許可の相談が金曜の夜に届き、返信できたのは翌週の火曜。そのあいだに相談者は、検索結果に並んでいた別の事務所にも同じ文面を送っています。行政書士事務所の受付でよく起きる流れです。返信のひな形を作ろうという話は、たいていここから出てきます。
ところが、作ったひな形が使われずに終わる事務所も同じくらい多い。原因は文面の出来ではなく、分け方にあります。そのまま送れる文面と、毎回書き換えなければ失礼になる文面が同じフォルダに並んでいると、選ぶ時点で手が止まるからです。止まるくらいなら一から書いたほうが早い、という判断になり、ひな形は開かれなくなります。
この記事では、許認可の相談と書類の受け取りに絞って、返信を三段階に分ける方法と、それぞれの例文、置き場の決め方までを整理します。どの手続きにどの要件が要るかという中身には触れません。要件は所管の窓口で確かめる話です。扱うのは、届いたものを受けて返す段取りだけです。
行政書士事務所の初回返信は、他の事務所と並べて読まれている
許認可の相談は、相談者にとって初めての手続きであることがほとんどです。誰に頼めばよいのかも分からないので、検索して上から数件に同じ内容を送ります。相見積もりのつもりが無くても、結果として並べて読まれます。
このとき比べられているのは、費用よりも先に、返ってきた文面です。何を聞かれているのか分かってくれているか、次に何をすればよいのかが書いてあるか、いつまでに答えが出るのかが分かるか。専門的な知識の量は、この段階では伝わりません。伝わるのは段取りの明快さだけです。
もう一つ効くのが速さです。許認可の相談には期限が付いています。許可の有効期限、在留期間の満了、公募の締切、契約の開始予定日。期限に押されて動いている人は、最初に段取りを示した相手に話を進めます。返信が三日後に届くころには、相手はもう別の事務所と面談の日程を決めています。
そして、初回の返信で決まるのは受任そのものではありません。決まるのは、相手の次の一歩です。資料を送ってもらうのか、面談の日程を出すのか、こちらから電話をするのか。次の一歩が書かれていない返信は、丁寧でも会話が止まります。
返信が遅れる原因は、文章を書く時間ではない
返信の遅れを「忙しいから」で片づけると、対策が「頑張る」しか出てきません。実際に時間を食っているのは、書く作業ではなく、その前の作業です。
一つ目は、どれから返すかを決める作業です。受信箱に並んだ相談を上から読み、期限が近いものを探し、受けられる案件かどうかを判断する。この選別に毎回時間がかかります。二つ目は、前回どこまで返したかを思い出す作業です。三つ目が、何を書くかを毎回ゼロから考える作業です。
ひな形が効くのは三つ目だけです。だから、ひな形を作ってもさほど速くならない事務所があります。選別と思い出しに時間がかかっている場合は、文面ではなく、届いたものが一覧で並んで、返信の状況が件ごとに残る形にするほうが効きます。ひな形は、その上に乗せて初めて力を出します。
ひな形を作る前に、届いている相談を型に分ける
いきなり文面を書き始めると、あとで使われないひな形ができます。先にやるのは、直近に届いた相談を並べて、型に分ける作業です。30件もさかのぼれば、事務所に届く相談の型はほぼ出そろいます。
行政書士事務所で出てくる型は、おおむね次のとおりです。可否を聞く相談、費用だけを聞く相談、期限が迫っている相談、資料が足りない相談、他の専門家の領域にあたる相談、そして受けられない地域や分野の相談。事務所によって比率は違いますが、種類はあまり変わりません。
分けたら、それぞれ何通の返信で終わっているかを見ます。三往復かかっている型があれば、そこは一往復目の文面が足りていません。逆に、一通で終わっている型は、ひな形にする価値がいちばん高い型です。
もう一つ見ておくと役に立つのが、型ごとの受任の割合です。件数がいちばん多い型と、受任につながる型は、たいてい一致しません。費用だけを聞く相談は数が多く、そのまま消えることも多い。期限が迫っている相談は数が少なく、返信が速ければほぼ面談まで進みます。数の多い型に文面を厚く作っても、受任の数は動きません。作る順番は、受任につながる型からです。
型ごとに、一往復目で聞くことを決める
型に分けたら、それぞれの型で一往復目に聞くことを決めます。ここが決まっていないと、書く人によって聞く内容が変わり、二往復目が必要になります。
可否を聞かれた相談なら、いまの状態、期限の有無、これまでに相談した先があるか。費用だけを聞かれた相談なら、手続きの種類と、どこまでを任せたいか。期限が迫っている相談なら、期限の日付と、いま手元にある書類。どの型も、聞くのは三点までに抑えます。
三点に絞ると、答えが返ってくる割合が上がります。項目を七つ並べたお願いは、全部揃えてから返そうとして止まります。揃わなかった一点は、二往復目で聞けば済みます。
電話に切り替える型を決めておく
すべてをメールで完結させようとすると、かえって往復が増える型があります。事情が入り組んでいる相続の相談や、複数の許可が絡む相談は、文面のやり取りだけでは前に進みません。
一往復目の返信で「お電話でお伺いしたほうが早い内容ですので、ご都合のよい時間帯をお知らせください」と書ける型を決めておくと、三往復ぶんが一本の電話に置き換わります。どの型で電話に切り替えるかを決めておくのも、ひな形の一部です。
そのまま送れる文面
差し込みも書き換えもせずに送れる文面から作ります。ここが多いほど、忙しい日の返信が止まりません。
受け付けたことを知らせる自動返信
送信の直後に自動で返る文面です。例文として、次のような形になります。
このたびはお問い合わせをいただきありがとうございます。〇〇行政書士事務所です。ご相談の内容を確かにお受けいたしました。担当より2営業日以内にご連絡を差し上げます。土日祝日を挟む場合は、翌営業日以降のご連絡となります。お急ぎの場合や、期限が迫っている場合は、その旨をこのメールへの返信でお知らせいただくか、事務所までお電話ください。
決定的に重要なのは、返信の期限を書くことです。「追ってご連絡します」だけでは、相談者はいつまで待てばよいのか分かりません。期限が書いてあれば、そのあいだに別の事務所へ問い合わせる動きが減ります。守れる長さで書くことが前提なので、繁忙期に二営業日が守れないなら、三営業日と書きます。
自動返信を用意したら、届いているかどうかを確かめます。事務所のドメインではないアドレスから飛ぶ設定になっていると、迷惑メールに振り分けられる相手が出ます。届いていないことは、受付の側からは分かりません。
事務所の休みと繁忙期の案内
年末年始や連休の前後、事務所が動いていない期間に届く相談があります。何も返らないと、相談者は「対応していない事務所」と判断します。例文は次のような形です。
お問い合わせをいただきありがとうございます。誠に勝手ながら、当事務所は〇月〇日から〇月〇日まで休業とさせていただいております。いただいたご相談には、〇月〇日以降、順にご連絡を差し上げます。お急ぎの場合や、期限が〇月〇日までに迫っている場合は、その旨を件名に添えてご返信ください。優先してご連絡いたします。
期限を件名に書いてもらう一行が効きます。休み明けに受信箱を開いたとき、どれから開けばよいかが件名で分かります。
面談の場所と持ち物の案内
面談の日程が決まったあとに送る文面です。例文は次のような形になります。
ご面談の日程が確定いたしましたのでご案内いたします。日時は〇月〇日〇時から、所要時間はおおむね60分を見込んでおります。場所は下記のとおりで、最寄りの駅から徒歩で参ります。当日は、お手元にある書類をそのままお持ちください。事前に揃える必要はございません。何が必要かは、その場で一緒に確認いたします。
持ち物を細かく指定すると、揃わないことを理由に日程を延ばす人が出ます。相談の段階では、揃っていない状態のまま来てもらったほうが早い。
資料が開けなかったときの連絡
添付や送信された画像が開けないことは頻繁に起きます。例文は次のような形です。
お送りいただいたファイルですが、こちらの環境で開くことができませんでした。お手数をおかけしますが、下記のいずれかの方法で再度お送りいただけますでしょうか。撮り直していただく必要はございません。すでにお持ちの画像を、別の形式で保存してお送りいただければ確認できます。
この文面を持っていないと、毎回書き方に迷い、結果として連絡そのものが遅れます。遅れているあいだ、相談者は送ったつもりで待っています。
追加の資料をお願いするとき
不足を伝える文面は、催促ではなく確認の形にします。例文は次のような形です。
ご相談の内容を確認いたしました。お見積もりをお出しするにあたり、あと二点だけ確認させてください。いずれもお手元にあるものをそのまま撮影していただければ結構です。ご用意が難しいものがありましたら、その旨をお知らせください。別の方法で確認できる場合がございます。
お願いするのは一度に二点か三点までにします。五点並べると、揃えるまで返信が止まります。揃わない一点のせいで、揃っている四点も届かないという状態がいちばんもったいない。
受けられない相談へのお断り
対応していない分野や地域の相談も届きます。断る文面を持っていないと、返信そのものを後回しにしてしまいます。例文は次のような形です。
お問い合わせをいただきありがとうございます。恐れ入りますが、ご相談の内容は当事務所でお引き受けしている業務の範囲外となります。お力になれず申し訳ございません。お住まいの地域を管轄する行政書士会でご紹介を受けられる場合がございますので、そちらへお問い合わせいただくことをおすすめいたします。
断りは早いほど親切です。返さずに放置すると、相談者は待ち続け、期限を逃します。断る文面は、事務所の評判を守る文面でもあります。
差し込みだけで送れる文面
名前と日付と手続きの名称だけを差し込めば送れる文面です。差し込む場所は文面の中で固定しておきます。位置が毎回違うと、入れ忘れが起きます。
面談の日程候補を出す
例文は次のような形になります。
〇〇様、お問い合わせをありがとうございます。〇〇行政書士事務所の△△と申します。いただいた内容をもとに、ご面談のお時間をご用意いたします。下記の三つの候補から、ご都合のよいものを番号でお知らせください。いずれも合わない場合は、ご希望の曜日と時間帯をお知らせいただければ、別の枠をご案内いたします。オンラインでのご面談も承っております。
候補は三つまでに絞ります。五つ並べると、相手は予定を確認するために時間を置くことになり、返信が止まります。番号で返せる形にするのも同じ理由です。
面談の前日の確認
例文は次のような形です。
明日のご面談についてご案内いたします。お時間は〇時から、場所は下記のとおりです。当日は、いまお手元にある書類をそのままお持ちください。揃っていなくて構いません。何が足りないかを一緒に確認いたします。ご都合が変わりました場合は、このメールへの返信でお知らせください。
前日の連絡があると、来ない人が減ります。持ち物を「揃っていなくて構わない」と書いておくのは、揃わないことを理由に来なくなる人を減らすためです。
申請後の進み具合を知らせる
受任したあと、相談者からいちばん多く来る問い合わせが進み具合の確認です。聞かれる前に出しておくと、この問い合わせが減ります。例文は次のような形です。
〇〇様、いつもお世話になっております。ご依頼いただいている件の現在の状況をお知らせいたします。書類の準備が整い、窓口への提出を終えております。次にこちらからご連絡するのは、審査の結果または追加の照会があった時点です。その間、こちらから特にお願いすることはございません。お気づきの点がございましたら、いつでもご連絡ください。
「その間こちらからお願いすることはない」と書いておくのが要点です。書いていないと、相手は自分が何かを待たせているのではないかと気にして、確認の連絡をしてきます。
返事が来ない相手への追いかけ
見積もりを出したあと、返事が来ないまま止まる案件は必ず出ます。例文は次のような形です。
先日はご相談をいただきありがとうございました。お送りしたお見積もりについて、ご不明な点がございましたらお知らせください。ご検討の状況によっては、進め方を変えられる場合もございます。すでに他でお決まりの場合は、お手数ですがそのひとことをいただけますと、こちらの予定の調整が助かります。
最後の一文があると、断りの連絡が返ってきやすくなります。断りが返ってくること自体に価値があります。返事の無い件を検討中として抱え続けると、一覧が対応中の案件で埋まり、本当に返すべき件が埋もれます。
一から書くべき文面
ひな形にしてはいけない文面もあります。混ぜると、ひな形そのものが信用されなくなります。
可否の見通しを伝える文面
「うちの状況で許可が取れるか」への回答は、状況によって変わります。ひな形の文面で返すと、読んだ相手は自分の話が読まれていないと感じます。
ここで書けるのは、見通しそのものではなく、見通しを立てるために何が要るかです。確認したい点を挙げ、それが分かればいつまでに回答できるかを書く。判断の中身に踏み込むのは、資料を見て、必要なら面談をしてからです。
費用の内訳を説明する文面
費用は、手続きの種類と作業の範囲で変わります。初回の返信で金額だけを一行で返すと、その金額が一人歩きします。あとから増えたときに、増えた理由が説明として通りません。
初回に書けるのは、費用の決まり方です。何によって金額が変わるのか、別にかかるものがあるのか、いつ確定するのか。この三点を先に書いておけば、見積もりを出したときの説明が短くて済みます。
行き違いや苦情への返信
進み具合への不満や、行き違いの指摘には、ひな形を使いません。定型の言い回しが混ざった瞬間に、相手は自分が個別に扱われていないと受け取ります。
ここで持っておくとよいのは、文面ではなく手順です。事実を確かめてから返す、確かめるのに時間がかかるなら先に受け取ったことだけを返す、返す前にもうひとりに読んでもらう。手順が決まっていれば、書く内容は毎回違っても、対応の質は揃います。
ひな形に書いてはいけないこと
文面の中身にも線が要ります。行政書士には、法律上の守秘義務が課されています。
行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなつた後も、また同様とする。 出典: e-Gov
説得力を出そうとして、過去に扱った案件の具体的な状況をひな形に書き込んでしまうことがあります。名前を伏せていても、地域と業種と時期が揃えば特定できてしまう場合があります。ひな形は使い回されるので、一度書き込むと、その後の全員に送られます。
もう一つ書かないのが、要件についての断定です。返信に「その条件なら通ります」と書いてしまうと、通らなかったときに文面だけが残ります。書けるのは、確認する事項と、確認できたら回答するという段取りまでです。
初回の返信に必ず入れる要素
型ごとに文面は変わりますが、一往復目に入れる要素は共通です。抜けやすいものから順に挙げます。
一つ目は、受け取った事実です。「確かにお受けしました」の一行があるかどうかで、相手の待ち方が変わります。二つ目は、誰が担当するかです。名前が出ていると、次の連絡先が決まります。三つ目は、いま答えられることと、まだ答えられないことの区別です。答えられない理由が書いてあれば、待たされている感覚は薄れます。
四つ目は、次にこちらがすることと、その期限です。五つ目は、相手にしてほしいことです。ここは一つに絞ります。日程を選ぶことと資料を送ることを同時にお願いすると、どちらも止まる件が出ます。六つ目は、行き違いがあったときの連絡先です。
この六つが入っていれば、文面が短くても返信として成立します。逆に、長い文章でもこのうち二つが抜けていれば、相手は次に何をすればよいのか分からず、返信が止まります。ひな形を見直すときは、文章の巧拙ではなく、この六つが揃っているかで点検します。
件名の付け方も決めておく
文面と同じくらい効くのに忘れられがちなのが件名です。相談者の受信箱には、複数の事務所からの返信が並んでいます。
件名に入れておくのは、事務所名と、相談の中身が分かる一語です。「お問い合わせありがとうございます」だけの件名は、どの事務所からのものか分からず、返信のときに探されません。返信のやり取りが続く案件では、件名を途中で変えないことも決めておきます。変えると、相手の受信箱でスレッドが分かれます。
ひな形をどこに置くか
作った文面が使われるかどうかは、置き場所でほぼ決まります。メールの下書きに保存する形は、探すのに時間がかかり、更新した人以外は古いものを使い続けます。
置き場所の条件は二つです。返信を書く画面から離れずに呼び出せること。そして、直した内容が全員に同時に反映されることです。この二つが揃っていないと、事務所の中に少しずつ違う版が増えます。少しずつ違う版が増えた状態は、ひな形が無い状態より始末が悪い。
最初に用意するのは5本で足ります。自動返信、日程候補、資料の再送のお願い、追加の資料のお願い、お断り。この五つで、届く相談の大半に一往復目を返せます。増やすのは、同じ文面を三回書いたと気づいたときです。
誰が送っても同じになる形にする
ひな形の目的は、速さだけではありません。所長が送っても補助者が送っても、受け取った相談者から見て同じ事務所の返信に見えることのほうが、長い目では効きます。
そのために決めておくのは三つです。一つ目は、名乗り方です。事務所名だけで名乗るのか、担当者の氏名まで出すのか。担当者名を出すと相手は安心しますが、担当が替わったときに引き継ぎの一言が要ります。二つ目は、敬称と呼び方です。法人からの相談で、担当者の個人名で返すのか、会社名で返すのか。三つ目は、返信の時間帯です。
時間帯は意外と効きます。深夜に返信が届くと、相談者は返信を急かされたように感じることがあります。一方で、期限が迫っている相談では、夜のうちに一行返っているだけで安心されます。事務所として、何時から何時のあいだに送るかを決めておくと、書く側も迷いません。決めた時間の外に書いた返信は、送信を予約しておけば済みます。
返信を止めないための当番を決める
ひな形が揃っていても、返す人が決まっていなければ止まります。行政書士事務所は外出が多い業種なので、届いた時間に事務所に人がいないことが普通にあります。
決めるのは、その日に一往復目を返す人です。誰が受任するかは後で決めればよく、一往復目は誰が返しても構いません。受け付けたことと、次にこちらがすることだけを返す文面なら、案件の中身を知らなくても送れます。
当番の効き目は、繁忙期に出ます。許可の更新が重なる時期や、公募の締切前は、相談が一気に増えます。全員が自分の案件で手一杯になるので、新しく届いた相談は誰も開かなくなります。その日の当番が決まっていれば、少なくとも一往復目は出ます。
当番が回るには、届いたものが一覧で見える必要があります。個人の受信箱に届く形だと、当番が代わりに開けません。当番制とひな形は、置き場所の話とつながっています。
電話で受けたときにも同じ型を使う
電話は無くなりません。期限が迫っている相談ほど電話が早い。ただ、電話で受けた内容が口頭のまま消えると、返信の型が使えません。
電話で受けたら、その場で件を起こして、聞き取った内容を書き込みます。そのうえで、面談の日程候補や資料のお願いを、いつもの文面で送ります。電話で話した内容を文面で残すことには、もう一つ効き目があります。言った言わないの行き違いが減ります。
ひな形が崩れる場面
前の相談者の名前が残る
いちばん多い事故です。差し込みの位置が本文の中ほどにあると、上書きし忘れます。防ぎ方は二つで、差し込む場所を文面の冒頭に固定することと、差し込みが空のまま送れない形にすることです。
手続きの名前が合っていない
許認可の名称は似たものが多く、ひな形を流用したときに前の手続きの名前が残ります。相談者は自分が問い合わせた手続きの名前を知っているので、違っていればすぐに分かります。手続きの名前は差し込みにするか、名前を書かずに「ご相談の手続き」とだけ書いておく手もあります。
使わない文面が増えて、探せなくなる
三つ目の崩れ方は、数が増えることです。困るたびに一本足していくと、二年もすれば何十本かになります。似た文面が並ぶと、どれを使うのが正しいのか分からなくなり、結局その場で書くことになります。
防ぎ方は、増やすときに減らすことです。新しく足したら、その文面に置き換わった古いものを消す。半年に一度、直近で一度も使っていない文面を外す。10本を超えたら見直す、という目安を持っておくと、増えっぱなしになりません。
宛先を間違える
複数の相談者に同じ案内を出すとき、宛先の欄の使い方を間違えると、相談者どうしにアドレスが見えます。行政書士事務所の場合、そのアドレスの持ち主が何かの相談をしていること自体が知られます。一斉の案内を送る場面があるなら、宛先の入れ方を手順として決めておきます。
ひな形を活かす受け皿を選ぶときの軸
文面を整えても、届いたものが受信箱に流れてくるだけでは、返信の状況が残りません。受け皿を比べるときの軸を整理します。
第一の軸は、件ごとに返信の状況が残るかどうかです。返したかどうかが残らないと、二重返信と返し忘れは必ず起きます。無料で使える定番の道具と、送信されたあとの扱いがどう違うのかは、Googleフォームとの比較で、回答が表に溜まったあとに何が起きるかという観点から整理されています。
第二の軸は、返信の画面からひな形を呼び出せるかどうかです。すでにサイトにフォームを置いている事務所であれば、Contact Form 7との比較に、送信の通知だけが飛ぶ状態と、送信後の管理まで持つ状態の違いがまとめられています。
第三の軸は、担当を件に付けられるかどうかです。誰が返すのかが決まっていないと、ひな形があっても最初の一歩が出ません。実際にどう動くのかは動くところを見るで触れます。送信されたあとの道具がそろっているかどうかは、フォームを作る画面を見ても分かりません。どこまでが基本に含まれるのかは料金で先に見ておくと、比べる時間が短くなります。
ひな形を入れたあと、何を見て良し悪しを判断するか
ひな形を作ったら、効いているかどうかを確かめる材料が要ります。見るべきものは三つあります。
一つ目は、届いてから最初の返信までにかかった時間です。ここが縮んでいなければ、詰まっているのは文面ではなく選別です。二つ目は、一往復目で必要な材料が揃った件の割合です。揃わない型があれば、その型の文面に足りない項目があります。三つ目は、返信を出したまま動きが無い件の日数です。
この三つは、件ごとの記録が残っていれば数えられます。受信箱で受けている限りは数えられません。同じ構造は他の受付でも繰り返し出てくるので、受け取ってから返すまでの流れは問い合わせの受付に整理されています。
数えると、ひな形の効き目が型ごとに違うことも見えます。自動返信を入れた直後は、返信までの時間が変わっていないのに、催促の連絡だけが減ります。相談者が待てるようになったからです。逆に、日程候補の文面を入れると、面談までの日数がはっきり縮みます。どの数字が動いたかで、次にどの文面を足すべきかが決まります。感覚で足していくと、使われない文面だけが増えます。締切のある公募や補助金の受付を扱っているなら、期限のある件を先に出す考え方をまとめた助成金・公募の受付も合わせて見ておくと、繁忙期の並べ方の参考になります。
最後に順番の話をします。返信のひな形は、文面から作り始めると使われません。先に届いている相談を型に分け、一往復で終わる型から文面を用意する。そして置き場所を、返信を書く画面のすぐ横に決める。この順番で作ると、五本のひな形でも返信の速さははっきり変わります。
Q1. 行政書士事務所の返信のひな形は、何本くらい用意すればよいですか?
最初は5本で足ります。受付を知らせる自動返信、面談の日程候補、資料が開けなかったときの連絡、追加の資料のお願い、受けられない相談へのお断り。この五つで、届く相談の大半に一往復目を返せます。増やすのは、同じ文面を三回書いたと気づいたときです。最初から多く作ると、選ぶ時点で手が止まって使われなくなります。
Q2. 費用を聞かれたとき、ひな形で金額まで答えてもよいですか?
初回の返信で金額だけを一行で返すのはおすすめできません。その金額が一人歩きし、あとから増えたときに理由の説明が通らなくなります。ひな形に入れるのは、費用の決まり方です。何によって金額が変わるのか、別にかかるものがあるのか、いつ確定するのか。この三点を書いておけば、見積もりを出したときの説明が短くて済みます。
Q3. 許可が取れるかどうかの見通しは、ひな形で返してよいですか?
定型の文面で返すと、読んだ相手は自分の話が読まれていないと受け取ります。可否は状況によって変わるので、ひな形にするのは見通しそのものではなく、見通しを立てるために確認したい点と、それが分かればいつまでに回答できるかという段取りです。判断の中身に踏み込むのは、資料を確認し、必要なら面談をしてからにします。
Q4. ひな形はどこに置くと使われますか?
条件は二つです。返信を書く画面から離れずに呼び出せることと、直した内容が全員に同時に反映されることです。メールの下書きに保存する形は探すのに時間がかかり、更新した人以外は古い版を使い続けます。事務所の中に少しずつ違う版が増えた状態は、ひな形が無い状態より始末が悪くなります。返信を書く画面のすぐ横に置き、直すときは一か所だけを直す形にします。
Q5. ひな形を作っても返信が速くならないのはなぜですか?
返信の時間を食っているのは、書く作業だけではないからです。どれから返すかを決める選別、前回どこまで返したかを思い出す作業、そして文面を考える作業の三つがあり、ひな形が効くのは三つ目だけです。届いたものが一覧で並び、返信の状況が件ごとに残る形にすると、残りの二つが縮んで、ひな形が初めて力を出します。文面より先に置き場所を見直してください。
