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自治体の窓口が集めた個人情報の扱い|見られる人を絞るところから決める

2026年9月8日 ・ Halict編集部

自治体の窓口で申請と相談を受けていると、個人情報は集めようとしなくても集まります。様式に書かれた氏名と住所だけではありません。相談の自由記述に書かれた家庭の事情、添付書類の隅に写り込んだ口座番号、通報の写真に入った他人の車のナンバー。受付をしている側が「これは集めた情報だ」と意識していないものまで、確実に手元に溜まっています。

そして多くの窓口で、それがどこに何か所あるのかを誰も把握していません。担当課の受信箱、共有フォルダ、集計用の表計算ファイル、印刷して置いた紙、前任者が使っていた個人のフォルダ。散らばったまま「適切に管理しています」と説明することは、実際にはできません。

この記事では、自治体の窓口が集めた個人情報の扱いを決めるために、何から手を付ければ止まらないのかを順番に並べます。法律の解釈そのものを断定することはしません。判断に迷う場面は所管の窓口や専門家に確かめてください。書くのは、届いたものを受けて返す側が、いま自分で決められることの範囲です。

自治体の窓口には、集めるつもりのない情報まで届く

申請の様式が求める情報と、相談で書かれる情報は性質が違う

申請の受付で集まる情報は、比較的はっきりしています。様式に欄があり、何を書くかが決まっていて、何のために必要かも説明できます。住宅改修の助成なら住所と物件と工事の内容、施設利用なら団体名と代表者と利用の目的、後援名義なら事業の計画と主催者。ここは設計された範囲です。

やっかいなのは相談の受付です。相談には様式がありません。「困っているので相談したい」と書かれた欄の中に、本人が必要だと思ったことが全部入ります。同居している家族の年齢、病気の名前、勤め先を辞めた経緯、近隣とのもめごとの相手の名前。窓口が聞こうとしていない情報が、最初の一通で届きます。

この二つを同じ扱いにすると、必ずどちらかが破綻します。申請の情報に合わせて幅広く共有できる形にすれば、相談の中身まで庁内から見えてしまいます。相談に合わせて強く閉じれば、申請の処理で複数の課が見る必要があるときに手が止まります。だから、扱いの設計は申請と相談で分けるのが出発点です。

匿名で受けた相談にも、個人が特定できる情報は入る

自治体の相談窓口は、匿名での通報や相談を受け付けていることが多くあります。名前を書く欄が任意になっている、あるいは欄そのものが無い。受け取る側は「匿名だから個人情報ではない」と考えがちですが、実際にはそうなりません。

たとえば、近隣の騒音についての相談には、相手の家の場所が書かれます。空き家の通報には、所有者らしき人の名字が書かれます。写真には表札が写り、通行人が写り、車のナンバーが写ります。通報した本人は匿名でも、書かれている中身は別の誰かの個人情報です。

さらに、匿名の相談には別の難しさがあります。誰から来たか分からないため、後から本人に確認できません。間違って広く共有してしまったときに、誰に説明すればよいのかも決まりません。だから匿名の相談ほど、見られる範囲を先に決めておく必要があります。

添付と自由記述に、目的外の情報が混ざる

窓口が意図的に集めていない情報が入り込む経路は、だいたい二つです。添付書類と、自由記述の欄です。

添付では、必要な部分だけを切り取って送ってくる人はほとんどいません。通帳の一部を求めたら見開きの写真が届き、見積書を求めたら他の工事の見積もりも一緒に写っています。診断書の写しを求めたら、求めていない病名まで読める状態で届きます。受け取った時点で、それは手元にある情報です。見なかったことにはなりません。

自由記述はもっと直接的です。「その他ご要望」の欄に、家族の入院の予定や、収入が減った事情が書かれます。書いた本人は状況を説明しているつもりですが、受け取った側から見れば、様式で求めていない情報を保有した状態になります。

こうした混入を完全になくすことはできません。できるのは、混ざる前提で扱いを決めておくことです。混ざらないように住民の書き方を制御しようとするのは、うまくいきません。

集めた情報が、いま何か所にあるのかを数える

受信箱、共有フォルダ、表計算、紙、個人の端末

手を付ける前にやることは、増やす対策を考えることではなく、いま何か所にあるかを数えることです。多くの窓口で、次の五つが同時に存在しています。

一つ目が担当課の受信箱です。メールで届いた相談と申請が、本文も添付も含めてそのまま残っています。二つ目が共有フォルダです。添付を保存した先で、連番のファイル名のまま並んでいます。三つ目が集計用の表計算ファイルです。件数を数えるために氏名と連絡先を転記したものが、たいてい一つはあります。四つ目が紙です。審査のために印刷したもの、決裁に回したもの、窓口の手元に置いた控え。五つ目が個人の端末です。休日に確認するために転送したもの、出先で見るために保存したもの。

この五つを並べて数えると、同じ一件の情報が三か所から五か所にあることが分かります。ここが出発点です。何か所にあるかを知らないまま「安全に管理する方法」を考えても、対策は一か所にしか効きません。

電話と来庁で受けた分は、そもそも記録に残らない

数えるときに抜けやすいのが、電話と来庁で受けた分です。自治体の窓口では、いまも問い合わせの多くが電話で入ります。相談の内容を聞き取り、担当が手元のメモ帳や付箋に書き、必要なら課の共有の様式に転記する。この流れのどこかで止まると、記録はどこにも残りません。

残らないこと自体が問題になるのは、二度目の連絡が来たときです。前回どこまで話したのかが分からず、住民に最初から説明させることになります。相談してきた人にとって、同じ事情をもう一度話すのは負担が大きい。とくに福祉や生活に関わる相談では、話すこと自体に消耗があります。

一方で、電話のメモを全部残せばよいという話でもありません。付箋や個人のメモ帳は、置き場としては最も追跡できない形です。机の上に置かれ、鞄に入り、捨てられるときも記録に残りません。電話で受けた分も、件として同じ場所に残る形にしておくのが、扱いの上でも引き継ぎの上でも確実です。

複製が増える三つの瞬間

複製は、特定の瞬間に増えます。転送したとき、保存したとき、印刷したときです。

転送は最も気づかれにくい増え方です。他の課に相談するため、上司に確認するため、委託先に共有するため。転送された先の受信箱にも同じ情報が残り、その受信箱の持ち主が異動すれば追跡できなくなります。転送は一秒で終わる操作ですが、消すには相手の協力が要ります。

保存は、添付を扱う限り必ず発生します。メールのままでは審査できないので、共有フォルダに置きます。このとき元のメールも残るので、二か所になります。片方だけ消しても、もう片方が残ります。

印刷は、自治体の窓口ではまだ日常的です。決裁の様式が紙である、審査に複数人が同時に目を通す、現地に持って行く。印刷した紙は、消す作業の対象から抜けやすい。机の上、書庫、鞄の中。

誰がいつ見たかが残らない

数えたときに、もう一つ確かめておくべきことがあります。それぞれの置き場で、誰がいつ見たかが残るかどうかです。

受信箱では残りません。共有フォルダでは、設定によっては残りますが、多くの窓口では確かめられる状態になっていません。表計算ファイルでも紙でも残りません。つまり、いまある置き場のほとんどで、後から「誰が見たか」を説明できません。

これは、事故が起きたときにだけ問題になるわけではありません。住民から「自分の相談の内容を、なぜ別の課の人が知っているのか」と聞かれたときに、答えられません。答えられないことが、窓口への信頼をいちばん削ります。

見られる人を絞るところから決める

全員が見える形も、担当だけが見える形も、どちらも詰まる

見られる範囲を決めるとき、両極はどちらも失敗します。

庁内の誰でも見える形にすると、相談の中身が広く読める状態になります。同じ庁舎で働いている人の中に、相談してきた住民の知り合いがいることは珍しくありません。とくに人口の少ない団体では、この距離が近い。相談の内容が漏れているという話が一度でも広まると、相談そのものが来なくなります。

逆に、担当ひとりしか見えない形にすると、業務が止まります。担当が休んだ日に処理が進まず、年度替わりの異動で見えなくなり、進行中の申請が宙に浮きます。そして担当が抱え込む形は、本人にとっても重い。

課の単位で見えて、件ごとに担当を持つ形

現実的なのは、その中間です。受け付けたものは課の単位で見えるようにしたうえで、件ごとに担当を持たせます。担当が決まっていれば、誰が返すのかが決まります。課で見えていれば、休んでも異動しても止まりません。

この形にすると、返信の重複も減ります。件ごとに誰が担当かと、いまどの状態かが表示されていれば、二人が同時に返すことがなくなります。返したかどうかが件に残らないと、二重返信と返し忘れは必ず起きます。

そのうえで、扱いが重い相談だけを、より狭い範囲に置く例外を作ります。福祉や健康に触れるもの、当事者間の争いに関わるもの。全部を狭く閉じるのではなく、狭くする対象を先に決めておくほうが運用は続きます。

他の課へ回すときに、何を渡すかを決める

自治体の受付は一つの課で完結しません。道路の相談に水路が絡み、補助金の申請に税の確認が絡み、生活の相談に福祉と住宅の両方が関わります。回すこと自体は避けられません。

決めるのは、回すときに全部渡すのか、必要な部分だけ渡すのかです。メールで転送すると、必ず全部渡ります。本文も添付も、前のやり取りも一緒に飛びます。相談の中身のうち、相手の課が知る必要のない部分まで渡ります。

件ごとに共有先を指定できる形になっていれば、渡す範囲を選べます。そして、いつ誰に共有したかが記録に残ります。この記録があるかどうかが、後から説明できるかどうかを分けます。

委託事業者と、年度で入れ替わる職員をどう扱うか

自治体の窓口には、常勤の職員以外の人が関わります。委託先のコールセンター、指定管理者、会計年度任用職員。この人たちが見られる範囲を、常勤の職員と同じにしてよいかは別の判断です。

実務でよく詰まるのは、委託先の担当者が個人のアカウントを持たず、共有のアカウントで受信箱を見ている形です。この状態だと、誰が見たかを個人単位で追えません。契約が終わったときに、その人の手元に何が残っているかも確かめられません。

年度で入れ替わる職員についても同じです。任用の期間が終わったときに、アクセスを外す作業が確実に行われるかどうか。個人ごとのアカウントで、いつでも外せる形になっているかを先に確かめておきます。

保有の目的を、様式ごとに書き出す

個人情報の保護に関する法律は、行政機関等が個人情報を保有するときについて次のように定めています。

行政機関等は、個人情報を保有するに当たっては、法令の定める所掌事務又は業務を遂行するため必要な場合に限り、かつ、その利用の目的をできる限り特定しなければならない。 出典: 個人情報保護委員会

条文の解釈は所管の窓口や専門家に確かめるものとして、窓口の実務でできることははっきりしています。様式ごとに、どの欄を何のために集めているのかを一度書き出すことです。

欄ごとに、無いと何が困るかを問い直す

書き出してみると、理由を説明できない欄が必ず出てきます。よくあるのが、生年月日と性別と職業です。昔から様式に入っているという以外の理由が見つからないことがあります。

判断の基準は単純で、その欄が無いと処理のどこが止まるかを言えるかどうかです。言えるなら残します。言えないなら外します。年齢の要件がある制度なら生年月日は要ります。要件が無いなら、集める理由も無い。

自由記述の欄についても同じことをします。「その他」の欄は便利ですが、目的の特定という観点では最も広く開いています。何を書いてほしい欄なのかを見出しで示すだけで、書かれる中身は変わります。「相談したい内容」と「その他ご要望」では、届く情報の量がまったく違います。

集めない、という選択肢を先に置く

見られる人を絞る話の前に、そもそも集めないという選択肢があります。集めていない情報は、漏れません。保存期間も要りません。開示請求の対象にもなりません。

たとえば、返信の要らない通報で連絡先を必須にする必要はありません。道路の破損を知らせるだけの通報に、氏名と電話番号を求めている窓口は多くありますが、通報を受けて現場に出るだけなら不要です。必須にした結果、名乗りたくない人が通報をやめるなら、窓口にとっても損です。

添付についても同じです。必要な部分だけを求める書き方にしておくと、余計な情報の混入が減ります。「通帳の表紙を開いた1ページ目」と書けば、見開き全部の写真が届く確率は下がります。

いつまで持つかを決める

文書の保存年限と、受付の記録の保存期間は別物

自治体には文書の保存年限の定めがあり、申請に関する文書は種類ごとに年数が決まっています。ここは既に決まっているので、それに従います。

分かりにくいのは、正式な文書として保存したものとは別に残る、受付の記録のほうです。メールの本文、共有フォルダのファイル、集計用の表。これらは文書として整理されていないことが多く、保存年限の対象からも外れています。だから消えません。

決めるべきは、この部分の保存期間です。処理が終わってから何か月で消すのか。相談で対応が終わったものはどうするのか。年度をまたぐものはどう扱うのか。ここを一行決めておかないと、事実上の永久保存になります。

消す作業を、定例に組み込む

期間を決めても、消す作業が誰の仕事にもなっていなければ実行されません。思い出したときにやる作業は続きません。

続く形にするには、月に一度の定例作業として組み込むのが確実です。月初に、前月に期間を過ぎたものを一覧で出し、確認して消す。この流れが自動で出てくるなら、担当が替わっても続きます。一覧を手で作るところから始まる形だと、忙しい月に飛びます。

置き場が一か所に集約されていれば、この作業は一回で済みます。五か所にあるなら五回必要で、たいてい一か所が残ります。保存期間の話が終わらない理由の多くは、消す期間を決められないことではなく、置き場が多すぎることです。

開示請求と、住民への説明

自治体には情報公開の制度があり、本人からの開示請求にも応じます。求められたときに、その人に関する情報がどこにあるのかを集められるかどうか。五か所に散らばっていれば、探すだけで時間がかかり、探し漏れも起きます。

説明の場面でも同じです。「自分の相談の内容は誰が見ているのか」と聞かれたときに、見られる範囲を即答できるかどうか。範囲が定義されていなければ答えられません。答えられない状態は、実務として管理できていない状態です。

紙で受け取った分の置き場

来庁して提出された紙の書類と、郵送で届いた紙も、同じ扱いの対象です。電子の話ばかりを詰めても、紙の側が抜けていれば、実態としては散らばったままです。

紙で受け取ったものは、受け付けた時点で一件として記録に載せます。原本は保存の場所に置き、記録の側には受け付けたことと中身の要点を残す。こうしておくと、経路にかかわらず同じ場所で状況が分かります。

紙の写しを取って共有フォルダに置く運用は、複製を増やします。回覧のために写しが要るなら、記録の側で見られるようにしたほうが、後から消す作業も一か所で済みます。

相談の中身を、記録としてどう書き残すか

要約の粒度を決めておく

相談を受けたあとに残す記録は、届いた文面そのものだけではありません。電話で補足を聞いた内容、来庁して話した中身、担当が判断のために書いたメモ。これらも同じ一件に紐づく情報です。

ここで決めておくべきなのが、要約の粒度です。相談の全文をそのまま書き写すと、様式で求めていない情報まで記録として固定されます。逆に「相談あり、対応済み」しか残らないと、次に同じ人から連絡が来たときに前回の経緯が分かりません。担当が替わったときには、何も引き継げません。

実務で落ち着くのは、何について、どこまで進んだか、次に何をするかの三つを残す形です。家庭の事情や病気の名前といった、対応の判断に直接効かない部分は、要約から外します。外した部分は元の文面に残っているので、必要になれば戻って読めます。記録を薄くするのではなく、二層にしておくという考え方です。

主観的な評価を書かない

もう一つ、記録で問題になりやすいのが、担当が書いた評価の言葉です。「感情的」「話が通じない」「何度も電話してくる」。窓口の実感としては書きたくなる場面がありますが、これは残さないほうがよい。

理由は二つあります。第一に、記録は開示請求の対象になり得ます。本人が読む可能性のある文書に、その人への評価を書いてあるという状態は、説明が難しい。第二に、次に担当する人がその評価を前提に対応を始めます。前任者の主観が、引き継いだ相手の判断を先に色づけしてしまいます。

書くのは事実です。何日に何回連絡があり、何を求めていて、こちらは何を返したか。これだけで、次の担当は状況を把握できます。判断に必要な情報は事実の側にあり、評価の側にはありません。

事故が起きたときに、何を説明できる状態か

範囲を特定できるかどうかで、対応の重さが変わる

個人情報の扱いで最も重い場面は、外に出てはいけないものが出たときです。誤送信、共有の設定の誤り、紙の置き忘れ。窓口の規模にかかわらず起きます。

このとき最初に求められるのが、範囲の特定です。誰の、どの情報が、どこまで出たのか。これが即答できるかどうかで、その後の対応の重さがまったく変わります。範囲が特定できれば、対象の住民に個別に連絡し、必要な措置を取れます。特定できなければ、可能性のある全員に説明することになり、実際には起きていない不安まで広げます。

範囲を特定できるかどうかは、置き場の数で決まります。一か所にまとまっていれば、何が入っていたかを確認できます。受信箱と共有フォルダと表計算と紙に散らばっていれば、出たものの中身を突き止めるところから始まります。事故のあとに慌てて数え始める形は、いちばん時間がかかります。

誰がいつ見たかの記録が、説明の材料になる

事故ではなく、疑いが持ち込まれる場面もあります。相談の内容を知らないはずの人が知っていた、という話が住民から出るときです。

このときに必要なのが、誰がいつ見たかの記録です。記録があれば、閲覧した人を確認して、経路を追えます。無ければ、否定も肯定もできません。窓口の側に落ち度が無くても、説明できないという事実だけが残ります。

自治体には情報公開と個人情報保護の両方の制度があり、住民は制度を使って確かめる手段を持っています。制度に沿って答えられる状態を、日常の受付の形として持っておくのが確実です。事故が起きてから記録の仕組みを足しても、過去の分は残っていません。具体的な報告や連絡の手順は団体ごとの規程によるため、所管の窓口に確かめてください。

入り口を変えると、扱いの説明が短くなる

ここまでの話を通すと、置き場を一つにすることが、扱いを決める前提になっていることが分かります。散らばったままでは、範囲も期間も説明も決まりません。

入り口を送信フォームにして、届いたものが件として一か所に残る形にすると、決めることが一気に減ります。見られる人はその一か所について決めればよく、保存期間もその一か所について決めればよい。誰がいつ見たかも、その一か所で記録できます。送信されたあとの道具がそろっているかどうかが効くのは、まさにこの点です。

無料で広く使われているフォームの道具と、送信されたあとの扱いがどう違うのかは、Googleフォームとの比較に、回答が表に溜まったあとで何が起きるかという観点から整理されています。表計算ファイルに集まる形は、閲覧の範囲がファイル単位でしか決められないため、件ごとに扱いを変えたい窓口では窮屈になります。庁内で広く使われている事務用の道具の系列にもフォームの機能があり、その違いはMicrosoft Formsとの比較で確かめられます。

入り口を一つにすることには、住民の側から見た利点もあります。どこに何を出せばよいのかが分かりやすくなり、間違った課に送って回される往復が減ります。回される過程で情報が転送され、複製が増えることも減ります。窓口の都合で始めた整理が、そのまま住民の手間の削減になる場面です。

ただし、電話と来庁の経路を閉じる話ではありません。閉じると、電子の手段を使わない人が窓口から締め出されます。決めるのは、どの経路で受けたものも最後は同じ場所に記録が残る、という形です。入り口の数と、記録の置き場の数は別に考えられます。

どこまでを標準で持っているのかはできることに一覧があり、実際の画面は動くところを見るで触れます。作る画面ではなく、届いたあとの画面を長く見たほうが判断がしやすい。扱いを決めるために必要な材料は、全部そちら側にあります。

住民に何を伝えておくか

何のために集めるのかを、入り口に書く

扱いを決めたら、その内容を住民に伝える必要があります。伝える場所は、規程のページではなく、実際に情報を書き込む画面です。規程のページまで読みに行く人は、ほとんどいません。

書くのは三つです。何のために集めるのか、誰が見るのか、いつまで持つのか。長い文章は要りません。「いただいた内容は〇〇の手続きのために使い、〇〇課の担当が確認します。処理が終わってから〇年で削除します」の三行で足ります。

この三行を書こうとすると、書けないことに気づく場合があります。誰が見るのかが決まっていない、いつまで持つのかを決めていない。書けない項目があるなら、そこが決まっていない証拠です。住民への説明を先に書いてみることは、自分たちの扱いを点検する方法にもなります。

任意の欄には、任意だと分かるように書く

必須ではない欄について、なぜ聞いているのかを一行添えると、書かれる率が上がります。「写真があると現地の確認が早く進みます」と書けば、必要だと判断した人は付けてきます。理由が書かれていない任意の欄は、単に飛ばされます。

逆に、理由を書けない任意の欄は、そもそも要らない可能性があります。「念のため」で置いた欄は、住民から見れば何に使われるか分からない欄です。分からない欄があると、送信そのものをためらう人が出ます。

相談の受付では、匿名でよいことを先に書く

匿名でも受け付ける相談窓口なら、そのことを入り口に明示します。書いていないと、名前を出さなければ受け付けてもらえないと考えて、連絡をやめる人がいます。

同時に、匿名の場合は返信できないことも書きます。この二つを並べて書くことで、住民は自分で選べます。名前を出さずに通報だけしたいのか、返事がほしいのか。選ばせる形にしておくと、窓口の側も、返信が必要な件かどうかを受け取った時点で判別できます。

説明を求められたときに、誰が答えるか

扱いについて住民から問い合わせがあったとき、誰が答えるのかを決めておきます。受付の担当が答えるのか、課長が答えるのか、情報を所管する課が答えるのか。決まっていないと、その場で調べることになり、答えが人によって変わります。

そして、答える内容を書き出しておきます。何のために集めているか、誰が見られるか、いつまで持つか、削除を求められたときにどう扱うか。この四つについて、課の中で同じ答えが返せる状態にします。

答えが人によって変わることは、扱いそのものが不適切であるかどうかとは別に、信頼を損ないます。同じ質問に同じ答えが返る状態を作っておくことは、扱いを決める作業の最後の仕上げです。

決める順番を間違えない

最後に順番の話をします。個人情報の扱いを整えようとするとき、多くの窓口は規程の文言から入ります。しかし文言を先に決めても、実態が五か所に散らばったままなら、書いたとおりには運用できません。

順番は逆です。まず数える。いま何か所にあるかを並べる。次に、置き場を一つに寄せる。そのうえで、見られる人を絞る。範囲が決まってから、保有の目的を様式ごとに書き出し、最後に保存期間を決める。この順で進めると、それぞれの判断が一か所についての判断で済みます。

相談と申請を同じ窓口で受けている場合の回し方は、問い合わせの受付に、受け取ってから返すまでの流れとして整理されています。補助金や公募のように、期間を区切って多数の申請を受け、審査の過程で複数の課が関わる場面は助成金・公募の受付のほうが近い。どちらも、扱いを決める単位が件になっていることが前提になっています。

規程は、実態が決まってから書いたほうが短く済みます。散らばった実態を文言で覆おうとすると、長くて誰も読まない文書ができあがるだけです。

Q1. 匿名で受けた相談も、個人情報として扱う必要がありますか?

通報した本人が匿名でも、書かれている中身には別の誰かの個人情報が入っていることがほとんどです。近隣の相談には相手の家の場所が書かれ、空き家の通報には所有者らしき人の名字が入り、写真には表札や車のナンバーが写ります。匿名の相談は後から本人に確認できないぶん、見られる範囲を先に決めておく必要があります。具体的な取り扱いは所管の窓口や専門家に確かめてください。

Q2. 見られる範囲は、どのくらいの広さにするのが現実的ですか?

庁内の誰でも見える形にすると相談の中身が広く読まれ、担当ひとりだけが見える形にすると休みや異動で止まります。実務で続くのは、課の単位で見えるようにしたうえで、件ごとに担当を持たせる形です。そのうえで、福祉や健康に触れるものなど扱いが重い相談だけを、より狭い範囲に置く例外を先に決めておきます。

Q3. 集めた情報が何か所にあるのかを知る方法はありますか?

まず並べて数えるところから始めます。担当課の受信箱、添付を保存した共有フォルダ、集計用の表計算ファイル、審査や決裁のために印刷した紙、確認のために転送した個人の端末。この五つを挙げると、多くの窓口で同じ一件の情報が3か所から5か所にあることが分かります。何か所あるかを知らないまま対策を考えても、一か所にしか効きません。

Q4. 受付の記録は、いつまで保存すればよいですか?

申請に関する文書は保存年限の定めに従いますが、メールの本文や共有フォルダのファイルや集計用の表は、文書として整理されていないため定めの対象から外れがちです。この部分について、処理が終わってから何か月で消すのかを一行決めておかないと事実上の永久保存になります。決めた期間を月に一度の定例作業として組み込むと続きます。

Q5. 委託先や会計年度任用職員の閲覧は、どう管理すればよいですか?

共有のアカウントで受信箱を見ている形だと、誰が見たかを個人単位で追えず、契約や任用が終わったときに手元に何が残っているかも確かめられません。個人ごとのアカウントで見る形にして、期間が終わったらアクセスを外す手順を決めておきます。外す作業が誰の仕事になっているかまで決めておかないと、実際には残り続けます。

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