学習塾の問い合わせフォームの項目を見直したいとき、たいていの人が最初にやるのは「他の塾のフォームを見に行くこと」です。ところが並べて見ても、聞いている項目の数は塾によってまるで違います。氏名とメールアドレスだけの塾もあれば、学年から成績から志望校まで15項目近く並べている塾もあります。どちらが正しいのかは、フォームの見た目からは決まりません。決まるのは、届いたあとに誰が何をするかです。この記事では、体験授業と入塾の問い合わせを受けて返す立場から、最初の1通で必ず聞くこと、2通目に回してよいこと、そもそも聞かないほうがよいことを分けて整理します。
学習塾の問い合わせは、送る人と通う人が別々である
フォームの項目でつまずく塾のほとんどが、この一点を設計に反映していません。他の業種の問い合わせフォームは、送信した人がそのままサービスを受ける人です。学習塾は違います。送信するのは保護者で、通うのは子どもです。名前の欄が1つしかないフォームは、この時点ですでに情報が足りていません。
保護者が送り、生徒が通う
届いた問い合わせに「山田」とだけ書かれていて、返信で「山田さんの学年は」と聞き直すやりとりが発生している塾は珍しくありません。保護者の氏名と生徒の氏名は別々の欄にするのが基本です。ただし、生徒のフルネームまで最初の1通で必要かというと、そこは判断が分かれます。体験授業の予約を確定させる段階では必要ですが、まだ資料を見たいだけの段階では過剰になります。
現実的な落としどころは、保護者氏名を必須にし、生徒の呼び名か氏名を任意にする形です。任意にしておくと、書ける人は書き、書きたくない人は空欄のまま送信できます。空欄で届いたら、返信の中で「体験のご予約に進む場合はお子さまのお名前をお知らせください」と自然に聞けます。最初に全部そろえようとせず、返信のやりとりの中で埋めていくのが、離脱を減らしながら必要な情報を集める順序です。
さらに気をつけたいのが、連絡先の持ち主です。メールアドレスと電話番号は保護者のものであって、生徒のものではありません。ところが高校生の問い合わせでは、本人が自分のアドレスから送ってくることがあります。この場合、返信の文面も、体験の日程調整の相手も、料金の説明の相手も変わります。誰から届いたのかを判別する欄を用意しておくと、返信を書く人が迷いません。
問い合わせの中身は大きく5つに分かれる
学習塾に届く問い合わせは、細かく見ればきりがありませんが、返信の手順で分けると5種類に収まります。体験授業の申し込み、教室見学の申し込み、資料と料金の請求、空き状況や時間割の確認、そして転塾や進路の相談です。この5つは、返信までにかかる手間がまったく違います。
資料と料金の請求は、決まった案内を送れば終わります。空き状況の確認は、時間割を見て在籍数を数えれば答えられます。ところが体験授業の申し込みと転塾の相談は、日程を合わせ、担当講師を決め、場合によっては教室長が電話をかけ直すところまでいきます。同じ受信箱に混ざったまま処理しようとすると、5分で終わる問い合わせと3日かかる問い合わせが同じ列に並びます。列が長く見えるので、短いものから片づけたくなり、重いものが後回しになります。
だからフォームには「どのご用件ですか」に相当する選択肢を必ず置きます。自由記述にしてはいけません。自由記述で届いた文章は、読まないと分類できません。選択肢にしておけば、届いた時点で振り分けが済んでいます。選択肢の文言は塾の言葉ではなく、保護者の言葉にします。「入塾説明会」より「まずは話を聞きたい」のほうが、迷っている保護者には選びやすい表現です。
時期によって届く中身が入れ替わる
学習塾の受付には、はっきりした山があります。新学年が始まる前の2月から3月、夏期講習の申し込みが集中する6月から7月、そして受験直前期の冬です。山の時期は問い合わせの中身も変わります。春は入塾の相談、夏と冬は講習だけの単発申し込み、受験直前は転塾と補習の相談が増えます。
フォームの項目を1年中同じにしておくと、山の時期に必ず不足が出ます。夏期講習の申し込みには「受講したい教科」と「参加できる日程の期間」が要りますが、通常期の入塾相談にその欄は不要です。項目を足したり引いたりできない仕組みだと、通年で最大公約数の長いフォームを置くことになり、閑散期の問い合わせまで重くなります。季節ごとに受付の窓口を分けられるかどうかは、フォームを選ぶときの実務的な判断材料になります。イベントの申し込みでは、期間の決まった申し込みを別の窓口として立てて、終わったら閉じるという受け方を整理しています。講習の受付はこの形に近く、通年の入塾相談とは分けて考えたほうが回ります。
最初の1通で必ず聞く項目
必ず聞く項目は、次の返信を書くために欠かせないものだけに絞ります。判断の基準ははっきりしていて、その欄が空欄だと返信が書けないかどうかです。空欄でも返信が書けるなら、それは必須ではありません。
保護者の氏名と、返信が届く連絡先
氏名は姓と名を分けても分けなくても構いませんが、ふりがなの欄は残す価値があります。学習塾の返信は電話に切り替わる場面が多く、読み方が分からないまま電話をかけると最初の一言で詰まります。ふりがなを任意にしている塾もありますが、電話で追いかける運用をしているなら必須にしたほうが結果的に速くなります。
連絡先はメールアドレスと電話番号の両方を置きます。どちらか一方でよいという設計にすると、返せない相手が必ず出ます。メールアドレスは打ち間違いが起きるので、送信前に確認できる仕組みがあると差し戻しが減ります。電話番号は、体験の前日確認や当日の急な変更で使います。番号を必須にするとためらう保護者もいるため、必須にするなら「体験当日のご連絡にのみ使用します」と欄のそばに書き添えるのが親切です。
もうひとつ、返信が届かない事故を減らす工夫があります。携帯キャリアのアドレスで受信拒否の設定をしている保護者は今も一定数います。フォームの完了画面と自動返信の両方に「返信が届かない場合は迷惑メールフォルダをご確認ください」と入れておくと、届いていないのに催促が来る、という往復を減らせます。
生徒の学年と、通っている学校の種別
学年は選択肢にします。小学1年から高校3年、それに既卒を加えた形が一般的です。自由記述にすると「小5」「小学五年」「5年生」と表記が散らばり、集計するときに手作業が発生します。集計を捨てるつもりでも、返信を書く人がぱっと読み取れる形にしておく価値はあります。
学校名まで最初に聞く必要があるかは、塾の性格によります。地域密着で学校ごとの定期試験対策をしている塾は、学校名が分からないと具体的な話ができません。一方、進学指導が中心の塾なら学年と現在の学習状況のほうが優先されます。学校名を聞くなら、公立か私立かの選択肢を先に置いて、学校名は任意にする構成が無難です。私立の中高一貫校は進度が公立と大きく違うため、この1項目だけでも返信の中身が変わります。
何を希望しているのか
先ほどの5分類を、そのまま選択肢にします。ここで大事なのは、選択肢を単一選択にすることです。複数選択にすると「体験授業」と「資料請求」と「料金の相談」に全部チェックが入った問い合わせが届き、結局どこから話を始めればよいのか分かりません。単一選択にして、それ以外の要望は自由記述欄で受けるほうが、返信を書く側は動きやすくなります。
都合のつく曜日と時間帯
体験授業の申し込みが届いてから、日程を決めるまでのやりとりが長引く塾は非常に多いです。原因ははっきりしていて、フォームで希望日時を聞いていないからです。「ご都合のよい日時をお知らせください」という返信を送り、返ってきた候補が全部埋まっていて、また別の候補を聞き直す。この往復が3回続くと、保護者の熱は目に見えて下がります。
対策は、曜日と時間帯を複数選択で先に聞いておくことです。日付を指定させるのではなく、「平日の16時から18時」「平日の18時から20時」「土曜の午前」といった枠で選ばせます。枠で受け取れば、塾の側で空いている日を1つ提示できます。提示された日で都合が悪ければ相手が別案を出すので、往復は最悪でも2回に収まります。
いつから通いたいか
「すぐにでも」「来月から」「新学期から」「まだ決めていない」の4択で十分です。この1項目があるだけで、返信の優先順位が付けられます。すぐにでもと答えた問い合わせを翌々日に返すのと、まだ決めていないと答えた問い合わせを翌々日に返すのでは、失われるものがまったく違います。急いでいる保護者は、たいてい複数の塾に同じ日に問い合わせています。先に返した塾から順に体験の予定が埋まっていきます。
2通目以降に回してよい項目
最初のフォームに置きたくなるけれど、返信のやりとりの中で聞けば足りる項目があります。これらを最初に並べると、入力の負担が増えて送信前に離脱する人が出ます。学習塾の問い合わせは夜に送られることが多く、疲れている時間帯に長いフォームを見せるのは不利です。
現在の成績と学習の状況
点数や偏差値を最初に聞く塾がありますが、これは離脱の原因になりやすい項目です。成績がよくない子の保護者ほど書きたがりません。しかも数字だけ受け取っても、返信の質は上がりません。必要なのは数字ではなく、どこで詰まっているのかという説明です。それは面談や体験の場で本人と保護者から聞くほうが正確です。
どうしても事前に把握したいなら、自由記述で「学習面で気になっていることがあればお書きください」と任意で置きます。書いてくれた人の文章は、返信を組み立てるうえで点数よりはるかに役に立ちます。
志望校と進路の希望
小学生や中学1年の段階で志望校を聞かれると、多くの保護者は答えに詰まります。中学3年や高校3年なら答えられますが、その学年の問い合わせは全体の一部です。全学年に共通のフォームで志望校を必須にすると、答えられない層が止まります。志望校が重要なのは受験学年だけなので、聞くなら任意にするか、受験学年向けの窓口を分けて置くのが現実的です。
住所と通塾の手段
住所は入塾の手続きで必要になりますが、問い合わせの段階では要りません。必要なのは「通えるかどうか」だけです。それは最寄り駅か、小学校の学区か、自転車か送迎かという単位で足ります。番地まで含む住所を最初に求めると、個人情報を渡すことへの警戒が働いて送信をやめる人が出ます。
いま通っている塾があるかどうか
転塾の相談は、学習塾の問い合わせの中でも決着が早い部類です。すでに塾に通っている家庭は、比較の軸をはっきり持っているからです。だからこそ聞きたくなるのですが、最初のフォームで「現在通塾中の塾名」を求めるのはおすすめできません。他塾の名前を書かせる欄は、保護者に「値踏みされる」という印象を与えます。
聞くなら「現在、他の塾や家庭教師を利用していますか」の二択までにとどめます。はいと答えた家庭には、返信の中で「今の環境で気になっている点はありますか」と一言添えれば、必要な情報は自然に出てきます。塾名まで知る必要があるのは、指導方針を具体的に説明する段階に入ってからです。
希望する教科と、通いたい回数
教科と回数は、料金の説明に直結する項目です。最初に分かれば概算の月謝を返信に書けるので、聞きたくなります。ただ、この2つは保護者がまだ決めていないことが多い項目でもあります。「英語と数学だと思うが、国語も見てほしい気もする」という状態で問い合わせてくる家庭が大半です。
必須にすると、決めていない人が止まります。任意の複数選択にしておいて、選ばれていなければ返信で「まずは苦手に感じている教科からご相談ください」と受ければ十分です。回数についても同じで、週の回数を先に決めさせるより、体験のあとに提案するほうが納得を得やすくなります。
兄弟姉妹の有無
兄弟割引を用意している塾では聞きたくなる項目ですが、最初の1通では不要です。割引の案内は返信の中で「ごきょうだいで通われる場合の制度もございます」と触れれば足ります。フォームの欄が1つ減ると、それだけ送信率は上がります。
聞かないほうがよい項目
聞いても使わない項目は、入力の負担になるだけでなく、預かる情報が増えるという意味でも塾の側の負担になります。集めた情報は保管し、必要がなくなれば消す責任が生まれます。使い道のはっきりしない項目は、置かないのがいちばん安全です。
生年月日と性別
学年を聞いていれば、生年月日はほぼ不要です。学年をまたぐ特別な事情がある場合は、面談で確認すれば済みます。性別も、指導のうえで必要になる場面はありますが、問い合わせの段階で必要になる塾はほとんどありません。どちらも、集めた瞬間から管理の対象になる情報です。
家庭の事情に踏み込む項目
保護者の職業、勤務先、世帯の状況といった項目を置いている問い合わせフォームを見かけることがありますが、体験授業の予約を取るために必要な情報ではありません。入塾の手続きに進んで、月謝の引き落としや連絡先の登録が必要になった段階で、あらためて所定の書式で受け取るのが筋です。
個人情報を扱う事業者には、集める目的をはっきりさせる義務があります。
個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的をできる限り特定しなければならない。 出典: 個人情報保護委員会
目的を特定できない項目は、そもそも集める理由がないということです。フォームの項目を1つ増やすときは「これを何に使うか」を1文で書けるかどうかを基準にすると、増えすぎを防げます。なお、個人情報の扱いに関する具体的な判断は、所管の窓口や専門家に確かめてください。
「どこでお知りになりましたか」を必須にする
流入経路を知りたい気持ちは分かりますが、これを必須にすると、答えを持っていない保護者が止まります。多くの人は自分がどこで塾の名前を見たのかを正確に覚えていません。選択肢を並べても、当てはまるものがなければ適当に選ぶだけです。任意にするか、あるいは選択肢の最後に「覚えていない」を置いてください。
自由記述だけで受ける
逆の失敗もあります。「お問い合わせ内容」という大きな自由記述欄だけを置き、あとは氏名とメールアドレスだけ、という構成です。これは送信する側はとても楽なのですが、受ける側の負担が最大になります。届いた文章を全部読まないと、学年も、用件も、急いでいるかどうかも分かりません。件数が増えると、読むだけで時間が溶けます。選択肢で受け取れるものは選択肢で受け取るのが、受付を回すうえでの基本です。
項目の並べ方と入力のしかたで、届く数が変わる
同じ項目でも、並べ方と入力形式で送信率は変わります。学習塾の問い合わせは、その多くがスマートフォンから、しかも夜に送られてきます。画面が小さく、集中力が落ちている状態で入力されるという前提で組み立てます。
必須と任意をはっきり分ける
必須の印は、記号ではなく文字で「必須」と書きます。米印や色だけの区別は、小さい画面では見落とされます。必須の数は、先に挙げた項目に絞れば6項目前後に収まります。ここを超えると、送信前にやめる人が目に見えて増えます。
選択肢は縦に並べる
学年のようにたくさんの選択肢があるものはプルダウンでよいのですが、3つから5つ程度の選択肢は、縦に並べたボタンのほうが速く選べます。プルダウンはスマートフォンだと画面の下から選択の輪が出てきて、指の移動が増えます。用件の選択のような、いちばん大事な項目ほど押しやすくしておきます。
エラーの出し方で離脱が決まる
入力に不備があったとき、画面の一番上に「入力内容に誤りがあります」とだけ表示して、どこが誤りなのか示さないフォームがあります。この形式は、書き直しの途中で諦める人を生みます。誤りのある欄のすぐ下に、何を直せばよいかを書くのが基本です。さらに、送信に失敗したときに入力内容が消えるフォームは論外です。長文を書いた保護者ほど、消えた瞬間に離れます。
この手の作りの違いは、フォームの道具ごとに大きく差が出ます。無料で使える定番の道具と、受付の業務に寄せた道具では、そもそも想定している使い方が違います。Googleフォームとの比較では、回答を集めたあとに誰がどう追いかけるのかという観点で、できることとできないことを項目ごとに並べています。今すでにGoogleフォームで受けていて、返信の管理だけが手作業になっているなら、どこが境目なのかがはっきりします。
フォームだけで受けきれないものへの備え
項目を整えても、学習塾の窓口には想定外のものが届きます。ここを設計に入れておかないと、せっかく整えた項目が別の用途で汚れていきます。
講師の応募が同じ窓口に届く
学習塾で意外と多いのが、アルバイト講師の応募が保護者向けの問い合わせフォームに届くケースです。大学生が塾のサイトを開いて、目についた問い合わせボタンを押すためです。用件の選択肢に採用の項目が無いと、その応募は「その他」で届き、保護者の問い合わせの列に紛れます。読む人が違い、返信の文面も違い、急ぎ具合も違うのに、同じ列に並んでしまいます。
対策は2つあります。用件の選択肢に採用に関する項目を1つ足して、届いた時点で分けるか、採用の窓口を別に立てるかです。応募者に聞くことは保護者に聞くこととまったく重ならないので、窓口を分けるほうがすっきりします。採用の応募受付では、履歴書の受け取りや選考の段階を追いかける形の受付を整理しています。講師の採用を通年で続けている塾なら、保護者の受付とは別に持ったほうが両方の精度が上がります。
営業と業者からの問い合わせをどう扱うか
教材会社、広告代理店、内装業者からの営業の問い合わせも、同じフォームに届きます。これは完全には止められません。ただ、量を減らす工夫はできます。用件の選択肢に「取引に関するご提案」を1つ置いておくと、律儀な営業はそれを選びます。選んで届いたものは、保護者の列から外して後でまとめて見ればよくなります。
自動で送りつけてくる機械的な送信については、送信のたびに簡単な確認を挟む仕組みで大きく減ります。ただし確認を厳しくしすぎると、本当に問い合わせたい保護者まで止まります。夜遅くにスマートフォンから送ろうとしている保護者にとって、画像の中の文字を読ませる形式は負担が大きいものです。保護者の手を止めない範囲で機械だけを止めるのが基準になります。
電話とフォームが両方ある場合の設計
学習塾は今も電話の問い合わせが多い業種です。電話とフォームが並存していると、同じ家庭から両方で連絡が来ることがあります。母親がフォームから送り、返事が来ないので父親が電話をかける、という形です。このとき、電話を受けた人がフォームの一覧を見られなければ、二重に案内することになります。
そこで、電話で受けた内容も同じ一覧に手で1行入れておく運用にすると、窓口が1本になります。入力の手間は1分ですが、これをやるかやらないかで、同じ家庭に別々の返事をしてしまう事故がなくなります。フォームの項目を決めるときは、電話で受けた内容を同じ形で書き写せる並びになっているかも見ておいてください。
自動返信の中身を項目とセットで決める
送信直後に届く自動返信は、フォームの一部です。ここに何を書くかで、催促の電話の数が変わります。最低限、受け付けたこと、いつごろ返事をするか、返事が来ない場合にどうすればよいかの3つを書きます。「2営業日以内にご連絡します」と書くなら、それを守れる体制であることが前提です。守れない数字を書くと、期日を過ぎた時点で信用を落とします。
自動返信には、送信された内容をそのまま載せておくと親切です。保護者は自分が何を書いたか覚えていません。体験の希望時間帯を後から確認したいとき、自動返信を見返せば済みます。返信の文面の中で「お送りいただいた内容は控えとしてお手元に残ります」と伝えておくと、問い合わせの重複も減ります。
受け取ったあとに使う欄を、最初から用意しておく
項目の設計というと、保護者に入力してもらう欄のことだと思われがちですが、実務でもっと効くのは、受け取った側が書き込む欄のほうです。問い合わせが1件届いたとき、その後に発生する情報は次のようなものです。誰が担当するか、いまどの段階か、体験の日程は決まったか、いつ返信したか、次に何をするか。
これらを保護者からの入力とは別の場所に持てないと、必ず表計算ソフトかホワイトボードに転記が始まります。転記は必ずずれます。教室長が返信したのに表に書き忘れ、事務のスタッフが同じ問い合わせにもう一度返信する。あるいは全員が「誰かが返したはず」と思って、誰も返していない。学習塾の受付で起きる事故のほとんどは、この転記のずれから生まれています。
対策は単純で、届いた1件に、担当と状況を直接持たせることです。問い合わせの一覧を開いたときに、誰が持っていて、いまどこまで進んでいるかが同じ画面で見えていれば、転記はいりません。この考え方でできることを整理したのができることで、届いたあとに何を持たせられるのかが並んでいます。実際の画面の動きを先に見たい場合は動くところを見るから確認できます。
複数の教室を運営している場合は、さらに振り分けが加わります。問い合わせが本部の1つのアドレスに集まり、そこから各教室へ転送しているなら、転送のたびに1件が2件に見え、返信の履歴も分断されます。教室の欄を最初から持たせて、届いた時点で行き先が決まる形にしておくのが、規模が増えたときに効いてきます。
学習塾の受付で、項目設計が効く場所と効かない場所
ここまで項目の話をしてきましたが、最後に効き目の範囲をはっきりさせておきます。フォームの項目を整えることで解決するのは、返信を書くまでの時間です。項目が足りていれば、届いた1通を読んだ瞬間に返信の中身が決まります。学年が分かり、用件が分かり、都合のつく時間帯が分かっていれば、返信は5分で書けます。逆に足りていなければ、確認の1往復が入り、そのぶん体験の予定が後ろにずれます。
一方、項目をいくら整えても解決しないことがあります。返し忘れです。項目が完璧にそろっていても、その1通が受信箱の下のほうに沈んで誰の目にも入らなければ、返信は発生しません。学習塾の受付が難しいのは、いちばん問い合わせが増える時期と、いちばん現場が忙しい時期が完全に重なるからです。春の入塾シーズンは新しいクラスの編成と時間割の調整で手が埋まり、夏期講習の申し込みが集中する時期は講習の運営そのもので手が埋まります。
この2つは別の問題なので、別の手当てが要ります。項目の設計は、届いた1件を速く処理するための準備です。返し忘れを防ぐのは、届いた1件が誰の手元にあるかを見える形にする仕組みです。両方をそろえて初めて、問い合わせから体験、体験から入塾という流れが途切れずに回ります。
学習塾以外の受付でも、この構造は変わりません。講座の受講申し込みや問い合わせの受付のように、申し込みを受けて日程を合わせて返すという形の受付は、どれも同じ場所で詰まります。他の業種の受け方を見ておくと、自分の塾のフォームで何が足りていないのかが逆に見えてきます。
費用の面では、フォームを作るところまでは無料の道具でまかなえます。差が出るのは、届いたあとを人手で回すか、仕組みで回すかの部分です。教室長の1日のうち、返信の管理に何分使っているかを一度測ってみると、判断の材料になります。条件と金額は料金で確認できます。
見直しの手順としては、まず直近の問い合わせを30件ほど並べて、返信を書く前に確認の連絡を入れた件がどれだけあったかを数えます。確認が必要だった件について、何が分からなかったのかを書き出すと、足りない項目が浮かびます。逆に、フォームで受け取っているのに一度も返信に使っていない項目があれば、それは外す候補です。この2つを突き合わせるだけで、項目表はかなり整理できます。
見直しは年に一度で構いませんが、時期は選んでください。問い合わせが集中する春や夏の直前にフォームを入れ替えると、不具合が出たときに逃げ場がありません。山を越えた直後の落ち着いた時期に手を入れて、次の山までに動きを確かめておくのが安全です。
項目を減らすことは、手を抜くことではありません。最初の1通で聞くことを絞るほど、送信してくれる保護者は増えます。増えた問い合わせを取りこぼさずに返せるかどうかが、次の勝負になります。フォームの項目表を開く前に、届いた1件がどこを通って誰の手に渡り、どこで返信になるのかを紙に書いてみてください。書けない場所があれば、そこが本当に直すべき場所です。
Q1. 学習塾の問い合わせフォームの必須項目は、いくつくらいが適切ですか?
返信を書くために欠かせない項目だけに絞ると、保護者の氏名、ふりがな、メールアドレス、電話番号、生徒の学年、用件の6項目前後に収まります。都合のつく時間帯と希望時期を加えても8項目です。判断の基準は、その欄が空欄だと返信が書けるかどうかです。空欄でも返信が書けるなら任意にしてください。必須が増えるほど、送信前にやめる人が増えます。
Q2. 生徒の名前と保護者の名前は、両方聞くべきですか?
両方の欄を用意したうえで、保護者の氏名を必須、生徒の氏名を任意にする形が扱いやすいです。学習塾は送信する人と通う人が別なので、名前の欄が1つだけだと返信で聞き直す往復が発生します。ただし資料請求の段階でフルネームまで求めると警戒されます。体験の予約に進む段階で、返信の中で聞けば十分です。
Q3. 成績や志望校を最初のフォームで聞いても問題ありませんか?
必須にすると離脱の原因になります。成績がよくない子の保護者ほど点数を書きたがらず、低学年の保護者は志望校を答えられません。どちらも面談や体験の場で聞くほうが正確です。事前に把握したいなら「学習面で気になっていること」という任意の自由記述にしてください。書いてくれた文章は、点数より返信の組み立てに役立ちます。
Q4. 体験授業の日程調整の往復を減らすには、何を聞けばよいですか?
具体的な日付ではなく、都合のつく曜日と時間帯を複数選択で受け取ってください。「平日の16時から18時」「土曜の午前」といった枠で選ばせれば、塾の側から空いている日を1つ提示できます。日付を書かせる形式だと、その日が埋まっていたときに聞き直しが発生し、往復が3回を超えると保護者の熱が下がります。
Q5. 講習の申し込みと通常の入塾相談は、同じフォームで受けても大丈夫ですか?
分けたほうが回ります。夏期講習には受講教科と参加できる期間が必要ですが、通常の入塾相談にその欄は不要です。1つのフォームにまとめると、通年で最大公約数の長いフォームを置くことになり、閑散期の問い合わせまで重くなります。期間限定の受付を別に立てて、終わったら閉じる形が現実的です。
