行政書士事務所の問い合わせ窓口を開けると、相談の文章より先に添付ファイルが目に入ります。事務所の中を撮った写真、車両の側面を撮った写真、スマートフォンで撮っただけの登記事項証明書、向きが横に倒れたままの在留カードの画像。許認可の相談と書類の受け取りを窓口で受けている事務所なら、初回の問い合わせに現物が付いてくるのはむしろ普通の状態です。
問題は、それがメールの添付として飛んでくることです。所長ひとりと補助者数名で回している事務所ほど、添付は静かに詰まりを増やします。開けない、送れない、誰の資料か分からない、返したかどうかがどこにも残らない。そして気づいたときには、事務所のメールの受信箱が、身分証と決算書と戸籍の置き場になっています。
この記事では、行政書士事務所の受付で写真や書類をどう受け取るかを決めるために、いま何が詰まっているのかを分解し、受け取り方を変えるときに先に決めておくことを順番に並べます。どの手続きにどの資料が要るかという判断そのものには触れません。要件は所管の窓口で確かめる話です。ここで扱うのは、届いたものを受けて返す側の回し方だけです。
行政書士事務所の受付には、文章より先に現物が届く
許認可の相談は、現物を見ないと話が先へ進まない
行政書士事務所に届く問い合わせのうち、料金だけを聞くものは実は少数です。多いのは「うちの状態で許可が取れるのか」という可否の相談と、「いま手元にある書類でどこまで揃っているのか」という確認です。どちらも、言葉だけでは前に進みません。
相談してきた側も、それが分かっています。だから最初から現物を送ってきます。営業所として使っている部屋の写真、車体に表示を入れた車両の写真、店舗の間取りが分かる図面、法人の登記事項証明書、決算書の一部、パスポートと在留カードの両面、戸籍の束をスマートフォンで一枚ずつ撮ったもの。これは面倒な相談者の行動ではなく、話を早く進めようとしている行動です。
受ける側から見ても、現物があるほうが助かります。何も無い状態で「たぶん大丈夫です」とは返せません。手元に画像があれば、必要な資料がどれくらい足りないのか、面談を先に入れるべき案件なのか、そもそも受けられる案件なのかを、返信の時点で当たりを付けられます。写真は事務所にとっても判断の材料です。
相談する側は、送り方を選んでいない
見落とされがちなのが、送る側は送信の手段をほとんど選んでいないという点です。事務所のサイトに書いてあるメールアドレスをタップすれば、スマートフォンのメールアプリが開きます。そこに用意されているのは、添付のクリップのマークだけです。だから添付になります。
同じ人が、事務所の公式アカウントのトークでは画像を五枚まとめて送り、紹介元の担当者を経由するときは文字だけを書いてきます。行動が変わっているのではなく、目の前にある入り口の形が変わっているだけです。受け取り方を変えたいなら、まず入り口の形を変える必要があります。案内文やお願いで送り方を矯正しようとしても、うまくいきません。
期限が決まっているから、届く時刻がばらける
許認可の相談には、たいてい期限が付いています。許可の有効期限、在留期間の満了日、補助金や公募の締切、契約の開始予定日。相談する側は、その期限が近づいて初めて動きます。
そのため、問い合わせは事務所の営業時間に合わせて届きません。深夜、休日、連休の初日に届きます。窓口の担当者からしばしば出るのは、月曜の朝に受信箱を開くと、土日に届いた添付付きのメールが並んでいて、どれから手を付けるべきかが分からないという話です。届いた順に開くしかない状態は、期限が近い案件を後回しにする状態でもあります。
メール添付で受け取ると、事務所の何が止まるのか
開けない、送れない
まず単純に、開けないファイルが届きます。近年のスマートフォンで撮った画像は、標準の設定のままだと従来と違う形式で保存されることがあり、事務所のパソコンの環境によっては開けません。送った本人は自分の画面で普通に見えているので、開けないことに気づきません。「送りました」「見られませんでした」の往復が生まれ、そのあいだ案件は一歩も進みません。
逆の方向でも止まります。多くのメールサービスで、添付できる容量の上限はおおむね25MB前後に設定されています。最近のスマートフォンは写真一枚が数MBあるので、事務所の内部を四方から撮った写真に図面を足せば簡単に超えます。しかも送信のエラーは送った側にしか返りません。事務所の側からは「問い合わせが来ていない」としか見えないので、返事を待っている相談者に気づけません。待たされた側は、別の事務所に相談します。
三つ目に、パスワードを別便で送る形式の圧縮ファイルが届きます。送る側は丁寧なつもりですが、受ける側は二通のメールを行き来し、解けなければまた聞き返すことになります。安全のための手順が、そのまま受付の停滞になっています。
ファイル名が「IMG_1234」のまま届く
添付で届いた画像のファイル名は、ほぼ例外なく撮影した機器が自動で付けた連番です。スキャナを通した書類も「スキャン0001」のような名前で届きます。誰の資料なのかは、メールの本文と並べて初めて分かります。
ところが受付の作業は、メールを開いたままでは終わりません。ファイルを保存し、案件のフォルダに置き、あとで見返します。その瞬間に、資料と相談者のつながりが切れます。連番のファイルが何十個も並んだフォルダを開いて、どれが今日の相談の分なのかを探す作業は、意外なほど時間を食います。
探し当てられなかったときに起きるのは、単なる遅延ではありません。別の相談者の資料を見ながら返信してしまう事故です。行政書士事務所に届く資料は、法人の決算の数字や、家族関係や、在留の状況が写っています。取り違えたまま返信すれば、内容がずれるだけでは済みません。
受信箱が、身分証と決算書の置き場になる
いちばん重いのはここです。許認可の相談に付いてくる資料は、たいてい重い個人情報と企業情報です。身分証の画像、住民票、戸籍、納税証明書、決算書、賃貸借契約書。相続の相談なら、家族の氏名と生年月日が並んだ書類がそのまま届きます。
メールの添付で受け取るということは、それらが受信箱の中に無期限に溜まり続けるということです。検索すれば出てきます。転送すれば複製が増えます。補助者が自分の端末でメールを見ていれば、その端末にも残ります。誰がいつ見たのかは、どこにも残りません。
個人情報の保護に関する法律は、事業者に対して次のように定めています。
個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
必要かつ適切な措置が具体的に何を指すかは、事務所の規模や取り扱う中身によって変わります。断定はできませんし、判断に迷う場面では所管の窓口や専門家に確かめてください。ただ、受信箱に身分証の画像が何年ぶんも平置きされている状態が、後から説明しやすい状態でないことは分かります。
行政書士には、法律上の守秘義務も課されています。
行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなつた後も、また同様とする。 出典: e-Gov
守秘義務は、漏らさない努力の話であると同時に、漏れにくい置き場を選ぶ話でもあります。受け取る場所を決めることは、その前提を作る作業です。
一件の資料が、複数のメールに分かれて届く
添付には容量の上限があるので、送る側は資料を分けて送ります。一通目に本文と写真二枚、二通目に残りの写真、三通目に「先ほどの続きです」という文面だけ。件名が同じとは限りませんし、途中で件名を変えてくる人もいます。
受け取る側は、この三通を一件として束ねる作業を頭の中で行います。束ね損ねると、資料が揃っていないと判断して催促してしまい、相手からは「送ったのに」と返ってきます。一件がどこからどこまでなのかが機械的に決まらない形は、それだけで手戻りを生みます。
分かれて届く問題は、担当が二人以上いる事務所でさらに重くなります。一通目を見た人と二通目を見た人が違えば、どちらも「資料が足りない」と判断します。二人が別々に催促のメールを出して、相談者から「同じことを二度聞かれた」と言われる。件がひとまとまりで見えていないことの代償は、相談者の側にも渡っています。
添付をやめると決めたとき、最初に置き換えるもの
入り口にファイルの欄を作る
添付をやめるというのは、資料を受け取らないという意味ではありません。資料は受け取ったほうがいい。変えるのは受け取る場所です。
具体的には、相談の入り口を送信フォームにして、その中にファイルを選ぶ欄を置きます。すると三つが同時に片づきます。第一に、資料と本文が同じ一件として届くので、ファイル名が連番でも誰の分か分かります。第二に、届く先が受信箱ではなくなるので、メールを見られる人と資料を見られる人を別々に決められます。第三に、送る前に何を送ればよいのかを画面上で伝えられます。
欄は多くする必要がありません。許認可の相談の受付なら、氏名または法人名、連絡先、相談したい手続きの種類、いまの状況、期限の有無、資料。この6項目で、返信に必要な材料はほぼ揃います。欄が増えるほど途中でやめる人が増えるので、足したくなったときは「その欄が無いと返信できないか」を基準に削ります。
受け取る形式と枚数を、先に決める
欄を作るときに一緒に決めておくのが、受け取る形式と枚数です。何でも受け取れる状態にしておくと、動画が届きます。事務所の中を歩きながら撮った動画は容量が大きく、開くのに時間がかかり、どこを見ればよいのかも分かりません。
許認可の相談で必要なのは、たいてい静止画と書類の画像です。相談の段階なら、状況が分かる写真が数枚と、手元にある書類の写しが数点。上限を10点ほどに置いておけば、送る側も迷いません。「これも送ったほうがいいですか」と聞かれてから追加でやり取りする往復が減ります。
形式は一般的な画像と書類の形式に絞り、絞ったうえで、うまく送れなかった人のための逃げ道を一つだけ用意します。逃げ道が無いと、送れなかった人は結局メールに添付して送ってきます。
もう一点、書類の写真には読める大きさが要ります。文字が潰れていれば、結局は撮り直しの依頼になります。送信の画面に「文字が読める明るさで、影が入らないように撮ってください」と一行あるだけで、撮り直しの往復は目に見えて減ります。
何のために使い、いつまで置くかを、送信画面に書く
資料を送ってもらう画面には、その資料を何のために使い、どれくらい置いておくのかを書きます。法律は、取得の場面について次のように定めています。
個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
送信画面に一行あるかどうかで、後の運用がまるで変わります。「ご相談への回答と、お見積もりの作成にのみ使います」と書いてあれば、資料を見る側の迷いも消えます。逆に何も書いていないと、受任に至らなかった案件の資料をどう扱うのかという判断が、案件ごとに発生します。
受け取った資料を、どこに置くか
台帳とフォルダを別々に置かない
受け取りをフォームに変えても、受け取ったあとで別のフォルダに移してしまうと、元の詰まりが戻ります。連番のファイルが並んだフォルダと、相談の一覧が書かれた表を、人間の記憶でつなぐことになるからです。
置き場所の理想は単純で、その一件を開けば資料も本文も返信の状況も同じ画面に出ることです。所長がひとりで相談を回している事務所なら、開く場所が一つであることの効き目は大きい。探す時間が消えるだけでなく、探し当てられずに別の相談者の資料を見る事故も消えます。
同じ画面に置く効き目は、人が増えたときにさらに出ます。建設業の許可は所長、在留資格の相談は担当の補助者、というように扱いが分かれている事務所では、件ごとに担当が分かる状態になっていれば、口頭で回す手間が消えます。
見られる人を絞る
置き場所を決めたら、次に決めるのは見られる人です。全員が全部見られる状態は、いちばん楽で、いちばん説明しにくい。法律は、人を使って取り扱わせる場面について次のように定めています。
個人情報取扱事業者は、その従業者に個人データを取り扱わせるに当たっては、当該個人データの安全管理が図られるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
事務所の規模なら、絞り方は難しくありません。許認可の相談を見るのは、所長と担当の補助者。求人の応募を見るのは、所長だけ。この二つを混ぜないだけで、状態はかなり良くなります。応募者の履歴書と、相談者の身分証が同じフォルダに並んでいる状態は、どちらの側から見ても望ましくありません。
絞ったあとは、誰が何を見られるのかを紙に書いて残しておきます。人が入れ替わったときに、書いたものが無いと元に戻ります。
いつ消すかを、受け取る前に決める
保管の話でいちばん抜けるのが、消す側です。法律は、使う必要がなくなったデータについて次のように定めています。
個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
行政書士の業務には、法令や会則で保存が求められる帳簿や書類があります。何をどれだけ残すべきかは、受任した業務の中身によって変わるので、所属する会や専門家に確かめてください。ここで決めるのは、受任に至らなかった相談の資料をどうするかです。
見積もりだけで終わった相談の資料が、事務所のどこかに何年も残っている状態は、決めていないから起きています。相談から動きが無いまま6か月経った件の資料は消す、というような形で期間を一つ置けば、消す作業を月に一度の作業として組み込めます。思い出したときにやる作業は、いずれやらなくなります。
相談の段階では、まだ受け取らなくてよいものがある
見積もりの前に、身分証まで受け取らない
受け取る場所を整えると、今度は集めすぎが起きます。フォームに欄を並べるのは簡単なので、初回の相談から身分証の画像や住民票の写しまで求めてしまう事務所があります。
初回に必要なのは、可否の見当を付けて見積もりを出すための材料だけです。受任が決まってから改めて求めればよい資料を最初から集めると、二つの損が出ます。一つは、送る手間が重くて相談そのものをやめる人が出ること。もう一つは、受任しなかった案件の重い資料が事務所に残ることです。集めた資料は、集めた時点から守る対象になります。
段を分けるのは、フォームを二つに分けるだけで足ります。相談の入り口では状況と期限だけを聞き、受任が決まった案件にだけ資料の提出画面を案内する。手間は増えません。
番号が写り込む書類に気をつける
もう一つ、事務所側で線を引いておきたいのが、個人を識別する番号が写り込む書類です。相談者は親切のつもりで、通知のカードや、番号が印字された住民票をそのまま撮って送ってきます。
こうした番号を含む情報は、通常の個人情報とは別枠で扱いが定められています。取得してよい場面や保管の方法については判断が分かれるところなので、所管の窓口や専門家に確かめてください。受付の側でできるのは、送信の画面に「番号の記載がある書類は、この時点では送らないでください」と書いておくことです。届いてしまってから消す作業より、届かないようにするほうがはるかに軽い。
入り口が複数あるとき、どこへ寄せるか
事務所の窓口は、たいてい四つ以上ある
行政書士事務所への相談は、一か所には来ません。事務所のサイトのフォーム、サイトに載せたメールアドレス、事務所の公式アカウントのトーク、電話、そして紹介元の担当者からの転送。少なく見ても5つの入り口があり、それぞれから別の相談が届きます。
厄介なのは、同じ人が複数の入り口を使うことです。電話で概要を話したあとに、資料だけをメールで送ってくる。フォームから送ったあとで、追加の写真をトークで送ってくる。ひとつの相談が三か所に分かれると、返した気になって返していない状態が生まれます。
寄せ方を決めるとき、全部を一本にするのは現実的ではありません。紹介元からの連絡経路を変えることはできませんし、電話をやめれば急ぎの相談が届かなくなります。決めるべきなのは、どこを資料の入り口にするかという一点です。
重いものだけ、置き場を一つにする
現実的な寄せ方は、初回の接触は今までどおり各窓口で受けたうえで、写真や書類のような重い中身だけを一か所に寄せる形です。「資料はこちらのページからお送りください」という一行と、その先のフォーム。これを各窓口の定型文に入れておきます。
この形の利点は、切り替えを段階的にできることです。全部を一度に移すと、常連の紹介元からの連絡が届かなくなる時期が生まれます。重い中身から順に移せば、届かなくなって困るものが先に安全な場所へ移ります。
もう一つの利点は、寄せた先で数えられるようになることです。どの窓口から何件が流れてきたのかが分かれば、次に力を入れる窓口も見えます。紹介からしか相談が来ない事務所と、検索から直接来る事務所では、置く一行の場所が変わります。
電話で受けたものを、その場で入り口に流す
電話は無くなりません。期限が迫っている相談ほど電話が早い。ただ、電話で受けた内容を紙のメモに書いて机に置く運用が残っていると、そこだけが管理の外に出ます。
電話で受けたときに、事務所側から資料の送信画面を案内する形にすると、そこが埋まります。「いまお伺いした内容の確認と、お手元の書類をこちらから送っていただけますか」と伝えて、案内の短い文面を送る。相手にひと手間を掛けることになりますが、資料が要る相談なら、どのみち何かの手間は発生します。
紙のメモは、その日のうちに誰かが見なければ消えます。書いた本人が外出している日に、そのメモの意味を他の人が読み解くのは難しい。電話で受けた内容も件として残る形にしておくと、不在の人の分を代わりに返せます。
受け取り方を変えた直後に起きるつまずき
案内を出しても、しばらくは添付が届く
入り口を変えた直後、添付のメールはゼロにはなりません。以前に控えた事務所のメールアドレスを使う人がいますし、検索で古いページに着く人もいます。ここで「案内したのに読まない」と考えると運用が続きません。
続く形にするには、添付で届いた分の受け方を先に決めておきます。届いたら、フォームの案内を返して送り直してもらうのか、それとも事務所側でその一件をフォーム側に写して続けるのか。どちらでもよいのですが、決めておかないと、届いた相手によって扱いが変わります。
多くの事務所に合うのは、後者です。期限が近い相談者に送り直しをお願いすると、そこで離脱します。受ける側が写すほうが早い。写す作業が発生するのは移行の期間だけで、案内が行き渡れば自然に減ります。
通知だけが飛んできて、開くのを忘れる
もう一つよく起きるのが、フォームに変えたことで、かえって見落としが増える時期です。受信箱で受けていたころは、他のメールと並んで目に入っていました。専用の場所に届くようになると、見に行かないと見えません。
対処は単純で、届いたことを知らせる先を、いま一日に何度も開いているものに合わせることです。メールを一日中見ている事務所ならメール、業務用のチャットを開きっぱなしにしているならそちら。習慣を変えずに済む場所に通知を出します。
そのうえで、開かないと閉じられない状態にしておきます。返していない件が一覧の上に残り続ける形なら、見落としは翌日に持ち越されません。通知だけを飛ばして、残っているかどうかがどこにも出ない形が、いちばん抜けます。
全部の欄を必須にしてしまう
三つ目のつまずきが、欄の作り方です。せっかく作るのだからと全部の欄を必須にすると、送信の直前でやめる人が出ます。特に効くのが電話番号と法人名です。相談の段階では所属を明かしたくない人が一定数いて、必須にすると、その人たちはそのまま離れます。
必須にするのは、返信ができなくなる欄だけです。呼び名と、返信先の連絡先が一つ。あとは任意にしておきます。任意にしても、必要な人はちゃんと書きます。書かれなかった項目は、返信のときに聞けば済む話です。
資料の欄も、必須にしないほうが結果は良くなります。手元に何も無い段階で相談してくる人もいますし、撮るのが面倒で送信をやめる人もいます。資料があると回答が早くなることを一行で伝えておけば、必要な人は付けてきます。
受け取り方を変えるときに見る比較の軸
いま使っている入り口を変えるとき、どこを比べればよいのかを整理します。作りやすさではなく、届いたあとに自分で回せるかを軸にします。
第一の軸は、送る側にアカウント登録を求めるかどうかです。求める形だと、相談の途中でやめる人が出ます。許認可の相談は期限に押されて思い立った瞬間に送られるものなので、手前に壁を置くと届く数がそのまま減ります。無料で使える定番の道具と、送信されたあとの扱いがどう違うのかは、Googleフォームとの比較で、回答が表に溜まったあとに何が起きるかという観点から整理されています。
第二の軸は、届いたあとに担当と状況を持たせられるかどうかです。返したかどうかが件ごとに残らないと、二重返信と返し忘れは必ず起きます。すでにサイトにフォームを置いている事務所であれば、Contact Form 7との比較に、送信の通知だけが飛ぶ状態と、送信後の管理まで持つ状態の違いがまとめられています。
第三の軸は、ファイルの受け取りが標準で付いているかどうかです。資料の欄を後から足せるか、上限や形式を指定できるか、届いたファイルが本文と同じ画面に並ぶか。この三点が揃っていないと、結局はフォルダとの往復が残ります。
実際にどう動くのかを先に見たい場合は、動くところを見るで、送信されたあとの画面がどうなっているかを触れます。作る画面よりも、届いたあとの画面のほうを長く見たほうが判断がしやすい。送信されたあとの道具がそろっているかどうかは、作る画面を見ても分からないからです。料金の考え方も、比べる前に料金で、どの範囲までが基本に含まれるのかを見ておくと迷いが減ります。
受け取り方を変えたあと、何を見て良し悪しを判断するか
入り口を変えたら、変えた効果を見る材料が必要です。感覚で判断すると、変えたことを正当化する方向に記憶が寄ります。
見るべきものは三つあります。一つ目は、資料が付いた相談の件数です。添付が届かなくなった代わりに、そもそも資料が届かなくなっていたら、入り口の作りに問題があります。二つ目は、最初の返信までにかかった時間です。相見積もりの中で読まれる以上、返信の速さがそのまま受任につながるので、ここが縮んでいなければ変えた意味が薄い。三つ目は、返していない件が残った日数です。
この三つは、どれも件ごとの記録が残っていれば数えられます。逆に言えば、受信箱で受けている限りは数えられません。数えられる状態にすること自体が、入り口を変える理由の一つです。
同じ構造は、行政書士事務所以外の受付でも繰り返し出てきます。届いたものに写真や書類が付いてきて、その置き場と担当が決まっていないと詰まる。どの場面でどう詰まるのかは、問い合わせの受付に、受け取ってから返すまでの流れとして整理されています。補助金や公募の申請支援を扱っている事務所なら、締切のある受付をどう捌くかをまとめた助成金・公募の受付のほうも合わせて見ておくと、期限のある件を先に出す並べ方の考え方が分かります。
最後に、順番の話をします。資料の受け取り方を変えるとき、多くの事務所は「安全な保管方法」から考え始めます。しかしそこから始めると、決めることが多すぎて止まります。先に決めるのは、どこで受け取るかです。受け取る場所が一つに決まれば、見られる人を絞る話も、いつ消すかの話も、その一か所についてだけ決めればよくなります。受信箱と個人の端末とフォルダに散らばったまま安全を確保しようとするから、終わらないだけです。
Q1. 相談の資料をメールの添付で受け取ることは、そもそも問題があるのですか?
禁止されているわけではありません。問題は、受信箱に身分証や決算書の画像が無期限に溜まり、誰がいつ見たかも残らない状態になりやすい点です。個人情報の保護に関する法律は安全管理のために必要かつ適切な措置を求めており、行政書士には守秘義務も課されています。何が適切かは事務所の規模と扱う中身で変わるため、判断に迷う場面では所管の窓口や専門家に確かめてください。
Q2. 相談者から資料が送れないと言われます。どこを直せばよいですか?
まず容量です。多くのメールサービスで添付の上限は25MB前後で、最近のスマートフォンで撮った写真を数枚と図面を付ければ簡単に超えます。送信のエラーは送った側にしか返らないので、事務所側は届いていないことにすら気づけません。送信フォームにファイルの欄を置き、受け取る点数と形式を先に決めておくと、この往復がなくなります。
Q3. 初回の相談で、どこまでの資料を受け取ればよいですか?
初回に必要なのは、可否の見当を付けて見積もりを出すための材料だけです。身分証や住民票の写しは、受任が決まってから改めて求めれば足ります。最初から重い資料を求めると、送る手間で相談そのものをやめる人が出るうえ、受任しなかった案件の資料が事務所に残ります。相談用と提出用でフォームを二つに分けておくのが実務的です。
Q4. 受任に至らなかった相談の資料は、いつまで置いておけばよいですか?
業務に関して保存が求められる帳簿や書類は別に定めがあるため、そちらは所属する会や専門家に確かめてください。決めるべきなのは、受任しなかった相談の資料です。相談から動きが無いまま6か月経った件は消す、といった形で期間を一つ置けば、削除を月に一度の作業として組み込めます。決めていないと事実上の永久保存になります。
Q5. 個人を識別する番号が写った書類が送られてきたときは、どうすればよいですか?
番号を含む情報は通常の個人情報とは別枠で扱いが定められており、取得してよい場面や保管の方法は判断が分かれます。所管の窓口や専門家に確かめてください。受付の側でできるのは、届かないようにすることです。送信画面に「番号の記載がある書類はこの時点では送らないでください」と一行置けば、消す作業そのものが発生しにくくなります。
