で受け取っていることです。自由記述から読み取って分類する形だと、割り当ての前に読む時間が発生し、速さの利点が消えます。受付の項目と割り当ての基準は、セットで決めます。
複数の場所が選ばれている問い合わせをどうするかも決めておきます。実務的には、金額の大きくなりやすい工事を担当する人が持つ、という決め方が扱いやすい形です。
当番制にする
担当者の人数が少ない工務店では、曜日ごとの当番制が最も単純です。月曜と火曜はこの人、水曜と木曜は別の人、という形にすれば、届いた時点で担当が自動的に決まります。割り当てという作業そのものが消えます。
当番制の弱点は、専門から外れた案件が回ってくることです。これは、当番が1通目を返して日程だけ確定させ、専門的な話は現地調査で該当する人が行く、という二段構えにすれば吸収できます。1通目に必要なのは専門知識ではなく、速さと段取りです。
3つを組み合わせる順番
現実には、1つの基準だけで割り切れることは少なくなります。組み合わせるときは、上から順に判定する形にします。まず対応範囲かどうかを見て、範囲外なら定型文で返す。次に工事の種類で明確に分かれるものを割り当てる。残ったものを当番、あるいは地域で振る。この順番を紙に書いておけば、誰が割り当てても同じ結果になります。
基準は3つ以上に増やさないほうが動きます。増やすほど例外の判定が必要になり、割り当てに時間がかかります。判定に30秒以上かかる基準は、複雑すぎると考えて単純化します。
割り当てを実際に動かす手順
基準を決めても、それを誰がいつ実行するかが決まっていないと動きません。ここを詰めます。
割り当てる人を1人に決める
割り当てそのものを行う人を1人決めます。全員が割り当てられる状態にすると、2人が別々の人を割り当てるという新しい事故が起きます。事務の担当者、あるいは現場の責任者のどちらかに固定します。
その人が休んだ日の代理も決めておきます。代理が決まっていないと、その日に届いたものだけが宙に浮きます。休みの日の分は翌日にまとめて割り当てる、という決め方でも構いませんが、翌日に必ず処理される仕掛けが要ります。
割り当てた印を届いたものの上に置く
割り当てた結果は、届いた問い合わせそのものに残します。口頭で伝える、チャットで伝える、といった形だと、その1件を後から見たときに担当が分かりません。問い合わせの一覧に担当者の列があり、名前が入っている状態が目標です。
この列があると、担当ごとに絞り込めるようになります。自分の担当分だけを表示して、上から処理する、という動き方ができます。全件を見て自分のものを探す作業がなくなるだけで、1件あたりの時間が縮みます。
割り当てのやり直しを認める
割り当ては間違うことがあります。工事の種類を読み違えた、担当者が急に現場に張り付くことになった、といった事情は日常的に起きます。やり直しができない仕組みにすると、間違ったまま止まります。
やり直すときのルールは1つだけで、外した人と受け取る人の両方が分かる形にすることです。無言で担当を書き換えると、外された側は自分の担当だと思ったまま返信を書き、二重返信になります。担当を変える操作が相手に伝わるかどうかは、道具を選ぶときの確認点になります。
割り当ての前にやっておく仕分け
割り当てを速くする最大のコツは、割り当てる対象を減らすことです。届いたもののうち、担当を決める必要がないものを先に外します。
営業の売り込みを先に落とす
工務店の問い合わせフォームには、リフォームの相談に混ざって、資材や広告やホームページ制作の売り込みが届きます。これを担当者に割り当ててしまうと、その人の未対応の件数が実態より多く見え、本当に返すべきものが埋もれます。
売り込みを見分ける手がかりは、用件の選択にあります。相談でも現地調査でもない選択肢を選んでいる、あるいは住所の欄に自社の所在地が入っている、といった特徴が出ます。フォームの設問で用件を必須にしておけば、開いた瞬間に判別できます。判別したものは、担当を割り当てずに終了の状況へ移します。
自動で落とす仕掛けを入れるかどうかは、慎重に決めます。強く弾く設定にすると、本来の相談まで落ちます。落ちたことは誰にも見えないため、取りこぼしても気づけません。人が見て手で落とすほうが、件数が1日20件程度までは確実です。
対応範囲の外を先に返す
対応できる地域や工事の種類から外れているものも、担当を決める必要がありません。その場で定型文を返して終わらせます。担当者に回してから範囲外だと分かる流れにすると、判断のために往復が発生し、その間に相手を待たせます。
範囲の判定は、フォームで受け取っている市区町村と工事の種類だけでできます。判定表を1枚作り、割り当てを行う人の手元に置いておきます。判定表があれば、経験の浅い人でも同じ結論に到達します。
範囲外の返信でも、丁寧さは落としません。範囲外だから雑に返してよい、という運用にすると、その相手が知人に工務店を紹介する場面で名前が出なくなります。定型文の質を上げておくと、断る場面のコストは下がります。
協力業者や外注が絡む案件の担当
工務店の工事は、社内で完結しないものが多くあります。設備、電気、板金、塗装といった協力業者が入る場合、問い合わせの担当を誰にするかが曖昧になりがちです。
窓口は社内に固定する
協力業者へ直接つないでしまうと、その先の連絡が見えなくなります。相手からの追加の質問が業者側に入り、社内では何も分からない状態になります。窓口は必ず社内の担当者に固定し、業者への確認はその人が行う形にします。
業者に確認している間、案件は判断待ちの状況で止まります。この止まっている状態が見えていることが重要で、見えていないと放置と区別がつきません。判断待ちという状況を1つ用意し、いつまでに答えが要るかを添えて置いておきます。
業者へ渡す情報の範囲を決める
協力業者に相談するとき、問い合わせの内容をどこまで渡すかを決めておきます。工事の内容と場所は必要ですが、氏名や電話番号まで最初から渡す必要はない場面が多くあります。渡す範囲を決めておかないと、担当者ごとに判断が変わります。
現地調査に業者が同行する段階では、住所と日時が要ります。その時点で必要な分だけを渡す、という順序にしておけば、渡しすぎを防げます。この線引きは、社内の共有の設定とあわせて決めます。
紹介と既存客からの再依頼をどう扱うか
工務店の問い合わせには、まったくの新規だけでなく、過去に工事をした人からの再依頼や、その人からの紹介が混ざります。この2つは、新規と同じ扱いにすると失敗します。
過去の担当者に戻す
以前に工事を担当した人がいるなら、その人に戻すのが原則です。前回の内容を知っている人が返すのと、知らない人が返すのでは、1通目の中身がまったく変わります。相手も、名前を覚えている人から返信が来ることを期待しています。
これを機能させるには、過去の案件を検索できる必要があります。名前や住所で過去の問い合わせを引ける形になっていれば、割り当ての段で数秒で確認できます。紙の台帳や個人の受信箱に散らばっていると、この確認ができません。
紹介であることを記録に残す
紹介で来た問い合わせは、紹介した人の名前を記録に残します。工事が終わったあとの礼状や、次の紹介につながる場面でこの記録が効きます。フォームに「どこで当社をお知りになりましたか」という設問を置いておけば、送信の時点で拾えます。
紹介の案件は、対応の遅れが紹介した人にも伝わります。同じ期限で扱うのではなく、優先度を1段上げる運用にしている工務店もあります。どちらにするかは方針として決めておき、担当者の裁量に任せないほうが揃います。
二重返信を止める仕掛け
担当を決めたうえで、なお二重返信が起きる経路が残ります。ふさぎ方を見ていきます。
返信中であることが見える
担当が決まっていても、その人がいま返信を書いているのか、まだ手を付けていないのかは分かりません。別の人が「まだ返していないようだから代わりに返そう」と善意で動くと、二重返信になります。対応中という状況を1つ挟むと、この善意の事故が止まります。
状況の段階としては、未対応、対応中、返信済み、の3つがあれば最低限は足ります。工務店の受付ではこれに調査日確定、見積もり提出済み、完了、見送りを加えた7段階程度までが実用の範囲です。
転送で共有しない
問い合わせのメールを個人の携帯へ転送して共有する形は、二重返信の温床です。転送された人は、元のメールを誰が持っているかを知りません。転送が2回、3回と連鎖すると、何人が同じ内容を見ているのかも分からなくなります。
共有は、1か所に置いたものを見に行く形にします。全員が同じ画面を見ていれば、担当者名も状況も同じものが見えます。転送を続けている限り、担当を決めても効果は半分になります。
電話で返した場合も印を残す
電話で返信した場合、記録が残りません。相手には伝わっているのに、社内では未対応のまま残ります。この状態を別の人が見つけて、あらためてメールで返信する、という二重返信が起きます。
電話で返したら、その場で状況を返信済みに変え、話した内容を1行残します。「9月10日午前で調査日確定。奥様が立ち会い」といった粒度で十分です。この1行を残す習慣が付くまでは、割り当てた人が毎日確認して声をかけるのが確実です。
放置を止める仕掛け
放置のほうは、見えていないことが原因のすべてです。見える形にすれば止まります。
未対応だけを絞り込む
処理していないものだけを画面に出せる状態を作ります。受信箱で運用していると、返したものと返していないものが同じ列に並び、毎回すべてを見返すことになります。件数が増えるほど見落としが増えます。
絞り込みができれば、朝の確認は数十秒で終わります。未対応が0件の日は何もしなくてよく、3件ある日はその3件だけを見ればよい。この単純さが、続く運用と続かない運用の分かれ目になります。
期限を過ぎたものが目立つ
未対応の中でも、届いてから時間が経っているものを目立たせます。届いた順に並べるだけでも効果はありますが、返信の期限を決めているなら、それを過ぎたものが色や印で分かるのが確実です。
期限は用件で分けます。現地調査の依頼は当日中、リフォームの相談は翌営業日中、といった二段構えが扱いやすい形です。期限を1つにそろえると、守れない期限になるか、緩すぎる期限になります。
担当が不在のときの引き取り
担当者が休んだ日、現場に張り付いている日、その人の担当分は止まります。止まったままにしないために、一定時間を超えたら別の人が引き取る、という決めごとを置きます。引き取る条件は時間で決め、判断を要らなくします。
引き取りを気まずくしないことも大事です。引き取りは責める行為ではなく、決めた通りの動作である、という共通認識を作ります。そのためには、引き取ったことが記録に残り、誰が見ても手続き通りだと分かる形が要ります。
引き取る側の負担も考えておきます。誰が引き取るかを決めずに「気づいた人が」とすると、結局は面倒見のよい1人に集まります。引き取り先は責任者に固定するか、当番と同じ順番で回すか、どちらかに決めておきます。固定するほうが単純で、工務店の規模なら責任者に集めても回ります。
長期化した案件を別扱いにする
リフォームの相談は、返信したあと数か月動かないことがあります。予算の都合、家族の予定、他社との比較。理由はさまざまですが、この状態の案件を未対応と同じ列に置いておくと、未対応の件数が実態より多く見えます。
検討中という状況を1つ用意して、そこへ移します。移すときに、いつ再度連絡するかを決めて記録に残しておきます。決めておかないと、そのまま忘れて2年後に思い出す、ということになります。再連絡の予定が入っていれば、その日が来たときに担当の手元へ戻ります。
担当を決めても回らないときに見る場所
仕組みを入れたのに改善しない場合、原因はだいたい3か所のどれかです。
割り当ての基準が現場の実情とずれている
紙の上では成立していても、実際の移動時間や現場の埋まり具合と合っていない基準は使われなくなります。地域で分けたのに、そのエリアの担当者が別の工事に3週間張り付いている、といった状況です。基準は決めて終わりではなく、月に一度は実情と照らします。
現場の予定が受付側から見えないと、このずれに気づけません。予定表を共有の場所に置くだけで、割り当ての精度が変わります。
特定の1人に寄っている
得意分野で分けると、実力のある人に案件が集中します。集中した人の処理が遅れ、その人の担当分だけが放置に見える状態になります。担当ごとの件数を月に一度数えると、この偏りは数字で見えます。
偏っている場合の対処は、基準を変えるか、1通目だけ別の人が返すかのどちらかです。1通目を切り離すのは、専門知識が要らない部分だからです。日程の確定までを当番が行い、その先を専門の人が引き継ぐ形にすると、集中がほぐれます。
現地調査の予定が見えていない
工務店の割り当てで最後まで残る詰まりが、ここです。担当を決めても、その人がいつ現地に行けるのかが分からないと、1通目で日程を確定できません。結局「追ってご連絡します」という返信になり、そこから待ち時間が発生します。
予定が見えていれば、割り当てた人がその場で候補日と突き合わせて確定できます。受付の仕組みを整える話の中で、現場の予定表を共有することが最も効く場面がここです。
仕組みを入れる順番を間違えない
担当の振り分けを整えるとき、いきなり全部を変えようとすると現場が付いてきません。順番を決めて、1つずつ入れます。
最初に入れるのは、届いたものを1か所に集めることです。担当を決める話は、全件が同じ場所に並んでいて初めて成立します。メールと電話と紹介がばらばらの場所にあるうちは、割り当てても抜けが出ます。ここを飛ばして担当だけ決めても、効果は限定的です。
次に入れるのが、担当者の欄です。名前を入れるだけの列を1つ足し、割り当てる人を1人決める。この2つだけで、二重返信はかなり減ります。状況の管理はその次で構いません。担当が決まっているだけで、他の人は手を出さなくなります。
3つ目が状況の欄と、未対応の絞り込みです。ここまで来ると放置も止まります。4つ目が期限と引き取りの条件で、これは運用が回り始めてから足すもので構いません。最初から全部を導入すると、入力する項目が多すぎて誰も更新しなくなります。
導入の期間としては、1つ入れて2週間ほど回してから次を入れる、というくらいの速さが定着します。1週間だと繁忙と閑散の両方を見られず、判断を誤ります。
引き継ぎのときに壊れないようにする
担当の仕組みは、人が入れ替わるときに壊れます。前任者の頭の中にあった判断が引き継がれず、新しい人が別の基準で割り当て始めるからです。
壊れないようにする方法は、基準を紙に残しておくことに尽きます。次の形で1枚にまとめておけば、引き継ぎはその1枚を渡すだけで済みます。
| 判定の順番 | 見るところ | 割り当て先 |
|---|---|---|
| 1 | 対応範囲の内か外か | 範囲外なら定型文で即返信 |
| 2 | 工事の種類(水回り/外装/内装) | 該当分野の担当者 |
| 3 | 種類が複数、または不明 | その日の当番 |
| 4 | 現地調査の依頼で日程が近い | 予定が空いている担当者 |
| 5 | 担当者が24時間動いていない | 責任者が引き取る |
この表は、実際の運用で例外が出るたびに1行ずつ足していきます。足す前に、その例外が本当に繰り返し起きるのかを見ます。1回きりの事情で行を足すと、表が読めなくなります。
引き継ぎでもう1つ渡すべきなのが、返信の型そのものです。基準の表があっても、返す文面が前任者の頭の中にしかなければ、新しい人は一から書くことになります。用件ごとの型を文書として残し、実際に送った良い返信を数通そのまま添えておくと、初日から同じ水準で返せます。
型を残すときに注意したいのが、古い情報がそのまま使われることです。対応地域が変わった、担当者が替わった、営業時間が変わった、といった変更が型に反映されていないと、間違った内容が繰り返し送られます。型を置く場所を1か所に決め、そこだけを直せば全員に反映される形にしておきます。複数の人がそれぞれ手元に控えを持っていると、必ず食い違います。
担当と権限の設定を情報の扱いと合わせる
担当を決めるという話は、誰がどの情報を見られるかという話とつながっています。工務店の問い合わせには、氏名、住所、電話番号、建物の情報が含まれます。
個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。 出典: ppc.go.jp
安全管理のために必要な措置という考え方は、担当の設計にそのまま関わります。全員が全件を見られる状態と、担当者と責任者だけが見られる状態では、後者のほうが管理しやすくなります。一方で、担当者しか見られない形にすると、その人が不在のときに引き取れません。この兼ね合いは、責任者が全件を見られるようにしておくことで解けます。
具体的な取り扱いや設定については、所管の窓口や専門家に確かめてください。運用として決めておきたいのは、退職した人のアクセスをいつ止めるか、外部の協力業者へ内容を伝えるときにどこまで渡すか、の2点です。どちらも、決めていないと後から遡って直すのが難しくなります。
振り分けの形を見直すときの手がかり
担当の振り分けは、道具の機能の話に見えて、実際には決めごとの話が大半を占めます。基準を決める、割り当てる人を決める、期限を決める、引き取りの条件を決める。この4つは、いま使っているものを変えずに今日から書き出せます。
そのうえで足りなくなるのは、決めたことを届いたものの上に載せる場所です。担当者の名前と状況が問い合わせそのものに付いていて、担当ごとに絞り込めて、未対応だけを出せる。この3つが揃うと、二重返信と放置は同時に止まります。問い合わせの受付でどんな運用が必要になるのかは、問い合わせの受付に場面別の整理があります。担当を分けて回すという構造は採用の受付でも同じで、採用の応募受付に近い形の説明があります。
無料のフォームで受けている場合、送信内容を表計算に集めて担当の列を手で足す、という形になりがちです。この形で何ができて、どこから手間が増えるのかはGoogleフォームとの比較に整理があります。自社サイトをWordPressで運用していて、プラグインで受けている場合の違いはContact Form 7との比較にまとまっています。社内でMicrosoftの環境を使っている工務店であれば、Microsoft Formsとの比較も合わせて見ておくと判断が早くなります。
担当の仕組みを整えると、副次的に見えてくるものがあります。1つは、どの種類の問い合わせに時間がかかっているかです。担当ごと、工事の種類ごとに未対応の滞留を見ると、返信に手間取っている領域が分かります。そこは、返信の型が足りていない領域でもあります。型を1つ足せば、次からその領域の滞留は減ります。
もう1つは、受注に至った案件がどの経路から来たかです。担当と経路の両方が記録されていれば、後から突き合わせられます。ただし、これは判断に使えるだけの件数が溜まってからの話で、数か月ぶんが揃ってから見ます。少ない件数で判断すると、たまたまの偏りを実力と読み違えます。
仕組みを入れたら、担当ごとの件数と、未対応の最長経過時間の2つだけを月に一度見ます。件数の偏りがあれば基準を直し、経過時間が伸びていれば引き取りの条件を短くします。見る数字を2つに絞っておくと、確認そのものが負担になりません。数字を増やすと、確認のための作業が増えて、やがて誰も見なくなります。担当と状況を実際にどう持たせるのか、割り当てを変えたときに何が起きるのかは、動くところを見るで画面を触って確かめられます。基準を紙で決めたあとに一度触ってみると、決めごとがそのまま画面に載るかどうかが分かります。
Q1. 工務店で問い合わせの担当はどう分けるのがよいですか?
地域、工事の種類、当番制の3つが基本で、上から順に判定する形にします。まず対応範囲の内外を見て、範囲外は定型文で返す。次に工事の種類で明確に分かれるものを割り当て、残りを当番か地域で振ります。判定に30秒以上かかる基準は複雑すぎるので単純化します。基準は3つ以内に収めると動きます。
Q2. 二重返信はどうすれば止まりますか?
担当者名を届いた問い合わせそのものに載せ、対応中という状況を1つ挟みます。担当が決まっていても、いま返信を書いているのかが見えないと、別の人が善意で代わりに返してしまいます。あわせて、メールを個人の携帯へ転送して共有するのをやめ、1か所に置いたものを全員が見に行く形にします。
Q3. 電話で返した場合も記録は要りますか?
必要です。電話で返すと相手には伝わっているのに社内では未対応のまま残り、別の人があらためてメールで返す二重返信が起きます。返したその場で状況を返信済みに変え、「9月10日午前で調査日確定、奥様が立ち会い」といった1行を残します。習慣になるまでは割り当てた人が毎日声をかけます。
Q4. 担当者が現場に出ていて返せないときはどうしますか?
一定時間を超えたら別の人が引き取る、という条件を時間で決めておきます。判断を要らなくするのが要点です。引き取りは責める行為ではなく決めた通りの動作である、という共通認識を作り、引き取ったことが記録に残る形にします。責任者が全件を見られる設定にしておくと、この引き取りが機能します。
Q5. 担当を決めても返信が早くならないのはなぜですか?
現地調査の予定が受付側から見えていないことが多い原因です。担当が決まっても、その人がいつ現地へ行けるか分からないと1通目で日程を確定できず、「追ってご連絡します」で止まります。現場の予定表を共有の場所に置くだけで、割り当てた人がその場で候補日と突き合わせて確定できるようになります。
